トラマドール、アセトアミノフェン
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/09/30 17:41:42」(JST)
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トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(-えんさんえん/-はいごうじょう)とは、麻薬系鎮痛薬(弱オピオイド)の一つ[1]。日本では「トラムセット配合錠®」としてヤンセンファーマから上市されている[2]。
オピオイドとアニリン系解熱鎮痛薬という作用機序の異なる鎮痛薬を併用することでさまざまな痛みに有効性が期待されることから開発された。1錠につきトラマドール塩酸塩37.5mgとアセトアミノフェン325mgを含有する配合錠である。
トラマドール塩酸塩は、μオピオイド受容体に対する作用及びモノアミン再取り込み阻害作用により、鎮痛効果を示すと考えられている。
アセトアミノフェンは非ステロイド性消炎・鎮痛剤(NSAIDs)とは異なり、末梢でもシクロオキシゲナーゼ阻害作用は弱く、主に中枢神経系で鎮痛作用を示すと考えられている。[3]
非ピリン系の、抗炎症作用を持たない解熱鎮痛薬である[4]。
目次
- 1 薬理
- 2 適応
- 3 用法・用量
- 4 副作用
- 5 備考
- 6 脚注
- 7 関連事項
- 8 外部リンク
薬理
NSAIDsと異なり、中枢性に作用する。トラマドールはμオピオイド受容体への結合作用とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を、アセトアミノフェンはN-メチル-D-アスパラギン酸受容体及びサブスタンスP受容体を介した一酸化窒素経路の阻害作用を示す。
適応
非がん性慢性疼痛
- 国内第III相臨床試験では、腰痛症、変形性膝関節症、関節リウマチ、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害でも疼痛改善効果を認めた。
抜歯後の疼痛
≪効能・効果に関連する使用上の注意≫
慢性疼痛患者においては、その原因となる器質的病変、心理的・社会的要因、依存リスクを含めた包括的な診断を行い、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。[3]
用法・用量
非がん性慢性疼痛:[3]
通常、成人には、1回1錠、1日4回経口投与する。投与間隔は4時間以上空けること。
なお、症状に応じて適宜増減するが、1回2錠、1日8錠を超えて投与しないこと。また、空腹時の投与は避けることが望ましい。
抜歯後の疼痛:[3]
通常、成人には、1回2錠を経口投与する。
なお、追加投与する場合には、投与間隔を4時間以上空け、1回2錠、1日8錠を超えて投与しないこと。また、空腹時の投与は避けることが望ましい。
≪用法・用量に関連する使用上の注意≫[3]
1.投与の継続
慢性疼痛患者において、本剤投与開始後4週間を経過してもなお期待する効果が得られない場合は、他の適切な治療への変更を検討すること。また、定期的に症状及び効果を確認し、投与の継続の必要性について検討すること。
2.投与の中止
慢性疼痛患者において、本剤の投与を必要としなくなった場合は、退薬症候の発現を防ぐために徐々に減量すること。
副作用
など
副作用発現頻度
解析対象症例数 |
599 |
副作用発現症例数(%) |
486(81.1%) |
副作用発現件数 |
1,694 |
慢性疼痛及び抜歯後疼痛を有する患者を対象に実施した国内臨床試験における安全性評価対象症例599例中486例(81.1%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。主なものは、悪心248例(41.4%)、嘔吐157例(26.2%)、傾眠155例(25.9%)、便秘127例(21.2%)、浮動性めまい113例(18.9%)であった[3](承認時)。
備考
【患者選択】[3]
・慢性疼痛患者において、心理的社会的要因を伴う場合は、これらに対して適切な治療を行う必要がある。
