1976年のニューヨーク港におけるイタリアのシップ、
アメリゴ・ヴェスプッチ
船(ふね、舟、舩)とは、人や物をのせて水上を渡航(移動)する目的で作られた乗り物の総称である[1]。
基本的には海、湖、川などの水上を移動する乗り物を指しているが、広い意味では水中を移動する潜水艇や潜水艦も含まれる。動力は人力・帆・原動機などにより得る。
大和言葉、つまりひらがなやカタカナの「ふね」「フネ」は広範囲のものを指しており、規模や用途の違いに応じて「船・舟・槽・艦」などの漢字が使い分けられている。よりかしこまった総称では船舶(せんぱく)あるいは船艇(せんてい)などとも呼ばれる(→#呼称参照)。
水上を移動するための乗り物には、ホバークラフトのようにエアクッションや表面効果を利用した船に近いものも存在する。また、水上機や飛行艇のように飛行機の機能と船の機能を組み合わせた乗り物も存在し、水上機のフロートや飛行艇の艇体は「浮舟」(うきぶね)と表現される。
なお、宇宙船や飛行船などの水上以外を航行する比較的大型の乗り物も「ふね」「船」「シップ」などと呼ばれる。これらについては宇宙船、飛行船などの各記事を参照のこと。また舟に形状が似ているもの、例えば刺身を盛る浅めの容器[1]、セメントを混ぜるための容器(プラ舟)等々も、その形状から「舟」と呼ばれる[2]。これらについても容器など、各記事を参照のこと。
目次
- 1 概要
- 1.1 基本機能
- 1.2 呼称
- 1.3 英語表現
- 1.4 数詞
- 1.5 法令による定義
- 2 船舶の構成
- 3 船舶の擬人的取り扱い
- 3.1 固有の名称(船名)
- 3.2 固有の国籍(船籍)
- 3.3 固有の番号・符号
- 4 分類
- 4.1 運用上の分類
- 4.1.1 商船
- 4.1.2 特殊用途船
- 4.1.3 漁船
- 4.1.4 艦艇
- 4.2 法令上の分類
- 4.2.1 所有者による分類
- 4.2.2 供用による分類
- 4.3 工学上の分類
- 4.3.1 船体材質による分類
- 4.3.2 動力による分類
- 4.3.3 船体構造による分類
- 4.3.4 機関の搭載方法による分類
- 5 歴史
- 5.1 世界
- 5.1.1 有史以前
- 5.1.2 紀元前
- 5.1.3 紀元後
- 5.2 日本
- 5.2.1 古代
- 5.2.2 飛鳥 - 室町時代
- 5.2.3 江戸時代(幕末まで)
- 5.2.4 近代(幕末以後)
- 5.2.5 太平洋戦争以後
- 6 船舶の運航
- 6.1 航海
- 6.1.1 操舵
- 6.1.2 船内生活
- 6.1.3 記録
- 6.1.4 信号
- 6.1.5 無線
- 6.1.6 放送
- 6.2 安全と海難事故
- 6.3 係留
- 6.4 水域区分
- 6.5 右舷と左舷
- 7 船の長所と短所
- 8 その他
- 8.1 外航船における日本人船員の減少
- 8.2 日本の船会社が運航する日本籍船の減少
- 8.3 操船の自由
- 8.4 乗客
- 8.5 歴史的な分類名称
- 8.6 POSH
- 8.7 比喩的な「ふね」
- 8.8 熟語、慣用句
- 8.9 排ガス規制
- 9 出典・注記
- 10 関連項目
概要
基本機能
船の各部名称
1.煙突 2.船尾 3.スクリュープロペラ 4.船体(左舷側) 5.錨 6.球状船首 7.船首 8.上甲板 9.船橋
「船」と呼ぶためには水上で安定して浮かぶためのアルキメデスの原理によって得た浮力と共に復原性も備えた「船体」と、推進力(風力などの自然力、エンジンなどの動力)、針路を定める「舵」(かじ)の機能を備える必要がある。「オール」や「櫂」、「帆」は動力としてだけでなく舵としても使える。動力として内燃機関などのエンジンを使うか否かに関わらず、スクリュープロペラが1つの場合は舵が必要となる。
呼称
- 舟・艇・ボート・船・船舶・艦
- 「舟」の字は、手でこぐような比較的小型のものに使うことが多い[1]。「舟」や「艇」は、いかだ以外の水上を移動する手漕ぎの乗り物を指し、「船」は「舟」よりも大きく手漕ぎ以外の移動力を備えたものを指す。「船舶」は船全般を指す。「艦」は軍艦の意味である。日本海軍では艦(艦の字義は装甲船の意)と書いて「フネ」と呼んだ。
- つまり、民生用のフネは「船」、軍事用のフネは「艦」、小型のフネは「艇」または「舟」の字が当てられ、それらの総称として「艦船」(かんせん)、「艦艇」(かんてい)、「船艇」(せんてい)、あるいは「舟艇」(しゅうてい)などの言い方をする場合もある。(「艦」の字を入れている時は軍用のものを強く意識している)。
- 槽(ふね)
- 一般的にふねの構造は、水上に浮かぶための浮力を得るために、内部は空洞になる。転じて、ある物体の中が空ろな容器全般を「ふね」と呼び、特に木製で中身(おもに液体や粉粒体)を入れる目的に特化した場合には「槽」(そう)の文字を当てる。日常的に、これら器を指して「ふね」と呼ぶ場合は使用時に蓋をしない、または蓋の付いていない状態のものを言う。(例:湯ぶね、浴槽、酒槽など)
英語表現
「舟」や「艇」は英語の「boat」(ボート)に相当し、「船」は英語の「ship」や「vessel」と同じものを指す。従来、英語では民間船・軍艦共に代名詞はshe(女性扱い)であって、これに対し飛行機では民間機がshe、軍用機がhe(男性扱い)であるが、最近は、このような用法が少なくなって、他の一般名詞と同様にitを使用することがある。「ふね」を表す性についても、各言語によって異なり一様ではない。 なお、英文表記の航海日誌上では、she(女性扱い)で表記される。
数詞
- 海上運搬物の船は比較的大きな船の場合「1隻(せき)、2隻、3隻」と数え、小型の船の場合は「1艘(そう、槽とも綴る)、2艘、3艘」と数える。だが、最近は大きさに関わらず「1隻、2隻、3隻」と数えることもある。
- 器としての槽では「1ふね、2ふね、3ふね」のような使い方をする。
- 器の意味を込めて数える場合は杯または盃の文字を当て、「1ぱい、2はい、3ばい」と数える。
法令による定義
- 商法第684条の1項では「本法ニ於テ船舶トハ商行為ヲ為ス目的ヲ以テ航海ノ用ニ供スルモノヲ謂フ」とし、同条第2項では「本編ノ規定ハ端舟其他櫓櫂ノミヲ以テ運転シ又ハ主トシテ櫓櫂ヲ以テ運転スル舟ニハ之ヲ適用セス」と定義されている。具体的には商行為を目的とする海商で航海の用に供される櫓櫂船以外の船を指す。ただし、船舶法第35条が「商法第三編ノ規定ハ商行為ヲ為ス目的ヲ以テセサルモ航海ノ用ニ供スル船舶ニ之ヲ準用ス但官庁又ハ公署ノ所有ニ属スル船舶ニ付テハ此限ニ在ラス」と商法の規定を準用している結果、ほとんどの船舶が商法の適用を受けることになっており、商船と非商船の分類は法の適用の点では大きな意義はない[3]。
- 工学上は飛行機に分類されるホバークラフトは、水面の支持を受けながら前進するものであることから日本の法律上では船舶と見なされる[4]。これに対して、水上航空機は空中輸送手段であり、離着水時の水面での滑走は、空中を航行するためになされるものであることから商法上の船舶とは見なされない[5]。ただし、海上で水上航空機が船舶と衝突することを防ぐ必要があるため、海上衝突予防法では水上航空機を「船舶」に含めて扱っている(海上衝突予防法第3条第1項)。
船舶の構成
船舶は船体とそれに付属する設備・備品などからなる。
船体
「船体」、「船舶工学」、および「舵」を参照
艤装
艤装(ぎそう、rig、rigging、outfitting(s))には2つの意味がある。
- 船を構成する物で、船体(等の構造物)以外の装備品全般を指す。航海に必須の装備や荷役や乗客の為の装備が含まれる。船は水上を揺られながら航行するので、船の内外の装備や各種機器・道具類が船体やデッキに固定されている必要がある。これらを「艤装」や「艤装品」と呼び、船から始まったこの名は、他の乗り物でも固定された装備全般を艤装と呼ぶことがある。
- 造船で艤装品を船体に取り付ける工程は「艤装」と呼ばれ、「艤装する」という動詞としても使われる。
船舶の擬人的取り扱い
