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注意欠陥・多動性障害 | |
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分類及び外部参照情報 | |
ICD-10 | F90 |
ICD-9 | 314.00, 314.01 |
OMIM | 143465 |
DiseasesDB | 6158 |
MedlinePlus | 001551 |
eMedicine | med/3103 ped/177 |
Patient UK | 注意欠陥・多動性障害 |
MeSH | D001289 |
注意欠陥・多動性障害(ちゅういけっかん・たどうせいしょうがい、英: attention deficit hyperactivity disorder、ADHD)は、多動性(過活動)、不注意(注意障害)、衝動性を症状の特徴とする神経発達症もしくは行動障害である[1]。ICD-10における多動性障害(英: hyperkinetic disorder)はほぼ同一の概念である。
なお「注意欠陥・多動性障害(attention deficit / hyperactivity disorder、AD/HD)」はDSM-IV-TRによる正式名である。その他の訳語について、「注意欠如・多動性障害」は、日本精神神経学会が2008年に示した名称であり、「注意欠如・多動症」は小児精神神経学会や日本児童青年精神医学会の示したDSM-5の翻訳用語案である[2][3]。
その症状が、正常な機能と学習に影響を及ぼしている場合のみに診断する[1]。症状は早い時期(6歳未満ごろ)から発症し、少なくとも6か月以上継続している必要がある[1]。
ADHDは多動性、不注意、衝動性などの症状を特徴とする神経発達症の一つと言われているが、じっとしている等の社会的ルールが増加する、小学校入学前後に発見される場合が多い。一般に遺伝的原因があるとされる[4]が、同様の症状を示す場合を含む。注意力を維持しにくい、時間感覚がずれている、様々な情報をまとめることが苦手などの特徴がある。日常生活に大きな支障をもたらすが適切な治療と環境を整えることによって症状を緩和することも可能である。
診断は、多くの精神疾患と同様に問診等で行われ、ADHDに特化した生物学的マーカーや心理アセスメントは開発中であり、一般的でない。アメリカではADHDに関する論争が盛んである。
DSM-IV-TRでは症状に従い、以下の3種に下位分類がされる。
一般にADHDとして扱われるADDは、多動性が少ない不注意優勢型である場合が多い。子供ではICD-10による
学童期までの発症率は1 - 6%で男子の方が女子よりも高い[6]。しかし、女子の場合は多動が目立たない不注意優勢型に分類されることが多く、発見が遅れがちである。よって、認知される人数が少ないことが推測され、実際の発症率の男女差はもっと小さいとする説もある[7]。ICD-10での多動性障害の発症率は学齢期で3~7%であり、その内30%は青年期には多動と不注意は目立たたなくなり、40%は青年期以降も支障となる行動が持続し、残りの30%は感情障害やアルコール依存症などのより重篤な精神障害が合併する[8]。また、近年では、大人になった後にも、目立たなくなるだけで症状が残るとされており、一種の社会問題となっている。また大人のADHDの場合、診断してくれる医療機関が少なく、薬等を出してもらえない場合が多く報告されている。
集中困難・過活動・不注意などの症状が通常12歳までに確認されるが、過活動が顕著でない不注意優勢型の場合、幼少期には周囲が気付かない場合も多い。
不注意(inattention)には、以下の症状などがある[9]
年齢が上がるにつれて見かけ上の「多動(落ち着きがなくイライラしているように見える)」は減少するため、かつては子供だけの症状であり、成人になるにしたがって改善されると考えられていたが、近年は大人になっても残る可能性があると理解されている。その場合は多動ではなく、感情的な衝動性(言動に安定性がない、順序立てた考えよりも感情が先行しがち、論理が飛躍した短絡的な結論に至りやすい)や注意力(シャツをズボンから出し忘れる、シャツをズボンに入れ忘れる、ファスナーを締め忘れるといったミスが日常生活で頻発する、など)や集中力の欠如が多い[4]。
遺伝的な要因もあるとされるため、症状は育て方や本人の努力で完治することはないとも言われている[10]。近年では成人にADHDを認めるべきと考えられている。また、12歳以下でADHDと診断がされなかったのに、成人してADHDと診断される者も多く、診断の方法には議論がある。[11]
うつ病やPTSD、アスペルガー症候群でも類似の症状を呈する上に合併してしまう事もあり、正確な判断はADHDに理解の深い医師の診断でなされる必要がある。またアスペルガー症候群や高機能自閉症との関連については合併症としてではなく、これらの症状全てを自閉症スペクトラムの中に内在する高機能広汎性発達障害(高機能PDD)の一種として区分せずに診断して取り扱うといった見解も出ている[要出典]。
