- 英
- fentanyl
- 化
- クエン酸フェンタニル fentanyl citrate
- 商
- アルチバ、タラモナール、デュロテップMTパッチ、フェントステープ、ワンデュロパッチ、Duragesic、Sublimaze
- 関
- 合成麻薬
構造
作用機序
薬理作用
- モルヒネの80倍の作用を持ち、持続時間が短いことが特徴
動態
適応
- 術後痛(硬膜外)、神経遮断麻酔、パッチ剤(癌疼痛にモルヒネ代用)
注意
禁忌
副作用
相互作用
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/02/04 14:07:09」(JST)
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フェンタニル
|
臨床データ |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
|
識別 |
ATCコード |
N01AH01 (WHO) N02AB03 (WHO) |
KEGG |
D00320 |
化学的データ |
化学式 |
C22H28N2O |
分子量 |
336.48 g·mol−1 |
フェンタニル (Fentanyl) とは、主に麻酔や鎮痛、疼痛緩和の目的で利用される合成オピオイドである。1996年のWHO方式がん疼痛治療法の3段階中の3段階目で用いられる強オピオイドである。
麻薬及び向精神薬取締法における麻薬である。狭義の麻薬である。
目次
- 1 薬理
- 2 剤型・用途
- 3 乱用
- 4 軍事用途
- 5 事故
- 6 出典
- 7 関連項目
薬理
フェンタニルの効果はモルヒネの100–200倍と言われ、モルヒネをはじめとするその他のオピオイド性鎮痛薬と同様、循環器系にあまり影響はないが、呼吸抑制は強く、臨床使用量でも多くの場合、呼吸補助を必要とする。大量投与でない限り、意識レベルには影響しない。使用後に吐き気を訴えることがある。
排泄半減期は3.6時間と長いが急速に脂肪組織などへ移行するため、血漿中からは投与後60分以内に98%が消失する。
剤型・用途
フェンタニルの注射剤は麻酔、鎮痛に使われる。鎮痛効果の強さと血漿半減期の短さから、刻一刻と変化する侵襲に対応しやすく、手術中の鎮痛薬に適している。特に全身麻酔の場合人工呼吸器を使用するため、副作用の呼吸抑制も無視できる。
パッチ剤は癌性疼痛の緩和に使われる。特に経口オピオイドが使えない患者に有用である。パッチ剤は商品名デュロテップMTパッチ、フェントステープがある。
乱用
乱用薬物としても流通していて、通称はチャイナホワイト。その効果から「合成ヘロイン」「ヘロインのデザイナードラッグ」とも評される。同量でヘロインより50倍の効果があることから、流通しているヘロインに混ぜ物として混入しているとも言われる。
軍事用途
2002年10月に発生したモスクワ劇場占拠事件で鎮圧のためロシア政府特殊部隊が使用したKOLOKOL-1は、フェンタニルの誘導体を用いた化学兵器である。[1]。
2011年よりアメリカ海兵隊は、モルヒネと併用してフェンタニルのトローチを鎮痛剤として使用し始めた[2]。
事故
2016年4月21日の早朝に、アメリカのミュージシャンであるプリンスが、アメリカのミネソタ州にあるペイズリー・パーク・スタジオで亡くなった。このことについて、同年6月2日にミネソタ州の検視当局により死因はフェンタニルの過剰投与による中毒死である報告書が公表された[3]。
出典
- ^ Russia names Moscow siege gas
- ^ 米海兵隊、戦場での痛み止めに鎮痛トローチを導入(AFP.BB.NEWS.2011年11月3日)2011年11月4日閲覧
- ^ “プリンスさん、鎮痛剤の過剰投与で中毒死 検視官が公表”. 朝日新聞. (2016年6月3日). http://www.asahi.com/articles/ASJ63216BJ63UHBI007.html 2016年6月3日閲覧。
関連項目
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- P2-24-12 新規抗凝固薬とフェンタニル持続静脈内麻酔を用いた婦人科手術後における静脈血栓塞栓症の予防に関する検討(Group125 婦人科悪性腫瘍・手術合併症1,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 新納 恵美子,川口 龍二,森岡 佐知子,棚瀬 康仁,春田 祥治,吉田 昭三,古川 直人,山田 嘉彦,大井 豪一,小林 浩
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 872, 2011-02-01
- NAID 110008510037
- レミフェンタニル併用全身麻酔後に激しいせん妄を示した3症例
- 伊藤 浩子,松原 香名,井上 鉄夫,坂本 英明
