出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2018/05/21 14:24:08」(JST)
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。
出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(2010年3月) |
光学顕微鏡(こうがくけんびきょう)は、可視光線および近傍の波長域の光を利用する、顕微鏡の一種。単に顕微鏡と言う場合、これを指す。
光学顕微鏡は、ふつう試料に光を照射して、透過光や反射光あるいは蛍光など試料が発する光をレンズによって結像させて観察する。観察可能な倍率は一般に数十倍から数百倍、最高で2千倍程度。
顕微鏡技術のことを顕微鏡法(microscopy)、検鏡法という。また、試料を顕微鏡で観察できる状態にしたものをプレパラートと呼び、通常はスライドガラスに貼り付けた試料を適当な屈折率の封入剤とともにカバーガラスの下に封じたものを用いる。
顕微鏡の中では最初に開発されたものであり、単一のレンズによる観察法の拡張として開発された。1群のレンズのみで構成された顕微鏡を単式顕微鏡(Simple optical microscope)、2群以上のレンズで構成された顕微鏡を複式顕微鏡(Compound optical microscope)と呼ぶ。前者ではオランダのレーウェンフックが自作の顕微鏡で様々な生物学的発見をしたことで知られる。以下では主として後者の複式顕微鏡について述べる。
顕微鏡の光学系は17世紀に発明されて以来長らく経験と試行錯誤に基づき設計制作されてきたが、19世紀後半に至りカール・ツァイス社のエルンスト・アッベによって理論的基礎が確立された。当時カール・ツァイス社で製作された顕微鏡のスタイルはひとつの標準となり、世界中のメーカーがそれに倣った顕微鏡を製作したほか、その基本的なデザインは21世紀に至っても学習用顕微鏡などに受け継がれている。
俗にカール・ツァイス型とも呼ばれる同社で20世紀初頭に製作していたタイプの顕微鏡では、対物レンズと接眼レンズが鏡筒の上下に一直線に配置されている。観察しやすくするために光学系全体を傾けられるようになっているが、試料を液体で封じた一時プレパラートなどでは傾けることができない場合もある。
現在ではプリズムを用いて光路を屈曲させ、対物レンズは垂直(プレパラートは水平)を保ちつつ接眼レンズは斜めとして観察しやすくしたものが一般的。観察者のさらなる負担軽減のため、対物レンズから入った光をプリズムで分割して左右の接眼レンズに振り分けるタイプが多い。このような顕微鏡は双眼顕微鏡(binocular microscope)と呼ばれることもあるが、業務用途ではむしろ単眼の方が特殊である。撮影装置用の鏡筒をもつ三眼式のものもあり、撮影時には光路を撮影装置側に切り替える。
焦準装置(ピント合わせ機構)は、かつては鏡柱とそこに固定されたステージに対して鏡筒を上下させる構造であったが、屈曲光学系の採用に伴い、鏡筒の方を鏡柱と一体化してステージおよびコンデンサを上下させる構造が一般化した。この構造は光学的付加部品や撮影装置などの取り付けに有利である。
上記の基本構成は有限遠補正光学系と呼ばれ、対物レンズと接眼レンズとの距離が固定されるなど設計の自由度が低く、また光路上に落射照明(後述)のためのハーフミラーなどを挿入すると像に悪影響が出た。これに対し1990年代から普及してきた無限遠補正光学系においては、対物レンズは中間像を結ばず平行光線を射出し、鏡筒内の結像レンズ(チューブレンズ)で中間像を結ぶ。平行光線となっている部分の長さは自由に変更でき、またハーフミラーなどを挿入してもゴーストや収差が発生することがない。なお、有限系と無限系の対物レンズはその機能が全く異なるため、互換性はない。
光学顕微鏡は、観察したい物体の光の透過率など、物体が光に及ぼすさまざまな効果を利用するものである。可視光線を使う利点は、他の電磁波よりも簡素な光源を用いる事ができる点、そして元々可視的である為に、観察者の眼に届く前に可視光へ変換する必要が無く、色の情報が直接得られる点である。
