ベクロニウム
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筋弛緩剤(きんしかんざい)、筋弛緩薬(きんしかんやく)は、神経・細胞膜などに作用して、筋肉の動きを弱める医薬品である。 臨床においては「きんちかん」と読む人もいる。
筋弛緩剤のひとつ、パンクロニウムはアメリカでは薬物による死刑執行時に使用する薬物としても知られる。
目次
- 1 概要
- 2 主な筋弛緩薬
- 3 鎮痙薬
- 4 適応
- 5 関連項目
- 6 出典
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概要
日本では筋弛緩剤点滴事件の影響で広く一般に知られるところとなったため、毒物のイメージが先行している。実際、医師によって正しく用いられない場合、呼吸不全などの重篤な症状を来たし、死に至る場合があり、多くの筋弛緩薬が毒物として取り扱われている。
天然の筋弛緩をもたらす薬物として、フグ毒であるテトロドトキシンや、ボツリヌス菌の毒素ボツリヌストキシンが知られており、これらの中毒を放置すると呼吸不全によって死亡することがある。d-ツボクラリンは「クラーレ」とも呼ばれる非脱分極性筋弛緩薬であるが、狩猟に使う毒矢に塗る成分として使われた。
主な筋弛緩薬
- スクシニルコリン (SCC, succinyl choline chloride) あるいはスキサメトニウム
- 即効性かつ数分で回復する脱分極性筋弛緩薬であり、精神科の電気痙攣療法の際の筋弛緩などにも適応となる。
- 臭化ベクロニウム、臭化パンクロニウム
- 神経筋接合部 (NMJ) におけるアセチルコリン受容体を遮断する、非脱分極性筋弛緩薬。
- A型ボツリヌス毒素
- 神経筋接合部において、神経末端からのアセチルコリン放出を遮断する。眼瞼痙攣やジストニアなどに適応がある。
- ダントロレンナトリウム
- 横行小管から筋小胞体への興奮の伝達過程を遮断し、筋小胞体からのカルシウムイオンの放出を抑制する。悪性高熱症、悪性症候群の治療に使われる。
- バクロフェン
- 中枢性筋弛緩薬。GABAに作用する。GABA B 受容体に選択性が高い。
- 芍薬甘草湯
- 漢方薬
鎮痙薬
臨床使用
この節は執筆中です。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。
チザニジンのような筋弛緩薬は、緊張性頭痛の治療に処方されている。[1]
ジアゼパムとカリソプロドールは、高齢者、妊娠中の女性、うつ病に苦しむ人々、薬物やアルコール中毒歴がある人には推奨されない。[2]
作用
中枢神経の抑制を増強するために、多くの鎮痙薬は鎮静・眠気の副作用がある。それは長期使用で依存を起こす。これらのいくつかの薬物は乱用リスクがあるため、それらの処方は厳密に規制されている。[3][4][5]
ジアゼパムなどのベンゾジアゼピンは、中枢神経のGABA受容体に作用する。それはどのような筋肉痙攣症状の患者にも使用でき、緊張を軽減する量で殆どの人に鎮静効果がある。[6]
この節は執筆中です。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。
適応
- 全身麻酔導入時や手術時の筋弛緩
- 気管内挿管時の使用
- 筋緊張が術野確保の障害となる場合の筋弛緩
- 手術侵襲による反射的筋収縮の抑制
- 骨折の非観血的整復の際の筋弛緩
- ジストニアなどの不随意運動の抑制
- 痙攣の抑制
- 頸肩腕症候群、腰痛症
- 痙性麻痺
関連項目
- 筋弛緩剤点滴事件
- 大阪愛犬家連続殺人事件
- ニコチン受容体拮抗薬
- ガラミン
- デカメトニウム
- 薬殺刑
- アメリカ合衆国における死刑
出典
- ^ “Tension Headache”. 2010年7月9日閲覧。
- ^ “Muscle Relaxants”. 2010年7月9日閲覧。
- ^ Rang, H.P. & Dale, M. M "Drugs Used in Treating Motor Disorders" in, "Pharmacology 2nd Edition" Published by Churchill Livingston London, 1991, p.684-705.
- ^ Standaert, D.G. & Young, A. B "Treatment Of Central Nervous System Degerative Disorders" in, "Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics 10th Edition" by Hardman, J.G. & Limbird, L.E. Published by McGraw Hill, 2001, p.550-568.
- ^ Charney, D.S., Mihic, J. & Harris, R.A. "Hypnotics and Sedatives" in, "Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics 10th Edition" by Hardman, J.G. & Limbird, L.E. Published by McGraw Hill, 2001, p.399-427.
