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分数(ぶんすう、英: fraction)とは 2 つの数の比を用いた数の表現方法のひとつである。
分数は中央の括線(かっせん、英: vinculum)と呼ばれる棒線を隔てて、上に分子(ぶんし、英: numerator)、下に分母(ぶんぼ、英: denominator)を配置することにより記述される。たとえば、
などと書けば、この場合の分子は n、分母は d であり、「d 分(ぶん)の n」 (n over d, n d -ths) などと読まれる。
のように分子・分母がさらに分数を含むような分数を繁分数(はんぶんすう、英: compound fraction)という。
のように分母が数と分数の和でありさらにその分母が数と分数であるといった形のものを連分数(れんぶんすう、英: continued fraction)という。
… の部分は有限個にとどまる場合もあるし、無限に分数が繰り返されるものもある。
最も基本的な分数の概念は、自然数あるいは整数から構成されるものである。正の整数 m に対し 1/m のように分子が 1 である分数を単位分数(たんいぶんすう、英: unit fraction)という。これは 1 を m 等分した数量、言い換えれば m 倍したものが 1 となる数を表す。
正の整数 m, n について、分数 n/m を考えることができる。分数 n/m は割り算 n ÷ m の商、あるいは単位分数 1/m の n 倍の数と捉えることができる。また、n : m の比を持つ2つの数量のうち、m に相当する数量の大きさを 1 とした場合、他方の n に相当する数量の大きさは n/m となる。この事実から、分数 n/m で表わされる数のことを指し、2つの数 n, m の比と表現することがある。
分数 n/m と単位分数 1/m はどちらも同じ算術の規則に従い、現在ではどちらかを特別視することはない。しかし歴史的には、古代エジプトにおいて単位分数は基本的な量と考えられており、エジプトの数学者はさまざまな分数を異なる単位分数の和として表していた。その計算の一部はリンド数学パピルスなどに残されている。この事実に因み、単位分数の和をエジプト式分数と呼ぶことがある。
正の分数の中でも、分子が分母より小さい分数を真分数(しんぶんすう、英: proper fraction)という。真分数は 1 より小さいという性質を持つ。このことは n/m を真分数であるとして、1 および n/m の m 倍の数について大小を比較することで確認できる。 真分数でない分数を仮分数(かぶんすう、英: improper fraction)という。真分数は整数ではないが、仮分数は整数でないとは限らない。例えば 2/1, 6/3, 51/17 などは整数だが仮分数として表わすことができる。仮分数が整数である場合、分母は分子の約数になっている。
整数と真分数の和
の + を省略して
と書いた分数を帯分数(たいぶんすう、英: mixed number)といい、「k と n 分の m」と読む。「k か(個、箇、ケ) n 分の m」とも。明治初期の教科書では「か」であったが、その後西洋風に(英語ではこの部分を and と読むように)「と」と読ませる教科書も現れた。1905年以降の教科書では、1910年から1937年までと昭和30年代のもので「と」と「か」が併用されていたほかは、「と」と読ませている[1]。
たとえば 3/2 は 1 + 1/2 に分解することができ、帯分数として 1 1/2 と表わすことができる。
帯分数は掛け算の積と混同されるおそれがある。数 k と m/n の掛け算 k × m/n の積もまた k m/n と表わされるため、表記の上では帯分数と区別できない。このことは、数 k, m, n を具体的に定めない場合のように、数をこれ以上簡約することができない場合に特に問題となる。積と和の混同を避けるため、暗黙には帯分数を用いないことが多い。この記事においても、暗黙に帯分数を用いることは避け、用いる場合には帯分数であることを明示する。
帯分数の記法を使うことにより、1 以上の数を整数と真分数の帯分数として表すことができる。
帯分数の記法は整数部分の計算や、整数との比較をするには便利である。たとえば
と
では帯分数で表わした場合の方が真偽が明白になる。
一方で帯分数の掛け算や割り算は、同じ数に対する仮分数の掛け算や割り算に比べて煩雑である。たとえば
より
の方が検算は容易だろう。
分数は比や割合といった概念に対応しており、0 でない数 a を分母と分子にそれぞれかけても割っても、その分数の表す数は変わらない。
m と n が整数で公約数 d を持つとき、適当な整数 a, b によって
の形に書かれ
となる。このように分母と分子を公約数で割る操作を分数の簡約(かんやく、英: reduction)あるいは簡単に約分(やくぶん)と呼ぶ。m と n が互いに素である分数 n/m を既約分数(きやくぶんすう、英: irreducible fraction)といい、ある分数が既約分数であることを「(その分数は)既約である」という。ある分数が既約である場合、分母と分子の最大公約数が 1 であるため、約分によって別の分数表現を得ることはできない。分数が既約でない場合、その分数は可約(かやく、英: reducible)または約分可能であるという。可約な分数は常に既約分数に直すことができ、逆に既約分数を可約分数に書き直すこともできる。
これらの分数は同じ数を表しているが、右辺の 5/7 は 5 と 7 が互いに素なので既約分数であり、それ以外の 260/364 などの分数は可約である。
