出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/02/28 15:51:03」(JST)
オオクチバス属 | ||||||||||||||||||||||||
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オオクチバス Micropterus salmoides
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Micropterus Lacépède, 1802 |
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英名 | ||||||||||||||||||||||||
Black bass | ||||||||||||||||||||||||
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ブラックバス (black bass) とは、スズキ目・サンフィッシュ科の淡水魚のうち、オオクチバス属 Micropterusに属する8種(11亜種)の魚の総称である。
目次
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原産地の北米では、五大湖周辺からミシシッピ川流域、メキシコ国境付近までの中部及び東部、フロリダ半島などに広く分布し、汽水域でも生息可能である。
日本ではオオクチバス・コクチバス・フロリダバスの3種が外来種として記録されており、このうちオオクチバス・コクチバスは特定外来生物に指定されている。特に日本での分布が広く個体数が多いオオクチバスを主に指す場合が多い。しばしばバスとも略される。かつてクロマスという和名で呼ばれたこともあるが、サケ科のマス類と混同されやすいためその呼称は現在では使用されていない。ブラックバスという呼称自体はもともとコクチバス(スモールマウスバス)の幼魚期の体色が黒いことから慣習的に呼ばれるようになった名称である。
食用にもするが、主にゲームフィッシングの対象魚として世界的に人気が高い。昨今、木村拓哉や反町隆史などがテレビ番組でバスフィッシングを見せるなどして人気が出た。ブラックバス釣りの愛好家は、「バサー (basser)」や「バス・フィッシャー (bass fisher)」、「バス・アングラー(bass angler)」などと呼ばれる。
尚、オオクチバスが世界の侵略的外来種ワースト100に、オオクチバス・コクチバスが日本の侵略的外来種ワースト100に選定されている。
ブラックバスは、体長の割に引きが強いことや、季節によって一定のパターンをもって行動することから、釣りの対象魚として人気がある。日本で50cm以上の物は「ランカーサイズ」としてバサーを魅了する。
疑似餌(ルアー)を使っての釣りが一般的。他にエビやドジョウやミミズなどを餌にした釣り方が知られる。
ルアーを使った釣りには一定のルールの下に行われるトーナメントと呼ばれる競技会があり、プロフェッショナルのバス釣りが存在する。競技会では基本的に、各参加者が一定時間内に釣り上げたブラックバスの中から、一定の匹数の合計重量を競い、勝敗を決めるのが主流。プロ選手は「バスプロ(バスフィッシング・プロフェッショナル)」と呼ばれる。代表的なプロ選手としては今江克隆、並木敏成、田辺哲男、清水盛三、菊元俊文等。
国内にJB、WBS、TBC等のプロトーナメントの開催団体がある。また、アメリカのプロ団体BASSツアーやFLWツアー等では大森貴洋、深江真一、清水盛三などの日本人選手が活動している。
また、反町隆史、小池徹平、速水もこみち、吉瀬美智子、岡野昭仁、今江敏晃、矢野燿大、関本賢太郎など、バスフィッシングが好きな芸能人・スポーツ選手も多い。
現在ではバス釣り=ルアーフィッシングが定着しているが、生き餌を使用したウキ釣りも可能でありむしろこちらの方が匂いや餌の活きがよいため釣果が期待できる。難点はミミズ等を餌にした場合にバス以外の外道が釣れやすいこと。
