出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/12/15 19:34:11」(JST)
海外旅行(かいがいりょこう)とは、外国(国外)を目的地とする旅行のこと。
日本は島国であり、日本人が国外へ行くには海を越える必要があるため、日本では、外国への旅行に関してこのように表現するのが一般的となっている。世界において、例えば英語では、日本における表現と類似したoverseas travelのほか、international travel(国際旅行)、traveling abroad(外国旅行)などが、海外旅行に相当する表現となる。旅行者の国籍または居住地を基準とした場合、国内を目的地とする国内旅行が対義語となる。また、国境における出入国の向きを基準とした場合、海外旅行はアウトバウンド旅行に相当するため、対義語はインバウンド旅行となる。
ここでは主に日本における海外旅行を記述する。
年 | 人数 |
---|---|
昭和25年(1950年) | 8,922 |
昭和35年(1960年) | 119,420 |
昭和45年(1970年) | 936,205 |
昭和55年(1980年) | 3,909,333 |
平成2年(1990年) | 10,997,431 |
平成12年(2000年) | 17,818,590 |
平成22年(2010年) | 16,637,224 |
平成26年(2014年) | 16,903,388 |
第1号は幕末のジョン万次郎ではないかといわれている。正式には日本が近代国家として成立した明治時代以降になるが、いずれにしても一般市民には観光を目的とした海外旅行は無縁であった。それでも、1901年初頭に発行された報知新聞の特集記事「二十世紀の豫言」では、20世紀中に海外旅行が一般化することが予測されていた。
日本人の海外旅行は太平洋戦争中から戦後にかけて日本政府による強い規制を受けてきた。外国への旅行は業務や視察、留学などの特定の認可し得る目的が無ければならず、1963年(昭和38年)4月1日以降は現金とトラベラーズチェックによる年間総額外貨500ドル以内の職業や会社などの都合による渡航が一般化されたが、これも旅行代理店を介して逐一認可された[1]。一般の市民が職業上の理由や会社の都合ではなく、単なる観光旅行として自由に外国へ旅行できるようになったのは翌1964年(昭和39年)4月1日以降であり年1回500ドルまでの外貨の持出しが許された。さらに1966年(昭和41年)1月1日以降はそれまでの「1人年間1回限り」という回数制限も撤廃され1回500ドル以内であれば自由に海外旅行ができることとなり[2]、これ以降、次第に物見遊山[3]の海外旅行が広がり始めた。
これら自由化当初の海外旅行は費用も高額(50万円程度、現在[いつ?]の換算で300万円前後か)で、一部の富裕層に限られており、庶民には夢であった。テレビ番組「兼高かおる世界の旅」で紹介される世界各地のナレーション付き映像や、「10問正解して夢のハワイ」のキャッチフレーズで始まる「アップダウンクイズ」といった番組が人気を博していたのもこの頃であった。また、懸賞として海外旅行が使われるのもその頃であり、「トリスを飲んでハワイへ行こう」は流行語にもなった。
一般化し始めたのは1970年代からで、1972年には海外渡航者数が100万人を突破。飛行機の大型化やドルが変動相場制に移行しての円高や旅行費用の低下が進み、韓国や台湾などの近隣国であれば国内旅行よりも多少高い金額ぐらいで旅行できるようになった。
国名 | 割合 |
---|---|
ドイツ | 93.0% |
イギリス | 91.3% |
イタリア(2012年) | 48.3% |
台湾 | 47.3% |
フランス(2012年) | 40.0% |
オーストラリア | 37.8% |
ロシア | 37.8% |
韓国 | 29.6% |
日本 | 13.7% |
アメリカ合衆国 | 9.2% |
中国 | 7.2% |
国名 | 人数 |
---|---|
中国 | 9819万人 |
ドイツ | 7510万人 |
イギリス | 5851万人 |
ロシア | 5407万人 |
アメリカ合衆国 | 2902万人 |
イタリア(2012年) | 2881万人 |
フランス(2012年) | 2545万人 |
オランダ(2012年) | 1863万人 |
日本 | 1747万人 |