しかし一方で、光学顕微鏡の性能は光の物理的性質の制約を受ける。例えば、光学顕微鏡における分解能の限界は可視光線の波長に因る部分が大きい。このような制約から逃れる為に、より短波長域のX線の透過や反射を利用したX線顕微鏡や、電子線の加速電圧によって分解能が制御できる電子顕微鏡が開発された。また、トンネル効果を用いたトンネル顕微鏡や原子間力を用いた原子間力顕微鏡など、表面物理学を応用した顕微鏡も実用化されている。
無色透明ではあるが屈折率が異なる部分からなる試料を観察する為の顕微鏡。屈折率が大きな媒質中を通る光は、屈折率が小さい媒質中を通る光よりもその位相が遅れる。この位相差に関わる回折光を利用する顕微鏡である。コンデンサーと対物レンズにより位相のずれた回折光同士を干渉させ、位相差を明暗に変えて観察する。この方法により、ほとんど透明な生物細胞の内部構造を観察することが可能である。位相差コンデンサーと位相差用対物レンズを利用する。1934年[要出典]オランダのゼルニケ (Frits (Frederik) Zernike)が考案。1953年ノーベル物理学賞受賞。
光の偏光性と干渉性を利用して、無色透明な細胞や金属表面の段差などを観察する顕微鏡。偏光素子とウォラストンプリズム(ノマルスキープリズム)によって光線を分離して試料面を通過させ、試料で生じる光路差の微分値を像面でコントラストに変える。試料面での光線の分離量をシアー量といい、分解能やコントラストに影響する。現在の顕微鏡では、スミス・ノマルスキー型という構成が多い。
物体は内部構造や結晶構造によって、光の振動方向を変える偏光性を有する。この偏光性を観察する方法である。光学顕微鏡のコンデンサーの場所にポラライザー(偏光板)を置き、対物レンズの後ろに遅延版とアナライザー(偏光板)を置き、試料の偏光性や複屈折性を明暗や色の違いとして観察する。偏光板の回転に応じて、結晶などは鮮やかな色で観察される。岩石などの結晶や、生物試料に含まれる結晶質の物質(細胞外マトリックスや異常沈着物のそれぞれ一部など)の観察に用いられる。
偏光顕微鏡の欠点であるアナライザーの回転の煩わしさと、得られた画像データの解析処理の複雑さを簡便にするシステムとして、近年 LC-Polscope が発明された。これは電子的に制御できる偏光板と画像解析装置を組み合わせたもので、結晶構造の偏光方向(slow axis orientation)と偏光の強さ(retardation)が一度の観察で得られる。無染色、無侵襲で細胞骨格が観察できるため、人工授精させた家畜の受精卵の選別などに用いられている。
蛍光顕微鏡とは、試料から発せられる蛍光を観察する顕微鏡のこと。試料の固有の自発蛍光を観察する場合の他、蛍光色素による染色を行った上で観察する場合、あるいは遺伝子組み換えにより蛍光性タンパク質を発現させる場合などがある。
通常の明視野顕微鏡と異なり、蛍光顕微鏡ではある特定の波長の光(励起光)だけを試料に照射する。試料が発する蛍光の波長は励起光のものとは異なるので、フィルタなどで蛍光のみを取り出すことができる。
光源としてよく用いられるのは高圧水銀ランプである。高圧水銀ランプが発する光は、いくつかの特定の波長の光が混ざったものである。これは水銀の放射スペクトルの波長で、254 nm、365 nm(紫外線)、405 nm(青色光)、546 nm(緑色光)などである。この光をフィルタやプリズムによって分割し、目的の波長の光だけを励起光として照射する。
光源の光を顕微鏡の鏡筒の途中(接眼レンズと対物レンズの間)から波長フィルタを兼ねたダイクロックミラー(dichroic mirror)で導入し、対物レンズを通して、試料の中の観察部だけに励起光を当て、同じ対物レンズを用いて蛍光を観察する落射式蛍光顕微鏡が一般的である。通常の明視野顕微鏡に蛍光顕微鏡用のオプション機器を取り付けることで蛍光顕微鏡として使える場合が多い。
得られる像は、暗い視野の中に蛍光を発する部分が光って見えるものであり、通常は迷光を防ぐため暗室で観察するか装置の一部が暗箱になっている。接眼レンズを通しての肉眼観察に加えて、1990年代以降はCCDカメラを用いた観察装置が一般化してきており、肉眼では観察不可能な微弱な蛍光を、冷却CCDなどの高感度CCDカメラを用いて可視化することも行われている。
