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ランゲルハンス島(ランゲルハンスとう、islets of Langerhans)またはランゲルハンス氏島(ランゲルハンスしとう)とは、膵臓の内部に島の形状で散在する、内分泌を営む細胞群である。膵島(すいとう)とも呼ばれる。ドイツ人病理学者ランゲルハンスが発見した。
膵臓は、アミラーゼなどの消化酵素を十二指腸内へ分泌する外分泌腺と内分泌腺のランゲルハンス島から成る。膵臓の90%以上は外分泌腺が占め、内分泌細胞の塊が島のように浮かんで存在している。膵島はα細胞、β細胞、δ細胞、ε細胞、PP細胞の5つの細胞と膵島内に栄養を運ぶ血管により構成される。α細胞はグルカゴン、β細胞がインスリン、δ細胞がソマトスタチン、ε細胞がグレリン、PP細胞が膵ポリペプチドを分泌する。
魚類を除く多くの脊椎動物の膵臓内に散在する球形の内分泌腺組織で、主にインスリンを分泌し血糖の調節を行う。魚類のランゲルハンス島は膵臓ではなく肝臓近辺に散在する。その径100~300μm。ランゲルハンス島はヒトの膵臓1mgにつき10-20個あり、膵臓全体で100万個以上存在するといわれる。齧歯類では、膵島の中心部にβ細胞が位置し、α、δ、PP細胞が周辺部に位置するが、ヒトにおいては、この分布は齧歯類ほどは明確ではない。鳥類においては、むしろα細胞が中心部に位置することが知られている。
ランゲルハンス島を構成する細胞が腫瘍化したものを膵内分泌腫瘍という。膵島細胞腫ということもある。これにはα細胞由来のグルカゴノーマ、β細胞由来のインスリノーマ、δ細胞由来のソマトスタチノーマ、PP細胞のPPオーマなどがある。
生体または死体から摘出した膵臓よりランゲルハンス島を分離し、糖尿病患者に移植することができるようになった。これを膵島移植という。カナダのグループによりエドモントンプロトコールと呼ばれるステロイドを用いない新しい免疫抑制法が導入されてから、膵島の成着率は飛躍的に改善したが、それでも、一人の患者の治療に何回かの膵島移植が必要となることが多い。現在のところ、長期に渡ってインスリン治療から離脱できる患者は少数であり、膵臓移植のほうが成績は良い。門脈内へランゲルハンス島を注入するだけであり、膵臓移植と比較して移植を受ける者の体への負担が軽いうえ、合併症のおそれも少ない[1]。日本では2004年に始まったが、2007年にBSE問題で中断された[1]。当時は移植過程で、牛の脳の成分を一部利用した薬が使用されていたためである[1]。その後、牛の脳を使わない手法も開発され、2010年からは高度医療評価制度が適用されることになった[1]。課題としては、臓器等の提供者が少ない日本で、十分なランゲルハンス島を得ることが難しいこと(提供された膵臓からランゲルハンス島の分離に成功する確率は50%程度)や、高額な費用などが挙げられる[1]。
村上春樹、安西水丸共著のエッセイ集に「ランゲルハンス島の午後」があり、作中ではランゲルハンス島を空想上の概念・理想郷として実体化している。また、山本正之は、ランゲルハンス島を楽園に見立てて体内を冒険する「冒険ランゲルハンス島」という楽曲を制作している。
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