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魚類 | |||||||||||||||
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様々な海水魚
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分類 | |||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||
Pisces Linnaeus, 1758 | |||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||
fish |
ウィクショナリーに魚類、さかな、うおの項目があります。 |
魚類(ぎょるい)は、生物学的には脊椎動物亜門 Vertebrata に属する動物群のうち、両生類と有羊膜類を含む系統である四肢動物を除外した動物群である。
基本的に一生の間水中生活を営み、えら(鰓)呼吸を行い、ひれ(鰭)を用いて移動する。体表はうろこ(鱗)で覆われている。一部の種[1]を除き、外界の温度によって体温を変化させる変温動物である。
魚類は地球上のあらゆる水圏環境に放散し、その生息域は熱帯から極域、海洋の表層から深層、また内陸の淡水域まで多岐におよぶ。その生態や形態も実に様々である。魚類全体の種数は2 万5000 - 3 万近くにものぼり、脊椎動物全体の半数以上を占めている。
大きさは種による。現存種で最大のものは体長13.7mに達するジンベエザメである。また化石種を含めると、約1億6500万年前のリードシクティス・プロブレマティカスが、推定の仕方に違いがあるが28m以上もしくは16.7mの個体が発見されている。最小のものは Paedocypris progenetica の7.9mmである。
冒頭文の定義では煩雑な表現をとったが、これは現在の系統学の立場からこの群を定義するにはこれしかないからである。古くは単に魚と考えればひとくくりに出来る感覚であり、20世紀半ばまではそれらを魚綱として一つにまとめ、その下に無顎類、軟骨魚類と硬骨魚類の三群を置くのが普通であった。
しかし、現在の分類学的観点からすると単系統群ではなく側系統群であり、互いにかなり異質な系統を包含している。たとえば硬骨魚類は四肢動物とともに軟骨魚類や無顎類と別の単系統群を構成するし、硬骨魚類と四肢動物、軟骨魚類はともに無顎類とは別の単系統群である顎口上綱を構成する。そのため、これをまとめる概念として魚類を説明しようとすれば、このような表現しか取れないのである。ちなみに広義の魚類として最古のものはミロクンミンギアであると言われている。
進化の観点から言えば、ヒトを含む陸上脊椎動物の遠い祖先も魚類である。脊椎動物は水中で多様な群に分化し、その一部から陸上進出が行われ、それらがさらに多様な進化を遂げた。現在の魚類はこれらのうち、水中段階にとどまっているもの(上陸後に水中に戻ったものを除いて)をまとめたもの、といってもよい。ある意味でやはり陸上進出によって多様化した群の中で原始的構造をとどめたものをまとめたものであるシダ植物という群の位置づけに近い。
なお、定義に関連していえば、日本語の基礎語彙としての「魚(さかな)」と学術用語である「魚類」とは別語である。 後者が分類学の手法でしか定義されないのに対し、前者は元来、生物学の知識の全くない人でも扱うことのできる語彙で、それで差し支えない範囲の中において用いられるものであった。 たとえばヤツメウナギを「魚」と呼ぶことはあり得るが、その文脈の中においてはそれは誤りではなく、またその用例自体が「魚」という言葉の語義を成り立たせる基礎にもなっているのである。