ADHDをもつ児童は、他の疾患に罹患する確率が66%増加する[12]。関連障害として特異的発達障害(学習障害)や、軽症アスペルガー障害との合併を示すことがある。またその特性上周囲からのネガティブな打撃を受けやすく、二次的に情緒障害を引き起こす傾向があり、行為障害、反抗挑戦性障害、不登校やひきこもりを招きやすい[13]。
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原因は2015年現在、解明に向けて進んでいるがまだすべてが理解されてはいない。遺伝的な要素が指摘され、一卵性双生児ではきわめて高い頻度で一致し、血縁者に共通してみられることも多い。遺伝的な要素に様々な要因が加わり、症状を発現させる。抑制や自制に関する脳の神経回路が発達の段階で損なわれているという点までは確からしいが、その特定の部位・機能が損なわれる機序は仮説の域を出ない[4]。
機能不全が疑われている脳の部位には、大きく3箇所ある。ADHDの子供達はこれらが有意に縮小していることが見出される。
多くの研究者が、複数の遺伝子異常がこれらの部位の萎縮に関係しているのではないかと考えている[4]。
※2011年、注意欠陥多動性障害の子供は、健康な子供が同じゲームをして働く脳の中央付近の部位の視床と線条体がほとんど働かないことを、理化学研究所分子イメージング科学研究センターなどの研究グループが突き止めたと、新聞報道された[18]。
1990年に米国のNIMHのザメトキン (Zametkin) らのグループは、PETスキャンを用いて、ADHDの成人25人の脳の代謝活性を測定し、対象者群より低下していることを明らかにして、ADHDが神経学的な基盤を持っていることを目に見えるかたちで証明した。 具体的には、健康な前頭前野は行動を注意深く選定し、大脳基底核 (Basal ganglia) は衝動性を抑える働きを持つが、ADHDのケースではそれがうまく作動していない。
食事とADHDとの関連性について指摘する報告があるが、関連性はほとんど証明されていない。2006年、5000人以上と規模の大きい研究で砂糖の多いソフトドリンクの摂取量と多動との相関関係が観察された[19]。
アメリカやイギリスでは食品添加物などを除去した食事の比較が行われている。2007年にイギリス政府は、食品添加物の合成保存料の安息香酸ナトリウムと数種類の合成着色料が子供にADHDを引き起こすという研究を受け、これらを含むことが多いドリンクやお菓子に注意を促している[20]。 2008年4月には、英国食品基準庁 (FSA) はADHDと関連の疑われる合成着色料のタール色素について2009年末までにメーカーが自主規制するよう勧告した[21]。ガーディアン紙での報道では大手メーカーは2008年中にそれらを除去する[22]。
最近の睡眠科学では、睡眠がADHDの増加に大きく関わっていると言われている [23]。
現在、全世界で、最もよく使われている診断基準(特に統計調査)は、アメリカ精神医学協会が定めたDSM-IV (1994) とその改訂版のDSM-IV-TR (2000) のAD/HDであり、不注意優勢型と多動衝動性優勢型と、その混合型という3つのタイプに分けられる。
1994年に改訂されたWHOの診断基準のICD-10は、ADHDではなく、「多動性障害」とされており、注意の障害と多動が基本的特徴で、この両者を診断の必要条件としている。ICD-10の「多動性障害」は、細部では若干の違いがあるものの、DSM-IVのADHDの「混合型」に匹敵する。
DSM-IV-TRの診断基準
上記すべてが満たされたときに診断される。DSM-IVではMRIや血液検査等の生物学的データを診断項目にしていない。
DSM-5(2013)の診断基準も、ほぼ踏襲しているが、一部に変更があった。
甲状腺機能亢進症、うつ病、薬物乱用、アルコール乱用などを除外する[24]。
また保護者におけるうつ病を確認し、存在すれば適切な処置を行う[24]。
世界保健機関のガイドラインでは、児童青年のADHDへの第一選択肢は心理療法(心理教育、ペアレントスキルトレーニング、認知行動療法など)であり[24]、薬物療法は児童青年精神科医の管理下でのみ行うことができ、かつ6歳未満に対しては投与してはならない[25]。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、4-5歳のADHDに対しては、薬物療法の前にまず心理療法を実施するよう勧告している[26]。一方でCDCは、6–17歳のADHDに対しては、薬物療法と心理療法の両者を実施するよう勧告している[27]。
一方で英国国立医療技術評価機構(NICE)は、未就学児においては薬物療法を推奨しておらず[28]、就学児童および青年においてはファーストライン治療ではなく深刻な場合の選択としている[29]。