- 日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia 31(1), 176-180, 2011-01-14
- NAID 10027753279
- 低用量ロクロニウムによる気管挿管状態の検討 : レミフェンタニル, リドカイン, プロポフォールの影響
- 井坂 友美,鈴木 孝浩,石川 貴洋子,佐々木 順司,佐伯 茂,小川 節郎
- 日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia 31(1), 157-161, 2011-01-14
- NAID 10027753232
Related Links
- クエン酸フェンタニルの注射液(商品名:フェンタニル(旧商品名:フェンタネスト))は麻酔 、鎮痛に使われ、フェンタニルを有効成分とするパッチ薬(商品名:デュロテップMTパッチ )は癌性疼痛に使われる。特に経口モルヒネが使えない患者に有用である。
- デュロテップ,ワンデュロとは?フェンタニルの効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も 調べられる(おくすり110番:病気別版)
Related Pictures
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
フェンタニル注射液0.1mg「ヤンセン」
組成
成分・含量
- 1アンプル(2mL)中フェンタニルクエン酸塩(日局)0.157mg(フェンタニルとして0.1mg)
添加物
禁忌
○印は各投与方法での該当する項目
- 注射部位又はその周辺に炎症のある患者[硬膜外投与及びくも膜下投与により化膿性髄膜炎症状を起こすことがある。]
投与方法
- 硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 敗血症の患者[硬膜外投与及びくも膜下投与により敗血症性の髄膜炎を生じるおそれがある。]
投与方法
- 硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 中枢神経系疾患(髄膜炎、灰白脊髄炎、脊髄癆等)の患者[くも膜下投与により病状が悪化するおそれがある。]
投与方法
- くも膜下投与:○
- 脊髄・脊椎に結核、脊椎炎及び転移性腫瘍等の活動性疾患のある患者[くも膜下投与により病状が悪化するおそれがある。]
投与方法
- くも膜下投与:○
- 筋弛緩剤の使用が禁忌の患者[「副作用」の項参照]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 頭部外傷、脳腫瘍等による昏睡状態のような呼吸抑制を起こしやすい患者[フェンタニル投与により重篤な呼吸抑制が起こることがある。]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 痙攣発作の既往歴のある患者[麻酔導入中に痙攣が起こることがある。]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 喘息患者[気管支収縮が起こることがある。]
投与方法
効能または効果
- 全身麻酔、全身麻酔における鎮痛
- 局所麻酔における鎮痛の補助
- 激しい疼痛(術後疼痛、癌性疼痛など)に対する鎮痛
全身麻酔、全身麻酔における鎮痛
- 通常、成人には、下記用量を用いる。なお、患者の年齢、全身状態に応じて適宜増減する。
〔バランス麻酔に用いる場合〕
麻酔導入時
- フェンタニル注射液として0.03〜0.16mL/kg(フェンタニルとして1.5〜8μg/kg)を緩徐に静注するか、又はブドウ糖液などに希釈して点滴静注する。
麻酔維持
- ブドウ糖液などに希釈して、下記(1)又は(2)により投与する。
間欠投与
- フェンタニル注射液として0.5〜1mL(フェンタニルとして25〜50μg)ずつ静注する。
持続投与
- フェンタニル注射液として0.01〜0.1mL/kg/h(フェンタニルとして0.5〜5μg/kg/h)の速さで点滴静注する。
〔大量フェンタニル麻酔に用いる場合〕
麻酔導入時
- フェンタニル注射液として0.4〜3mL/kg(フェンタニルとして20〜150μg/kg)を緩徐に静注するか、又はブドウ糖液などに希釈して点滴静注する。
麻酔維持
- 必要に応じて、ブドウ糖液などに希釈して、フェンタニル注射液として0.4〜0.8mL/kg/h(フェンタニルとして20〜40μg/kg/h)の速さで点滴静注する。
- 通常、小児には、下記用量を用いる。なお、患者の年齢、全身状態に応じて適宜増減する。
〔バランス麻酔又は大量フェンタニル麻酔に用いる場合〕
麻酔導入時
- フェンタニル注射液として0.02〜0.1mL/kg(フェンタニルとして1〜5μg/kg)を緩徐に静注するか、又はブドウ糖液などに希釈して点滴静注する。大量フェンタニル麻酔に用いる場合は、通常、フェンタニル注射液として2mL/kg(フェンタニルとして100μg/kg)まで投与できる。
麻酔維持