・『非がん性慢性[疼]痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン』(日本ペインクリニック学会編)[5]によると、「明らかな心因性[疼]痛を訴えている患者」「心理的・社会的要因が痛みの訴えに影響している患者」は、オピオイドの非適応症例と明記されているため、これらの鑑別と患者選択は最も重要な項目となる。
【生活上の注意】[3]
・眠気、めまい、意識消失が起こることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないように注意する。意識消失により自動車事故を起こした例も報告されている。
・飲酒により薬の作用が増強され、呼吸抑制が起こることがあるため、使用中の飲酒は避ける。
脚注
- ^ http://www.ierq.or.jp/ox/dwm/se/se11/se1149117.html
- ^ http://www.janssen.co.jp/public/rls/news/3878
- ^ a b c d e f g h トラムセット®配合錠インタビューフォーム(第5版)
- ^ 米延策雄ほか編:長引く・頑固な・つらい痛みの薬物療法 2011 運動器編 (株)シービーアール 東京 2011
- ^ 日本ペインクリニック学会 非がん性慢性[疼]痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン作成ワーキンググループ・編:非がん性慢性[疼]痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン 真興交易(株)医書出版部 東京 2012
関連事項
- オピオイド
- 線維筋痛症…NSAIDsもステロイドも無効な痛みを呈する。
- カウザルギー…同上
- 片頭痛
- 群発頭痛
外部リンク
トラムセット配合錠 - PMDAでの解説
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 顎関節症・咀嚼筋痛障害に伴う慢性疼痛へのトラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠の使用経験
- 佐藤 仁,村岡 渡,西須 大徳,臼田 頌,莇生田 整治,河奈 裕正,中川 種昭,和嶋 浩一
- 日本顎関節学会雑誌 26(1), 9-14, 2014
- … 目的:顎関節症・咀嚼筋痛障害の治療においては,開口訓練や認知行動療法などによるセルフケアがまず選択されるが,そのような治療では十分に症状改善が得られない症例に対して本報告ではトラムセット®配合錠(アセトアミノフェンとトラマドール塩酸塩の合剤)を処方し,その治療効果を検討した。 …
- NAID 130004567846
- 当科における運動器慢性疼痛治療に対するアセトアミノフェン/トラマドール配合剤の治療成績
- 柳澤 義和,酒見 勇太,増田 圭吾,高野 祐護,野村 裕,田中 孝幸,中野 壯一郎,有馬 準一
- 整形外科と災害外科 63(1), 137-140, 2014
- … 折,頸椎術後痛,変形性膝関節症に処方されていた.効果判定として著効例は27.3%,効果あり例は27.3%であった一方,無効例は24.2%であった.また著効例では神経障害性疼痛疾患の割合が多かった.副作用は20%に嘔吐と便秘を認めた.最終的に疼痛軽減し休薬に至った症例は24%であった.トラムセットは依存や乱用が起きにくい薬剤であることからも,慢性疼痛が難治化する前の重要な選択肢の1つと考えられた. …
- NAID 130004461531
- 大腿骨近位部骨折術後疼痛コントロールにおけるトラムセット® の使用経験
- 大野木 宏洋,西森 康浩,渡邊 宣之,相良 学爾,小栗 雄介,櫻井 公也
- 中部日本整形外科災害外科学会雑誌 57(1), 131-132, 2014
- NAID 130004144293
Related Links
- トラムセットとは?トラマドール/アセトアミノフェンの効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も調べられる(おくすり110番:薬事典版) ... 概説 痛みをおさえるお薬です。慢性疼痛や抜歯後の痛みに用います。 作用 【働き】 2 ...