日本小児神経学会は、小児について、二次的障害を抑えるためにも早期の診断治療を奨励し、心理社会的治療と薬物療法を両輪とし、自分の特徴を理解し適切な行動が取れるようになることが治療であるとしている。薬物療法としては、塩酸メチルフェニデート徐放剤(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、その他症状に応じて抗うつ薬、気分安定薬、向精神薬を挙げている。 心理社会的治療として環境調整、ペアレントトレーニング、ソーシャルスキルトレーニング(行動療法)を挙げている[30]。
家族には心理教育、ペアレントスキルトレーニングを行う[24]。本人の症状をコントロールすることよりも本人の特性にあった環境を整えることが重要である。
児童青年のADHDには、WHOおよびNICEのガイドラインでは認知行動療法(CBT)およびソーシャルスキルトレーニングを提案している[24]{{Sfn|[31]。
また成人においては、NICEは患者が薬物療法を希望しない、または薬物療法の効果が乏しい際にCBTを検討するとしている[32]。
WHOは、正しく診断されたADHDに対してはメチルフェニデート製剤の薬物療法を用いるとするが、薬物療法は対症療法であり根治を目指すものではなく、専門医の指示の下で行うべきであり、相談なくプライマリケアでは処方してはならない[25]。薬物療法は継続的な心理行動への包括的介入の一部でなければならない[25]、とくに子供の場合は6歳以上で心理行動療法に効果がなかった場合に慎重に使う、としている[33]。
成人のADHDについては、NICEは薬物療法を第一選択肢とするべきだと勧告している(患者が心理療法を好んだ場合を除く)[注 1]。
また抗精神病薬は推奨されない[34]。薬物乱用ポテンシャルのある患者についてはアトモキセチンを提案している[35]。
精神医療における大麻の有効性が広く認知されるようになった最近では、医療大麻のADHDに対する有効性について現在多数の研究が行われている。[36]規制の緩和された米国やカナダ、英国等で精神科医が医療大麻や大麻の有効成分であるテトラヒドロカンナビノール系製剤を患者に処方する場合が増えており、中枢神経興奮薬に比べ副作用や依存の少ない有力な代替薬として使用されている[37][38][39][40]。
2015年現在、日本でADHDの適応薬として認可を受けているものは「ストラテラ」、「コンサータ」の二種類。
覚醒水準を引き上げることで症状を防ぐ理由で、治療には中枢神経興奮薬が用いられることもある。
日本では一般に、塩酸メチルフェニデート(商品名「リタリン」)が使用されていたが、ADHDへの使用は認可されていなかったため、二次障害のうつ病に対して処方するという形をとっていた。しかし、2007年10月、リタリンの適応症からうつ病が削除され[41]、代わってメチルフェニデートの徐放剤(商品名「コンサータ」)が小児期におけるADHDの適応薬として認可された[42]。コンサータは2013年12月に成人期への適応拡大承認を取得した。[43]。
塩酸メチルフェニデートは長期摂取による依存性や何らかの副作用が懸念されるが、処方に従っている限り薬剤耐性はつきにくく依存の心配を含めて重い副作用は報告されていないとされている。実際、ADHDの場合、止められなくなるどころか飲み忘れて貯めてしまうことがよく見受けられる。特に思春期以前の児童に関しての投薬も依存の危険はないとされるが、米国ではあまりに安易に幼年児にも処方するため、2~3歳児への処方では実際にはADHDではないケースがかなり含まれているのではとの懸念がなされている[4]。メチルフェニデートは前頭前野皮質のノルアドレナリン・トランスポーター (NAT) に作用し細胞外ドーパミンの濃度が上昇、治療効果をもたらすという仮説がある。[44]。リタリンは、脳内のドーパミン・トランスポーターとノルアドレナリン・トランスポーターに作用する事で、ドーパミンやノルアドレナリン量を増やす。セロトニン・トランスポーターにはほとんど作用しない[4]。コンサータ錠は12時間程度効果が持続する、すぐに効き目が現れるので数日で効果がみられるといった特徴があるが、コンサータ錠適正流通管理委員会に登録がある医師しか処方が認められていない。[45]
また、2009年4月にノルアドレナリンの再取り込みを阻害作用を有するアトモキセチン塩酸塩製剤(商品名「ストラテラ」)が認可され、本剤も承認範囲は小児に限定されていたが、2012年8月に成人期のAD/HDへの適応追加の承認を取得した。アトモキセチンはノルアドレナリン・トランスポーターに作用する事により、間接的にドーパミンにも作用するとされる非中枢刺激剤である[46]。
一部には中枢神経刺激薬ペモリン(薬剤名ベタナミン錠)が効果を持つ場合もあるが、強い肝臓への副作用が懸念される[47]。ベタナミン錠は肝臓への負担が大きいため、アメリカでは製造中止になっている。