- フェンタニル注射液として0.02〜0.1mL/kg(フェンタニルとして1〜5μg/kg)ずつ間欠的に静注するか、又はブドウ糖液などに希釈して点滴静注する。
局所麻酔における鎮痛の補助
- 通常、成人には、フェンタニル注射液として0.02〜0.06mL/kg(フェンタニルとして1〜3μg/kg)を静注する。なお、患者の年齢、全身状態、疼痛の程度に応じて適宜増減する。
激しい疼痛(術後疼痛、癌性疼痛など)に対する鎮痛
- 通常、成人には、下記用量を用いる。なお、患者の年齢、症状に応じて適宜増減する。
〔静脈内投与の場合〕
- 術後疼痛に用いる場合は、フェンタニル注射液として0.02〜0.04mL/kg(フェンタニルとして1〜2μg/kg)を緩徐に静注後、フェンタニル注射液として0.02〜0.04mL/kg/h(フェンタニルとして1〜2μg/kg/h)の速さで点滴静注する。
癌性疼痛に対して点滴静注する場合は、フェンタニル注射液として1日2〜6mL(フェンタニルとして0.1〜0.3mg)から開始し、患者の症状に応じて適宜増量する。
〔硬膜外投与の場合〕
単回投与法
- フェンタニル注射液として1回0.5〜2mL(フェンタニルとして1回25〜100μg)を硬膜外腔に注入する。
持続注入法
- フェンタニル注射液として0.5〜2mL/h(フェンタニルとして25〜100μg/h)の速さで硬膜外腔に持続注入する。
〔くも膜下投与の場合〕
単回投与法
- フェンタニル注射液として1回0.1〜0.5mL(フェンタニルとして1回5〜25μg)をくも膜下腔に注入する。
- バランス麻酔においては、適宜、全身麻酔剤や筋弛緩剤等を併用すること。
- 大量フェンタニル麻酔の導入時(開心術においては人工心肺開始時まで)には、適切な麻酔深度が得られるよう患者の全身状態を観察しながら補助呼吸下で緩徐に投与すること。また、必要に応じて、局所麻酔剤、静脈麻酔剤、吸入麻酔剤、筋弛緩剤等を併用すること。
- 硬膜外投与及びくも膜下投与時には局所麻酔剤等を併用すること。
- 患者の状態(呼吸抑制等)を観察しながら慎重に投与すること。
特に癌性疼痛に対して追加投与及び他のオピオイド製剤から本剤へ変更する場合には、前投与薬剤の投与量、効力比及び鎮痛効果の持続時間を考慮して、副作用の発現に注意しながら、適宜用量調節を行うこと(ガイドライン注)参照)。
- 癌性疼痛に対して初めてオピオイド製剤として本剤を静注する場合には、個人差も踏まえ、通常よりも低用量(ガイドライン注)参照)から開始することを考慮し、鎮痛効果及び副作用の発現状況を観察しながら用量調節を行うこと。
- 注)日本麻酔科学会−麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン1)(抜粋)
使用法
フェンタニルクエン酸塩
3〉激しい疼痛(術後疼痛、癌性疼痛など)に対する鎮痛
a)静注
- 術後痛に対しては、初回投与量として1〜2mcg/kgを静注し、引き続き1〜2mcg/kg/時で持続静注する。Patient controlled analgesia(PCA)による鎮痛を行う場合は、4〜60mcg/時で持続投与を行い、適宜7〜50mcgの単回投与を行う。
癌性疼痛に対して、経口モルヒネ製剤から切り替える場合は、一日量の1/300量から開始する。持続静注の維持量は、0.1〜3.9mg/日と個人差が大きいので、0.1〜0.3mg/日から開始し、投与量を滴定する必要がある。
慎重投与
- ○印は各投与方法での該当する項目
- 中枢神経系疾患(髄膜炎、灰白脊髄炎、脊髄癆等)の患者[硬膜外投与により病状が悪化するおそれがある。]
投与方法
- 硬膜外投与:○
くも膜下投与:(禁忌)注)
- 脊髄・脊椎に結核、脊椎炎及び転移性腫瘍等の活動性疾患のある患者[硬膜外投与により病状が悪化するおそれがある。]
投与方法
- 硬膜外投与:○
くも膜下投与:(禁忌)注)
- 血液凝固障害のある患者又は抗凝血剤を投与中の患者[出血しやすく、血腫形成や脊髄への障害を起こすことがある。]
投与方法
- 硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 脊柱に著明な変形のある患者[硬膜外投与及びくも膜下投与により脊髄や神経根の損傷のおそれがある。]
投与方法
