出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/06/01 23:05:10」(JST)
ふね型(ふねがた)または、ボート型(boat form)は、シクロヘキサン環のように原子同士の結合がすべて単結合の六員環の化合物がとる立体配座のひとつである。
いす型配座と同じように結合角のひずみが無い配座である。いす型配座が6本すべての炭素-炭素結合についてねじれ型の配座となっているのに対し、ふね型配座ではボートの舳先に当たる炭素を含む4本の炭素-炭素結合についてはねじれ型、ボートの胴体部分を構成する残りの2本の炭素-炭素結合については重なり型の配座となっている。
ふね型の立体配座においては、ボートの胴体部分を構成する4つの炭素に結合している置換基のうち、環のおおよその平面に垂直の方向に出ている置換基を擬アキシアル位(ぎ-い、pseudo-axial)にあるといい、平面内の方向へ出ている置換基を擬エクアトリアル位(pseudo-equatrial)にあるという。また、ボートの舳先にあたる炭素に結合している置換基のうち環の内側に出ている置換基をフラッグポール位(-い、flagpole)にあるといい、環の外側に出ている置換基をバウスプリット位(bowsprit)にあるという。
フラッグポール位の置換基同士が接近することによる立体反発があり、また重なり型の配座はねじれ型の配座よりもエネルギーが高いため、ふね型配座はいす型配座に比較してエネルギーが高い相対的に不安定な配座である。シクロヘキサンにおいてふね型配座はいす型配座よりも29 kJ/mol不安定である。この値はシクロヘキサン中において、ある瞬間にふね型配座をとっている分子数はいす型配座をとっている分子数の14万分の1に過ぎないことを示している。
配座エネルギーの解析によれば、ふね型配座はポテンシャルエネルギー面の極小点ではなく鞍点にあたる。すなわち配座同士の変換の遷移状態に相当する。実際に極小点となっているのはボートの舳先をそれぞれ環の円周方向に逆向きにひねった形のねじれふね型(skewed-boat form)と呼ばれる配座である。これはシクロヘキサンにおいてはふね型配座よりも6 kJ/mol安定である。
普通、シクロヘキサン環においてはねじれふね型配座よりもいす型配座の方が安定な配座であるが、cis-1,4-ジ-tert-ブチルシクロヘキサンのようにかさ高い置換基がある場合、これらの置換基がバウスプリット位にあるねじれふね型配座の方が安定になる場合がある。
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