また、日本では未認可であるがドパミン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(DNRI)であるブプロピオンが使用されることもある。[48]同じくDNRIのADHD治療薬を大日本住友製薬の米子会社であるサノビオン・ファーマシューティカルズ・インクが米国で治験中である。[49]DNRIは同じくノルアドレナリンとドパミンに作用する中枢神経興奮薬よりも緩やかに作用し、依存性も少ないという特徴がある。
ADHDなど、発達障害には抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、甘麦大棗湯、黄連解毒湯、香蘇散、柴胡加竜骨牡蛎湯、当帰芍薬散などをその人の証にあわせて使い分ける。[50]また、西洋薬の補助として併用することもある。[51] 抑肝散、抑肝散加陳皮半夏に関しては、ADHDに効果があることが日本東洋医学会でも示されている。[52][53][54]
ADHDには、鍼治療が有効という意見があり[55]、日本でもADHDに鍼治療を行う鍼灸治療院が存在する。また、日本小児はり学会でも発達障害をテーマとされたこともあり、「ADHDと疳の虫は同疾患である」という意見も存在する。ニューイングランド鍼灸大学院大学助教授、桑原浩榮氏によれば、軽度の疳虫症は肺虚肝実証、重度のADHDは七十五難型肝実証、薬剤過剰投与で脾虚肝実証となることが多いという。また、治療回数は一般的な疳虫症で4日から5日連続、軽症で2日から4日連続、重症だがADHD薬を服用していなければ7日から10日の連続、毎日の服用が10mg以下のADHDは週一回で1年から3年、毎日の服用が20mg以上のADHDになると週2日から3日で2年から4年ほどである。[56][57] 米国において、ADHDへの鍼治療は認知度が高まりつつある。[58][59] 一方、中国四川大学の調査ではADHDへの効果は不明とされている。[60][61]
この数年でワーキングメモリにおける障害は、ADHDの主要な障害または中間表現型(エンドフェノタイプ)であることが明らかにされた。神経生理学的にはADHDは脳の前頭葉とドーパミン・システムの変異した機能 (altered function) と関係がありえる。(Castellanos and Tannock, 2002[64]; Martinussen et al., 2005[65])
スウェーデン、カロリンスカ医科大学のクリングバーグらは、コンピュータによるトレーニング・メソッドを開発し、2つの研究 (Klingberg et al. 2002[66], Klingberg et al., 2005[67]) においてワーキングメモリーがトレーニングにより改善可能であり、ADHDの症状を、中枢神経興奮薬のそれに匹敵するイフェクトサイズをもって軽減することを明らかにした。
当時同大学学長であり、世界的なエイズ研究者であるハンス・ウィグゼルは、医学を専門とする同大学ベンチャー・ファンドとしては初めて新薬以外の分野として事業化を支援し、2009年現在スウェーデンでは約1000校の小学校(約15%)において、米国では約100クリニックにて、それぞれ年間3000人以上の児童・成人のADHD改善トレーニングが行われている[68]。
日本では、2007年夏より約半年間のえじそんくらぶ[69]によるワーキングメモリートレーニング評価プロジェクトとして開始された。2008年日本発達障害ネットワーク年次大会にブース出展があり、関係方面への紹介がされた。日本では2009年現在、コグメド・ジャパンがワーキングメモリトレーニングを提供している[70]。
英ヨーク大学のギャザコール、英ノーザンブリア大学のホームズらは、コグメドのワーキングメモリトレーニングを使い、2つの介入 - トレーニングプログラムと中枢神経興奮薬による薬物療法 ~ のADHDをもつ児童のワーキングメモリ機能へのインパクト(影響)を評価した。薬物療法が視空間ワーキングメモリだけ改善した一方で、トレーニングはすべてのワーキングメモリ要素(視空間、言語のワーキングメモリおよび視空間、言語の短期記憶)で大幅な改善をもたらし、トレーニング効果は6ヶ月後も持続した。IQ成績はいずれの介入でも変化しなかった。Discussionのなかで、“断然に最もドラマティックなワーキングメモリの改善はワーキングメモリトレーニングで観察された。測定されたワーキングメモリのすべての構成要素で有意で大幅な改善が見られ、それぞれにおいて、グループの児童を同年代の平均以下のレベルから平均以内のレベルにもっていった。”と報告し、トレーニングによる視空間・言語すべての要素のワーキングメモリへの全体的な改善が、教室の言語中心の環境における多くの学習活動でワーキングメモリへの重い負荷にしばしば耐えられない児童にとって重要で実用的な利益となろう、としている (Joni Holmes, Susan E. Gathercole 2009[71])。
効果が十分に立証されていないが、薬物治療への拒否感などから一部に支持されている。
適切な行動を学習させるため目標を達成できたら報酬を与え、望ましい環境適応行動を引き出すもの。
注意をそらす物を周りに置かない。