現在、オオクチバスはすべての都道府県で生息が確認されている。日本で合法的に放流されている自然湖は、オオクチバスの漁業権が認められている神奈川県の芦ノ湖、山梨県の河口湖、山中湖、西湖の4湖のみ。これらに関しては、放流は許可されているものの、生体魚の持ち出し禁止、流出河川にバスが逃げ出さないよう網を設置する等の措置がとられている。また、オオクチバスが認められている管理釣り場があるが、これらに関しても流出箇所にバスが逃げ出さないよう網等を設置することが義務付けられている。また新潟県、秋田県(暫定措置)、琵琶湖など在来種の保護などのために再放流を禁止した県、湖、川などもある。琵琶湖の各漁港には「ギルやブラックバスなどは、非常においしい魚です。持ち帰って食べましょう。」という看板がある。
オオクチバスの亜種であるフロリダバスに関しては、奈良県の池原貯水池にしか移植されていなかったものが、近年琵琶湖等で発見されるなど、人為的な放流が行われていることが示唆される[5]。
コクチバスは、アユやゲンゴロウブナ等の種苗の産地では繁殖していないため、種苗への混入は想定できない。そのため、水系単位でみた場合、その分布は放流によるものと容易に判断できる[5]。
分布拡大の主要因として「他の琵琶湖の固有種(ハスやワタカなど)が全国に分布しているということ」を根拠に「琵琶湖産アユ種苗やヘラブナへの混入により生息域を拡大したのが大きい」とする主張がある。しかし、外来生物法における特定外来生物の選定時に開かれたオオクチバス小グループ会合において日本魚類学会自然保護委員会外来魚問題検討部会が提出した資料によれば、以下の理由によりその頻度はそれほど高くないと考えられている。
また「一個人程度の放流が上手く行くかどうかという疑問の余地がある」とし、これを理由に「最たる原因は種苗は他魚の移入に混じっていた」とする主張がある。また「琵琶湖固有種だったハスが種苗により全国に広まった例などもあることから、すくなくともオオクチバスに限っては認めざるをえない要因である」との主張がある。しかし、混入に関しては上述の日本魚類学会の資料にあるとおり主要因とは考えづらいこと、またバスの個人による放流に関しては種苗の産地で繁殖していないコクチバスが最初の発見から10年余りで少なくとも19都道県47水域で存在が確認されていることや、過去に個人が放流して繁殖が確認されたことが記載されている雑誌・書籍[6]があることから、上の主張には根拠がない、とする反論がある。
上記瀬能委員資料によれば、沖縄県を除く全都道府県でブラックバスの移植放流が漁業協定規則等で禁止された後でも、明らかに放流により分布が拡大したと推測される根拠があるとされており、特定外来生物に指定すべきという主張の根拠のひとつとなっている。
日本国内の19府県47地点から得られた(オオクチバス、コクチバス、フロリダバス)247個体のミトコンドリア mtDNA ハプロタイプを分析した。結果は、オオクチバスでは10のハプロタイプが知られているが、7タイプを確認した。山中湖には7タイプが生息しているが、ブラックバスに対し漁業権を設定しているため、資源量を維持する目的で全国各地から移植されている事が、ハプロタイプからも裏付けられた。琵琶湖ではフロリダバスとオオクチバスのハプロタイプが確認された。
アメリカ国内のハプロタイプ分布は十分に解明されておらず、日本に移入された個体の系統の由来地域の解明も不十分である。アメリカ及び日本国内のハプロタイプ分布が十分に解明されると、日本への移入が既知の1925,1972年以外に行われていたのかの解明が行えると期待される。
ブラックバスは魚食性が強く、日本列島に移入されたことで在来種が減ったとする主張があり、またこの問題を実証的に論じた学術論文も存在している。
環境省は、生態系に関わる被害および農林水産業に関わる被害があるとして、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律に基づき、ブラックバスを特定外来生物に指定し、防除を行っている。[7]
ブラックバス問題に関連する議論として、過去にWikipediaに投稿されたものを中心にまとめる。
環境省はこのような事態を重くみて2005年6月より施行された「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」により、ブラックバスのうちオオクチバスおよびコクチバスの輸入、飼養、運搬、移殖を、原則として禁止することとした。