解剖学的に見ると、魚類の体は水の特徴(空気に比べて粘性が高い、溶存酸素が少ない、光を吸収し透過し難いなど)に適応したものだと言える。そして脳の構造上、痛みを感じないといわれる。
ごく一般的な魚類の体型は、水の抵抗を受けにくい流線型である。活発に泳ぎ回る魚はこの体型が多い。
体は頭部、胴部、尾部の3つに分けられる。
頭部に含まれるものは、眼から上あごの先端部までの吻部、えら蓋、頬部(眼から前鰓蓋骨まで)および下あごである。頭には長いひげやとげを持つものもいる。鼻孔には様々な形や深さのものがあるが、多くの場合には、前鼻孔と後鼻孔とが皮下で連結したU字型の管になっており、鼻孔と口腔とは繋がらない。吻の前部にある前鼻孔から入った水は、そのまま後部にある後鼻孔から流出するようになっている。
胴部は頭部以降から肛門の位置までで、外見上は臀鰭の前までである。消化器官は全てここまでに含まれる。
尾部は肛門以降、尾びれまでである。魚類は、背面の筋肉が胴部から尾部へと連続的に発達しているので、外見上は尾の区別がはっきりしない。つまり、胴部から尾部をまとめて運動に使用しているとも言える。魚類は他の類に比べ、尾部の比率は比較的高く、一般の魚類でも3割以上、ウナギ目の魚などは7割以上が尾である。
魚は水中の少ない溶存酸素を利用するために、えら(鰓)という器官を発達させている。硬骨魚類では、えらは頭部の後方にある1対の鰓蓋骨(さいがいこつ、いわゆるえらぶた)の内側にあり、4対の鰓弓(さいきゅう)という弓状の骨に支えられて存在する。鰓弓からは一次鰓弁が何本も伸び、さらに一次鰓弁上には表面積を拡げるための二次鰓弁が多数存在している。えらには血管が通っており、外界(海水、淡水)と直接ガス交換を行う。そのためえらは赤く見える。えらはガス交換の他にも、塩類細胞によるイオンの排出・取り込みやアンモニアの排泄を行っている。
ひれ(鰭)は魚が泳ぐのに欠かせない手足のようなものであり、ときには地上を這ったり、空中を飛んだりするのにも使われる。体につく位置により次のように分類される。
胸びれと腹びれは左右1対あり、これらを対鰭(ついき)、それ以外を不対鰭(ふついき)と呼ぶ。また背びれの数は1基、2基、3基と数え、前から順に第1背鰭、第2背鰭、第3背鰭と呼ぶ。
ひれの形態は、軟骨魚類、肉鰭類、条鰭類で大きく異なる。
ひれが遊泳以外の目的に進化している場合もある。また進化の過程で、一部のひれが退化していることも多い。
うろこは1つ1つは小さな板や棘(とげ)のような形のもので、これが多数集まって体の表面を覆う。外部の衝撃から皮膚や筋肉、内臓を保護する役割を担う。魚種によって大きさや形は異なり、うろこを持たない魚もいる。硬骨魚類のうろこには樹木の年輪に相当する模様が刻まれており、魚の年齢を知るのに役立つ。
うろこは大きく4種類に分けられる。現存する硬骨魚類の多くは円鱗(えんりん)あるいは櫛鱗(しつりん)を持つ。ヒラメのように体の部分によって円鱗と櫛鱗を有する種類もいる。
詳細は「鰾」を参照
鰾は、魚類のうち原則として条鰭類が持つ器官である。俗に浮き袋と呼ばれる。
魚の体は海水より比重が大きく、何もしなければ沈降してしまう。そこで、簡単に浮力を得るために鰾を発達させている。鰾は伸縮性に富む風船のような器官で、ガスを溜めたり抜いたりして浮力調節を行う。
原始的な鰾は消化管から枝分かれしており、水面に口を出して空気を出し入れする開鰾(有気管鰾)である。しかし一部の魚類は消化管から分離した閉鰾(無気管鰾)を持ち、鰾の周囲にある奇網からガス腺と呼ばれる細胞を介してガスを取り込む。
鰾は四肢動物やハイギョの肺と相同である。かつては鰾が肺に進化したと思われていたが、実際は、肺から鰾が進化した。初期の硬骨魚類は、淡水生活の中で空気呼吸の必要から肺を発達させたが、水中生活へ適応した条鰭類が鰾を持った。