- 硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 重症の高血圧症、心弁膜症等の心血管系に著しい障害のある患者[血圧低下や病状の悪化が起こりやすい。]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 慢性肺疾患等の呼吸機能障害のある患者[呼吸抑制を増強するおそれがある。]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- MAO阻害剤の投与を受けている患者[「相互作用」の項参照]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 肝・腎機能障害のある患者[血中濃度が高くなるため、副作用発現の危険性が増加する。]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 不整脈のある患者[徐脈を起こすことがある。]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- poor risk状態の患者(適宜減量すること。)[作用が強くあらわれることがある。]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 薬物依存の既往歴のある患者[依存性を生じやすい。]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 高齢者[「高齢者への投与」の項参照]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 低出生体重児・新生児・乳児[「小児等への投与」の項参照]
投与方法
- 静脈内投与:○
硬膜外投与:○
くも膜下投与:○
- 注)「禁忌」の項参照
重大な副作用
依存性
頻度不明
- モルヒネ様の薬物依存を起こすことがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること。
呼吸抑制、無呼吸
頻度不明
- 呼吸抑制、無呼吸があらわれることがある。
術中の場合は補助呼吸、調節呼吸を、また術後の場合は麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)の投与又は補助呼吸等の処置を行うこと。
換気困難
頻度不明
- 筋強直による換気困難がみられることがある。
このような場合には筋弛緩剤の投与及び人工呼吸等の処置を行うこと。
血圧降下
頻度不明
- 血圧降下がみられることがある。
このような場合には輸液を行い、更に必要な場合は昇圧剤(アドレナリンを除く)又は麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)の投与を行うこと。なお、本剤を腰椎麻酔、硬膜外麻酔に併用すると、更に血圧降下を招くおそれがあるので、このような場合には慎重に投与すること。
ショック、アナフィラキシー様症状
頻度不明
- ショック、アナフィラキシー様症状(血圧低下、蕁麻疹等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
不整脈、期外収縮、心停止
頻度不明
興奮、筋強直
頻度不明
チアノーゼ
頻度不明
薬効薬理
鎮痛作用2)
- 本剤の鎮痛作用は、マウスによる動物実験(Haffner変法)でモルヒネと比較すると約200倍に相当する効力を示す。また、フェンタニルクエン酸塩の治療係数(LD50/ED50)注)は775であり、モルヒネの31.3に比べ大である。
- 注)毒性(マウスLD50値)/有効量(マウスHaffner変法によるED50値)により算出
効果の発現と持続3)
- 作用は、静注では投与後ただちにあらわれ、通常用量(成人0.5〜1.0mg)では、効果は30〜45分(surgical analgesiaの状態)持続する。
Neuroleptanalgesia注)、3)
- 本剤は上記のような作用から、麻酔用鎮痛剤として、手術侵襲時における鎮痛剤としてのみでなく、神経遮断剤ドロペリドールとの併用により、いわゆるNeuroleptanalgesiaの状態を得ることができる。
- 注)Neuroleptanalgesiaの特長は、意識の消失なしに鎮痛効果と鎮静効果の得られることで、無痛状態を得ると同時に、安静、周囲の環境に対する無関心、自律神経系の安定、さらに高度の非被刺激性が得られ、精神科領域でいうMineralizationの状態−無生物のように情動表出のなくなった状態−となり、この状態では、患者は手術に伴う苦痛もなく、患者と術者との間に意志の疎通のある状態で手術を行うことができる。
生物学的同等性試験4)
- ラットにフェンタニル注射液「ヤンセン」又は標準製剤0.1mgを硬膜外投与し、Tail flick法により侵害刺激に対する反応潜時を測定する生物学的同等性試験を実施した。その結果、両剤の反応潜時の延長効果に差は認められず、生物学的同等性が確認された。
ラットにおけるフェンタニル注射液「ヤンセン」0.1mg又は標準製剤0.1mg硬膜外投与後の反応潜時推移(平均値±S.D.)
有効成分に関する理化学的知見
性状
溶解性
- メタノール又は酢酸(100)に溶けやすく、水又はエタノール(95)にやや溶けにくく、ジエチルエーテルに極めて溶けにくい。
★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、30、31の問いに答えよ。
- 48歳の男性。腹部膨満感、咳、腰痛および腹痛を主訴に来院した。