船舶はそれぞれ固有の名称(船名)、固有の国籍(船籍)を持つなど古来から擬人的な取り扱いがなされてきた。
固有の名称(船名)
- 日本の船舶の船名
- 日本では船舶法により、船首両舷と船尾に船名を表示することが定められており、各国の同等法規においても同様である。
- 日本には船名の最後に「丸」を付ける慣行がある。旧船舶法取扱手続第1条では日本の従来からの慣行をふまえて日本の船には船名の末尾になるべく「丸」を付けるように勧告されていた[6]。この船舶法取扱手続は2001年に廃止されたが、従来からの慣行により現在でも多くの日本船が「丸」を船名に付けている。ただ、フェリー船や外航船では「ジャパン・コスモス」「ペガサス」「あめりかん はいうえい」など「丸」を付けない船名も存在しているほか、海上自衛隊や海上保安庁の艦船は丸をつけていない(例 : 所属は文部科学省だが運用は海上自衛隊が行っている南極観測船など)。
- なぜ日本の船にだけ「丸」が付くようになったかという起源については、いくつかの説があるが、いずれも決定的なものは定まっていない。海外では日本の船を「Maru ship」と呼んだりする。
- 日本では山や川などの地名を付けることが多く花の名前なども付けられるが、「ナッチャンRera」のような愛称を除けば、欧米のようなそのままの人名を付けることは少ない。「日石丸」「第七全購連丸」「第十とよた丸」「日産丸」のように日本の会社名をそのまま付ける例も多くなってきている。
- 海外の船舶に付与する定冠詞 (SS, MS)
-
「艦船接頭辞」も参照
- 英語圏では蒸気船では船名の前に steam ship の意味で艦船接頭辞「SS」をつけることがあり、21世紀の現在では SS は主機関が蒸気タービンであることを意味している。同様に、ディーゼルエンジン船では船名の前に motor ship の意味で「MS」をつけることがある。同じ習慣として「M.V. (motor vessel)」「S.V. (sailing vessel)」が使われることもある。
- また定冠詞には海軍艦艇の所属国を表すものが各国毎にあり、代表的なものとしては以下のものがある。
- HIJMS : His Imperial Japanese Majesty's ship(天皇陛下の軍艦)の略で、大日本帝国海軍の艦名に付与された。
- HMS : Her/His Majesty's ship(女王陛下/国王陛下の船)の略で、イギリス海軍の艦名に付与される。
- RMS : Royal mail ship(王家の通信船)の略で、イギリスの商船の船名に付与される。
- SMS : Seiner Majestät Schiff(皇帝陛下の船)の略で、ドイツ帝国海軍の艦名のほか、1945年までのドイツ海軍の艦名にも付与された。
- USS : United States ship の略で、アメリカ合衆国の艦船名に付与される。
固有の国籍(船籍)
- 船籍
- 船はそれぞれ国籍を持ち、船籍と呼ばれている。
- 船籍港
- 「船籍港」は人間の本籍に相当する。日本の船は船舶法によって船籍港を定めて管轄の運輸局にトン数を申請し、船尾に船籍港を表示しなければならない。
- 便宜置籍船
- 船舶に課される税金は、リベリア(港名 : モンロビア)、パナマ(港名 : パナマ)、キプロス(港名 : リマソール(レメソス))が低率であり、これらの国では(実態は)外国の船の登録を誘致している(登録後はこれらの国にとっては名目上は自国の船になる)。このような船を「便宜置籍船」と呼ぶ。便宜置籍国には安全な航海のために規制を行う十分な法律が存在しないために、便宜置籍船は一般に乗組員の質が劣り事故の発生率も高いため、国際的な問題となっている。
- カボタージュ
- また、日本を始めとする国々では、国内港間の輸送を行う船は自国籍の船でなければならないとする「カボタージュ」と呼ばれる規制によって、便宜置籍船を含む外国籍船が排除されている。
固有の番号・符号
船舶原簿などの登録に関わるいくつかの番号や符号が以下のように船ごとに与えられる。
- 船舶番号
- 船舶には自動車のナンバープレートのように1隻ごとに異なる「船舶番号」が船舶原簿に基づいて与えられる。
- 信号符字(コールサイン)
- 総トン数100トン以上の船舶には、放送局にJOAKなどの符号を付けるのと同様に、アルファベットで4桁の「信号符字」が与えられる。すでに4桁のアルファベットをほぼ使い切ってしまったために、日本ではJA - JS、7J - 7N、8J - 8Nのいずれかかが1・2文字目で、続く2文字のアルファベットによって4文字を構成する無線電信を有する船の為の符号と、無線電信は持たずに無線電話だけの船のためのJDからJMではじまるアルファベット6文字の符号へと変わってきている。
分類
運用上の分類
日本標準商品分類では船舶(分類番号50)は商船(分類番号501)、特殊用途船(分類番号502)、漁船(分類番号503)、艦艇(分類番号504)に分類される(このほか分類番号506以下に軸径及びプロペラ、分類番号507以下に舶用補機、分類番号508以下に航海用機器、分類番号509以下にぎ装品が定められている)[7]。
商船
クルーズ客船の一例(MSアリューア・オブ・ザ・シーズ)
- 旅客船(客船)
- 旅客輸送に使用されるもの
- オーシャン・ライナー
- 遠洋定期船、外国航路船、大洋航路船。太洋上の航路と呼ばれる仮想の進路に沿って海浜に接した都市間を航行する船。
- クルーザー
- 観光船、巡航船、遊覧大型客船。観光を目的に周遊する船。
- 貨客船(貨客混載船)
- 一般貨物船(カーゴシップ)
- 貨物輸送に使用されるもの。荷物船。コンテナ船のような専用貨物船の多くは荷役装置を持たない (Gearless Vessel) ため、港の岸壁のクレーン等の荷役装置により貨物の積み下ろしを行うが、多くの一般雑貨運搬船やバラ積み船等では船上にクレーンやデリック等の荷役設備を備えるため港を選ばず荷役作業が行える。
- タンカー以外の貨物船全般(専用貨物船やコンテナ船、バラ積み船)を特に指す場合は一般貨物船と呼ばれる。重量物、コンテナ、一般雑貨、バラ荷等の多様な貨物を効率よく積めるように作られた船は多目的(貨物)船と呼ばれる。
- 貨物船には航路、寄港地、スケジュールが定まっている定期船(ライナー)と、定まっていない不定期船がある。定期貨物船の多くが1航海での寄港地が10港以上にも及び、貨物も多種に及ぶため、貨物の揚積の効率を考えて5-7個の船艙と2 - 3層の甲板を持つものが多いが、不定期貨物船では寄港地が少なく貨物の種類も限られるために3-5個の船艙と1~2層の甲板を持つものが多い。また、定期貨物船が運ぶ貨物は不定期貨物船の物に比べて高価なものが比較的多く、貨物の発汗防止の為の通風乾燥装置、郵便物の為のメイルルーム[8]、貴重品の為のストロングルーム[9]、冷蔵貨物用の冷蔵庫、液体貨物用のディープ・タンク[10]、重量物の荷役に使うヘビー・デリック (Heavy Derrick) などを備える船が多い。不定期船では木材、鉱石、石炭、穀物、鋼材などの原材料や半製品を運搬することが多く、これらはいずれも価格が安く、またこれらを運ぶための専用船との競合にも運搬コスト等の面で対応が求められるため、船型を単純にして小出力エンジンと低速航行によって燃費を抑えるなど定期貨物船との違いがある。不定期船は特殊な装備を求めず単純な船体を低コストで求められるため、同一設計で多数の船が作られるという傾向もある(2,580隻のリバティー船の例を参照)。
- 定期船と不定期船のいずれにも利用される船はライパーと呼ばれる。
- コンテナ船
- 貨物輸送の際に貨物コンテナ(通称「海コン」)を運ぶ船。その多くがISO規格で定められた、20、40、45フィートの長さのものである。冷蔵・冷凍コンテナ(リーファーコンテナ)に電源を供給する設備を備えている船が多い。少数ながらコンテナ専用のクレーンを自ら備える船もある。貨物コンテナだけを専門に運ぶフル・コンテナ船(フルコン船)の他に、貨物コンテナとブレーク・バルク・カーゴを混載するセミ・コンテナ船(セミコン船)がある。