そのため、硬骨魚類が肺を獲得する前に分岐した軟骨魚類には鰾も肺もない。軟骨魚類にはサメ・エイが含まれ、鰾の代わりに肝臓に脂質を蓄積することで浮力を得ている。条鰭類が肺を鰓に変化させる前に分岐した肉鰭類は、鰾の代わりに肺を持つ。ただし例外的に、現生シーラカンスのラティメリアは脂肪で満たされた鰾を持つ。
条鰭類でも一部の原始的な目では、鰾は肺の機能を残しており、鰓呼吸とは別に肺呼吸を行う。また、底生魚類や深海魚の中には、鰾を二次的に喪失したか非常に小さくなったものが多い。
詳細は「魚眼」を参照
魚類の目は哺乳類の目とは異なり、4種類の錐体細胞を持ち、紫外線領域の視覚をも持つ。このため、人の目にはオスとメスの区別がほとんどできない魚でも、紫外線の反射率がオスとメスで大きな差があることから、魚自身には両者の視覚上の差は明瞭にみえている可能性がある。
魚類の分布は世界中に渡る。その環境によって異なった種が見られる。ただし魚類はすべて水中生活である。その生活している塩分環境によって、便宜的に2 つに分けられる。すなわち、海で生活する海水魚、河川や湖沼など内陸の淡水で生活する淡水魚である。しかし、海水と淡水の混じり合う河口などの汽水域で生活する汽水魚や、海水・淡水どちらでも生きられる魚もおり、この区分は必ずしも厳密でない。また、海水魚は塩湖に生息する魚も含めて塩水魚と呼ばれることもある。一部のものは生活史の中で海と陸を往復し、これを通し回遊という。
海では海岸線から外洋、深海まであらゆる所に生息する種がある。特に水深200m 以深の深海に生息するものを深海魚という。インド洋から太平洋に多くの種があり、大西洋には種数が少ない。これは大西洋が魚類の誕生よりあとに生じ、その後の外からの進入に頼らざるを得なかったためである。
陸水では湖や池、川に多くの種があり、洞窟の中だけに見られる魚、地下水に生息するものもいる。陸水は陸と海水によってそれぞれ孤立しているので、淡水魚には地域による種分化が見られる。しかし、上位分類群はごく広い分布域を持つものが多い。これは魚類の進化の多くが大陸移動以前から起こってきたためである。
陸上は魚類の生活には適さないが、これは陸で体を支えるしくみを持たないことと、呼吸器が水から呼吸するようにできていることが大きい。例外的に鰓以外で肺や腸、皮膚でも呼吸を行い、あるいは体の下面にあるひれで体を支えて陸を移動できるものがあり、干潟や湿地など陸上である程度生きられる魚、さらに発達した鰭で陸上を這って移動したりする魚もいる。しかしこれらの大部分も主な生活は水中であり、トビハゼのようにむしろ陸にいる時間が長いものでも、皮膚の乾燥には耐えられないし、生殖や仔魚・稚魚(幼魚)の生活は水中である。
同様に、乾期に水が無くなる場所では魚は生息できず、水が入るたびに外から侵入することになる。しかし、一部の種は乾燥期を特殊な方法で乗り切る。たとえば肺魚には泥の中に繭を作ってそこにこもり、水がない季節を耐える。卵生メダカの一部は、卵が土の中で生き延び、水が入ると孵化する。しかし例えばアルテミアのように完全に乾燥した状態に耐えるものはない。
繁殖形態は卵生および胎生(卵胎生)である。卵は卵黄(栄養分)の割合が比較的多く、卵割は盤割を行うものが多く、小さな胚が大きな卵黄にくっついたような状態で発生がすすむ。孵化した仔魚は卵黄を抱え、しばらくは卵黄の栄養分を使って成長する。サメ類、エイ類、カダヤシ、カサゴ、ウミタナゴなどの仲間には、体内で卵を孵化させて子供を産む卵胎生のものもいる。
繁殖習性も様々である。卵胎生のものは体内受精だが、大多数は体外受精を行う。その際に多数が集まって抱卵放精を行うものから、雌雄一対によるものまで様々な配偶行動が見られる。
魚類の幼生は、すべて少なくとも魚類の体制を備えて孵化する。その点では直接発生的である。しかし、その中では群によっては成魚との間にそれなりに変化があり、中には見かけ上の姿が大きく変わるものも存在する。