- 現病歴:2年前に胃癌で胃全摘術を受け、その後外来で約6か月間の抗癌化学療法を受け外来通院で経過観察となった。1年前に腫瘍マーカーの上昇と肝転移とを指摘され、再度抗癌化学療法を受けたが、食欲不振が高度となり、治療効果が認められず中止となった。4か月前から上腹部の膨満、咳および腰痛を自覚していた。画像診断で軽度の腹水貯留と肝、肺および腰椎への多発転移が認められた。利尿薬、鎮咳薬および非ステロイド性抗炎症薬の処方にて落ち着いていたが、3日前から新たに腹部の鈍痛が出現したため受診した。経口摂取は可能である。
- 既往歴:特記すべきことはない。
- 生活歴:喫煙歴はない。飲酒は日本酒1合/日を20年間。
- 家族歴:父親が肺癌のため70歳で死亡。
- 現症:意識は清明。身長165cm、体重56kg。2年間で10kgの体重減少。体温36.2℃。脈拍84/分、整。血圧134/80mmHg。呼吸数18/分。SpO2 96%。眼球結膜に黄染を認めない。心音に異常を認めない。呼吸音は左背部で減弱している。腹部はやや膨隆しているが軟で、心窩部に圧痛がある。心窩部に肝を触知し、両下肢に軽度の浮腫を認める。
- 検査所見:血液所見:赤血球364万、Hb 10.3g/dl、Ht 32%、白血球6,400、血小板14万。血液生化学所見:血糖78mg/dl、総蛋白5.9g/dl、アルブミン2.4g/dl、尿素窒素10mg/dl、クレアチニン0.4mg/dl、尿酸4.9mg/dl、総コレステロール187mg/dl、トリグリセリド143mg/dl、総ビリルビン0.8mg/dl、AST 32IU/l、ALT 18IU/l、LD 387IU/l(基準176~353)、ALP 644IU/l(基準115~359)、γ-GTP 32IU/l(基準8~50)、アミラーゼ124IU/l(基準37~160)、Na 134mEq/l、K 4.4mEq/l、Cl 97mEq/l、Ca 6.5mg/dl。CEA 28.7ng/ml(基準5以下)、CA19-9 336U/ml(基準37以下)。CRP 3.4mg/dl。動脈血ガス分析(room air):pH 7.32、PaCO2 38Torr、PaO2 94Torr、HCO3- 19mEq/l。
- まず行うべき治療はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107C029]←[国試_107]→[107C031]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [107E053]←[国試_107]→[107E055]
[★]
- 抜管後の術後呼吸抑制の原因薬物と拮抗薬の組合せで適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [108G017]←[国試_108]→[108G019]
[★]
- 66歳の男性。5年前から前立腺癌で治療中である。半年前に腰椎と右肋骨に転移が確認され、最近、腰痛を自覚するようになった。疼痛以外の自覚症状はない。
- 疼痛緩和のために、まず投与すべきなのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113E038]←[国試_113]→[113E040]
[★]
- 薬物とその拮抗薬との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [111I025]←[国試_111]→[111I027]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [103E007]←[国試_103]→[103E009]
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- 英
- inhalation alanesthetic agent, inhaled anesthetic
- 同
- ガス吸入麻酔薬、ガス麻酔薬
- 関
- 薬理学、全身麻酔薬
吸入麻酔薬の身体影響
- YN.M7 SAN.40
- 中枢神経系:意識消失、酸素消費量減少、脳血管拡張、頭蓋内圧上昇、(亜酸化窒素のみ)鎮痛作用
- 呼吸器系:用量依存的にコキュを抑制、一回換気量減少、呼吸回数増加、気管拡張作用、線毛運動抑制、気道分泌抑制、低酸素性肺血管収縮抑制
- 循環器系:用量依存的に血圧低下(血管拡張or心筋抑制)、内臓血流減少、脳・筋肉・皮膚血流増加
- 筋肉:(揮発性吸入麻酔薬のみ)
吸入麻酔薬
- SAN.39
化合物名
|
分子式
|
小さいほど強力
|
小さいほど効きが早い
|
特徴
|
麻酔に必要な条件
|
|
|
|
MAC
|
血液ガス分配係数
|
意識消失
|
鎮痛
|
筋弛緩
|
反射抑制
|
笑気
|
N2O
|
101
|
0.47
|
|
△ 低MAC
|
○
|
×
|
?
|
イソフルラン
|
F3C-CH(Cl)-O-CHF
|
1.15
|
1.48
|
|
○
|
×
|
○
|
?
|
セボフルラン
|
FH2C-O-CH(CF3)2
|