- 油送船、タンカー(油槽船、水槽船)
- 液体を運ぶ船である。原油や石油、液化天然ガス等の鉱物油、化学薬品などの液体などを運ぶための専用タンクを備える。
- 内航タンカー
- 通称「白タンカー」は軽油やガソリンを運び、通称「黒タンカー」では重油を運ぶ。ただし、外見では区別が付かない。
- ばら積み貨物船(バルクキャリア、バルカー、ばら積専用船)
- 冷蔵・冷凍運搬船(リーファー)
- 冷凍船。海洋船団において漁獲したものを急速冷凍し保存する設備を持ち、加工設備も併せ持つ。
- 特殊運搬船
- 車両航送船
- フェリー(渡船、自動車渡船)
- 定義が幾分あいまいであるが、日本では次の4つの条件を満たす船。
- 旅客と自動車などの車輌とその運転士を同時に輸送するもの
- 海峡や離島を結ぶ橋の代わり、または鉄道や道路等に平行して航行し陸路の代わりに用いられるもの
- 車輌の搭載はランプウェー上を自走して行われるもの
- 不特定多数の利用者が使うもの
- 片道の航海が100km以下のフェリーを短距離フェリーと呼んでいる。100kmを越え300km未満の航海距離のフェリーは中距離フェリーであり、300km以上のものが長距離フェリーとされている。
- 鉄道車輌渡船
- フェリーの中でも特に鉄道車輌航送が可能なもの。鉄道連絡船を参照のこと。海浜に接した鉄道線路間を定期的に航行し、旅客や貨物以外に鉄道車輌を運搬する連絡船。船内にレールが敷かれており、船のレールと桟橋のレールを合わせて鉄道車輌の積み下ろしを行う。同時に自動車の自走による搭載・運送するものも含む。
- RO-RO船(RORO船、ローローせん)
- 自走によりトレーラーなどの車両を船内の車両甲板へ搭載・固縛できる構造の専用貨物船である。トレーラーの後部車体のみを運搬する方法は、前部車体であるトレーラーヘッドは搭載・揚陸時のみに少数台ですみ、搭載スペース縮小と重量の軽減や狭い車輌甲板上での運転という運転技量の問題も回避できるために多く用いられる。
- フェリーのようにランプウェー(斜路)を備えるものが多いが、特定の航路での就役を計画されて、港側のランプウェーを利用できる場合は初めから備えていない場合もある。船が備える機構は乗客を乗せるフェリーとほぼ同じであるが、運転者を含めた乗客を運ばないためフェリーのような客室は備えない。
- 鉄鉱石・石炭・穀物や、木材・セメントなど、大量の乾貨物(ドライバルク)を運ぶ船。大口荷主との輸送契約に基づき、鉱石専用船・石炭専用船・穀物専用船などとして用いられる事もある。
- ラッシュ船
特殊用途船
日本標準商品分類では特殊用途船(分類番号502)は練習・調査船(分類番号5021)、警備・救難船(分類番号5022)、作業用船(分類番号5023)、特殊業務用船舶(分類番号5024)、はしけ(非自航)(分類番号5025)、舟艇(分類番号5026)、係留船(分類番号5027)、特殊水上装置(分類番号5028)、その他の特殊用船舶(分類番号5029)に分類される[11]。
- 練習・調査船
- 航海練習船
- 船員になろうとする者が、航海の実習訓練をするための船。船員養成機関が運用する。帆船と汽船(動力船)がある。漁業従事者の実習訓練をするための船は漁船に分類される(漁業練習船、漁業実習船)。
- 調査・観測船
- 気象調査船
- 測量船
- 水深や海流、水質等を搭載する測量機器により測る船のこと。日本では海上保安庁が保有運用している。
- 警備・救難船
- 巡視船
- 沿岸警備のための船艇のことで、密輸や密入国、海賊行為の取り締まり、海難救助を主な任務とする。国・地域によって担当する組織が軍事、準軍事、警察と違いがある。日本では巡視船の管轄官庁は国土交通省である。
- 救難船
- 救命艇
- 海上事故から避難するための小型の船。エンジンを備えて自航できるものとオールやパドルのみのものがある。救命いかだは船ではないがエンジンを持たない救命艇と同じに扱われる。
- 作業用船(作業船)
- 工作船
- 本来は甲板上に大型の起重機を複数設置し、艦艇や船舶の軽微な補修作業をドック入りさせなくとも行えるリペアー・シップのこと。近年、他国への破壊活動を行う工作員を輸送する小型の船も、この呼び方をされるようになった。
- 砕氷船(アイスブレイカー)
- 極地など氷海や凍結河川を自力航行し、航路啓開を目的とする船。強力な機関と船体を備え、周囲を氷に閉ざされても薄い氷であれば割り進み、ある程度の厚さであれば船首と船尾を上げ下げし、船体の重さで氷を砕き低速での移動が可能である。厚すぎる氷に閉じ込められても、舷側が斜めになっていて潰されない工夫がある。商船の砕氷船も砕氷タンカーのように多数存在する。
- 敷設船
- 浚渫船
- 海底資源掘削船
- 作業台船
- 起重機船
- 大型のクレーンを搭載したクレーン船で、海難救助や建設工事等で使用される。
- 引き船、曳き船(タグボート)
- 狭隘海域・狭小水路・港湾内において大型船舶が航行または離着岸する際の座礁や衝突を回避するために曳航または押航する船。前述のはしけを引くためにも使う。
- 特殊業務用船舶
- 水先船、水先案内船 (パイロット・ボート)
- 水先案内人(パイロット)を、誘導する船まで運びまた戻すための船。水先案内船が案内をするわけではない。
- 灯船
- 消防船
- 火事を消火するための船。消火専用の強力なポンプを備えて海水を高圧にし、放水銃により火元等に放水する。特に専用に開発された消防船では双胴船体に高い塔を備えて高所より放水するものがある。日本では海上保安庁や地方自治体の消防局、民間の会社が所有運航している他、同等の機能を備えたタグボートも多数存在する。
- 検疫船
- 無線中継船
- 灯台補給船
- 灯台見回り船
- 病院船(ホスピタルシップ)
- 傷病者の治療と移送を目的とする船。医療設備と多くの病床を備える。軍用のものは軍艦となる場合がある。
- その他
- 給水船、給油船 ほか各種[12][13]
- 艀(はしけ、バージ)
- 河川交通や港湾運送のための平底の貨物船。動力を持たない場合(非自航)が多いため、他船に曳かれたり押されたりして航行する。
- バージキャリア
- 貨物搭載用のはしけ(バージ)を数十艇搭載して運ぶ船
- プッシャーバージ
- はしけを押す船。特にはしけをいくつも繋げて押すものはバージ・ラインと呼ばれる。プッシャーバージには大洋を渡る数万トン級のオーシャン・バージもある。
- 舟艇
- プレジャー・モーターボート、快遊船(プレジャーボート)
- 私人が所有し、趣味のために使用されるもの。商行為に使用されないものであるが、船舶法第35条によりその準用を受ける。
- 帆艇
- 係留船
- 特殊水上装置
- その他の特殊用船舶
- エアクッション艇
- 水中翼船
- 潜水船
- 無人水中探査装置
漁船
漁業に用いる船舶であり、漁船法により規定される。近海用と遠洋用、また漁獲する水産物の大きさや量によって、船の大きさはさまざまである。日本では漁船の管轄官庁は国土交通省だけでなく、農林水産省でもある。
日本標準商品分類では漁船(分類番号503)は漁ろう船(分類番号5031)、母船及び工船(分類番号5032)、漁獲物運搬船(分類番号5033)、漁業指導調査・練習船(分類番号5034)、漁業取締船(分類番号5035)、その他の漁船(分類番号5049)に分類される[14]。
艦艇
日本標準商品分類では艦艇(分類番号504)は護衛艦(分類番号5041)、潜水艦(分類番号5042)、機雷艦艇(分類番号5043)、輸送艦艇(分類番号5044)、哨戒艦艇(分類番号5045)、補助艦艇(分類番号5046)、その他の艦艇(分類番号5049)に分類される[15]。
- 軍艦
- 軍事用艦艇を指す。大きさ、形態、武装はその用途により様々である。国連海洋法条約によれば保有国が武装に関わらず自国海軍の艦艇であると認めたもの。ただし、海軍の艦艇であっても戦闘に直接寄与しない補助艦艇であれば軍艦でないとされる場合がある。日本では軍艦の管轄官庁は国土交通省だけでなく、防衛省でもある。
