- 英
- phosphorylation
- 関
- リン酸エステル化、リン酸化
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/03/01 18:06:46」(JST)
[Wiki ja表示]
リン酸化(リンさんか、英語: phosphorylation)は、各種の有機化合物、なかでも特にタンパク質にリン酸基を付加させる化学反応である。この反応は、生化学の中で大きな役割を担っており、2013年2月現在、MEDLINEデータベースのタンパク質のリン酸化に関する記事は21万にも及んでいる。
リン酸化は、「ホスホリル化」とも呼ばれる。リン酸化を触媒する酵素は一般にキナーゼ (Kinase) と呼ばれ、特にタンパク質を基質とするタンパク質キナーゼを単にキナーゼと呼ぶことも多い。
なお、ATP生合成(ADPへのリン酸化)を単にリン酸化と呼ぶこともある(「酸化的リン酸化」等)。
目次
- 1 タンパク質のリン酸化
- 2 その他のリン酸化
- 3 出典
- 4 関連項目
- 5 外部リンク
タンパク質のリン酸化
歴史
1906年にフィーバス・レヴィーン (Phoebus A.T.Levene) が、ロックフェラー医学研究センター(アメリカ)でタンパク質卵黄素(ホスビチン、リンタンパク質)にリン酸塩があることを確認した[1]。そして1933年までには、フリッツ・アルベルト・リップマンと共に、カゼイン中にホスホセリンがあることを発見していた[2]。しかしながら、ユージン・P・ケネディが、初の「酵素によるタンパク質のリン酸化」を発表するまでにはさらに20年を要した[3]。
反応
タンパク質の可逆的リン酸化は、原核生物、真核生物の両方の生物に存在する重要な調節機構である[4][5][6][7]。この過程は、キナーゼ(リン酸化)とホスファターゼ(脱リン酸化)と呼ばれる酵素が関係している。多くの酵素と受容体はリン酸化と脱リン酸化でスイッチを入れたり切ったりしている。結果、可逆的リン酸化は、多くの酵素と受容体に構造変化をもたらし、それらを活性化または非活性化させている。リン酸化は通常、真核生物のタンパク質のセリン、トレオニン、そしてチロシンの残基に起こる。セリン、トレオニン、チロシン残基に加えて、リン酸化は原核生物のタンパク質の塩基性アミノ酸残基、ヒスチジン、アルギニン、リシンにも起こる[4][5]。Rが極性をもつアミノ酸残基へのリン酸の付加は、タンパク質内の疎水性の部分を極端に親水性に反転させることができる。この経路では他のタンパク質の疎水性と親水性残基の相互作用を通してタンパク質の構造変化を導入することができる。
リン酸化の調節の例として、p53癌抑制タンパク質がある。p53タンパク質の調節はとても多く[8]、18以上のリン酸化サイトを含んでいる。活性化したp53は細胞周期の進行を抑えたり(いくつかの要因によっては逆にする)、アポトーシス細胞死[9]を導くことができる。この活動状態は、細胞の状態がダメージを受けているか生理機能が通常の健康な個体を妨げているときのみ生じる。
非活性化シグナルのとき、タンパク質は再び脱リン酸され作用を止める。これは多くのシグナル伝達の形式の機構で、例として光が網膜の感光性細胞によって処理される過程がある。
リン酸化を含む調節作用
- 反応エネルギーを必要とする生物学的熱力学
- 身体の水分の含有量の恒常性維持のための浸透圧調整によるナトリウムイオンとカリウムイオンの細胞膜通過輸送時のNa+/K+-ATPアーゼのアスパラギン酸残基のリン酸化
- 酵素阻害剤の調停
- インスリンシグナリング経路の一部分であるAKT(タンパク質キナーゼB)によるGSK-3酵素のリン酸化[10]
- C末端Srcキナーゼ (Csk) によるsrcチロシンキナーゼ (sarc) のリン酸化は、キナーゼドメインのマスクが閉じている (off) 状態で構造を巻き付けながら、その酵素の中で構造変化を誘導する[11]。
- 「認識ドメイン」経由で重要なタンパク質間相互作用
- 細胞質の構成要素である細胞膜に固定されたNADPHオキシダーゼのリン酸化。現在のマルチタンパク質酵素は、食細胞の作用のタンパク質間相互作用の調節で重要な酵素の役割を果たしている[12]。
- タンパク質分解の重要性
- 1990年代後半に、ATP依存するユビキチン/プロテアソーム経路でいくつかのタンパク質のリン酸化が認められた。これらの標的タンパク質は、リン酸化のときだけE3ユビキチン合成酵素のための基質になる。
その他のリン酸化
グルコースが細胞に取り込まれると直ちにリン酸化が起こり、グルコース-6-リン酸が生成される。このリン酸化は、グルコースが細胞外に拡散してしまうのを防ぐためである。リン酸化により電荷が導入されるので、グルコース-6-リン酸は容易に細胞膜を通過することができない。リン酸化されたグルコースは解糖系等の代謝経路に入る。
詳細は「グルコース-6-リン酸」を参照
出典
- ^ P.A. Levene and C.L. Alsberg, The cleavage products of vitellin, J. Biol. Chem. 2 (1906), pp. 127–133.
- ^ F.A. Lipmann and P.A. Levene, Serinephosphoric acid obtained on hydrolysis of vitellinic acid, J. Biol. Chem. 98 (1932), pp. 109–114.