1.71
|
0.63
|
|
○
|
×
|
○
|
?
|
ハロタン
|
F3C-CHClBr
|
0.76
|
2.3
|
- 肝障害(3万例に1例)
- アドレナリン感受性↑(不整脈リスク)
- 生体内分解20%
|
○
|
×
|
△
|
?
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
麻酔薬と脳に及ぼす影響
- 参考4
参考
- http://www.geocities.co.jp/Colosseum-Acropolis/6786/Inhaled.html
- http://www.med.akita-u.ac.jp/~doubutu/ouu/Inhalation.html
- http://www.shinshu-masui.jp/information/2011/06/22/%E5%90%B8%E5%85%A5%E9%BA%BB%E9%85%94%E8%96%AC%E3%81%AE%E8%96%AC%E7%90%86.pdf
- http://www.shinshu-masui.jp/information/2010/05/26/%E5%90%B8%E5%85%A5%E9%BA%BB%E9%85%94%E8%96%AC.pdf
[★]
- 英
- opioid receptor
- 同
- モルヒネ受容体 morphine receptor
- 関
- オピオイドペプチド、オピオイド
- オピオイド受容体はμ受容体、κ受容体、δ受容体がある。
- モルヒネ、フェンタニルはμ受容体刺激薬
- 呼吸抑制はμ2受容体を介したものである。
オピオイドとオピオイド受容体 (GOO.552)
オピオイド受容体の生理作用(周術期管理学 091211 III)
受容体
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μ
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δ
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κ
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μ1
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μ2
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作用
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鎮痛
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鎮痛
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鎮痛
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鎮痛
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悪心・嘔吐
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鎮静
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鎮静
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身体依存
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多幸感
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呼吸抑制
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身体違和感
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精神依存
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掻痒感
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身体依存
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気分不快
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呼吸抑制
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縮瞳
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精神依存
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興奮