法令上の分類
所有者による分類
- 公有船
- 国または地方自治体が所有する船舶を公有船という。
- 私有船
- 公有船以外の船舶を私有船という。
なお、公有船・私有船の概念は後述の公用船・私用船の概念とは異なるものである(通説)[16]。
供用による分類
- 公用船
- 航海において公用に供する船舶を公用船という。日本でいえば防衛省の自衛艦、海上保安庁の巡視船、水産庁の漁業取締船等がこれにあたる。ただし、国立学校などの練習船や国の所有する研究用の船舶などは公有船ではあるが、公用船ではなく私用船に属する[17]。
- 私用船
- 公用船以外の船舶を私用船という。企業保有の船舶の他に、個人所有の漁船、ヨット等も含まれる。
工学上の分類
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船体材質による分類
船体を構成する主な材質により以下のように分類できる。
- 葦船
- 葦を用いた船
- 木造船
- 木材を用いた船
- 鉄船
- 鉄を用いた船
- 鋼鉄船
- 鋼を用いた船
- FRP船
- 繊維強化プラスチック (FRP) を用いた船
- アルミ船、軽合金船
- アルミニウム合金を用いた船
- セメント船、フェロセメント船
- セメントやフェロセメントを用いた船
動力による分類
- 手漕ぎ舟
- 人間の腕力を以って、艪(ろ)を用いてこぐもの。ろかい舟。棹(さお)を使うものもほぼ同じ。
- 帆船
- 風の力を帆に受けて動力とする船。狭義の帆船は、1本または複数本のマスト(mast : オランダ語、英語)と呼ばれる帆柱を備え、前進するための帆と進行方向を変更する三角帆を備える。
- 帆掛け舟
- 前進するためだけの帆のみを持ち、進行方向を変更する機能を持たない舟をいう。和船が相当する。
- 汽帆船
- 風の力と原動機の動力を組み合わせて利用するもの
- 汽船
- 原動機を動力とするもの
- ディーゼル船
- 2サイクル型、4サイクル型があり、燃料はおもに重油や軽油を使用する
- ディーゼル・エレクトリック船
- ディーゼルエンジンで発電し、電気モーターでスクリュープロペラ駆動する船舶
- 蒸気船
-
- 蒸気レシプロ船
- 古くは外輪船などで多く存在した
- 蒸気タービン船
- 蒸気タービンによって動力を得ている船舶。21世紀の現在でもLNG船に使用されている。
- 原子力船
- 原子炉の熱で作った蒸気でタービンを回す船
- ガスタービン船
- ガスタービン機関(内燃機関)を使った船。高速航行を行う客船や軍艦に存在する。
- ガソリン・エンジン船
- 動力にガソリン・エンジンを使った船
船体構造による分類
- 単胴船・多胴船(双胴船・三胴船)
「船体」も参照
- 水中翼船
- ホバークラフト (船としての分類には含まれないことが多い)
- その他(水上オートバイなど)
機関の搭載方法による分類
- 船外機船
- 船尾板(トランサムボード)に船外機を装着したもの
- 船内外機船
- 機関を船内船尾に備え付けドライブユニットを船外に出すことによるスクリュープロペラを回転させる
- 船内機船
- 機関を船内中央付近に備え付けプロペラシャフトによりスクリュープロペラを回転させる
歴史
世界
有史以前
太古の昔より、河川や海洋を渡る際や釣りなどの漁業を行うために丸木舟などが用いられていた。スコットランドで150例、日本で200例などの先史時代の丸木舟の発見例があり、その他獣皮を張った船体に防水を施したシーカヤックに類するものなども存在したと考えられている。
紀元前
エジプト新王国時代の壁画に描かれた横帆の船(紀元前1411年から1422年にテーベの貴族の墓に描かれたもの)
古代エジプト時代のつぼに船の絵が描かれており、ナイル川で使われていたとみられているが、パピルスのいかだから発展した継ぎ剥ぎ構造と推定され、この時代の船は海洋での使用には適さなかったとされている。紀元前4,000年頃にはエジプト・ナイル川流域の他、チグリス川・ユーフラテス川流域のメソポタミアでも帆走船が使われていた形跡が残っている。モンゴロイドがアウトリガー付きカヌーで帆走を始めて、東南アジアの島々に広がり始めたのは、紀元前3,000年頃であり、フィジーには紀元前1,500年頃に達したと考えられているが、モンゴロイドの拡散以前の紀元前4,000年頃にはオーストロネシアンとモンゴロイドの混血であるメラネシア人がソロモン、バヌアツ、フィジー、ニューカレドニアの各島々への拡散しており[13]、日本では紀元前4,000年頃(縄文時代前期)の外洋での航海が可能な大型の丸木舟の出土例がある。紀元前4,000年頃から紀元前1,000年頃にはエジプト人やタレス人が地中海に乗り出していた。フェニキア人はアラビア海にも乗り出し、船による交易の範囲が広がっていった。
紀元後
ガレー船の一種、三段櫂船の実物大の復元船Olympiasの写真を使って再現してみた船隊の写真。
ギリシャ時代には、帆走船やガレー船が使われ、ローマ時代には、1世紀頃にヒッパロスがインド洋の季節風を利用したアラビア半島からインド南岸までの航路を開いた後はローマ - インド間の海上交易が行われた。
8-10世紀にはヴァイキングと呼ばれたノルマン人たちが独特の丈夫な船を駆って西ヨーロッパの海を支配していた。
一方、日本では、600年からの遣隋使船、618年からの遣唐使船も日本にとって発達した航海術を吸収する機会であったが、1401年からの勘合による日明貿易が開始され、これらの船(遣明船)には羅針盤が備わるなど確実な進歩を遂げていった。中国の鄭和の艦隊が15世紀、30年間に渡って中国沿岸からインド洋を席巻していた。中国の海洋進出が途絶えた後も、東南アジアからインド経由でヨーロッパに至る海のシルクロードが、商人と船乗りの手で長期に渡り維持された。
ヨーロッパでは、それまでのガレー船のラティーン・セイル(三角帆)に加えて、ヴァイキング船の横帆を取り入れた「キャラック船」を生み出した。15世紀初頭にはポルトガル人が、ラティーン・セイルと横帆を持つ小型の「キャラベル船」を生み出し、「エンリケ航海王子」の支援も受けて、外洋への航海に乗り出していった。
16世紀にはキャラック船を元にガレオン船が登場し、大航海時代になった[13]。ガレー船は18世紀末まで地中海で、北欧のバルト海では19世紀初頭まで使用された。1807年にロバート・フルトンが作った外輪蒸汽船がニューヨークとオリバニー間で運航を開始した後は、多数の帆船に蒸気機関が搭載され、また、帆船も港での操船は蒸気エンジンを備えたタグボートに任せることができるようになったため、外洋航行に最適化した高速大型帆船が作られ、「クリッパー」と呼ばれる高速帆船も登場した。1858年に英国人アイザム・K・ブルーネルが発明したスクリュープロペラを備えた外洋定期客船「グレート・ブリテン」が作られた。英海軍が海上公開実験によってその性能を確認し、軍艦の標準としたため、各国海軍もそれに倣った。海底ケーブル網が充実した1860年代から、軍艦だけでなく商船でも、航行スケジュールが確実な蒸気船が帆船を駆逐するようになっていった。スエズ運河は開通してから当分の間、通行可能な船のサイズに制限があったり、運賃が高かったりして、商船がしばしば利用を敬遠した。
蒸気船の歴史については蒸気船#歴史(世界)と蒸気船#歴史(日本)を参照のこと。
この後、多数の蒸気船が登場して徐々に海運の主役となった。1892年のディーゼルエンジンの登場によって多くの大型船舶が内燃機関を備えるようになった。
帆船は今日でも練習船やヨットなどとして用いられているが、多くがエンジンを備えた汽船である。
日本
古代
日本の先史時代の丸木舟の発見例はおおよそ200例ほどである。その中には1989年に東京都北区上中里の中里遺跡で発見された全長5.79mの丸木舟や、1995年に千葉県香取郡多古町で発見された全長7.45mの丸木舟など大型のものの出土例もある。また1998年に京都府舞鶴市の浦入遺跡で出土した丸木舟は、現存長は4.4mであるが、幅85cm、長さ8m以上あったと推測され、一本の巨木を刳り抜いた堅牢なモノコック構造の刳舟であり、縄文時代前期には外洋での航海が可能な丸木舟が存在した。