方法としては網により捕獲する方法、一定の場所に巣を作って産卵する性質を有するため卵を除去する方法がある。後者の方法では人工産卵床を設置し産卵後にそれを取り除くのが効果的である。小規模な溜池では水抜きによってブラックバスとそれ以外の魚を分け、バスを除去した後、在来魚を戻すという方法がある。近年は船に積載した電気ショッカーによる一括駆除も試みられている。
他にも、ブラックバスの習性として、オスがメスの卵に放精後、他のオスが卵に近付くのを阻む習性があることから、体格が大きく強いオスを精子が体外に出ないようにする手術で不妊化させ、そのオスに積極的に卵の受精を妨害させようという計画もある。この方法は滋賀県水産試験場で研究されており、体長30cmを超える大型の個体を捕獲して不妊化させることで、相当数の受精を妨害できると見ている。これにより旺盛なバスの繁殖率を低下させ、また一括駆除などと違い環境への悪影響も無い。
水位調節が比較的自由に行える農業用のため池やダムでは、産卵後から孵化までの期間に減水させ産卵床を露出することで稚魚の孵化を阻止することも可能である[9]。
ブラックバスの害魚論が問題になっている一方、河口湖や山中湖などブラックバスを漁業指定対象魚とし、入漁料徴収の対象としている湖もある。これらの湖をはじめ、全国にはブラックバスフィッシングの愛好家を対象とするビジネスを展開する多数の事業者(貸しボート業、売店、飲食施設、宿泊施設等)があり、地域経済の中心にこの魚を置いているところも少なくない。また、ブラックバスは釣魚としては優秀で、ブラックバス愛好家は日本釣振興会によれば300万人に上るといわれており、愛好家の多い釣りである。
釣具の種類・釣法も年々開発され、新作のルアーも新開発される。
ブラックバス擁護派を含め、同種にはなんらかの規制を行うことは必要不可欠との認識が、専門家および釣り関係者の中では支配的である。生態系の保護・維持と経済魚としてのブラックバスの活用を上手くすみ分けることがひとつの大きな課題となっている。
奈良県下北山村の池原貯水池はブラックバスを積極的に観光資源として活用し、また放流も行い、全国のバサーにとっては「ブラックバスの聖地」と注目されている。特にこのダム湖は日本では珍しいフロリダバス(正確にはオオクチバスとの交雑個体群)がおり、60~70センチのサイズが釣れることでも知られる。
日本では生臭くて料理に向かない魚というイメージが強いが、悪臭の元は皮の部分であり、皮を剥がして調理すれば白身で淡泊な味の美味な魚である。 鯉、ウナギなどの淡水魚と同様に、きれいな水に入れて泥抜きを行うことで身の臭みは軽減すると言われているが(芦ノ湖などのオオクチバスは匂いが少なく美味)、外来生物法によって生体での持ち出しが禁止されており、実際には捕獲後すぐに絞めることが求められ「臭い魚」という扱いを受けることが多い。
実際にアメリカでは水産資源としてフライやバター焼き・ムニエル等に調理され普通に食されている魚である。近年、日本でも従来は駆逐のために捕獲後は廃棄処分されていたブラックバスを調理し、給食の副食として提供している自治体や、蒲鉾・魚肉ソーセージの材料や鮒寿司の鮒の代用にすることで、釣られたブラックバスを再放流につなげず、食材として消費し、駆除に役立てようとしている業者が少なからず存在する。
ブラックバスの駆除に熱心な琵琶湖近辺では、特産の鮒寿司と同様ななれずしを作り、ビワスズキという名称で試験的に販売しているところもあり、琵琶湖周辺やブラックバスフィッシングの有名地である芦ノ湖周辺などでは、フライなどのブラックバス料理を売り物にしているレストランなども存在する。また日本料理人である村田吉弘は、ブラックバスの白身で淡白な味わいを評価し、積極的に日本料理の食材として取り入れようとしたこともあるが「まな板などが臭くなってしまうので二度とやりたくない」と言っている。 バス料理愛好家などからは、調理方法として揚げ物(フライ)・焼き物(ソテー)・煮物・ムニエル等の料理法が推奨されている。必ず火を入れる調理方法が提唱されているケースもあるが、滋賀県農政水産部水産課が発行している「遊漁の手帖」には、「美味で、フライ、ムニエル、刺身などにして食べる」と、生食での食用にも適している[1] (PDF)と記されている。一方で、ごくまれに生食での寄生虫による健康被害が報告されている[14]。
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