とくに真骨魚類は生まれたばかりの幼生を仔魚(しぎょ)、少し成長した幼生を稚魚(ちぎょ)といって区別する。両者の間には明確な形態的変化があり、これを変態と呼んでいる。稚魚は体の大きさこそ小さいが、成魚と同じ形質を備えている。それに対して仔魚は成魚と形態的にもかなり異なっている場合が多く、知識が無ければ、仔魚を見て成魚の姿を想像することは容易ではない。実際、いくつかの魚種で〜幼生と名前があるものは、発見時に親とは別の種だと思われて付けられた名前の名残であることが多い。ただし、全ての魚が変態を行うわけではなく、仔魚・稚魚の区別がはっきりしない種もある。
仔魚期に特徴的な形態をとることの意義は、多くの場合、浮遊生活への適応である。まだ十分な遊泳力を持たないため、水平方向に泳げないばかりか、そのままでは海底に沈んでしまう。そこで体に大きな棘や糸状の構造物を生やしたり、ひれを大きくしたりして浮力を得ている。棘は捕食に対する抵抗でもある。また、外見からは分からないが、体液の代わりに比重の軽い水や油、気体を溜めて沈降を防いでいる場合もある。
無顎類であるヤツメウナギの場合、幼生はより単純なアンモシーテス幼生の時期を持つ。これはこの類そのものがより簡単な体制を持つということもあるが、これをナメクジウオに対応させる考えもある。
生物の進化の歴史では、脊椎動物の中で無顎類が最も古く生まれ、次いで顎口類の魚が現れたと推定されている。
シルル紀後期からデボン紀にかけて魚類[2]は一気に種数を増やし、それ以降はほぼ水中における優占的な地位を維持している。その出現はさらに古く、カンブリア紀のものである澄江生物群のミロクンミンギアなどが現在知られる最古の無顎類と言われている。それ以外の群はデボン紀には化石が出そろうが、一部はシルル紀後期からも発見されているため、その頃にはおおよそ各群が分化していたと考えられる。
「動物は海から生まれた」と言われるが、魚類の進化を見ると、その当初から淡水での生活が大きな役割を果たしていたと考えられる。魚類の分類群ごとに見ると、軟骨魚類と全頭類は大部分が海産であるが、無顎類にも淡水産があり、硬骨魚類の中で原始的なものと考えられる肉鰭類や全骨類などは大部分が淡水産である。化石的証拠から見ても、魚類の進化に於いて、かなり早い時期に淡水への侵入がおこなわれたと見て良い。
現在の硬骨魚類は、おそらく淡水で進化し、肺を持っていた。その一部が陸に進出して両生類へと進化した一方、海に戻って大発展を遂げたものが現在の魚類の大部分を占める真骨類になったものと思われる。肺はその機能を失い、浮き袋として用いられている。逆に考えれば、海中に留まっていた原始的な魚類は過去の大量絶滅でほとんどが絶え、それがゆえに淡水に進出したものの生き残りが海への回帰と大発展を遂げられたといえる。
魚は世界中で食物として利用される。四足の獣を食べることを禁じられていた仏教徒の多い国ではより重視される。捕らえるために様々な方法が開発されている。代表的なのは銛(もり)などで突く方法、網ですくう方法、釣りなどであり、それぞれに各国で、あるいは対象によって様々な方法が工夫されている。中には動物を使役する(鵜飼いやカワウソ等)などの特殊な方法もある。それらは食料確保のためでもあるが、趣味としても行なわれている。
魚を取ることをまとめて漁、仕事としては漁業という。また、食用の魚種を飼育することを養殖という。
特に四方を海に囲まれた日本人にはなじみ深い食材で、古くから「食べてはいけない魚」と「食べられる魚」に分けられ、「不味い魚」「美味しい魚」という実用的な観点から魚の種類への関心が高い。貝類や甲殻類とあわせて魚介類と言うことも多く、それらは魚屋で扱われる。魚の字は元は「いを」「うを」、食用(副食物)としては単に「な」と訓じていたが、これが酒の肴(な)であることから、「さかな」とも訓ずるようになった。
焼いたり煮たり、あるいは揚げたりと様々に料理されるが、生で食べるのは日本の刺身など少数派である。傷みやすいものが多く、保存のために塩漬けや干物、燻製、あるいは油漬けなど処理される例も多い。直接的な食品でない例としては鰹節や魚醤がある。
