出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/12/14 01:05:54」(JST)
鉤爪(かぎづめ)は、根元から先にかけて割と強く湾曲した爪のこと。正確には哺乳類の爪の構造の一つであるが、それと同じような構造の脊椎動物の爪をいうことが多い。英語で「claw」と呼ばれる類の爪である。爬虫類や鳥類などの爪はどれも鉤爪であり、これが本来の爪の形であったと考えられる。蹄や扁爪は哺乳類において特に進化したものである。
昆虫の肢の先端の器官も鉤爪と呼ぶ場合がある。
扁爪より少し厚く、指趾骨の前半部を覆っている。爪の表面を覆う爪板は前後左右に弓なりに曲がっており、特に先端は下に曲がって鋭く尖っている。また、他の種族の爪より幅が著しく狭い。鉤爪の基部の下方部は皮膚の膨らみがある。これは肉球の一種で指球と呼ばれるものである。歩くときにここが地面に付く様に歩行する。
一般にこれを地面に引っかけて歩行の助けとする。樹上性のものはこれを樹皮などに引っかけることで体を支える。時には天敵などに傷を負わせるなどの役割を持つ。
捕食性のものでは、獲物を捕えるための装置として用いる。特にネコ科の動物は爪を捕獲によく用いるが、普段は爪が指先に引っ込むようになっている。これは歩行中に地面に触れることで爪先の鋭さが鈍らないための適応だと考えられる。また、爪とぎをして手入れする。イヌ科の動物の場合、爪は常に露出しており、走るときにはスパイクのような役割をすると考えられる。しかし、前足の親指だけはやや上に位置しているので爪先は鋭く、獲物を抱え込むときにはこれをよく使う。
小型の肉食恐竜にも、後肢の特定の爪だけが鉤爪のようによく発達したものがあり、やはり捕獲用に用いられたと思われる。これらは歩行時にはこの指を立て、先端が地面に触れないようにしていたのではないかと考えられている。
爬虫類がすべて鉤爪を持つことから見ても、爪の本来の形がこれであると考えられる。哺乳類においても、有袋類や食虫類など、原始的と考えられる群は鉤爪である。したがって、扁爪や蹄を持つものはこのようなものから進化してきたものと考えられる。中には、扁爪や蹄を持ちながら一部に鉤爪を持つものがある。たとえばサル目は扁爪を持つが、キツネザルやロリスなどの原猿類は、いずれもどれか一本の指に鉤爪を残しており、原始的特徴の一つと考えられている。
昆虫などの無脊椎動物において、肢の先端にある鉤状の小突起のことを指す場合がある。体表のクチクラが特に肥厚・伸長したもので、物を引っ掛けるのに便利で移動・攻撃・防御などに用いる。一般的には1本あるいは1対構造となっているが、蜘蛛類のように3本あって糸を編むのに用いる例外もある。
動物の鉤爪を模した道具もある。詳しくは「鉤」参照。
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