ウロビリノゲン
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/06/19 04:57:18」(JST)
[Wiki ja表示]
ウロビリノーゲン |
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
14684-37-8 |
PubChem |
26818 |
MeSH |
Urobilinogen |
特性 |
化学式 |
C33H44N4O6 |
モル質量 |
592.726 |
特記なき場合、データは常温(25 ℃)・常圧(100 kPa)におけるものである。 |
ウロビリノーゲン(Urobilinogen)は、ヘムの分解によって生成するビリルビンの還元によって生成される無色の代謝物である。
概要[編集]
ウロビリノーゲンは、腸内微生物の活動によって腸内でビリルビンが還元されて生成される。ウロビリノーゲンの一部は、腸から体内へ吸収され、腎臓を経て尿から排泄される。この循環を腸肝ウロビリノーゲンサイクルと呼ぶ。ウロビリノーゲンは酸化されると、尿の黄色のもとであるウロビリンに変化する。
ウロビリノーゲンは、抗酸化作用を有し、DPPHラジカル除去作用は他の抗酸化物質(ビタミンE、ビリルビン及びβ-カロチン)よりも高い値を示した中村宜司、佐藤克行、秋葉光雄「胆汁色素代謝物ウロビリノーゲンの抗酸化作用」中村宜司 『日本農芸化学会誌』2001年3月5日、75巻、144ページ。ウロビリノーゲン - J-GLOBAL[1]。
腸内に残った大半のウロビリノーゲンは、その両端のピロール環が還元されてステルコビリノーゲンとなり、ステルコビリノーゲンが酸化されて、大便の特有の色のもとである茶色のステルコビリンになる[2][要高次出典]。
ヘムの分解によってビリルビンの量が増えると、腸内でウロビリノーゲンの量が増える。
例えば、急性肝炎のような肝臓病の場合、腸肝ウロビリノーゲンサイクルが抑制される。胆道閉塞ではウロビリノーゲンに変化する抱合型ビリルビンが通常よりも少ない量しか腸内に到達しなくなる。再吸収や排泄にまわされるウロビリノーゲンが限られることで、尿で認められるウロビリンの量は低くなる。体内の大量の水溶性の抱合型ビリルビンは、腎臓から排泄される回路に入る。胆道閉塞の際に尿の色が極端に濃くなり大便の色が薄くなるのはこのメカニズムによるものである。
低濃度尿ウロビリノーゲンは、重度の閉塞性黄疸か腸内細菌叢まで消滅させる広範わたる抗生物質による治療で引き起こされる(腸内でのビリルビンの経路の障害または腸内でのウロビリノーゲン合成の失敗)。低濃度尿ウロビリノーゲンは、先天的酵素による黄疸(高ビリルビン血症)や塩酸アンモニウムやアスコルビン酸などの尿を酸性にする薬剤によっても引き起こされる。
高濃度尿ウロビリノーゲンは、溶血性貧血(過剰な赤血球の破壊)、肝臓の酷使、ウロビリノーゲン産生、再吸収の増加、巨大血腫、肝臓機能の低下、肝炎、肝臓薬剤障害、肝硬変などによって引き起こされる。[3][4]
ウロビリノーゲンの尿検査の参考基準値
検査結果参考基準値 |
測定項目 |
下限値 |
上限値 |
単位 |
ウロビリノーゲン |
0.2[5] |
1.0 [5] |
Ehrlich units
or mg/dL |
脚注[編集]
- ^ NAKAMURATakashi; SATOKatsuyuki; AKIBAMitsuo; OHNISHIMasao (2006). “Urobilinogen, as a Bile Pigment Metabolite, Has an Antioxidant Function”. Journal of Oleo Science (日本油化学会) 55 (4): 191-197. doi:10.5650/jos.55.191. NAID 130000055572.
- ^ 青木好雄 竹村哲雄総説 生体内における分子認識
- ^ “Urobilinogen”. Family Health Information. 2008年3月30日閲覧。
- ^ “Urobilinogen in urine”. Home test kist. 2008年3月30日閲覧。
- ^ a b Normal Reference Range Table from The University of Texas Southwestern Medical Center at Dallas. Used in Interactive Case Study Companion to Pathologic basis of disease.