縄文時代以後も日本船はモノコック構造の刳舟が主流であった。古墳時代以後の大型の刳舟の出土例は大阪湾周辺に多く、単材刳舟ばかりではなく複材化した準構造船と呼べるものも出土している。単材刳舟としては大阪市西淀川区大仁町鷺洲で古墳時代のものと推定される全長11.7mの刳舟が出土しており、複材刳舟のうち前後継ぎのもの出土例として、大阪市今福鯰江川の三郷橋(現・城東区今福西1丁目)で大正6年(1931年)5月に全長13.46m、全幅1.89mの刳舟が、同市浪速区難波中3丁目の鼬川で明治11年(1878年)に残存長12m程の刳舟がある。他に天保9年(1838年)愛知県海部郡佐織町(現・愛西市)で出土した前後継ぎの刳舟は残存していた長さが十一間二尺 (20.6m) あったといわれている。
飛鳥 - 室町時代
飛鳥時代には平底のジャンク船のような箱型構造の船が遣隋使船として用いられた。
室町時代の後期から江戸時代初期にかけて安宅船などが、軍船として用いられた。 江戸時代初期の1604年から1635年の間は朱印船貿易が行われ、そのための船として中国等の海外だけでなく日本国内においても600人乗り、貨物積高2,500石(約375トン)のものが建造されていた。
江戸時代(幕末まで)
江戸時代初期の1635年には「大船建造禁止令」が施行され、船の500石積以上の建造が禁止されることになる。ただし、これはすぐに商船は対象外になる。鎖国を行った為に、外航船を建造する必要が無くなった日本では軍船は関船が、商船は帆走専用に改良された弁才船が中心となった。特に後者は江戸時代の近海海運を大いに発展させた。
鎖国以前には徳川家康の命によってウィリアム・アダムス(三浦按針)が建造した2隻の小型ガレオン[18]や、慶長遣欧使節団のサン・フアン・バウティスタ号などの例がある。
近代(幕末以後)
ペリー来航から3か月後の1853年9月に、大船建造禁止令が大名に対して解除された。同時に幕府の手で浦賀造船所の建設が開始され、翌年には最初の西洋式軍艦の木造帆船「鳳凰丸」を竣工した。水戸藩も1853年に江戸隅田川河口に石川島造船所の建設を始め、薩摩藩の桜島造船所や加賀藩の七尾造船所が次々と開設された。
1854年、ペリー来航の翌年に通商を求めて日本に来たロシアのディアナ号が下田で安政東海地震の津波により大破の後、嵐に遭い沈没、多くの船員が日本に取り残された(下田で座礁したという情報も複数あり)。当時、日本では外航に耐える船を持たず、これらのロシア船員は船を作らなければ帰れなかったため、君沢郡戸田村(現・沼津市)の日本人を指導して2本マストのスクーナー「ヘダ号」を作り上げた。その後、幕府は同型船多数の建造を命じ、君沢形と命名した。この西洋式造船を実地で指導されながら学んだ経験は、今日の日本造船業にとって近代船建造の礎となった。
1855年、幕府はオランダ人技師から大船建造と鋳砲製造の技術を習得することを目的に、「海軍伝習所」を長崎に開設した。幕府は1857年には長崎の飽の浦に溶鉄所の建設を開始し、1861年に長崎製鉄所(現三菱重工長崎造船所)として開所させた。1865年には横須賀・横浜製鉄所が着工され、その後、国内最大の横須賀海軍工廠となった。横須賀海軍工廠では、フランス人技師の指導を受けて木造船から鉄鋼船へ技術の切り替えが行われ、1890年に最初の全鋼鉄軍艦「八重山」(常備排水量1,609トン)が完成した。江戸湾に設けられた石川島造船所はその後の石川島播磨重工の、浦賀造船所は浦賀重工業を経て住友重機械工業の礎となった。
1890年には三菱造船所で最初の全鋼鉄船「筑後川丸」(694総トン)が建造された。1896年には造船奨励法と航海奨励法が公布され、1897年には船舶検査法も施行された。この頃、多数の国内外新規航路が開設された。1898年には、それまでの平均的な国内造船能力であった1,500総トン級を大幅に上回る、「常陸丸」(6,172総トン級)が三菱造船所で完成された[19][20]。
太平洋戦争以後
太平洋戦争によって日本は商船の80%を失った。しかし、造船業と海運業は他の多くの産業同様に終戦直後から着実な復活を開始した。
終戦時にはGHQによって造船能力を年15万トンに制限され、100総トン以上の全ての船がGHQの管理下に入れられたが、1947年からは規制が順次緩められ、1950年の朝鮮戦争と1956年の第二次中東戦争(スエズ動乱)をきっかけに日本に長期の造船ブームをもたらした。
1946年、日本郵船は終戦以後の早い段階からGHQの許可を得て、貨客船「氷川丸」の太平洋定期航路が再開された。
1951年のサンフランシスコ講和条約以後は、米アメリカン・プレジデント・ライン社 (APL) の「プレジデント・クリーブランド」(15,973総トン)と「プレジデント・ウィルソン」(12,597総トン)によって米国シアトルとの定期客船航路が開設された。
1952年と1953年には大阪商船会社(現商船三井の母体の1つ)が2隻の南米移民用外航貨客船「さんとす丸」(1952年、8,515総トン)と「あめりか丸」(1953年、8,354総トン)を使って南米航路を再開した。その後、2代目「ぶらじる丸」(1954年、10,100総トン)、「あるぜんちな丸」(1958年、10,863総トン)、「さくら丸」(1962年、12,628総トン)などの5隻の外航貨客船によって日本 - 香港と日本 - 北米の航路が再開された。
1964年の東京オリンピック以降は、航空機による海外渡航が一般化したため旅客輸送需要は激減し始めた。南米航路も移民の減少と共に需要は減少した。日本に限らず世界的に、これ以降は客船としての船舶の需要は低下を続け、一部のクルーズ船を除けば外航航路の客船は消滅していく。
代わって世界中で海上輸送の需要が増加を続け、戦前戦中の造船技術を背景にブロック工法のような新たな造船技術の開発によって世界の造船業における地位を確実なものにしていった。1956年には英国を抜いて世界一の造船量となり、1975年には世界の造船量の50%を越える量を世界の海に送り出した。
1950年代から始まった高度経済成長によって、海運業においても大型石油タンカーや大型コンテナ船のような船が多数登場し、自動車運搬船、鉱石運搬船、LNGタンカーも次々と作られ海外航路に投入されていった。また、内航航路でも大型カーフェリーが多数登場した。
日本でのこの増船の波は、1973年からの第一次オイルショックによって日本経済が停滞した数年後の1977年をピークに下降線をたどった。特に需要の減った石油タンカーは契約キャンセルされるなど造船需要が激減すると同時に、1980年の貨載量56.5万トンを最後に巨大化に終止符が打たれた。
船舶の運航
航海
操舵
大海原では舵はオートパイロットによって自動で保針されており、人は海上を監視することが求められる。船の多い海域や狭い海域ではクオーターマスター(操舵手)が舵を手動で操作する。
船内生活
- 時間
- 船同士の連絡では協定世界時 (UTC) を使うが、船内の時間は航海に合わせて変更されてゆく。このため、東へ向かうと1日の長さが短くなり、西へ向かうと長くなる。
- 当直
- 船員は24時間航海する船の中で、常に誰かが「当直」や「ワッチ」[21]と呼ばれる見張り当番についている。機関室内の主要な装置がブリッジから遠隔操作できるようになり、通信機も高性能になってモールスなどの特殊な技能を必要とせずに誰でもが音声通信を行えるようになったために、従来の機関当直や通信当直は減りつつあり、ブリッジから見張りを行うことが多くなってきた。
- 当直は毎日4時間x2回が3組の当番によって行われる。これは日本の船に限らず、国際的に共通である。
- 0:00-4:00 12:00-16:00 2等航海士と甲板手
- 4:00-8:00 16:00-20:00 1等航海士と甲板手
- 8:00-12:00 20:00-24:00 3等航海士と甲板手