- ヤンセン ファーマ株式会社のトラムセット配合錠(中枢神経用薬)、一般名トラマドール塩酸塩(Tramadol hydrochloride) アセトアミノフェン(Acetaminophen) の効果と副作用、写真、保管方法等を掲載。
Related Pictures
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
トラムセット配合錠
組成
成分・含量(1錠中)
- トラマドール塩酸塩37.5mg
アセトアミノフェン325mg
添加物
- 粉末セルロース、アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、酸化チタン、マクロゴール400、黄色三二酸化鉄、ポリソルベート80、カルナウバロウ
禁忌
- アルコール、睡眠剤、鎮痛剤、オピオイド鎮痛剤又は向精神薬による急性中毒患者[中枢神経抑制及び呼吸抑制を悪化させるおそれがある。]
- モノアミン酸化酵素阻害剤を投与中の患者、又は投与中止後14日以内の患者(「相互作用」の項参照)
- 治療により十分な管理がされていないてんかん患者[症状が悪化するおそれがある。]
- 消化性潰瘍のある患者[症状が悪化するおそれがある。]
- 重篤な血液の異常のある患者[重篤な転帰をとるおそれがある。]
- 重篤な肝障害のある患者[重篤な転帰をとるおそれがある(「過量投与」の項参照)。]
- 重篤な腎障害のある患者[重篤な転帰をとるおそれがある。]
- 重篤な心機能不全のある患者[循環系のバランスが損なわれ、心不全が増悪するおそれがある。]
- アスピリン喘息(非ステロイド製剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者[アスピリン喘息の発症にプロスタグランジン合成阻害作用が関与していると考えられる。]
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
- 非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患における鎮痛
- 非がん性慢性疼痛
- 抜歯後の疼痛
- 慢性疼痛患者においては、その原因となる器質的病変、心理的・社会的要因、依存リスクを含めた包括的な診断を行い、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。
非がん性慢性疼痛
- 通常、成人には、1回1錠、1日4回経口投与する。投与間隔は4時間以上空けること。
なお、症状に応じて適宜増減するが、1回2錠、1日8錠を超えて投与しないこと。また、空腹時の投与は避けることが望ましい。
抜歯後の疼痛
- 通常、成人には、1回2錠を経口投与する。
なお、追加投与する場合には、投与間隔を4時間以上空け、1回2錠、1日8錠を超えて投与しないこと。また、空腹時の投与は避けることが望ましい。
投与の継続
- 慢性疼痛患者において、本剤投与開始後4週間を経過してもなお期待する効果が得られない場合は、他の適切な治療への変更を検討すること。また、定期的に症状及び効果を確認し、投与の継続の必要性について検討すること。
投与の中止
- 慢性疼痛患者において、本剤の投与を必要としなくなった場合は、退薬症候の発現を防ぐために徐々に減量すること。
慎重投与
- オピオイド鎮痛剤を投与中の患者[痙攣閾値の低下や呼吸抑制の増強を来すおそれがある(「相互作用」の項参照)。]
- てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者、あるいは痙攣発作の危険因子(頭部外傷、代謝異常、アルコール又は薬物の離脱症状、中枢性感染症等)を有する患者[痙攣発作を誘発することがあるので、本剤投与中は観察を十分に行うこと。]
- 呼吸抑制状態にある患者[呼吸抑制を増強するおそれがある。]
- 脳に器質的障害のある患者[呼吸抑制や頭蓋内圧の上昇を来すおそれがある。]
- 薬物の乱用又は薬物依存傾向のある患者[依存性を生じやすい。]
- オピオイド鎮痛剤に対し過敏症の既往歴のある患者
- ショック状態にある患者[循環不全や呼吸抑制を増強するおそれがある。]
- 肝障害又は腎障害、あるいはそれらの既往歴のある患者[肝機能又は腎機能が悪化するおそれがある。また、高い血中濃度が持続し、作用及び副作用が増強するおそれがある(「過量投与」及び「薬物動態」の項参照)。]
- 消化性潰瘍の既往歴のある患者[消化性潰瘍の再発を促進するおそれがある。]
- 血液の異常又はその既往歴のある患者[血液障害を起こすおそれがある。]
- 出血傾向のある患者[血小板機能異常が起こることがある。]
- 心機能異常のある患者[症状が悪化するおそれがある。]
- 気管支喘息のある患者[症状が悪化するおそれがある。]
- アルコール多量常飲者[肝障害があらわれやすくなる(「相互作用」の項参照)。]
- 絶食・低栄養状態・摂食障害等によるグルタチオン欠乏、脱水症状のある患者[肝障害があらわれやすくなる。]
- 高齢者[「高齢者への投与」の項参照]