1980年代後半のプラザ合意以降の急激な円高の進行と、1988年12月から施行されたアメリカ合衆国訪問時のビザ免除制度などの影響で、海外旅行者が大幅に増加した。1995年に一時過去最高の1ドル=79円台まで進行した円高の際には、国内旅行と海外旅行の費用が逆転するケースが発生するようになり、その後円安に振れているものの、海外旅行は日本の周辺国への旅行を中心に一般化している。日本国内の旅行よりもなぜ海外が安いかは不詳な点が多いが、一説には現地の物価や人件費の差などが指摘されている。
2001年のアメリカ同時多発テロ事件や2003年のイラク戦争等の当該事件直後に、海外におけるテロ行為のリスクがあらためて認識されるようになった際や、2003年のSARS流行、2009年の新型インフルエンザ流行など、流行性の病気への感染が懸念された時期には、統計的にも大幅な海外旅行控えが見られたが、現在は回復している。
2013年時点において、日本からの海外出国者数は世界で13番目の多さだが、人口比で見た海外出国率では決して多いほうではない。世代別でみてみると、40代男性が最も多く、30代男性、50代男性、20代女性がそれに続く。近年では男女とも60代の伸びが著しいのに対し、20代の若年層に限っては、2000年前後から減少傾向が続いている。20代男性は2000年代半ばを境に60代に抜かれ、90年代まで世代別のトップの旅行者数だった20代女性も3分の2未満に減少している[4]。法務省の「出入国管理統計」によれば、日本人の海外旅行者数がピークだった2000年に20代の海外旅行者数は418万人だったが、2010年は270万人にまで落ち込んだ。2011年は281万人と若干持ち直したが、依然として低迷している状態であり、その原因としては、昔と違って海外旅行に対して特別な印象を持たなくなったということ、そして正規雇用者より年収が低い非正規雇用者が増加したことが挙げられている[5]。
なお、海外での事件や病気の流行・災害などの情報は、国外にいてもNHKワールド・ラジオ日本の海外安全情報で聴取することが可能である。聴取には短波放送(SW)の受信できるラジオが必要であるが、小型軽量なものがネット通販や家電量販店の他ディスカウントストアやホームセンターなどで安価かつ容易に入手できる。
日本人のおもな海外旅行の行き先となっている国・地域をランキング形式で以下に示す。数値は、日本人海外旅行者受入数に関する、各国の関係省庁(アメリカ合衆国商務省国際貿易局、タイ政府観光庁など)による公表資料に基づき、日本政府観光局(国際観光振興機構)が集計したものである[6]。
順位 | 平成26年(2014年) (順位は暫定順位) |
平成25年(2013年) | 平成22年(2010年) | 平成17年(2005年) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | アメリカ合衆国 ※ ハワイ州 |
357.9万人 151.1万人 |
アメリカ合衆国 ※ ハワイ州 |
373.0万人 152.3万人 |
中国 | 373.1万人 | アメリカ合衆国 ※ ハワイ州 |
388.4万人 151.7万人 |
2 | 中国 | 271.8万人 | 中国 | 287.8万人 | アメリカ合衆国 ※ ハワイ州 |
338.6万人 123.9万人 |
中国 | 339.0万人 |
3 | 韓国 | 228.0万人 | 韓国 | 274.8万人 | 韓国 | 302.3万人 | 韓国 | 244.0万人 |
4 | 台湾 | 163.4万人 | タイ | 153.8万人 | 香港 | 131.7万人 | タイ | 118.2万人 |
5 | タイ | 126.5万人 | 台湾 | 142.2万人 | 台湾 | 108.0万人 | 台湾 | 109.2万人 |
6 | 香港 | 107.9万人 | 香港 | 105.8万人 | タイ | 99.4万人 | 香港 | 81.1万人 |
7 | シンガポール | 82.4万人 | シンガポール | 83.3万人 | ドイツ | 60.5万人 | ドイツ | 73.0万人 |
8 | ドイツ | 71.2万人 | ドイツ | 71.2万人 | フランス | 59.6万人 | オーストラリア | 68.5万人 |
9 | ベトナム | 64.8万人 | フランス | 68.2万人 | シンガポール | 52.9万人 | フランス | 65.9万人 |
10 | マレーシア | 55.3万人 | ベトナム | 60.4万人 | ベトナム | 44.2万人 | シンガポール | 58.9万人 |
11 | インドネシア | 48.7万人 | マレーシア | 51.3万人 | インドネシア | 41.9万人 | インドネシア | 51.8万人 |
12 | フランス | 47.9万人 | インドネシア | 47.9万人 | マレーシア | 41.6万人 | カナダ | 42.4万人 |