分母や分子が整数の場合に限らず、多項式などであっても因数分解が定義されているならば、分母と分子に共通な因数を見出すことができ、その因数が乗法単位元でない場合、約分をすることができる。たとえば
は分数式の約分である。分数式の分子分母における x は不定元であり、特別な値を持たない。x を不定元でなく具体的な数であると見なす場合、上記の分数表現は破綻することに注意しなければならない。左辺の可約な分数に x = 2 を代入した場合、分子も分母も因数として (x − 2) を持つために、分数は 0/0 となり、(通常の代数においては)未定義の数となるが、しかし右辺の既約分数に対しては代入の結果が 1/5 に定まる。どちらの結果が適切であるかは場合によって異なり、x = 2 という条件の下で左辺の分数が得られたならばその数は未定義となるし、右辺の分数が得られたならその値は 1/5 に定まる。
分数は割り算に、割り算は分数に置き換えることができる。
等式
において、両辺に a をかけ分母の無い形
にすることを分母を払うという。
分数ではない数は分母が 1 の分数と見なせる。
これにより全ての演算は分数同士の演算と見なすことができる(a →a/1)。逆に分母が 1 である分数は、分母を省略し分数ではない数としても扱える(a/1 →a)。
分数同士の積は分母と分子それぞれの積になる。
特に分数 a/b は分数 b/a の逆数であるため、これらの積は 1 になる。
分母が同じ分数の和や差は分子の和や差に置き換えることができる。
分母が異なる分数の和や差は分母と分子を定数倍することによって分母を一致させてから行う。a と c の公倍数の1つ L を取る。すなわち適当な数 m, n を用いて
と書けるとき
となる。このように分母を合わせる操作を通分(つうぶん)という。
L としては最小公倍数がよく用いられるが、最小公倍数が分からない場合には単純に2つの数の積 L = a × c を用いればよい。
また、帯分数を仮分数に直す場合にも同様の計算が使える。
分数での割り算はその法数の逆数による積に変換される。
二つの分数が等しい場合
に分数 b + d/a + c について、1 = c/c を掛けて、分子について分配法則を用いれば、
と変形できる。従って、a + c ≠ 0 の場合に
という等式が成り立つ。これを加比の理(かひのり)という。
この式からさらに 0 でない数 p, q が a × p + c × q ≠ 0 を満たすとき
ならば
となる。
同様に、二つの分数について不等式
が成り立つ場合、a × c > 0 なら、
という不等式が成り立つ。 a + c ≠ 0 ならば、分数 b + d/a + c について、1 = c/c を掛ければ、
という不等式が得られ、また、1 = a/a を掛ければ、
という不等式が得られる。従って次の不等式が成り立つ。
分数は正の整数だけではなく、整数全体や実数、複素数等を用いても定義される。除法としての意味からも分かるように分母が 0 の分数には対応する数がない。しかし極限を取り扱う場合などに便宜上、分母が 0 の分数を使うことがある。それらの分数は数として計算に使われるわけではなく、あくまで説明用に便宜的に表現されただけのものであることが多く、その表現がどういう意味で用いられているのかは前後の文脈から判断する必要がある。フランスの数学者、アンリ・ポアンカレは「分数とは横線によって画された2つの整数の集合であって、この記号によって施すことができる演算を規約によって定義する」と説明している[2]。
分母、分子ともに整数である分数で表す事ができる数を有理数という。また分子・分母が数式(関数)であるような分数を分数式(分数関数)といい、特に多項式の商として表される分数式を有理式とよぶ。分数式まで視野に入れると、何かに占める割合といった分数の意味は薄れるが、それは商(除法)の概念がそうであるのと同様である。
積演算が非可換である場合、除法が左右で区別されるように分数も割る方向の左右で区別される。
抽象代数学において分数は、環に十分な逆元を追加することで新しい環を作り出す環の局所化あるいは全商環などの概念として一般に捉えることができる(分数環あるいは商の環というような言い方もある)。
可換環 R の部分集合 S は、R の単位元 1 を含み、S の任意の2つの元 s, t について、それらの積 st が再び S の元となる(つまり乗法について閉じている)場合、S は R の積閉集合という。可換環 R とその積閉集合 S に対し、R × S における二項関係 ∼ を
で定めると、これは R × S における同値関係を与える。R × S をこの同値関係で割ったものを S−1R で表し、(r, s) の属する同値類を r/s などで表す。このとき、S−1R には、もとの環 R における演算と両立する和や積といった環としての演算が、すでに上で述べた規則に従って与えられる。
可換環 R に対して、R の零因子でない元の全体は積閉集合である。積閉集合 S をそのようなものとする場合、環 S−1R は R の全商環と呼ばれる。また、積閉集合 S が R の素イデアル I の補集合として与えられている場合には、S−1R の代わりにしばしば RI と書いて R の I における局所化と呼ぶ。なお、R が整域ならば、このような同値関係は簡約できて
によって与えられ、これによって得られる全商環は可換体の構造を持つ。これを分数体あるいは商体と呼ぶ。
全商環や商体といった構造はある種の普遍性を与えており、たとえば整域の商体はもとの整域を含む最小の体を与えることなどが確かめられる。
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