- ^ 引用エラー: 無効な
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薬理学:医薬品の分類 |
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消化器/代謝(A) |
胃酸中和剤(制酸薬、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬) • 制吐薬 • 瀉下薬 • 止瀉薬/止痢薬 • 抗肥満薬 • 経口血糖降下薬 • ビタミン • ミネラル
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血液、血液生成器官(B) |
抗血栓薬(抗血小板剤、抗凝固薬、血栓溶解薬) • 抗出血(血小板、凝固・線溶系、抗線維素溶解性)
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循環器系(C) |
心臓療法/狭心症治療薬(強心配糖体、抗不整脈薬、強心剤) • 高血圧治療薬 • 利尿薬 • 血管拡張薬 • 交感神経β受容体遮断薬 • カルシウム拮抗剤 • レニン-アンジオテンシン系(ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬) • 脂質降下薬(スタチン、フィブラート、胆汁酸捕捉因子)
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皮膚(D) |
皮膚軟化薬 • 瘢痕形成剤 • 鎮痒薬 • 乾癬治療薬 • 他の皮膚薬
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泌尿生殖器系(G) |
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悪性腫瘍(L01-L02) |
抗がん剤(代謝拮抗薬、抗腫瘍性アルキル化薬、紡錘体毒、抗悪性腫瘍薬、トポイソメラーゼ阻害薬)
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眼科学 • 耳科学
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その他ATC(V) |
解毒剤 • 造影剤 • 放射性薬理学 • 湿潤療法
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- Org9426(臭化ロクロニウム)の筋弛緩作用--臭化ベクロニウムとの比較
- Kugelberg-Welander病に合併した自然気胸の1手術例
- 近藤 正道,南 寛行,原 信介,宮崎 拓郎
- 日本呼吸器外科学会雑誌 19(1), 56-59, 2005-01-15
- … 2月に夜間に咳嗽が出現.当院における胸部X線写真にて右気胸と診断され入院となった.保存的治療を試みるも治癒せず,3月に全身麻酔下に胸腔鏡補助下小開胸併用にて肺部分切除を施行した.筋弛緩には臭化ベクロニウムを用いたが,術直後の回復は軽度遅延した.また術後3日目には喀痰排出障害が出現したため気管支鏡下吸痰を行った,その後の経過は順調で術後15日目に退院した.Kugelberg-Welander病は脊髄性の筋萎縮をきた …
- NAID 10014315726
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- 臭化ベクロニウム、臭化パンクロニウム: 神経筋接合部 (NMJ) におけるアセチルコリン 受容体を遮断する、非脱分極性筋弛緩薬。 A型ボツリヌス毒素: 神経筋接合部において 、神経末端からのアセチルコリン放出を遮断する。眼瞼痙攣やジストニアなどに適応が ...
- 薬効名索引(末梢神経系用薬). 商品名. マスキュラックス静注用10mg. (成分:臭化 ベクロニウム,ベクロニウム). 経路:注射薬|規格:10mg1瓶 |一般名:ベクロニウム 臭化物静注用|薬価:838.00 |メーカー:MSD. 薬品情報 · 添付文書情報; 成分一致 薬品 ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
マスキュラックス静注用4mg
組成
- マスキュラックス静注用4mg:1管 ベクロニウム臭化物4.0mg含有
添加物
- D-マンニトール24.5mg、無水クエン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、pH調整剤を含有
- なお、マスキュラックス静注用4mg(4mg/管)には、溶解液として日局注射用水1管(1mL)を添付してある。
禁忌
- 本剤の成分又は臭化物に対して過敏症の既往歴のある患者
- 重症筋無力症、筋無力症候群の患者[これらの患者では非脱分極性筋弛緩剤に対する感受性が極めて高い。]
- 妊婦又は妊娠している可能性のある患者(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
効能または効果
- 通常、成人には初回量ベクロニウム臭化物として0.08〜0.1mg/kgを静脈内投与し、術中必要に応じて0.02〜0.04mg/kgを追加投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
注射液の調製法
マスキュラックス静注用4mg(4mg/管)