- 機関室での当直の必要性を減らした、Mゼロ[22]船と呼ばれる船では、夜間に機関に異常事態が発生した場合には、自動的に各居室に警報が伝えられるようになっており、機関士の夜間当直が必要なくなっている[23]。
記録
- 航海日誌(ログブック)
- 「航海日誌」と呼ばれるログブックは通常「公用航海日誌」と「船用航海日誌」の2種類があり、「公用航海日誌」には海難事故や航海の概要等をその都度記載し、「船用航海日誌」には針路、速力、波、天候、船上での出来事、出港・寄港などについて毎日の記録が記入される。
- 日本においては「公用航海日誌」は通常は日本語で表記するが、「船用航海日誌」は日本国内のみを航行する船においては日本語でも英語でもどちらの表記でもかまわないが、国際航海に従事する船では英語表記が事実上義務化される。英語表記する際の文章は正規の英語表記ではなく、独特の文体と記号によって記入される。たとえば不明確にならない限り主語や冠詞は省かれ、星は*、太陽は◎で表現され、投錨はイカリの記号で表される[24]。
- 海図
- 海図(チャート)は航海において最も重要なものであり、規則でも常備が義務付けられている。通常108cm×67cmの大きさのチャートはメルカトル図法や心射図法などで描かれており、船に数百枚も保管されるそれぞれが、1枚が数千円という高価な物である。チャートに新しい情報を記載するのは2等航海士の仕事である[24]。
信号
- 国際信号旗
- 国際信号旗 (こくさいしんごうき)は40枚またはそれ以上の旗を備え、1枚 - 4枚までのそれぞれの組み合わせで、船同士や陸上との連絡や表示を行う。2字信号は最も一般的に使用される信号旗の組み合わせである。4字信号では船名を表す。
- 汽笛
- 船長100m以上の船は汽笛、号鐘、銅鑼を、船長12m以上100m未満で船は汽笛、号鐘を備えねばならない。船長12m未満では音響設備を備えることになっている。
- 汽笛の吹き方
- (短音 : 1秒、長音 : 4 - 6秒)
- 針路信号
- 右転針中 : 短音を1回
- 左転針中 : 短音を2回
- 推進器に後進をかけている最中 : 短音を3回
- 追い越し信号
- 右から追い越し中 : 長音2回 短音1回
- 左から追い越し中 : 長音2回 短音2回
- 他船からの追越に同意した場合 : 長音1回 短音1回 長音1回 短音1回
- 疑問信号 : 他船との衝突が危ぶまれるのに他船の意図や動作が理解できない時 短音5回以上
- 湾曲部信号 : 狭い海峡などで湾曲部に近付いたとき 長音1回、他方からここに接近している船は同じく長音1回で応じる。
- 遭難信号 : 1分間隔で行う発砲やその他の爆発音
無線
かつては無線電信が利用され、遠洋を航行する船舶との交信には短波が使われたが、近年では無線電信は利用されなくなりつつあり、近距離の船対船の通信には超短波の無線電話(音声通信)が、遠距離通信には通信衛星によるデジタル通信が使われる。
- 国際VHF
- 通常の通信で使われる一般的なもの。船対船の通信だけでなく、港内管制等、陸上の船関係の官庁との連絡にも使われる。
- マリーナ無線
- レジャーボート用。マリーナとの連絡に使用する。
- 漁業無線
- 沿岸漁業の漁船が使用する。短波と超短波を使用。
放送
放送と称しているが、電波法令上は海上保安庁の特別業務の局による同報通信[25]である。
- 船舶気象通報
- 灯台放送とも呼ばれる。灯台などの航路標識事務所が気象・海象情報を送信している。
- 海上交通情報(MARine Traffic Information Service)
- 略称のMartis(マーチス)として知られる。海上交通センターが海上交通情報や気象・海象情報を送信している。
安全と海難事故
- 船級
- 船の安全性を含む性能を検査して認定する会社が国際的な国際船級協会連合では、ロイズ (Loyd's register of shipping) が最も有名な船級協会であり、日本では日本海事協会 (NK) が行っている。
- 国際条約に定められた規則に関して船の構造や設備、船員の資格を検査して満たしているかを確認する。
- 北朝鮮の船が日本の港に入港する時に行った「ポート・ステート・コントロール」(PSC、寄港国による監督)はこの船級検査を受けていない「サブ・スタンダード船」に対する検査であった。
- 国際海事機関、IMO
- 国際海事機関は158か国が加盟している海に関する国際機関である。
- 海上安全委員会や法律委員会を持ち、その下に各種の小委員会を持っている。SOLAS条約もこの中の小委員会で決められた。SOLAS条約は1912年の「タイタニック号」の沈没を契機に作られた。
- 原油タンカーやLPG船などでの構造基準や検査に関して決める。PSCもIMOで決めている。
- 共同海損制度、GA
- 共同海損とは、海難などで船が非常な危険に曝された場合に、危険をさけるために船体を故意に損壊したり貨物を投棄したりして、結果として危険を免れた場合は、その行為によって利益を得た船主や荷主がその犠牲分を按分負担する制度である。
- 海難審判
- 海難事故においても、一般の事故の同様に民事上の責任や刑事上の責任が問題となる。ただ、海難事故においては、これらの責任とは別に将来的な海難の防止のためにも、船舶事故やそれに伴って発生した被害の原因を究明するための調査と、職務上の故意・過失によって海難を発生させた船員の懲戒が特に重要となる。以前は海難審判庁がこの職務に当たっていたが、2008年10月の法改正により海難審判庁は廃止され、前者の海難事故の原因究明については運輸安全委員会が担うこととなり(運輸安全委員会設置法第1条)、後者の故意・過失によって海難を発生させた船員の懲戒については海難審判所が担うこととなった(海難審判法第1条)。
「海難審判」も参照
係留
錨泊
錨泊
1. 単錨泊
2. 単錨泊(振れ止め錨利用)
3. 双錨泊
4. 2錨泊
5. 船首尾錨泊
錨(いかり)を使って泊地などに停泊することを「錨泊」という。錨泊では平穏な海面で、航路や他船の通航がない安全な場所を選び、錨の利きの良い海底面が適する。錨の投錨方法(後述)がいくつかある。流れがある場合は、船首を流れ方向に向けて投錨する。港湾等で錨泊する場合は、指定のエリアや禁止エリアが有り、船舶の大きさや停泊できる時間に制限を行なう場合がある。
- 投錨方法
- 前進投錨法 - 微速で予定投錨地点に近づき、前進状態で投錨し、必要な分の錨鎖を伸ばす
- 後進投錨法 - 微速で予定投錨地点に近づき、予定投錨地点で前進速力が0となるように後進として、投錨、その後、機関を停止、必要な分の錨鎖を伸ばす。
一般商船の錨泊では、もっぱら後進投錨法である。
- 錨泊方法
- 単錨泊(たんびょうはく) - 船首片舷の錨を使う
- 単錨泊(たんびょうはく) - 荒天時に普通の単錨泊に加えて振れ止め用の錨を反対横に使う
- 双錨泊(そうびょうはく) - 船首の錨を2つ用いて、荒天時に使う、又は振れ回りを小さくするため
- 2錨泊(にびょうはく) - 船首の錨を2つ用いて、荒天時に使う
- 船首尾錨泊 - 泊地水面に制約がある場合に使う。中小型船に多く使われる
岸壁係留
係留索
6. 船首索
5. ブレスト・ライン
4. 船首スプリング・ライン
3. 船尾スプリング・ライン
2. ブレスト・ライン
1. 船尾索
船を港の岸壁に止める時には、係留索をボラード[26]に繋ぎ止める。船首尾索(ながし)以外にもそれぞれの位置に応じた名前が付けられている。
- 船首索(ヘッド・ライン、おもてもやい、おもてながし)
- ブレスト・ライン
- 船首スプリング・ライン(フォアスプリング、おもてスプリング)
- 船尾スプリング・ライン(アフトスプリング、ともスプリング)
- 船尾索(スターン・ライン、とももやい、ともながし)
水域区分
船舶安全法によって4つの区域に分けられる。これらによって、船舶の構造、通信設備、救命設備、定員などに求められる制限が変ってくる。
- 平水区域
- 湖、川、港内の水域、港湾の特定の水域
- 沿海区域
- 主として海岸から20海里以内の水域
- 近海区域