フィンランドの調査で、腸内フローラがADHDを予防する効果がある可能性が示唆されている。[72][73]
家庭では、勉強をしているとき外的刺激を減らしたり、子供の注意がそれてしまった時に適切な導きを与えてやったり、ころあいを見計らって課題を与える、褒めることを中心にして親子関係を強化するなどが挙げられる。一例として、「勉強しなさい」と言うよりも机の上にその子供の注意を引きそうな本をさりげなく置いておく、新聞や科学雑誌を購読する等である。
町沢静夫はADHDの特徴は攻撃性であると述べている[74]。それによると注意欠陥・多動性障害の症状は攻撃性と非行であり、いろいろな小さな悪事を重ね、慢性化すると行為障害となり、18歳以上になると反社会性パーソナリティ障害になることが多いという[75]。 しかし、町沢がADHDと診断した患者のうち、メチルフェニデートの効果があったのは5%[76]である。これは他の研究によって一般に60~80%とされる結果とかけ離れており、町沢の診断したADHDは、典型的なADHDではない可能性がある。これについて、町沢は米国人と日本人の特性の違いから薬物の効き方に差があると説明している。
有病率は、DSM-5(2013)ではほとんどの文化圏で子供の約5%、成人の約2.5%、男:女比では子供で2:1、成人で1.6:1という記載がある[注 2]。WHOの調査では、成人では世界全体で3.4%(国によって1.2~7.3%と大きく異なる)。主症状のうち、多動は9~11歳、衝動性は12~14歳で診断的寛解となることが多く、不注意は成人後も継続する事が多いという報告がある。[77][78][79]
米国CDCの統計では、4-17歳児童の約11%(640万人)がADHDと診断されており(2011年)、男児が13.2%、女児が5.6%と男児に多い[80]。ニューヨーク・タイムズは、古典的なADHDの有病率は児童の5%であるが、しかし今の米国ではADHDは喘息について二番目に多い小児疾患であり、それには過剰診断や製薬会社による病気喧伝があると述べている[81]。
英国の統計では、狭義のICD-10によるhyperkinetic については児童青年の1-2%ほどであり、広義のDSM-IVによるADHDについては児童青年の3-9%ほどであった[82]。
日本の有病率は、成人では浜松市の大規模調査より1.65%と推定されている。[注 3][83]
コロラド大学のジャクリン・J・ジリス[84]らの研究では、ADHDを発症した一卵性双生児が二人とも発症するリスクは、ADHDを発症した一卵性ではない兄弟姉妹の場合の11倍 - 18倍になると報告された。ノルウェーのオスロ大学のグヨーネ[85]とサンデット[86]、英国のサウサンプトン大学のジム・スティーブンソン[87]らの研究では、526組の一卵性双生児と389組の二卵性双生児を調べた結果として、最大で80%までADHDを遺伝的要因で説明できると発表した[4]。
CDCによると、ADHD児を持つ親は、一般児と比べて親子関係がトラブルとなる確率が約3倍であるとされる(21.1%と7.3%)[80]。またADHD児はケガをする確率が高い(4.5%と2.5%)[80]。
ADHDとLD(学習障害)とを同時に罹患する子供は多いが、ADHDを持つ子供が必ずしもLDを発症するわけではない。またADHDは知能の低下をもたらさない。
学習面においては、計算などの単純作業において障害が原因で健常児と比較してミスが多くなる傾向はあるが、周囲の人間の適切なフォローや環境調整よってミスを減らすことは可能であるとされている。ADHDだからという理由でレッテルを貼ったり、甘く評価するなどは不適切な対応であるという意見もある[6]。かといって、現在では一般教諭がADHD児に対して常に適切な対応を取ることは容易だというわけではない。
学習機能面以外の問題として、ADHD児は授業中に立ち歩く、他の生徒とずっとおしゃべりをし続けるなど、教諭や他の生徒にとって迷惑な存在になるケースも多い。またノートを取る、宿題をする、提出物を出すなどADHDの児童が苦手とする傾向がある(あるいは好きな教科しかしない)。
そもそも、教育現場でADHDが注目されるのは、学級崩壊の原因になるような問題児が発生することへの説明としてADHDが槍玉にあがったことという構造がある。
2014年には京都市立小学校で、ADHDの傾向がある男子児童に対し、女性教諭が粘着テープを示して口に貼り付けていたことが判明し、児童の保護者が「ADHD児に対する差別的な取り扱いだ」と抗議する事態となった。これについては、有識者からは「教諭一人の問題でなく、学校が児童一人一人の教育機会を十分に保障していないためだ」という意見がある[88]。
自律神経失調症を発症しやすいとの説も多く、実際に易疲労性、身体の疼痛などを訴えるケースは多い。
ADHDという分類が妥当であるのかということはADHDの概念を確立したアメリカでも論争が続いている状況である。日本においては、ADHDの特徴については未だ明確に定義化されていない[89]。またADHDの25%に反社会的な行動が見られるとされ、成人しても集中力の困難や反社会性パーソナリティ障害の併発などを起こすことがある[89]。近年は一般向け書籍の増大やテレビ番組における報道による認知度の上昇の影響で、「自分がADHDではないか」と受診してくる患者が増えた。