魚には、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのω-3脂肪酸である高度不飽和脂肪酸が多く含まれる。魚に含まれるDHAの多くは、ラビリンチュラ類の1属である Schizochytrium 属などのような海産の微生物によって生産されたものが、食物連鎖の過程で魚の体内に濃縮されたものである。また、ω-3脂肪酸の高度不飽和脂肪酸の摂取は心臓病の予防に良いと言われている[3]。
DHAは脳のリン脂質に含まれる脂肪酸の主要な成分である。神経細胞は、軸索や樹状突起などの凹凸の多い入り組んだ構造を有しているため、膜成分が極端に多くなっている[4][要高次出典]。DHAは、神経細胞の細胞膜を柔らかくし、樹状突起を増やしたり、軸索の成長を促して脳・神経系の健全性を保つ[5][要高次出典]。 また、DHAが不足すると脳内セロトニンの量が減少し、多動性障害を引き起こすという報告がある[6] 。アルツハイマー型痴呆[7][8]やうつ病などの疾病に対してもDHAの摂取は有効であるといわれている。シーフードをたくさん摂取するところほど母乳内のDHAは高く、産後うつ病の有病率は低かった。DHAを含むω-3脂肪酸を十分に摂取しないと、母体から胎児への転送により、妊娠・出産期には母親には無視できないω-3脂肪酸の枯渇の危険性が高まり、その結果として産後のうつ病の危険性に関与する可能性が指摘されている[9]。
一時期流行したおさかな天国と呼ばれる歌で、「魚を食べると頭が良くなる」というフレーズがあるが、上記の健康影響を考えるとあながち無根拠とも言えないところがある。
魚介類100g中の主な脂肪酸については魚介類の脂肪酸を参照のこと。
食料の他に肥料や飼料・加工品の原料などとして使われる。また、釣りや熱帯魚鑑賞は趣味として広く親しまれている。日本は周りを海に囲まれていることもあって、世界有数の魚大国である。各地に水族館が建てられ、世界中の魚を見ることができる。
動物分類学の黎明期に於いて、魚類は魚上綱(ぎょじょうこう)として1 つの綱に分類されていた。魚上綱とは、軟骨魚綱、硬骨魚綱、絶滅した板皮綱および棘魚綱の4 つの綱から構成される巨大な分類群であった。しかし、以下の理由から現在ではあまり用いられず、また分類学上も使用は好ましくないとされる。新分類では、脊椎動物亜門の下に無顎上綱と顎口上綱を設け、そこに魚類および四肢動物を含める。
また、魚類からは四肢動物(両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)が分岐して生まれている。すなわち魚上綱と呼ばれる生物のグループは側系統群(単系統群から一部の群を除いたグループ)であり、純粋な分岐分類学では有効な生物分類の単位とはされない。
もっとも「魚類」は「爬虫類」などと同様に今後も実用性の観点から使用されていくことであろう。ただし「魚類」の範囲がどこまでか(無顎類を含むかどうか等)は曖昧さが残る部分である。
分類学上の問題点も無視できないが、本稿では無顎類も示すこととする。また全体の分類体系はNelson の分類に従った。
魚類を分類するにあたって使用される特徴のうち、特に注目されるのが鰭の形態である[10]。背鰭の数、胸鰭と腹鰭の位置、脂鰭の有無などが、分類上の重要な形質となる。例として、系統的に古い魚類(コイ目など)では腹鰭は体の中央付近に位置するが、比較的高等な魚類(スズキ目など)ではずっと前方に移動し、胸鰭のすぐ下であったり喉の位置にあったりする。胸鰭と腹鰭を近づけて連動させることで、より効率の良い運動が行えるようになったものと見られている。また条鰭類の魚類では、各々の鰭が何本の棘条と軟条で構成されているかによって、系統的に近い種類・遠い種類を見分けることができる。これらの鰭の構成は分類上極めて重要な要素であるため、専門的には略号を用いて「D.XII,9; A.III,8; P1.26〜28; P2.I,5」のように表し、これを鰭式(きしき)と呼ぶ。アルファベットは鰭の種類(D:背鰭、A:臀鰭、P1:胸鰭、P2:腹鰭)を、ローマ数字・アラビア数字はそれぞれ棘条・軟条の数を表している。
