出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/07/07 22:46:51」(JST)
「糸」の語義については、ウィクショナリーの「糸」の項目をご覧ください。 |
「糸」のその他の用法については「糸 (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
糸(いと)は、天然繊維および化学繊維を引き揃えて、撚りをかけた物のことである。この工業的に撚りをかけたもののことを専門的には撚糸(ねんし)という[1]。 また、フィラメント糸やクモの糸の様な紡績とは無関係な長細い形状の物も含めて糸と呼ぶ。
自然界から得られる繊維は、ウールや麻のように短い(短繊維)ので、これをまとめてねじることにより長くつなげ、扱いやすい太さとしたものが糸である。複数を撚り合わせることで強度も増す。絹やポリエステルのようにもともと長い繊維(長繊維)も2本以上の繊維をねじることで強度が増すため使われる。紙も糸の材料として使われており、ルイ・ヴィトン社やランバン社にて紳士服に使用される。
織物などの場合、その素材となる糸は、長ければ長いほどよい。逆に繕い物などの際には長すぎる糸は絡まるなどのトラブルを起こしやすい。繊維を糸に加工するのは結構やっかいなことなので、普通はできるだけたくさんまとめて作り、絡まないように糸巻きなどに巻き付けて管理する。繕い物などの場合はその一部を切り取って利用する。
繕い物は日常における衣服のメンテナンスとして重要であり、そのための道具である糸と針は必ず一纏めに扱われる。童話『眠れる森の美女』で美女の指に刺さったのが糸を作るための道具、紡錘(つむ)である。
繊維を撚り合わせることで太く長くなり、様々な用途に使えるようになるが、その最も細いのが糸であり、さらに太いものは紐・縄・ロープ等と呼ばれる。
植物から得られる糸は、原則的には細胞壁からなるものである。表面の毛として得られるものは、表皮から突出する細胞の細胞壁であり、内部から得られるものは、維管束や皮層にある線維細胞のそれである。これらが特に長く発達する植物のそれが糸として利用される。
動物から得られる糸は、大きく二つに分かれる。
一つは動物の体の一部が糸状になっているもので、例えば羊毛がそれである。
もう一つは体内から作られた化学物質が糸の形をなすものであり、絹糸やクモの糸などがこれにあたる。
動物自身が糸を使う例も多々ある。糸は巣を作る際や動物体を基質に固定するなど、それぞれに用途がある。
代表的なものを以下にあげる。
手縫い糸とミシン糸では、よりの方向が逆になっている。
糸の最も一般的な使い道として、衣服などの衣料がある。 衣料の原料となる織物は経(たて)糸と緯(よこ)糸を組み合わせて作られる。
弦楽器の発音体(弦)は糸状をしており、やはり「糸」と呼ばれる。この糸はピアノ線の様に繊維と無関係な糸状の金属の場合もあれば、動植物などに由来する紡績糸である場合もある。転じて三味線,箏、胡弓、琵琶など弦楽器の総称としても「糸」の語を使う。 日本の管楽器は竹でできているので、糸と合わせ音楽のことを「糸竹 (いとたけ) 」とも言う。また小唄などでは、三味線パートのことを「糸」とも言う。原料は絹で、春繭を使い、撚り合わせて糊で固める。三味線の糸一つをとっても様々な太さがある。
伝統的に釣り糸として使われてきたものに絹の紡績糸であるテグスがある。今日ではナイロンなどの化学繊維の釣り糸が一般的。
操り人形を上から吊るし上げて動かすのにテグスが用いられる。
凧を操るのに凧糸が用いられる。
主に焼豚やハムなどを作る時、肉が崩れたりするのを防ぐため、凧糸で肉を縛ってから調理する事が多い。
物事を結びつけるという意味が込められる。
糸は細くて長いため、往々にして互いに絡み合い、もつれてほぐせなくなる。その場合、無理に引っ張るとさらにからんで、結び目になったり切れたりするから、ゆっくりと丁寧にほぐさなければならない。
ギリシャ喜劇の『女の平和』では、主人公が戦争を女たちに任せよ、と主張、戦争の原因となった諍いを解消することを糸をほぐす作業にたとえて説明している。
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