2013年に日本精神神経学会学術総会が静岡県の浜松市で行った調査によれば、調査対象10000人のうち196人がスクリーニング[要曖昧さ回避]の結果ADHDの「疑いがある」と認定をされた[89]。
文部科学省は、ADHDの特徴として、「年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、衝動性、多動性」と定義づけている[90]。文部科学省は、平成15年3月に行われた、「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」において、判断基準や指導方法について提示した[90]。また、同年より、高機能自閉症や学習障害も含めて、支援を目的とした、「特別支援教育推進体制モデル事業」を開始した[90]。
公的支援は立ち遅れがちだったが、2005年に発達障害者支援法が成立した。これにより特別支援教育等の支援策が広まりつつある。[91]。栃木県では「とちぎ障害者プラン21」を策定、埼玉県では「彩の国障害者プラン21」を計画、千葉県では県議会が平成13年に「日本版ADA(障害者権利法)の制定を求める意見書」を可決した。 各都道府県の発達障害者支援センターは、無料で相談・職業訓練・デイケアー・病院等の紹介等各施設独自のサービスを提供している。 ただし、東京都など一部の自治体では、相談窓口の電話がつながりにくい状況が続いている。
また、2010年より、ICD-10 において F80 から F89,F90 から F98 に 当たる発達障害が精神障害の一部として制度上併記され、市町村の保健所などで、専門医による診断書を提出の上で、症状や他の発達障害・疾患との合併など総合的な状態を熟慮し精神保健福祉手帳が交付される場合がある。 また、保健所で所定の書式による診断書の提出で、障害者サービス受給者証、もしくは自立支援医療受給者証の交付も行われており、これにより一般的な障害者福祉サービス(家事援助、行動援護など)を受けることが出来る。障害者福祉サービスには就労移行支援の利用も含まれ、就労移行支援訓練所 を利用することにより原則2年間まで職業訓練を受けることができる。 利用に当たっては、障害者サービス受給者証、自立支援医療受給者証、精神保健福祉手帳のいずれかが必要である。
また、金銭面の管理が極めて難しく、社会生活に支障をきたしている場合、 判断能力が十分でない人が地域で自立した生活を送るための日常生活自立支援事業における、各地の社会福祉協議会が行う援助事業サービスに「権利擁護」があり、利用者はそれぞれ、以下の必要な援助を受けるための契約を協議会と結ぶ。 ・福祉サービスの利用援助 ・苦情解決制度の利用援助 ・住宅改造、住居の貸借、日常生活上の消費契約や住民票の届出ほか行政手続に関する援助など ・日常的なお金の管理(預金の払い戻し・解約・預け入れなど)金銭管理などの権利擁護の制度を使用するケースもある。
これらの福祉サービスは、他の発達障害においても診断の上で関係機関に申請し、認定されれば利用できるのは同様である。 保健所や自治体の役所の窓口等で、これらの利用出来る福祉サービスをまとめた冊子を入手する事が出来る。
日本では発達障害者支援法が制定され、以前より支援体制は整ったものの、発達障害を専門とする医師・医療機関が相変わらず少なく、専門医師・機関を見つけて診断や治療までに至るにはまだまだ苦労することが多い。それでも、最近は支援団体や自助団体が各地で設立され、インターネットの普及もあいまって、情報は入手しやすくなりつつある。例えば、ADHDの診療が可能な病院を検索できるサイトも開設されている[92]。
なお、このような検索サイトや医院紹介機関に登録されていなくとも、ADHDを診断できる医師・医療機関は存在する。特に成人ADHDに関しては、Webページなど表向きには小児向けにADHDを診断可としている医師・医療機関でも、実際には成人も診断している場合がある。
多動で落ち着きのない子どもは古くから知られており、ADHDの疾患概念は最近になって現れたものではない。後に小児神経医学などの分野で注意が払われるようになる。
1775年、ドイツの医師、メルヒオール・ヴァイカルドは医学教科書にADHD的な行動を記載し、現在のADHDの「不注意」側面との一致から、おそらく医学文献上のADHD初出とされる。[93]
1902年、小児科医スティルが、王立内科医協会の講演で、「道徳的統制の欠損」という概念を用いながら、攻撃的・反抗的になりやすく、注意機能に異常がある43児童の症例を分析し、講義録がランセット誌に掲載される。これらの中には現在のADHD「混合型」に合致する例が見られるという。[94]