重大な副作用
ショック、アナフィラキシー様症状
頻度不明
- ショック、アナフィラキシー様症状(呼吸困難、喘鳴、血管浮腫、蕁麻疹等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
痙攣
0.2%
- 痙攣があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
意識消失
0.2%
- 意識消失があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
依存性
頻度不明
- 長期使用時に、耐性、精神的依存及び身体的依存が生じることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止すること。本剤の中止又は減量時において、激越、不安、神経過敏、不眠症、運動過多、振戦、胃腸症状、パニック発作、幻覚、錯感覚、耳鳴等の退薬症候が生じることがあるので、適切な処置を行うこと。また、薬物乱用又は薬物依存傾向のある患者では、厳重な医師の管理下に、短期間に限って投与すること。
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、急性汎発性発疹性膿疱症
頻度不明
- 中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、急性汎発性発疹性膿疱症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
間質性肺炎
頻度不明
- 間質性肺炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、咳嗽、呼吸困難、発熱、肺音の異常等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施すること。異常が認められた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
間質性腎炎、急性腎不全
頻度不明
- 間質性腎炎、急性腎不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
喘息発作の誘発
頻度不明
劇症肝炎、肝機能障害、黄疸
頻度不明
- 劇症肝炎、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
顆粒球減少症
頻度不明
- 顆粒球減少症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
鎮痛作用
- マウスのアセチルコリン誘発ライジングにおいて、トラマドール塩酸塩とアセトアミノフェンの併用経口投与は、アイソボログラムによる解析の結果、相乗的にライジング反応を抑制することが示唆された15)。ただし、ヒトにおいては本剤の相乗的な鎮痛作用は確認されていない。
- アジュバント関節炎ラットにおいて、トラマドール塩酸塩(10mg/kg)とアセトアミノフェン(86.7mg/kg)の併用経口投与では、同用量の各薬物単独投与に比べて、温熱性及び機械刺激性痛覚過敏、並びに機械刺激性アロディニアを強く抑制した16)。
作用機序
トラマドール17)、18)
- ラット脳を用いたin vitro試験の結果から、トラマドールは中枢神経系で作用し、トラマドール及び活性代謝物M1のμ-オピオイド受容体への結合、並びにトラマドールによるノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み阻害作用が、鎮痛作用に関与すると考えられる。
アセトアミノフェン19)、20)
- ラットを用いたin vivo試験の結果から、アセトアミノフェンは主に中枢神経系で作用し、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体及びサブスタンスP受容体を介した一酸化窒素経路の阻害作用、脊髄のセロトニン受容体を介した間接的な作用などが、鎮痛作用に関与すると考えられる。
有効成分に関する理化学的知見
性状
溶解性
- メタノール又はエタノール(95)に溶けやすく、水にやや溶けにくく、ジエチルエーテルに極めて溶けにくい。水酸化ナトリウム試液に溶ける。
融点
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- tramadol、
- 化
- 塩酸トラマドール tramadol hydrochloride
- 商
- トラマール、トラムセット、クリスピン
- 関
- 鎮痛薬、中枢性鎮痛薬
[★]
トラマドール、アセトアミノフェン
用法・用量
- 非がん性慢性疼痛
- 成人には、1回1錠、1日4回経口投与。投与間隔は4時間以上空ける。症状に応じて1回2錠、1日8錠まで増量可能。空腹時の投与は避けることが望ましい。
[★]
- 英
- rhm
- 同
- 照射線量率定数 exposure rate constant
[★]
- 英
- set、set
- 関
- 固化、設定