分類に用いられる形質として、骨格や鱗もまた重要な要素である。より進化した高等な魚類では、骨の癒合・省略が進み、全体の数が少なくなる傾向がある。これは脊椎動物全体に見られる特徴で、ウィリストンの法則と呼ばれる[11]。鱗は上述したような形態の区別の他、側線を基準に計測した鱗の数(側線鱗数や横列鱗数)が分類形質となる。
魚類は様々な体型や体色をしており、これらは見た目にわかりやすい特徴ではあるが、少なくとも目のレベルでの分類に使用されることは少ない。体型や体色は系統よりもむしろ環境への適応を色濃く反映している。科・属・種などの下位分類では、発光器の数と位置(ハダカイワシ類)、交接器の形態(アシロ類)など多種多様な形質が分類に用いられている。
詳細は「無顎類」および「:en:Agnatha」を参照
詳細は「顎口類」および「:en:Gnathostomata」を参照
詳細は「板皮類」および「:en:Placodermiomorphi」を参照
詳細は「軟骨魚類」および「:en:Chondriomorphi」を参照
詳細は「硬骨魚類」および「:en:Teleostomi」を参照
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肢帯 (limb girdle) とは、脊椎動物の体幹中にあり四肢の基部となる骨格組織である。肩帯と腰帯の2つがある。
前肢の基部となる肢帯を肩帯、後肢の基部となる肢帯を腰帯と呼ぶ。前肢と後肢は魚類の対鰭(胸鰭・腹鰭)に由来しており古くは7対の対鰭をもつ魚類も存在したが、肩帯・腰帯以外の肢帯を持つ脊椎動物は未だ知られていない。四肢本体(自由肢)とは本来別の物であるが、文脈上自由肢も含めて言及されていることがある。
その主な機能は以下の2点である。
前肢の基部となる。構成骨は肩甲骨・前烏口骨・烏口骨・鎖骨・上鎖骨・間鎖骨などである。腰帯に比べて構成骨も多く、歴史も古い。詳しくは肩帯を参照のこと。
後肢の基部となる。構成骨は腸骨・恥骨・坐骨が基本となる。この三種の構成骨は腰帯形成以来ほとんど変化がない。詳しくは腰帯を参照のこと。
自由肢においては上腕骨と大腿骨、橈骨と脛骨、尺骨と腓骨のように前肢と後肢それぞれの構成骨格がかなりの確証を持って対応されられていることから、肢帯における構成骨格も肩帯と腰帯で対応させられることがある。
例えば、背側にある構成要素(腰帯では腸骨)・腹側で関節窩の前方にある構成要素(同じく恥骨)・腹側で関節窩の後方にある構成要素(同じく坐骨)に肩帯を対応させ、【腸骨/恥骨/坐骨】と【肩甲骨/前烏口骨/烏口骨】、または【肩甲骨/鎖骨/前烏口骨】が対応するとされる。
しかし、腰帯の構成骨がその進化を通じてほぼ三種だけであること・腰帯の構成骨は全て内骨格性骨格であることに対し、肩帯の構成骨は進化の中で現れたり消えたり多種にわたる上に内骨格性骨格だけでなく皮骨性骨格も含むことから、どれがどれに対応するかは人によって意見が異なり、真に対応が見られるのかについても疑問が持たれている。例に挙げた対応では、前者は烏口骨は肩帯進化の中でかなり後半になってから現れた構成骨であること、後者は恥骨は内骨格性骨格であるのに鎖骨は皮骨性骨格であること、などの問題がある。最近ではあまり肢帯の構成骨における前後の対応や相同性については言及されないことが多い。
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