1908年、トレッドゴールドが、早期に発生した未検出の軽度脳損傷「脳微細損傷(MBD,minimal brain damage)」という原因仮説を発表する。加えて北米でエコノモ脳炎(1917-18年)の流行があり、その後遺症(脳炎後行動障害)との類似性が、なんらかの脳損傷を背景に持つ病態という推測を生む。
この流れから「脳損傷児(brain-injured child)」(1947年)の概念が提唱されたが、50−60年代は、確たる損傷の痕跡が見つからないため、ADHDを表す概念として「脳微細損傷(MBD,minimal brain damage)」から、やや表現を抑えた「脳微細機能障害(MBD,minimal brain dysfunction)」が提唱された。70年代には、MBD概念も原因となる脳機能障害が特定できず、疑問が持たれ次第に使われなくなる。
行動異常児の脳の形態的異常を見つけようとする中で、1937年ブラッドリは薬物療法を発見した。彼は腰椎から脳脊髄液を抜いて気体を入れ脳を撮影する手法(気脳造影)をもちいたが、子供には大変な頭痛が残った。緩和のため中枢神経刺激薬(アンフェタミン)を試みたところ、頭痛には無効だったが異常行動や学力の劇的な改善に驚く。研究を進め、治療法としての中枢刺激薬を発見し、薬の性質とは逆に落ち着きが出る子供がいることの理由を考察した。また彼ら中枢刺激剤が有効な子供群の特徴[注 4]を指摘した。それはほぼ今日のADHDの病態であった。
先駆的な薬物療法の研究であったが、精神分析の影響が広まり心理療法が重視されたことなどから、顧みられなかった。ようやく1950年代になって、障害の生物学的な特定はまだ出来なかったが、発症メカニズムの理解や創薬のために応用されはじめる。これとは別に1954年にアンフェタミンに似た中枢刺激剤、メチルフェニデート(リタリン)が発売され、当初はうつやナルコレプシーの症状に用いられたが、最も驚異的な効果を示したのはADHDの症状であり、かつ副作用はより少なかったため使われるようになった。現在のADHDの治療は主にこのような流れをもつ中枢神経刺激薬による薬物療法に依っており、メチルフェニデートは最も頻繁に処方されている。[95][96][97]
脳損傷を原因とするMBDの流れとは別に、50−60年代、原因を問わず主症状がある障害と捉えて「多動児、過活動児」、「多動(衝動性)障害」という概念が提案された(操作的診断の先駆け)。 DSM-II(1968年)で、診断概念として「多動性」が初めて現れ「子供の過活動性反応」が記載される。この延長上でWHOもICD-9(1977年)で「多動症候群(過活動症候群)」が記載された。
1971年、ウェンダーは、MBDの症状に「短く乏しい注意集中」という、後に「注意欠如」と呼ばれる障害の特徴を見出した。 DSM-III(1980年)は、ウェンダーらの成果を取り入れ、「注意欠陥障害(多動有り・無しの)」(Attention Deficit Disorder with and without Hyperactivity)と記載し、あくまで不注意を中心症状と見ていた。
DSM-III-R(1987年)では「多動を伴う」障害に限定し「注意欠陥多動性障害」に変更しやや重点を「多動」に戻す。
DSM-IV(1994年)は、不注意、衝動性、多動性が必ずしも揃わない障害を再び認めて、下位分類で優勢、混合を診断するように変更した。成人や特に不注意面が見過ごされがちな女児などの障害理解を反映し、再び「多動」偏重を抑えた。
日本の発達障害者支援法(2005年)で、発達障害とは「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」[98]と定義し、ADHDを代表的な発達障害のひとつに挙げた。世界では、この時期「発達障害」についての正式な医学的な定義は定まっておらず、ADHDは、行動と衝動性の(DSM)あるいは情緒と行動の(ICD)の障害とされていた。一方、日本では、特に福祉領域ではDSM-5の分類を先取りするように、ADHDも発達障害として認知されており、法律にも反映された。
DSM-5(2013年)では用語や診断基準の骨格はDSM-IVをほぼ踏襲している。近年の脳機能研究の知見を踏まえ、DSM−III以来一貫しつづけた反抗性挑戦性障害、素行障害のグループという分類から、初めて神経発達障害のグループに位置づけられた。[99][100]
アメリカの医学博士のダニエル・エイメン(英語版)によれば、ADHDは日本では脳神経内科、脳神経外科において認知症に利用される脳SPECTにより、下記の6タイプ分類でき、それぞれのタイプによる治療法、投薬すべき薬、症状の緩和に効果があるサプリメントが異なる。 [101] [102]
安静時の活動は正常で、集中時に前前頭葉の下部および外側の活動が低下。 最も目に付きやすいことから、典型的としています。 主症状は「集中困難」「気が散りやすい」「整頓や時間の管理が困難」「多動」「衝動」。 ドーパミンという神経伝達物質の不足がかかわっていると考えられている。 興奮剤による治療が最善。高タンパク質食品による食事療法も効果がある。