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尿閉
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消化器運動抑制
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幻覚
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鎮咳
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鎮咳
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呼吸抑制
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縮瞳
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利尿
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オピオイド受容体と非麻薬性鎮痛薬について
身体依存性
- 痛みがある人には精神的依存はきたさない(痛みの有無によらず退薬現象はある)
[★]
- 英
- cerebral blood flow
- 関
- 脳血流量
麻酔薬、鎮痛薬と脳血流
- 吸入麻酔薬では脳血管拡張作用により脳血流が増加
- 静脈麻酔薬の興奮性麻酔薬では脳神経活動亢進、酸素消費量増大など代謝の亢進のために脳血管拡張を来たし、脳血流増加 (SAN.45)
- 静脈麻酔薬の抑制性麻酔薬では脳神経活動低下、酸素消費量低下など代謝の低下のために脳血管収縮を来たし、脳血流低下 (SAN.45)
SAN.291改変
[★]
- 英
- WHO method for relief of cancer pain
- 同
- WHO式癌疼痛治療法 WHO Cancer Pain Relief Programme、WHO3段階除痛ラダー WHO three-stepanalgesic ladder、3段階ラダー
WHOの基本5原則
- 1. WHOのラダーに沿って
- 2. できるかぎり内服で、
- 3. 少量で始めて疼痛が消える量へと漸増し、
- 4. 定時投与とし、 ← 頓用ではない
- 5. 必要に応じて鎮痛補助薬の併用も考慮
鎮痛補助薬 SAN.410
参考
- http://www.geocities.jp/study_nasubi/l/l13.html
国試
- 106C030:吐き気はオピオイド服用開始に出現しやすいので、開始時から制吐薬を開始する。副作用に対してはオピオイドの減量ではなく、制吐薬・緩下薬などを利用し、オピオイドの減量は避ける、だったっけ?
メモ
[★]
- 英
- serotonin syndrome
- 関
- セロトニン、セロトニン受容体
概念
- 抗うつ薬(特に SSRI と呼ばれる選択的セロトニン再取り込み阻害薬。≒セロトニン受容体作動薬)などのセロトニン系の薬物を服用中に出現する副作用
- 精神症状(不安、混乱する、いらいらする、興奮する、動き回るなど)
- 錐体外路症状(手足が勝手に動く、震える、体が固くなるなど)
- 自律神経症状(汗をかく、発熱、下痢、脈が速くなるなど)
- 服薬開始数時間以内に症状が表れることが多い
- 服薬を中止すれば24時間以内に症状は消失
- 「不安」、「混乱する」、「いらいらする」に加えて以下の症状がみられる場合に医療機関受診を推奨している(参考1)
- 「興奮する」、「動き回る」、「手足が勝手に動く」、「眼が勝手に動く」、「震える」、「体が固くなる」、「汗をかく」、「発熱」、「下痢」、「脈が速くなる」
原因となりうる薬剤
トリプトファン、アンフェタミン、コカイン、MDMA、LSD、レボドパ、カルビドパ、トラマドール、ペンタゾシン、メペリジン、SSRI、SNRI、TCA、MAO阻害薬、リネゾリド、5-HT3阻害薬(オンダンセトロン、グラニセトロン)、メトクロプラミド(プリンペラン)、バルプロ酸、カルバマゼピン、シブトラミン(やせ薬)、シクロベンザプリン(中枢性筋弛緩)デキストロメルファン、(メジコン)、ブスピロン(5-HT1A阻害薬、抗不安薬)、トリプタン製剤、エルゴタミン、フェンタニル、リチウム
診断基準
- QJM. 2003 Sep;96(9):635-42
Hunter criteria
感度84%, 特異度97%
参考
- http://www.pmda.go.jp/files/000144659.pdf
[★]
- 英
- sufentanil
- 化
- クエン酸スフェンタニル sufentanil citrate
- 商
- Sufenta
[★]
- 英
- sufentanil citrate
- 関
- スフェンタニル
[★]
- 英
- high-dose fentanyl anesthesia