- 静脈内投与に際しては、1管を添付溶解液(日局注射用水1mL/管)に用時溶解して用いる。(溶解後のベクロニウム臭化物含有量:4mg/mL)
マスキュラックス静注用10mg(10mg/バイアル)
- 静脈内投与に際しては、1バイアルを日局注射用水5mLに用時溶解して用いる。(溶解後のベクロニウム臭化物含有量:2mg/mL)
慎重投与
- 呼吸困難及び気道閉塞のある患者[換気不全により、患者の自発呼吸の再開が遅れるおそれがある。]
- 肝疾患、胆道疾患又は腎疾患の患者[本剤の排泄が遅れるため作用が遷延することがある。]
- 気管支喘息の患者[喘息発作、気管支痙攣を起こすおそれがある。]
- 電解質異常(低カリウム血症、低カルシウム血症、高マグネシウム血症等)、低蛋白血症、脱水症、アシドーシス、高炭酸ガス血症の患者[本剤の作用が増強されるおそれがある。]
- 高血圧症の患者[血圧上昇を起こすおそれがある。]
- 低体温麻酔及び低体温灌流法による人工心肺使用の患者[作用の遷延を起こすおそれがある。]
- 重症筋無力症、筋無力症症候群の患者を除く神経筋疾患の患者(筋ジストロフィー、筋緊張症候群、先天性ミオパシー、脊髄性筋萎縮症、ギラン・バレー症候群等)又はポリオ罹患後の患者[本剤の作用の増強又は減弱が生じることがある。]
- 心拍出量の低下が認められる患者[作用発現時間が遅延し、また作用が遷延することがある。]
- 肥満の患者[実体重で投与量を算出した場合、作用持続時間が延長し回復が遅延することがある。]
- 熱傷の患者[筋弛緩剤の作用が抑制されることが知られている。]
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
- 新生児及び乳児(「小児等への投与」の項参照)
重大な副作用
ショック(0.1%未満)、アナフィラキシー様症状(頻度不明)
- ショック、アナフィラキシー様症状(気道内圧上昇、血圧低下、頻脈、全身発赤等)を起こすことがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、直ちに投与を中止し適切な処置を行うこと。
遷延性呼吸抑制(頻度不明)
- 遷延性呼吸抑制があらわれることがある。このような場合には、自発呼吸が回復するまで呼吸管理を行うこと。
横紋筋融解症(頻度不明)
- 筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがあるので、このような場合には本剤の投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
気管支痙攣(頻度不明)
- 気管支痙攣を起こすことがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
神経筋遮断作用
- ベクロニウム臭化物は神経筋接合部の終板に作用し、アセチルコリンによる神経から筋への興奮伝導を遮断することにより、非脱分極性神経筋遮断作用を示すことが認められている。
- 摘出ヒナ二腹頸神経筋による実験で、ベクロニウム臭化物は多重神経支配下の筋線維を同時に収縮させることなく、間接的刺激によるtwitch responseあるいはアセチルコリンによる反応を抑制した9)。
- 麻酔下のイヌによる実験において用量反応曲線よりED90を求めた結果、ベクロニウム臭化物の神経筋遮断作用はパンクロニウム臭化物の約1.6倍、d-ツボクラリンの約9.3倍であり、また、ED90の3倍量を投与した場合、両剤よりもその作用持続時間は有意に短いことが認められた10)。
- 麻酔下のラット、ネコ及びサルによる実験で、ベクロニウム臭化物の作用発現時間は投与量等の条件の相違により成績に差はあるが、パンクロニウム臭化物と比べ同等ないしやや速く、2〜8分であった11)。
- 麻酔下のサルにベクロニウム臭化物(7, 8.5, 10μg/kgの各濃度)を6回連続静脈内投与したが、2回目以降の作用持続時間はほぼ一定で蓄積性は認められなかった11)。
- 麻酔下のラットによる実験でネオスチグミンはベクロニウム臭化物の筋弛緩作用に拮抗し、その程度はパンクロニウム臭化物に対する拮抗と同程度であった12)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- ベクロニウム臭化物(Vecuronium bromide)
化学名
- (+)-1-(3α,17β-Diacetoxy-2β-piperidino-5α-androstan-16β-yl)-1-methylpiperidinium bromide
分子式
分子量
性状
- 白色〜わずかに赤みを帯びた白色の結晶性の粉末である。エタノール(99.5)、ジクロロメタンに極めて溶けやすく、酢酸(100)に溶けやすく、水、アセトンに溶けにくく、酢酸エチル、ジエチルエーテルにはほとんど溶けない。
融点
★リンクテーブル★
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ベクロニウム。臭化ベクロニウム vecuronium bromideの略
[★]
- 関
- vecuronium
[★]
- 英
- vecuronium
- 化
- 臭化ベクロニウム vecuronium bromide Vb
- 商
- マスキュラックス
- 関
- 筋弛緩薬
[★]
- 英
- bromide、bromo
- 関
- 臭化物、ブロミド、ブロモ、ブロマイド