- ^ G. Burnett and E.P. Kennedy, The enzymatic phosphorylation of proteins, J. Biol. Chem. 211 (1954), pp. 969–980.
- ^ a b A.J. Cozzon (1988) Protein phosphorylation in prokaryotes Ann. Rev. Microbiol. 42:97-125
- ^ a b J.B. Stock, A.J. Ninfa and A.M. Stock (1989) Protein phosphorylation and regulation of adaptive responses in bacteria. Microbiol. Rev., p. 450-490
- ^ C. Chang and R.C. Stewart (1998) The Two-Component System. Plant Physiol. 117: 723-731
- ^ D. Barford, A.K. Das and MP. Egloff. (1998) The Structure and mechanism of protein phosphatases: Insights into Catalysis and Regulation Annu Rev Biophys Biomol Struct. Vol. 27: 133-164
- ^ M. Ashcroft, M.H.G. Kubbutat, and K.H. Vousden (1999). Regulation of p53 Function and Stability by Phosphorylation. Mol Cell Biol Mar;19(3):1751-8.
- ^ S. Bates, and K. H. Vousden. (1996). p53 in signalling checkpoint arrest or apoptosis. Curr. Opin. Genet. Dev. 6:1-7.
- ^ P.C. van Weeren, K.M. de Bruyn, A.M. de Vries-Smits, J. Van Lint, B.M. Burgering. (1998). "Essential role for protein kinase B (PKB) in insulin-induced glycogen synthase kinase 3 inactivation. Characterization of dominant-negative mutant of PKB. J Biol Chem 22;273(21):13150-6.
- ^ Cole, P.A., Shen, K., Qiao, Y., and Wang, D. (2003) Protein tyrosine kinases Src and Csk: A tail's tale, Curr. Opin. Chem., Biol. 7:580-585.
- ^ Babior, B.M., (1999). NADPH oxidase: an update. Blood 93, pp. 1464–1476
関連項目
- リン酸基
- キナーゼ
- タンパク質キナーゼ
- タンパク質間相互作用
- シグナル伝達
- 光リン酸化・酸化的リン酸化:ADPのリン酸化、つまりATP合成反応を意味する。
- Phos-tag:広島大学の医薬分子機能科学研究室が開発した機能性低分子および、これを利用しての新しいリン酸化生体分析解析技術。
外部リンク
- タンパク質修飾(リン酸化など)に関するデータベース
- チロシンリン酸化 - 脳科学辞典
タンパク質の一次構造と翻訳後修飾 |
全般 |
タンパク質生合成 - ペプチド結合 - タンパク質分解 - ラセミ化
|
N末端 |
アセチル化 - ホルミル化 - ミリストイル化 - ピログルタミン酸 - メチル化 - 糖化反応
|
C末端 |
アミド化 - GPIアンカー - ユビキチン化 - SUMO化
|
リシン |
メチル化 - アセチル化 - アシル化 - ヒドロキシル化 - ユビキチン化 - SUMO化 - デスモシン - ADPリボース化 - 脱アミノ(酸化的脱アミノ)
|
システイン |
ジスルフィド結合 - プレニル化 - パルミトイル化
|
セリン/トレオニン |
リン酸化 - グリコシル化
|
チロシン |
リン酸化 - チロシン硫酸化 - ポルフィリン環結合 - リボフラビン結合
|
アスパラギン |
脱アミド - グリコシル化
|
アスパラギン酸 |
スクシンイミド形成 - リン酸化
|
グルタミン |
アミノ基転移
|
グルタミン酸 |
カルボキシル化 - ポリグルタミル化 - ポリグリシル化
|
アルギニン |
シトルリン化 - メチル化
|
プロリン |
ヒドロキシル化
|
←アミノ酸
二次構造→
|
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- JAPANESE AUTHOR リン酸化反応を多角的に解析し、シグナル伝達系の全貌に迫る!
- 反応-拡散-駆動系として理解する細胞の形態変化(最近の研究から)
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 関
- phosphorylate
[★]
- 英
- phosphorylation、phosphorylate
- 関
- リン酸化、リン酸化反応
[★]
- 英
- phosphorus P
- 関
- serum phosphorus level
分子量
- 30.973762 u (wikipedia)
- 単体で化合物としてはP4、淡黄色を帯びた半透明の固体、所謂黄リンで毒性が高い。分子量124.08。
基準値
- 血清中のリンおよびリン化合物(リン酸イオンなどとして存在)を無機リン(P)として定量した値。
- (serum)phosphorus, inorganic 2.5–4.3 mg/dL(HIM.Appendix)
- 2.5-4.5 mg/dL (QB)
代謝
- リンは経口的に摂取され、小腸から吸収され、細胞内に取り込まれる。
- 骨形成とともに骨に取り込まれる。
- 腎より排泄される。
尿細管での分泌・再吸収
- 排泄:10%
尿細管における再吸収の調節要素
臨床検査
- 無機リンとして定量される。
基準範囲
血清
- 小児:4-7mg/dL
- 閉経後女性は一般集団より0.3mg/dL高値となる
尿
測定値に影響を与える要因
臨床関連
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3
[★]
- 英
- (生物)response、(化学)reaction、respond、react、responsive
- 関
- 応答、応答性、反応性、返答