甲状腺機能低下症
概念
- 甲状腺ホルモンの合成、分泌が低下し、血液中の甲状腺ホルモンが不足している状態である。
病因
先天性甲状腺機能低下症
- 先天性甲状腺欠損症
- 異所性甲状腺
- クレチン病 (SP.925)
- 甲状腺ホルモン不適応症(レフェトフ症候群)
原発性甲状腺機能低下症
二次性甲状腺機能低下症
三次性甲状腺機能低下症
- 視床下部からの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)分泌↓
- 視床下部性甲状腺機能低下症=三次性甲状腺機能低下症 (SP.925)
病態
- 参考1
- 甲状腺ホルモンの低下
- → 代謝の低下
- → 多くの組織の組織間隙にグリコサミノグリカンが蓄積
症候
- 全身:全身倦怠感、易疲労感、体重増加、低体温、嗄声、
貧血(EPO↓)、滲出液貯留(心膜液貯留(約30%の症例で見られる)、胸水貯留 ←血管透過性の亢進による) - 消化器:絶肥大、便秘、食欲低下
- 循環器:粘液水腫心、心拍出量の低下?
- 骨格筋:こむらがえり、アキレス腱反射の子癇層の遅延(Lamberts徴候)、筋力低下(骨格筋ミオパチー)、筋肥大(Hoffmann症候群)、筋痛
- 皮膚 :四肢・顔面の粘液水腫、発汗減少、皮膚乾燥、頭皮脱毛、眉毛外1/3の脱毛、皮膚の黄染
- 神経 :末梢神経と中枢神経のいずれも影響が生じる。 (参考1)
- 精神 :記銘力低下、計算力低下、言語緩慢、活動性低下
- 生殖系:月経不順(月経過多、無月経)。不妊、流産。 ← 初期に月経過多、後期に無月経を起こす(出典不明)。
- その他:乳汁分泌(三次性以外。TRH↑)、難聴、貧血。 ← 甲状腺ホルモンがエリスロポエチンの分泌を亢進させるので
生殖系の異常
- 月経の異常の割合(参考1)
| 月経前の婦人集団 | 集団サイズ(人) | 患者全体に占める割合(%) | ||
| 月経周期正常 | 無月経・希発月経 | 過多月経 | ||
| 甲状腺機能低下症 | 171 | 77 | 16 | 7 |
| 健常者 | 214 | 92 | 7 | 1 |
検査
胸部単純X線写真
- 粘液水腫心による心陰影拡大がありうる。
心電図
- 低電圧、徐脈、陰性T波
血液検査
- AST,LDH,CKなど筋酵素が増加
- TSH:高値
- FT3、FT4:低下
- AST:高値
- 筋逸脱酵素の上昇LDH、CK、アルドラーゼ) ← 腎クリアランス低下(出典不明)。筋組織の代謝障害に起因する筋細胞の脆弱化と崩壊。甲状腺機能低下にともなうミオパチー?→ 参考2
- コレステロール:高値 ← 胆汁へのコレステロール排泄阻害
- TG:高値 ← 肝臓での物質の異化が低下する、と思う。
- 間接ビリルビン:高値 ← 肝臓でのグルクロン酸抱合する効率の低下による、と思う。
- 抗甲状腺抗体(抗サイログロブリン抗体、抗ミクロゾーム抗体):陽性
- 低ナトリウム血症:以下の(1)(2)によると考えられている(参考2)
- (1)心拍出量の低下 → 頚動脈圧受容器 → ADH分泌 (時に尿Na濃度が低下せず、SIADHの基準を満たす例がある)
- (2)GFR低下((1)の影響?) → ヘンレループの上行脚(diluting segment)に至る尿量減少 → 排泄できる自由水減少
診断基準
原発性甲状腺機能低下症
- a)かつb)を満たすもの
- a)臨床所見
- 無気力、易疲労感、眼瞼浮腫、寒がり、体重増加、動作緩慢、嗜眠、記憶力低下、便秘、嗄声等いずれかの症状
- b)検査所見
- 遊離T4低値およびTSH高値
治療
- 治療のトリガー:TSH>10.0となる症例。
参考
- 1. [charged] 甲状腺機能低下症の臨床症状 - uptodate [1]
- 2. [charged] 甲状腺機能低下症における低ナトリウム血症 - uptodate [2]
- 3. [charged] 甲状腺機能低下症の治療 - uptodate [3]
- 4. [charged] 甲状腺機能低下性ミオパチー - uptodate [4]
- 5. 甲状腺機能低下症 - 甲状腺疾患診断ガイドライン
- <click2in>http://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html#teika</click2in>