安静時の活動は正常で、集中時に前前頭葉の外側で活動が低下します。 主症状は「集中困難」「低意欲」「動作が鈍い」「退屈しやすい」。 頭の中は多動なのにそれが表に表れないし、疲れやすく活動的でない。 ドーパミンという神経伝達物質の不足がかかわっていると考えられている。 治療には、興奮剤と高タンパクの食事が効果的だ。
安静時・集中時ともに前帯状回が活動過多です。さらに集中時には前前頭葉の下部および外側の活動低下が加わります。 このため注意の切り替えが困難になったり、いやな考えや困った行動にとらわれてしまいます。しつこくて心配性。頑固で融通が利かない。あまのじゃく。 このタイプはどうやら、セロトニンとドーパミン両方の相対的欠乏によるものらしい。 このタイプの患者に興奮剤だけを処方すると、自分のかかえる問題しか考えられなくなる。そのため、抗鬱剤(SSRI)と興奮剤、高炭水化物食品による食事療法を組み合わせた治療を行う。
安静時・集中時ともに側頭葉の活動が不足している(まれに過多もある)。さらに集中時には前前頭葉の下部および外側の活動低下が加わります。 主症状として「集中困難」「苛々しやすい」「攻撃的」「不吉な発想をする」「気分の変動が激しい」「学習困難」「愛想がない」「衝動的である」。 側頭葉の活動を安定させて機能を高めることが欠かせない。 興奮剤だけの処方では、かえってイライラが増す。抗けいれん剤や高タンパク食を組み合わせた治療が効果的。
安静時は深部辺縁系で活動が過剰、前前頭葉の下部および外側の活動が不足。集中時も同様。 主症状は「集中困難」「慢性的な低レベルのうつ状態」「思考がマイナス方向に偏る」「悲観的」「エネルギー不足」など。自己意識が全体的に低い。 辺縁系型ADDの症状には、軽度のうつと共通のものが多い。 興奮剤だけでは、情緒不安やイライラを助長してしまう。抗鬱剤とともに、エアロビクスとバランスのよい食事を勧めている。
安静時・集中時ともに大脳皮質全域で活動過剰な部分がまだらに広がっている。集中時では悪化することが多い。また帯状回も活動過剰であることが多い。 主症状は「集中困難」「気の散りやすさが極端」「怒りっぽい・苛立ちやすい」「感覚過敏」「機嫌が悪いことが多い」「反抗的」「おしゃべり」。 極度の他動と注意散漫、極度の衝動性、周囲への刺激への過敏さ、追い立てられるような早口、周期的な気分の変動などがその特徴である。 興奮剤は症状を悪化させる。抗けいれん剤にプロザックなどの抗鬱剤や向精神薬を組み合わせて処方。エアロビクスも効果的。
ダニエルエイメンによれば、うつ病、双極性障害、統合失調病、強迫性障害なども脳画像を脳SPECTでみることにより正確な治療ができ、150年前から問診のみで病気を判断しているのは精神科くらいだという。[103] 日本においては、精神科と脳神経内科、脳神経外科の区分と、保険制度のためこのような診療が行われることは少ない。 また、ダニエルエイメンは米国でエイメンクリニックのラーニングコースを設けている。[104][105]
最近では、うつ病、双極性障害、統合失調病の判断に光トポグラフィーが使われ始めている。[106]そのなかで、ADHDについても光トポグラフィーで薬物治療の効果を確認できることが示された。[107][108]
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ADHDを障害としてではなく、生物の進化の過程で発現した個性であると捉える枠組みもある[109]。薬物による治療が社会適合性を改善する反面、個性をつぶすことにつながるのではとの懸念もあがっている[110]。ADHDだけに限らず、精神的・身体的に他の人とは異なった人たちも、プライドもあれば夢もある個人として扱われるべきであり、障害も含めた個性としての認識をするというアプローチもありうる。
障害を理解したうえでの適切なヘルプは必要ではあるが、本人が問題を起こす理由が障害によるものなのか、単に本人の人生経験などの不足が原因で問題が起きているのかについては客観的な視点から判断することは難しく、それだけをもって線引きをすることが容易ではないという問題もある(後者は後述の「自称ADHD」にあたる可能性がある)。しかしその反面、歴史上の偉人・芸術家・発明家など、天才と言われる人たちの多くがADHDだったのではないかという説がある。
ADHDは知能の低下には影響を及ぼさず、むしろ一般よりもかなり高い知能をしめす者も多いとする主張も存在する。実際には診断基準が確立される以前の人物の知能を測定するすべはなく、信憑性が低い。しかし、その説を根拠に「ADHD優越論」を唱える人や、医学的な診断を経ていないにもかかわらずADHDを公言する「自称ADHD」という人たちが存在し、この点は他の障害には見られない特徴といえる。このような点からも、ADHDへのサポートには他の障害者へのサポートとは異なる面が多くあり、単純ではない。
米国では、ADHDと診断された児童450万のうち100万人が不適切な診断、誤診である可能性が指摘されている。[111]
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