出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/01/22 09:31:43」(JST)
リスク比(りすくひ)とは疫学における指標の1つで、一般的には「相対危険度(relative risk)」として利用される。相対危険度(相対リスク)は、暴露群の非暴露群における疾病の頻度の比であり、主に閉じたコホート研究で「累積率比(cumulative rate ratio)」が用いられる。
症例対照研究では「リスク比(risk ratio)」を計算できないため、「オッズ比(odds ratio)」で代用する。オッズ比には対称性があり、症例対照研究のみならず横断研究やコホート研究でも計算できる。また、頻度が稀な疾病の場合は「リスク比はオッズ比に近似」できる。オッズ比は、ロジスティック回帰モデルでも利用される。
開いたコホート研究では、人年法を用いた「率比(rate ratio)」を計算するか、コックス比例ハザードモデルを用いた生存分析により「ハザード比(hazard ratio)」を計算できる。リスク比は「一定期間内の平均の発生率の比」であり、追跡期間中のリスクが一定と仮定しているが、ハザード比は「ある瞬間における発生率の比」であり、追跡期間中にリスクが変化している場合も考慮される。
疾病あり | 疾病なし | 計 | |
---|---|---|---|
暴露あり | A | B | A+B |
暴露なし | C | D | C+D |
計 | A+C | B+D | T |
RR:相対危険度
相対危険度は、暴露群の非暴露群に対する発症リスクの比であり、一般的には一定期間における「累積率罹患率」の比である。また、単位期間における「罹患率」の比が使用される場合もある。
コホート研究では「相対危険度」「寄与危険度」ともに算出できるが、症例対照研究では算出できず、算出が可能な「オッズ比」を「相対危険度」として代用する。
RR:修正相対危険度(修正リスク比)
修正オッズ比に対応して、両者のリスクの分子に0.5を加算して算出したリスク比を「修正相対危険度(修正リスク比)」と呼ぶことがある。
OR:オッズ比
オッズ比は、暴露群の非暴露群に対する発症オッズの比である。発症オッズは、「発症リスク/(1-発症リスク)」であり、「発症するリスクと発症しないリスクの比」である。
オッズ比には対称性があり、症例群の対照群に対する暴露オッズの比を求めても同じ値となる、そのため、コホート研究でも症例対照研究でも横断研究でも「オッズ比」は算出が可能であり、共通した指標として使用できる。また、症例対照研究において発症リスクが小さい場合は、「オッズ比」は「相対危険度」の近似値となる。
OR:修正オッズ比
オッズ比は、確率ではなくオッズを用いるため、オッズの分母が0になる場合(発症しない確率が0の場合)は計算できなくなる。そのため、分割表内に0の度数がある場合は、それぞれの度数(オッズの分子・分母)に0.5を加算して算出した「修正オッズ比」が使用される。
対数オッズ(log Odds=log(P/(1-P))は、確率を変数としたロジット関数(log(P/(1-P)=log P-log(1-P)=logit (P)=log Odds)で表される。
確率は、オッズを変数としたロジスティック関数で表される。
exp (bn):各パラメータの調整オッズ比
ロジスティック回帰モデルでは、「あり/なし」の2値変数における確率を変数としたロジット関数が、オッズの対数(対数オッズ)となることを利用する。これにより確率は、オッズを変数としたロジスティック関数(ロジット関数の逆関数)によって表される。暴露群および非暴露群において、それぞれオッズの対数(対数オッズ)が、複数の説明変数の線形和で表される。説明変数が2値変数の場合は、各説明変数の係数が、その要因の「調整オッズ比」の対数(対数オッズ比)となる。説明変数が連続変数の場合は、各説明変数の係数が、その要因が1増加した場合に増加するオッズの対数(対数オッズ)となる。
HR:ハザード比
h(t):ハザード関数(暴露群のハザード)
h0(t):基準ハザード関数(非暴露群のハザード)
ハザード関数は、生存分析において「追跡時間t後の瞬間死亡率」である。「追跡時間t後の生存者が(t+⊿)後に死亡する条件付き確率」が「追跡時間t後から(t+⊿)後における単位時間の死亡率(平均死亡率)」であり、それの「⊿t→0への極限」をとった値が「追跡時間t後の瞬間死亡率」となる。生存分析は、イベントが「生存/死亡」のような「あり/なし」の2値変数であれば、疾病の発生率などにも応用でき、イベント発生までの期間を解析してハザード比を求める。
指数関数近似では、生存関数S(t)は時定数mの生存期間tを変数とした減少性の指数関数で表される。
時定数mは、生存関数S(t)の対数と-(1/t)の積で表される。指数関数近似ではハザードは一定と仮定されており、時定数mがハザードとなる。
exp(bn):各パラメータの調整ハザード比
コックス比例ハザードモデルでは、暴露群と非暴露群において、時々刻々と死亡や罹患のリスク(ハザード)が変化する場合を対象とするが、暴露群と非暴露群のハザードの比がどの時点でも一定と仮定(比例ハザード性を前提)して解析する。ハザード比の対数が、複数の説明変数の線形和で表され、各説明変数の係数が、その要因の調整ハザード比の対数となる。
「リスク差」は、一般的には「寄与危険度(attributable risk)」として利用される。
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