- 東は東経175度、南は11度、西は東経94度、北は北緯63度の線に囲まれた水域
- 遠洋区域
- 全ての海域
ただし、漁船では第一種から第三種までの従業制限を受けている。
右舷と左舷
詳細は「舷」を参照
右舷をスターボード[27]と呼ぶのは steeringboard()、つまり舵板の側が右舷に付いていたためであった。その舵のじゃまにならない左舷側に桟橋や岸壁を着けたので左舷をポートサイド[28]や単にポート[29]と呼んだ。英国では左舷はもともとラーボード[30]と呼んでいたが左右で発音が似ていたため、他国と同じくポートと呼ぶことになった。
航空機業界では船舶の文化や慣習が持ち込まれており、最高責任者を「キャプテン」、乗務員を「クルー」と呼ぶなど、同じ用語が用いられている。
船の交通ルールでも同様のルーツに基づいて決められたスターボード艇優先の原則がある。日本では複数の航路がブイによって仕切られこのルールに従っているが、ただ1か所、瀬戸内海の来島海峡航路では潮流の流向によって変則的に左側通航になることがある。
船では右舷が上席であり左舷は下座になる。船長は階段でも右舷側を使い、船長室も右舷側にあるのが普通である。また、船倉の番号も右舷側から1番が始まる。
プレジャーボートでも、ある程度の大きさ以上のものは操船席(ヘルムステーション、フライブリッジなど)が右舷側となり、それとは異なる中央配置のものを「センターコンソーラー[31]」と呼び、区別している。
船の長所と短所
長所
- 大量・大型貨物輸送が(一度に)可能である
- 陸上運搬が困難な巨大な重量物も容易に運搬することができる
- 一度に大量の貨物を少人数の船員で運搬できる
- 低速で良ければ長距離での輸送コストが非常に低い
- 高速航行を求めなければ、エネルギー効率が良く、燃料も安価な重油などが使用できるため、燃費が非常に良い。低速航行であれば造波抵抗は小さいままで粘性摩擦抵抗や粘性圧力抵抗が抵抗の主体となり、大型船にすればするほど燃費は向上して大量の輸送物を低コストで運べる。
- 陸上交通と異なり、海や湖を隔てた国や地方同士での輸送が行える
- 交通インフラとして港の整備だけで済む。効率は劣るが、港がなくてもヘリコプターで荷物を積み下ろしすることも可能。
- 自然災害や戦災で交通インフラが崩壊した地域にも、大量の救援物資を運べる
- 陸上交通では道路や鉄路が必要だが建設と保守のコストが非常に高額となり、用地取得と騒音・排気ガスの問題が発生する
- 航空機では空港の整備が必要となる。用地取得と騒音問題等が発生する。
- たとえ道路や鉄道の建設を行うにしても、山や川といった地形によってルートが制約される陸上交通と異なり、繋がった水上であればどこへでも行ける
- 航空機や陸上交通機関では困難な、大質量の巨大船の建造が可能である
- 船舶は航空機や車輌と比べて大きさの割に安く作れる
- 比較的幅が取れるので船内設計の自由度が高く、航空機や車輌に比べて多様な船室設計が行える
- 海や塩湖では船に塩害対策を施すことが前提となるが、他の交通手段と比べて可動部分が少ないために寿命が長い
- 航空機・鉄道と比べ気象による影響を比較的受けない
- 航空機と比べれば事故や異常事態発生時のリスクが少ない
短所
- 速度(航海速力)が遅い
- 日本一早いビートルでも45ノット(約80km/h)、フェリーに限るとナッチャンReraの36ノット(約67km/h)、貨客船に限るとおがさわら丸の22.5ノット(約42km/h)である
- 水面面積が狭い海峡・水道・湾・川・運河・湖など、それ以外で船の行き来が多い水域では後述の制動距離が長い影響で速度が出しにくい
- 橋や水底トンネルの利便性には対抗できない
- スクリュープロペラでの推進の場合、速度向上に限界がある
- スクリュープロペラが高速回転になるにつれて航海速力が頭打ちとなる
- 速度が遅いために、陸から遠く離れることによる弊害が発生する
- 長距離航海の場合、船員の家庭生活や陸上との繋がりが阻害される傾向があり、食事を含む休息時の環境と人間関係も固定的である。これらにより先進国では海事への就労者が減る傾向にも繋がっている。
- 陸路と比べれば事故や災害時、非常時の逃げ場が限られ、発見と救援にも困難が伴う
- 海賊に襲撃されるリスクがある
- 急病時の対応に制約がある
- 速度が向上するにつれて、エネルギー効率が悪くなり、燃費が悪くなる
- 陸上での移動車輌はおもに車軸の転がり抵抗や走行による空気抵抗が速度とエネルギー効率(燃費)を決めているが、水を押し分けながら進む船舶では水の密度と粘性のために抵抗が大きく、特に造波抵抗は速度向上を阻みエネルギー効率(燃費)の増悪を産む
- ウォータージェット推進では、スクリュープロペラに比べて速度が出るが、エネルギー効率(燃費)が悪い
- 制動距離が長い
- ブレーキは特殊な競技船などを除けば備えておらず、ほぼすべての船舶では全力後進 (Full Astern) によって制動が掛けられても制動距離は長い。さらに全力後進は全力前進と比べても、スクリュープロペラの位置や機関の制約などによって効果が劣り、また、多くの船では前進から後進への切り替えに時間が掛かる。通常の船ではスクリュープロペラが後進回転すれば舵の効力が著しく低下する。
- 転針・進路変更が遅い
- 船が進路を変更するには舵が動いて船体が向きを変え(転針)、船体側面で水から圧力を受けることで船が持つ慣性力が偏向されて進路が変わるまでに時間が掛かる。スクリュープロペラが前進方向で回転しなければ舵の効率は極端に悪い。
- 乗りなれないと船酔いを起こすことが多く、旅客運送としては欠点となる
- 迅速に積み下ろしを行うには港を用意しなければならない
- 港がない場合はヘリコプターやはしけの利用も可能だが、積み下ろしの効率が劣る
- 大型化する船に合わせて浚渫工事や埠頭の荷役設備等も改良する必要がある
- 用地取得、漁業権、接続交通路等の問題が生まれ、環境への配慮も必要となる
- 河川のない内陸では使えない
- 陸路と比べ運航時間が気象に左右される傾向がある
- 橋や運河、海峡によっては高さや幅、深さに制約がある
- 内陸では季節により水量不足で運航できない場合がある。湖沼、外洋でも、凍結により運航できない場合がある。
- (大型船限定)小さなトラブルで大惨事となり得る
- 油槽船の事故などでは、他の交通機関に比べてその規模と環境に与える影響が大きくなる
- 旅客船では千人規模での犠牲者を出すこともある
- バラスト水による自然生態系への悪影響がある
その他
外航船における日本人船員の減少
日本の外国航路船舶の船員は早い時期からコスト削減のためにフィリピン人を中心とする外国人を採用していたため、たとえば日本郵船の外国人船員の割合は1886年の32%(187人/580人)から2003年の89%(14,838人/16,631人)へと変化している。2006年には外航船の日本人船員数は2,650人であり[24]、2008年には日本人の船員数は3,000人を切った[23]。
日本の船会社が運航する日本籍船の減少
日本の船会社が運航する日本籍船の船数は1972年から減少を続け、代わりに外国船籍の船を日本の船会社が借りて運航するようになっている。1978年に外国船籍の船数が日本船籍の数を越えて以後は、日本船籍が減り続け、2006年の統計データではついに95隻で、日本の船会社が運航する全2,223隻の4%にまでなった。
このように、日本の船会社が日本船として登録を避ける原因はおもに、高い税金(登録免許税、固定資産税)、最低2名の日本人乗員の乗組み規定、国際条約での規定を超える日本独自の高いレベルの設備・検査規定、がある[24]。
操船の自由
世界的に見ると、ほとんどの国でプレジャーボートの操船に免許などというものは不要である[32]。
船籍を日本以外にしておけば、日本の免許を取得する必要は無く[33]、また日本の小型船舶免許は、日本の領域から出たら効力はない[34]。また、大型船においては有資格者が見張りをしている状態で有資格者の指示を受けて操船する場合、無資格者でも操船することができる。(実際に操舵長や操舵手は無資格者が多い)かつては小型船舶においても同様のことが可能であったが、法改正により現在では原則として有資格者が自ら操舵をしなければならない。
