出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/04/13 08:15:31」(JST)
使い捨て(つかいすて)とは、工業製品などを1回ないし数回の使用ののち廃棄する行為、あるいは、そうするように設計された製品である。従来は消耗品を交換したり洗浄したりて繰り返し利用していた同等品に対して、使用後に捨てることができる(あるいは捨てなければならない)製品の差別化戦略のためにそう呼ばれる。ディスポーザブル (disposable)とも。
使い捨てが行われる工業製品は、主に一定の大量生産手法が確立され、また安価に製造できる物品である。特に使い捨てを前提とする工業製品では、その用途に向くよう設計段階から構造が簡略化され、従来の使い捨てを前提としない製品に比べて耐久性に劣る・もしくは一度の使用によって使命を終える反面、その単価は極端に安くなっている。反面、機能から利用頻度や製品の価格・耐久性から後述するような理由など諸々の事情によって、一概に「どちらが理に適っているか」はまちまちであり、その意味で使い捨てとそうで無い製品が平行して利用され続けている分野も見出せる。
なお、その工業製品分野が出来て後、一貫して「一回の利用でその使命を終える」ような分野は、あまり意識して「使い捨て」と表現されることは少ない。例えばロケットは、ロケット弾にせよ宇宙船にせよ、一度の使用でその役割を終えるものとして「使い捨て」とみなされてこなかった。しかしスペースシャトルをはじめとする宇宙往還機の登場以降、これに対比させる意味で使い捨て型ロケット等と呼ばれるようになった。
使い捨て製品が選択される理由は以下に挙げるようなものがある。
使い捨て製品が使われる理由の一つには、衛生に対する配慮があり、例えば注射に用いられる注射針や理髪店で使われるかみそりは、感染症予防の観点から使い捨て製品が広く用いられている。宿泊施設に用意される歯ブラシや飲食店で利用される割り箸なども、衛生(特に精神衛生上の配慮)から使い捨て製品が利用されている。
なお、こういった衛生上の配慮に立つものでは、使い捨て製品の性質を無視して利用すると、問題が発生する。使い回した注射針による集団感染はこれが顕著なケースだが、一般的に利用されるソフトコンタクトレンズの長期使用も、問題を多々発生させうる[1]。
使い捨ての利点として、繰り返しの利用を前提とする製品では一度の使用の後に使用前の状態に戻すための作業と設備を必要とするが、使い捨てであればそれが簡略化ないし省略できる場合、積極的に使い捨てが利用される。また、破損や汚損に際しては破棄するなどして新しい製品を利用することで、問題を回避できる利点がある。例えば、食器が使い捨てであるなら流しは必要ない。この利点は、こと催し物や露店などで大量の食器を必要とするが、その各々を一々洗えない場合に効果的で、また災害などで炊き出しを行う際に調理のための水が貴重であるために、ましてや洗浄のために水資源を消費できない状況では、食器の汚れごと破棄できるため大きな利点となる(→紙皿)。
また、必要最低限の機能を備える廉価な使い捨て製品が必要な量だけあれば、次々に使い捨てることで一定水準の状態を維持できる。この考え方で一般的に見られるものとしては、カッターナイフが挙げられる。この廉価な刃物は、簡単な操作で刃先を随時鋭い状態に保つことが可能で、使い捨てる諸々のデメリットを考慮したとしても、使用中に鈍ってしまうために研ぐ必要のあるナイフ一般には無い利便性を生んでいる。
めったに使わないが、使うときは必要性が高い種類の道具類にも使い捨ての製品が見られる。例えば携帯型の暖房器具である懐炉は機能や構造・性質も全く異なるが同じように利用できる製品が流通している。
こういった製品の登場は大量生産の技術が進歩した20世紀に入ってのものだが、その一方で大量生産・大量消費において発生するごみ問題のように、大量に廃棄された製品のなれの果ての処分に掛かる費用や廃棄物の処分方法に絡む環境問題などもあり、20世紀末頃から注目を集めている循環型社会への移行も推進されている。また長らく使い捨て製品が主流であった分野にも、繰り返し利用可能な製品が使われるようになっている。
例えば牛丼チェーン店は従来人的コストや食器洗い機対応コストはなおのこと、衛生的な使用感から割り箸を標準的に使っていたが、業界大手の松屋フーズは2008年1月[2]に、最大手の吉野家ホールディングス(吉野家の経営企業)も2009年3月[3]に食器洗い機に対応した合成樹脂で耐久性のある箸へと切り替えを行った。
ただ、使い捨て製品の内にも、少しでも環境に配慮するという意図から、工夫を凝らした製品もみられ、例えば割り箸にしても、建材など他の用途には使いにくく、単純に廃棄されれば環境負荷を生んでしまう間伐材や端材を材料とすることで、逆に資源の有効活用や森林の育成に繋がるという視点も存在する[4]。
使い捨て製品が、資源の浪費や環境への負荷を生んでしまうことは前述の通りだが、その観点から単なる使い捨てではなく、ある程度は再利用を視野に入れた製品へと発展する分野も見出せる。
レンズ付きフィルムは、登場当初の1990年代までは「使い捨てカメラ」と呼ばれていた。ただしレンズ付きフィルムは後に一部の部品や素材が共通化され、写真フィルムメーカーの別なく現像所に出せば部品ごとに分解され、再使用可能な部品は再び製品に組み込まれ、ケースは破砕され素材としてリサイクルされて製品の製造に利用され、再び市場に流通するようになっている。
家庭用の洗剤などの容器は、元来は製造・流通段階から消費者が内容物を使い切るまで利用される使い捨てだったが、簡易な詰め替えパッケージに充填された製品が一般向けに販売され、これを詰め替えることで容器を再利用でき、また簡易な詰め替えパッケージが廃棄に際して小さく折り畳めるなどするため、パッケージに消費される資源を減らせるほか、廃棄されるゴミの分量を減らせるとして、利用されるようになった。
比喩では、耐久性があるにも関わらずコストを度外視して使用した事物を遺棄する場合に、これを指して「使い捨て」とも表現する。例えばアメリカンカジュアルでは洗濯して伸びたり縒れたTシャツは格好が悪いとして、汚れてしまったら新品のTシャツと交換するなどがある。物を使い捨てで消費するかどうかは所有者・使用者の意識の問題である場合が大きく、たとえ高価なものであろうと一度の使用で放棄すればそれは使い捨てであり、使い捨てを目的として製造されたものでも捨てずに使用し続ければ使い捨てとはならない。
使い捨てという言葉は、ひとつには高度経済成長下の大量消費社会を背景に、まだ使えるものもどんどん捨てて新しいものを使う風潮に対しての用語として定着した時代がある。その当時は部品や包装などにも工夫すれば再利用可能なものを作れるのに、使い捨てた方が簡単だと言うことで、それを可能にしない風潮なども見られた。
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なお一般的な製品からは外れるが、使い捨てのロケット砲として「ロケット弾に発射装置が付属している」という発想の使い捨て兵器も存在する。M72 LAW・AT4・S-400 などがある。
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