出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/02/08 02:56:15」(JST)
少数民族(しょうすうみんぞく)とは、ある民族や国家や地域など何かしらの枠組みが複数の民族集団(ethnic group)によって構成されている場合に、相対的に少数からなる民族集団のことを言う。
日本語の「民族」は多義的かつ曖昧な概念である。英語のethnic groupを指すこともあればnationを指すこともあり、ドイツ語のvolkを指すこともある。「民族」が意味するものが多義的であるために、少数民族という語もしばしば混乱を招く。少数民族という概念は何を全体とするかを設定し、その枠組みのなかで相対的に少数であることを示さなければ意味をなさない。
少数民族という概念を用いる際に最も一般的なのは、国民国家(nation state)を「全体」を指す枠組みとして、そのなかで平均的な国民として扱われることの多い支配的多数民族と比較して少数である民族集団を少数民族と呼ぶという用法である。これら少数民族は人口において数百人の集団であることもあれば百万人規模であることもある。しかし、平均的国民もしくは支配的多数を占める民族とはさまざまな文化的属性において差異が見出されるケースや、制度的差異が見出されるケースが多く、共通に課題となる部分が大きい。
少数民族はさまざまな文化的属性(民族共通の歴史や言語など)をもつ。しかし、周囲を取り巻くのは多数派の民族であり、国の制度や教育もそれに基づく場合が多い。そういった状況下で、いかに自分たちの独自性を維持すればよいかというのは、多くの少数民族に共通する悩みでもある。
少数民族と、多数派および国民国家との関係は多種多様である。クルド人のように、国家を持ってもおかしくないほどの人口を誇り、また特定地域では多数派を占めているにもかかわらず民族国家を持たないために独立を求めて争いを起こす場合もある。同じように多くの人口を誇りながらまとまりを欠くミャオ族のように、各国の多数派民族の影響下で共存していくこともある。日本におけるアイヌ、中国における満州族などのように、多数派民族の圧倒的影響力によって、その独自性を徐々に失いつつある民族もある一方、イスラエル建国以前のユダヤ人のように、多数派の民族に同化されず独自性を保ち、少数派であっても強い社会的影響力を持ってきた少数民族もある。
先住民が少数民族として国民国家において一角を占めているケースは非常に多い。これらは多くの場合、支配的民族とは別の文化や歴史と一緒に「異教的」または「野蛮」などとして排斥されたが、近年ではむしろ保護する政策の必要が意識されはじめてきた。しかし、独自文化が失われつつある状況にまで至っている場合、国民国家の政策如何にかかわらず、その担い手が現れにくいという問題が生じることがある。
日本は、大和民族であるとされる人々が大多数である一方、少数民族とされる集団も存在する。まず、先住民に類するものとして以下のような例がある(日本の民族問題や、個別の詳細を参照のこと)。
※沖縄県や奄美群島(鹿児島県)などの旧琉球王国領域の住民を、大和民族とは別個の琉球民族であるとする考えがある。
※本州、四国、九州においては、一般的には別個の先住民族は認められていない。古代の蝦夷、熊野、熊襲、隼人などが本土の先住民族であるという考えもあり、近世・近代の「サンカ」をその末裔とする向きもあるが、現在ではそのような集団も見いだしがたいため一般的ではない。もっとも、東北地方では蝦夷の反乱者が郷土の英雄として神社に祀られたりする例があり、関東以南ないし西日本との若干の歴史観の差異は存在するようである。ただし、これを民族の差と捉えることはほとんどなく、大阪の財界人による「東北熊襲発言」も、民族差別ではなく地域差別発言ととらえられた。
さらに日本の近代化後に、日本に帰化した韓国・朝鮮系、中国・台湾系、欧米系の日本人などを少数民族とする考えもある。また、国民国家の枠を限定的にとらえず、在日韓国人・朝鮮人・在日華僑なども少数民族であると主張する立場も存在するが[1]、国際法上などの通説的解釈では他国の国民であり、日本国籍を持っていない者は少数民族とはみなされない。
なお日本政府が国際人権規約に基づく国際連合への報告書に、同規約第27条に該当する少数民族として記載しているのはアイヌ民族のみである。
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