次の要件を全て満たしていれば免許不要で船舶検査を受けなくても操船できる。
- 登録長が3m(約10フィート)未満であること
- 推進機関が1.5kW(2馬力)未満であること
- 直ちにスクリュープロペラの回転を停止することができる機構を有する船舶でまたは、その他のスクリュープロペラによる人の身体の傷害を防止する機構を有する船舶
乗客
国際的に、貨物船でも12名までなら乗客を運搬しても構わないとされており、1970年代と1980年代には欧米の若者の間で貨物船による安価な海外旅行が流行った時期がある。1950年代、指揮者の小澤征爾は音楽修行のためにフランスに渡るのに貨物船を利用している。現在でもインターネットで検索すればこういったルートは発見できるが、多くの船会社はテロや海賊のリスクを考慮して身元の不確かな乗客の乗船には積極的でなくなっている。日本では鹿児島や沖縄の離島との交通手段として現在でも地元の人にとっての貴重な存在になっている。
歴史的な分類名称
- ビランダー : 2本マスト小型商船
- キャラベル : 小型帆船
- キャラック : 大型武装商船
- クリッパー : 高速帆船、快速帆船、スキッパー級帆船(後に、高速ヨットを指す)
- フリゲート : 帆走快速軍艦
- ガレオン(ガリオン、ガリオン船) : 軍用・貿易用大型帆船
- ガレー : 主な推力に人力によるオール(櫓)を用いた大型船
- トライリーム : 三橈漕船(さんどうそうせん)、両舷に三段のオールの漕ぎ口があるガレー船
- クナール : バイキングの用いた船
- リバティシップ : 第二次大戦中に大量建造された貨物船。仕様を標準化し、建造期間が短かった。
- ビクトリーシップ : 第二次世界大戦中のリバティシップを改良して建造された高速性の優れたビクトリーの名を付けた貨物船の種類。
- マンオブウォー : 軍艦
- Qシップ(Qボート) : 第一次大戦中に英国が建造したドイツ軍Uボート対策の艦
- 汽船・蒸気船 : 推力の動力として蒸気機関を用いた船を指すが、具体的には外輪船等の旧式なものを指すことが多い。
- 戦列艦 : 多数の砲門を備え一定以上の速力・旋回力・耐久力を持つ大型軍用帆船
POSH
昔の大英帝国と植民地インドとの航海では、アフリカの南端、喜望峰をまわって長旅をしていた。この旅では英国からインドへ向かう往路のインド洋では右舷側が太陽光を浴びて暑くなり、反対にインドから英国への帰路には左舷側が太陽に焼かれたので、客室の料金もその反対側が高額であった。
このため、裕福な人々はつねに日陰側である往き : 左側(英: port)、帰り : 右側(英: starboard)での船旅を楽しんだ。ここから、「port-out starboard-home」が裕福な人の表現となり、縮めて「POSH」と呼ばれた。
比喩的な「ふね」
船の呼称は一般的に「何々号」・「何々丸」などとして命名されるが、海上の「ふね」が大海原に比して狭小であることから、特定の事象に於ける物体中または空間中における狭小な乗り物を「ふね」と呼ぶ。加えて、設備が軽微なふねでは「板子一枚下は地獄」の喩えで用いられるように、周辺に比して「ふね」の外殻の脆さから運命共同体や生活としての意味を含み、これが転じて宇宙的な規模で地球を表現する際は「地球号」のように「ふね」を用いた表現をする。
熟語、慣用句
- 乗りかかった船 : いったん物事を始めてしまった以上、途中でやめることができないこと。
- 渡りに船 : 困っていたところに、おあつらえ向きの条件が整うこと。
- 船頭多くして船山登る : 指図するものが多くて意見がまとまらずに、物事があらぬ方向へ向かってしまうこと。
- 船を漕ぐ : 眠そうなさま。または居眠りをしている様子。
- 硯池法船(けんちほうせん) : 精進して来世を願い、経文を静かに写すこと。写経の様子。
- 呉越同舟(ごえつどうしゅう) : 敵味方が偶然出会ってしまうさま。孫子より。
- 南船北馬(なんせんほくば) : 所々方々をたえず旅していること。淮南子より。
排ガス規制
船舶については、陸上の自動車などのような排ガス規制が存在せず、野放し状態であり、大型船1隻で5000万台の自動車に相当する汚染物質を排出している記事もある。[35]
出典・注記
- 池田宗雄著 「船舶知識のABC」 成山堂書店 第2版 ISBN 4-425-91040-0
- ^ a b c 広辞苑 第五版 p.2354「ふね【船・舟・槽】」
- ^ さらに、オートバイに取り付けられるサイドカー(側車)等々もそう呼ばれる。
- ^ 村田治美著 「体系海商法(二訂版)」 45頁、成山堂書店 2005年11月8日二訂初版発行
- ^ 村田治美著 「体系海商法(二訂版)」 41頁、成山堂書店 2005年11月8日二訂初版発行
- ^ 村田治美著 「体系海商法(二訂版)」 46頁、成山堂書店 2005年11月8日二訂初版発行
- ^ 「船舶ノ名称ニハ成ルベク其ノ末尾ニ丸ノ字ヲ附セシムベシ」としているので付けなければいけないわけではない
- ^ 日本商品分類中分類50-船舶 (PDF) 総務省統計局
- ^ 英: mail room
- ^ 英: strong room
- ^ 英: deep tank
- ^ 日本商品分類中分類50-船舶 (PDF) 総務省統計局
- ^ 船と海の研究会編著 『海洋船舶の科学』 日刊工業新聞社 2008年4月30日初版第1刷発行 ISBN 9784526060533
- ^ a b c 拓海広志著 「船と海運のはなし」 成山堂書店 平成19年11月8日改訂増補版発行 ISBN 978-4-425-911226
- ^ 日本商品分類中分類50-船舶 (PDF) 総務省統計局
- ^ 日本商品分類中分類50-船舶 (PDF) 総務省統計局
- ^ 村田治美著 「体系海商法(二訂版)」 45頁、成山堂書店 2005年11月8日二訂初版発行
- ^ 村田治美著 「体系海商法(二訂版)」 45頁、成山堂書店 2005年11月8日二訂初版発行
- ^ このうち1隻は前フィリピン総督ドン・ロドリゴに貸し出され、後にマニラ・ガレオンにも使われた。スペイン名 : サン・ブエナ・ベントゥーラ号
- ^ 3,847馬力の搭載主機関も同時に作られた。しかしこの建造の設計・資材・技師はすべて英国よりの輸入に頼っていた。
- ^ 吉識恒夫著 「造船技術の進展」 成山堂書店 2007年10月8日初版発行 ISBN 978-4-425-30321-2
- ^ 英: watch
- ^ 英: machinery space man zero
- ^ a b 清水信一著 「軍事研究 2008年4月号」『防衛調達改善と天下り削減』 ジャパン・ミリタリー・レビュー 2008年4月1日発行
- ^ a b c d 森隆行著 『まるごと! 船と港』 同文館出版 2008年3月19日初版発行 ISBN 978-4-495-57861-9
- ^ 電波法施行規則第2条第1項第20号 「同報通信方式」とは、特定の二以上の受信設備に対し、同時に同一内容の通報の送信のみを行なう通信方式をいう。(送り仮名の表記は原文ママ)
- ^ 英: bollard
- ^ 英: starboard
- ^ 英: port side
- ^ 英: port
- ^ 英: larboard
- ^ 英: centre consoler
- ^ http://www.cruz-net.com/Gen/rule.html
- ^ http://www.cruz-net.com/Gen/rule.html
- ^ http://www.cruz-net.com/Gen/rule.html
- ^ Health risks of shipping pollution have been 'underestimated'
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