関連項目[編集]
- ウロビリン
- ビリルビン
- ビリベルジン
- ステルコビリノーゲン
- ステルコビリン
- 腸肝循環
テトラピロール |
|
ビリン
(線形) |
ビリルビン · ビリベルジン · ステルコビリノーゲン · ステルコビリン · ウロビリノーゲン · ウロビリン
|
|
フィトビリン
|
フィトクロム
|
|
フィコビリン
|
フィコエリトロビリン · フィコシアノビリン · フィコウロビリン · フィコビオロビリン
|
|
|
|
大員環化合物 |
コリノイド
|
メチルコバラミン · アデノシルコバラミン · シアノコバラミン
|
|
ポルフィリノーゲン
|
ウロポルフィリノーゲン (I, III) · コプロポルフィリノーゲン (I, III)
|
|
ポルフィリン
|
プロトポルフィリン (IX) · ヘム (a, b) · 亜鉛プロトポルフィリン · クロロフィルc1 · クロロフィルc2
|
|
クロリン
|
プロトクロロフィリド · クロロフィリド · クロロフィルa · クロロフィルb · バクテリオクロロフィルc
|
|
バクテリオクロリン
|
バクテリオクロロフィルa
|
|
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 尿検査 尿中ウロビリノーゲン,ウロビリン,ビリルビン (広範囲 血液・尿化学検査,免疫学的検査(第7版・1)その数値をどう読むか) -- (一般検査(尿・髄液・糞便検査を含む))
- 試験紙法による尿検査(2)尿白血球エステラーゼ・尿亜硝酸塩・尿ウロビリノゲン・尿ビリルビン・ケトン体・アスコルビン酸 (特集 尿を科学する) -- (尿検査各論)
Related Links
- ビリルビンとは、赤血球中のヘモグロビンが壊れてできる胆汁色素です。これが腸内 細菌によって分解されるとウロビリノーゲンになります。尿中のビリルビンや ウロビリノーゲンを調べると肝機能障害や赤血球が異常に壊れる溶血の有無がわかり ます。
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- urobilinogen
- 同
- ウロビリノーゲン
- 関
- エールリッヒアルデヒド試験
ビリルビン→ウロビリノゲン→ウロビリン
ビリルビンの運命
- HBC.290
- 1. ビリルビン(非極性の分子なので)は肝臓でグルクロン酸抱合される(結局、2分子のグルクロン酸と反応)。 酵素:glucuronosyltransferase, ERに局在, 基質はUDP-glucuronic acid. 別名: bilirubin-UGT。
- 2. 抱合されたビリルビンは能動輸送によって胆汁に排泄される;この部分が胆汁代謝のrate limiting。MRP-2(multidrug resistance like protein 2),別名:multispecific organic anion transporter(MOAT)が輸送に関わる。これらの輸送体はbile canalicular membrane上に存在する
- 3. 排泄された抱合型ビリルビンは腸内細菌が産生するβ-glucuronidaseにより非抱合化ビリルビンになる。
- 4. 非抱合型ビリルビンは腸内細菌によって還元され(8分子のプロトン付加)、ウロビリノゲンが産生される。
- 5. 回腸末端もしくは大腸でウロビリノゲンは吸収され、血行性に肝臓に輸送され、再び胆汁中に排泄される(腸肝循環)。
- 6-1. 血中のウロビリノゲンは腎臓で尿中に排泄される。腎臓で(おそらく一部の)ウロビリノゲンは酸化され(2分子のプロトン喪失)黄褐色のウロビリンに変換される
- 6-2. 終末回腸や大腸の細菌はウロビリノゲンを酸化してウロビリンとなり、尿中に排泄される。
きちゃないトリビア
- 排泄された糞便の色が経時的に茶褐色に変化していくのは、ウロビリノゲンが酸化されてウロビリンに変化するためである。(HBC.290)
ビリルビンの排泄の変化と疾患
胆汁酵素と黄疸
- HBC.292
|
血清ビリルビン
|
尿ウロビリノゲン
|
尿ビリルビン
|
糞ウロビリノゲン
|
正常
|
D-Bil: 0.1-0.4 mg/dL I-Bil: 0.2-0.7
|
0-4 mg/24h
|
ー
|
40-280mg/24h
|
溶血性貧血
|
↑I-Bil
|
↑
|
ー
|
↑
|
肝炎
|
↑I-Bil, D-Bil
|
閉塞ありなら↓
|
閉塞ありなら有り
|
↓
|
閉塞性黄疸
|
↑D-Bil
|
ー
|
有り
|
ー
|
[★]
- 英
- Ehrlich reaction
- 関
- ウロビリノーゲン、尿ジアゾ反応
[★]
- 英
- urobilin body, urobilin bodies
- 関
- ウロビリノーゲン