出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/07/11 14:34:23」(JST)
指数関数(しすうかんすう、exponential function )とは、冪乗における指数を変数として、その定義域を主に実数の全体へ拡張して定義される初等超越関数の一種のこと。
対数関数の逆関数であるため、逆対数 (anti-logarithm, inverse logarithm ) と呼ばれることもある[1]。
指数関数は次のように表記される。
b を指数関数の底 (base ) といい、x を指数という。特に、底がネイピア数である場合 (b = e)、
と二種類の記法がある。 後者の記法を使って一般の底の指数関数を表すには、自然対数(底を e とする対数関数)を用いる。
たとえば b = 1/2 の場合には、次のような表記ができる。
特に断りがない場合、指数関数といえば底がネイピア数であるものを指す。また解析学の立場では、底がネイピア数でないものは指数関数とは呼ばないことが多い。このことは指数関数をどのような性質から定義するかによる。
正の実数 a を底とする指数関数 ax は、次の公理から一意に定まる関数として定義される。
指数関数の値 ap において、指数 p が自然数(あるいは有理数)であるとき、これは a の冪乗に一致する。冪乗を適当な方法を用いて拡張することにより、指数関数を定義することも可能である。
底がネイピア数 e である指数関数 ex の導関数は ex 自身となる。
解析学においてはこの性質を満たす関数として指数関数を定義する。つまり、指数関数 exp(x) とは、
を満たす関数のことである。この関数は代数的な定義で示される性質を満たし、両者は一致することが示される。
一般の指数関数 ax の導関数は自然対数 ln を用いて、合成関数の微分公式より、
となる。a = e とすれば ln e = 1 なので最初の公式に戻る。
exp x の解析的な性質より、これをマクローリン展開すると、
となることから、定義域を、任意の実数から複素数全体へと拡張することができる。
exp(ix) を、cis x と書き、複素指数関数 (complex exponential (function) ) と呼ぶ。ここで i は虚数単位である。 exp x のマクローリン展開より、
と書けるが、右辺の第 1 項は cos x のマクローリン展開、第 2 項は sin x のマクローリン展開に i を乗じたものに他ならない。即ち、cis x = cos x + isin x であり、これが cis の名前の由来である。複素指数関数は、三角関数に関する和として表現できるのである。
任意の複素数 z は、z = x + iy (x, y∈R) と表現できるから、
これこそが、指数関数の定義域を複素数全体に拡張したものである。この逆関数として、複素変数の対数関数を定義することもできる。こうして定義される対数関数 ln z は
として定義される複素関数 ln z と一致する。
一般の複素数 α を底とし、複素変数 z を指数とする指数関数は、複素変数の対数関数 ln z に対して、ln α が定義される限りにおいて
とおくことにより定義することができる。これは ln z の多価性により一般には多価関数となる。ただし、ez については exp(z ln e) のこととは解さず、ez = exp(z) と理解するのが一般的であるようである。
複素変数への拡張は他にも方法があり、マクローリン展開を用いずに微分の自己再帰性と初期条件だけを与えた正則関数を考えても同じ結論を得る事ができる。
exp(x + iy) の実数部のグラフ
(なお、グラフ中の re は実部、im は虚部を意味する)
exp(x + iy) の虚数部のグラフ
(なお、グラフ中の re は実部、im は虚部を意味する)
詳細は「行列指数関数」を参照
上記のテイラー展開の x に任意の正方行列 X を代入することにより、行列の指数関数 exp X が定義される。
とくに、X が n 次の実一般線型群 GL(n, R) のリー環 gl(n, R) すなわち n 次の実正方行列全体を亘るとすれば、この指数関数
はリー環からリー群への指数写像の一つの例を与える。
詳細は「:en:Double exponential function」を参照
二重指数関数には 2 種類の定義がある。
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