13 | フィリピン | 46.4万人 | イタリア | 45.4万人 | マカオ | 41.4万人 | フィリピン | 41.5万人 |
14 | イタリア | 未確定 | フィリピン | 43.4万人 | オーストラリア | 39.8万人 | マレーシア | 34.0万人 |
15 | スペイン | 未確定 | スペイン | 37.4万人 | フィリピン | 35.9万人 | スイス | 33.5万人 |
16 | オーストラリア | 未確定 | オーストラリア | 32.4万人 | イタリア | 34.0万人 | イギリス | 33.2万人 |
17 | マカオ | 30.0万人 | マカオ | 29.1万人 | スペイン | 33.3万人 | ベトナム | 32.1万人 |
18 | スイス | 未確定 | スイス | 28.7万人 | スイス | 29.8万人 | イタリア | 28.1万人 |
19 | オーストリア | 未確定 | オーストリア | 25.9万人 | カナダ | 24.3万人 | オーストリア | 27.9万人 |
20 | カナダ | 25.8万人 | カナダ | 23.8万人 | イギリス | 22.3万人 | スペイン | 18.1万人 |
21 | イギリス | 22.2万人 | イギリス | 22.1万人 | オーストリア | 21.4万人 | マカオ | 16.9万人 |
22 | インド | 22.0万人 | インド | 22.0万人 | トルコ | 19.5万人 | オランダ | 15.7万人 |
23 | カンボジア | 21.6万人 | カンボジア | 20.7万人 | インド | 16.8万人 | ニュージーランド | 15.5万人 |
24 | トルコ | 17.1万人 | トルコ | 17.4万人 | カンボジア | 15.2万人 | チェコ | 15.4万人 |
25 | クロアチア | 未確定 | クロアチア | 16.0万人 | クロアチア | 14.7万人 | カンボジア | 13.8万人 |
26 | オランダ | 14.7万人 | オランダ | 15.0万人 | チェコ | 13.3万人 | ノルウェー | 12.5万人 |
27 | チェコ | 未確定 | チェコ | 13.8万人 | エジプト | 12.6万人 | スウェーデン | 11.5万人 |
28 | ベルギー | 未確定 | ベルギー | 11.2万人 | オランダ | 11.9万人 | ハンガリー | 11.2万人 |
29 | メキシコ | 10.7万人 | フィンランド | 10.7万人 | ニュージーランド | 8.8万人 | ベルギー | 11.2万人 |
30 | フィンランド | 10.7万人 | ロシア | 10.2万人 | ベルギー | 8.1万人 | インド | 10.3万人 |
日本人 出国者計 |
- | 1690.3万人 | - | 1747.3万人 | - | 1663.7万人 | - | 1740.4万人 |
Note: 平成26年(2014年)に関しては一部未発表の国があり、それら未発表の国は平成25年(2013年)の日本人海外旅行者受入数と同数と仮定し暫定的に表内に加えている。このため、平成26年(2014年)の順位は暫定順位である。 各国で、集計基準が変更されているため、異なる年同士の数値の比較は、厳密には成り立たない。なお、北朝鮮など一部、日本人海外旅行者受入数のデータが無い国がある。 |
海外旅行の形態には、旅行会社が企画する企画旅行(いわゆるパッケージツアー)や、旅行者本人が企画し、旅行会社に交通手段・宿泊施設等を手配させる手配旅行があるが、旅行者が交通機関や宿泊施設等を旅行会社を介さずに直接手配する旅行も、インターネットの発達と共に一般化している。
企画旅行は航空便・現地での交通・宿泊・観光等の旅程を一括して旅行会社が管理し、旅行会社は旅程管理、旅程保証、特別補償といった法的責任を負う。
メリットは、海外旅行に伴う煩雑な手配から解放されること、万が一の補償が旅行会社からなされるといったものがある。また、企画旅行では旅行会社側が交通・宿泊先などを安価・大量に仕入れることができるため、完全な手配旅行と比較すると安価なケースも多い。
デメリットは旅行中の自由度が下がることである。最初から旅程の一部に旅行者側からは必要のないスケジュールが組み込まれていて余計な時間をとられることなどもある。そのため、自由時間を旅程に組み入れるものや、航空便・宿泊施設のみを提供する、フリープランのような企画もある。また、主に別料金(オプション)ではあるがオプショナルツアーなどによって、自由時間を、用意されたツアーで過ごすことも可能である。