CCDカメラを撮影に利用することのもう1つの利点は、コンピュータを用いた画像処理が容易になったことである。単に「画像のコントラストの強調が簡単になった」といった利点のみではなく、『複数画像を比較計算することにより、焦点面以外からの光を除く』といった処理も可能になった[2](Deconvolution)。このような数学的画像処理により共焦点レーザー顕微鏡にせまる空間解像力を得ることも可能になっている。
光源としてガスレーザー、半導体レーザー、そして白色光源も光源として用いられる。レーザーを対物レンズから走査し、励起された試料から放出された蛍光(ないしは試料から反射した光)をピンホールを通した後に検出装置を用いて検出、コンピューター上にて画像を再構成する。ピンホールを用いることによって同一焦点(共焦点)面以外からの蛍光をシャットアウトすることができるので、開口数に依存した厚さの光学切片像を得ることができる。たとえばArレーザー(波長488nm)で開口数1.33のレンズを用いたときには厚さ約200nmの光学切片を得ることとなり、透過型電子顕微鏡には大きく劣るものの、従来の光学顕微鏡よりも高い空間解像力を容易に得ることができる。透過型電子顕微鏡の場合と比べて、試料作成が簡単であることも相俟って、1990年代以降、生物学分野にて飛躍的に普及した。欠点は価格が高いことである。
光学系としては、主に生物用に使用される蛍光用共焦点顕微鏡と、主に工業用に使用される反射型の共焦点顕微鏡の2種類がある。生物用は、細胞や組織の研究に、工業用は材料の表面検査や半導体の検査などに用いられている。
走査方式は、試料を固定した状態でレーザーをミラーや回転ディスクにより走査するビーム走査型と、光ビームは固定して試料(スライドガラス)を縦横に走査する試料走査型がある。後者はDNAマイクロアレイの測定などに使用されている。
前項に記述のある、コンピューターを使った画像処理による画質・分解能の向上は、共焦点レーザー顕微鏡でも同様に有効であり、光学限界に迫る、あるいはそれを超える空間解像力を得ることも可能になってきている。
蛍光顕微鏡の照明に全反射を利用する方法。光は屈折率の大きい媒質から屈折率の小さい媒質に、ある角度より大きな角度で入射すると、全反射が起こる。全反射の際には境界面に光のしみ出し(エバネッセント波)がある。プレパラートなどで、屈折率の大きいスライドガラスと、それより小さい水の境界面でもこれらの現象が起こるので、蛍光顕微鏡でガラス面で全反射になるような照明を用いると、ガラス面の近傍の試料のみ選択的に蛍光観察ができる。蛍光検出力は生体1分子をも達成し、一分子細胞生物学に貢献している。1990年代、日本で大きく発展した。
レーザーラマン顕微鏡とも呼ばれる。レーザー光を試料に照射したとき発生するラマン散乱光を検出することで画像を得る。ラマン散乱光の波長(波長シフト量)は、試料に存在する分子、結合、結晶格子等の振動数に依存する物質固有の値である。従って試料のラマン散乱スペクトルから、その試料に含まれる物質を同定し、同時に分布を見ることが可能となる。ラマン散乱光は微弱であり、従来はその検出やイメージングに要する時間が現実的なものではなかったが、光学系の工夫とプロセッサの発達に伴う演算時間の短縮により、顕微鏡への実装が可能となった。共焦点光学系により空間分解能を得るもの、狭帯域干渉フィルタによりラマン散乱光を分離するもの、非線形ラマン効果を利用するものなどがある。物質の同定能力としては質量分析やX線元素分析に及ばないが、未処理の対象を生きたまま観察できる点は、非常に大きなアドバンテージである。
教育用顕微鏡の場合の例を示す。
典拠管理 |
|
---|
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
リンク元 | 「light microscopy」「光顕」「光顕法」「光顕観察」「光学顕微法」 |
拡張検索 | 「光学顕微鏡法」「光学顕微鏡的」「近接場光学顕微鏡」「走査型近接場光学顕微鏡」 |
関連記事 | 「顕微鏡」「顕微」「光学」「鏡」 |
.