手配旅行では、旅行者本人が自由な旅程を組むことができるのがメリットである。反面、現地での交渉(交通手段・宿泊等)が煩雑となる。また、企画旅行における旅行会社の補償のようなものは存在せず、基本的に滞在中の裁量・責任は旅行者本人に委ねられる。そのため旅行先において、現地の旅行会社の手配で個別のツアーに参加することなども出来る。
手配旅行はバックパッカーが旅行をする場合に有効な手段である。この場合、宿泊や飲食に掛かる費用をできるだけ切り詰める(モーテル・ゲストハウスに宿泊する)ことで、長期の滞在が可能になる。当然ながら、スケジュールが決められたパック旅行(企画旅行)とは異なるオーダーメイドの旅行プランの設計も可能であり、パック旅行では需給の都合上取扱の難しい専属の通訳やツアーコンダクターの手配、ファーストクラスや超高級ホテル・プライベートジェットやリムジンカー・ハイヤーなどを利用した超高級志向の旅(団塊の世代を初めとする高齢者に需要が大きい)や、知人を訪ねに地方都市へ鉄道や航空機のローカル路線で向かい、現地のホテルで宿泊するといった行程など、あらゆる要望に合わせて旅行業務取扱管理者らが行程表を作成し、手配することもできる。
近年、東アジアの都市2泊3日(往復の交通・宿泊込み)が1万円台後半といった格安パッケージツアーの広告を見かけるのが珍しくなくなった。この価格は東京-新大阪間の東海道新幹線の往復(29,000円前後)程度、あるいはそれ以下のレベルである。このため、予算の乏しい学生なども学生旅行(卒業旅行)として友人らと海外旅行することも珍しくなくなっている。また同様に旅行費用の値下がりにより、親子連れで海外旅行するケースも1990年代後半頃から目立つようになった。 しかし、空港利用税や旅券発給手数料などを含めた費用全額を考えると、必ずしも国内旅行よりも安価とは言えない場合があり、特に近年は原油価格高騰に伴う燃油サーチャージが数千円(東アジア路線)~5万円(ヨーロッパ、北米路線)程度加算されている。
2000年前後から格安パッケージツアーが台頭し、現在まで浸透するようになったが、これは1990年代の日本での航空規制緩和政策による航空運賃の段階的な自由化に伴い、既にディレギュレーションが進行していた欧米をはじめとする日本に乗り入れている外国の航空会社によって、正規運賃から大幅に値引いた格安価格で旅行企画会社に卸すようになり、ダンピングとも言える過当競争が進行し、さらにeコマースの進展に伴って低コスト運営のインターネット通販専業の旅行会社出現も相俟って、次第に宿泊費用やツアーコンダクターの賃金まで過当競争が進行した事から、結果ツアー代金が安価になったという点が大きい。
これら格安海外旅行分野ではH.I.Sがパイオニア的存在で有ったものの、近年はJTBグループをはじめとする大手旅行会社でも格安ツアー・格安航空券の企画・販売を行っている。
格安パッケージツアーに乗じ、包括旅行用割引運賃を適用した航空券(IT運賃)をより大量に仕入れて、その航空券部分のみを切り売りする「格安航空券」の存在もポピュラーとなった。
以前は供給数が少なかったためバーゲンの如く発売開始当日の内に完売だった事が多かったが、近年は在庫が豊富となり、航空会社が発売する正規割引航空券(PEX運賃など)と購入手段については遜色が無くなっている。
格安航空券や格安パッケージツアーでは座席を指定する事や航空会社のマイレージの加算が不可能であったり、行程内容の変更やノーショー(キャンセルせずに当日搭乗しなかった)時の払戻が受けられないなど制約が大きいので、それらの選択にはニーズに合わせて慎重に考慮する必要がある。
また、格安航空券は一種の手配旅行商品であるため、航空会社や卸旅行会社へ運賃相当の決済・受け渡しが済んでいない段階で販売旅行会社が経営破綻した場合では、たとえ旅行客が代金を支払ったとしても搭乗する事は出来ない。パッケージツアーも、主催旅行会社が催行前に破産した場合は同様の事があり得る。その場合は旅行業界団体の保証制度による補填による返還(支払った全額ではない)しか受けられず、未加盟の旅行会社の場合は除外となる。
これまでに数カ所の店舗運営もしくはインターネット通販運営を中心にした小規模の旅行会社が破綻して、上記の様な事案に遭遇した事が報道されているため、旅行代理店・主催旅行会社を単に「値段が安い」だけではなく、「信用性が有るか」「アフターケアは万全か」など消費者がよく考慮して選ぶ必要がある。
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国試過去問 | 「104I066」 |
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