-neurotoxicity
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/04/09 16:12:04」(JST)
神経毒(しんけいどく、英語: Neurotoxicity)とは、神経細胞(神経単位、ニューロン)に特異的に作用する毒のことである。通常、膜蛋白質とイオンチャネルとの相互作用によって効果を及ぼす。一般的な作用は麻痺であり、それは極めて急速に起こる。
多くの神経毒は電位依存型イオンチャネルに影響を与えることで作用する。たとえばテトロドトキシンとバトラコトキシンはナトリウムチャネル(英語版)に影響を与え、モーロトキシン(英語版)、アジトキシン(英語版)、カリブドトキシン(英語版)、マーガトキシン(英語版)、スロトキシン(英語版)、スキラトキシン(英語版)、ヘフトキシン(英語版)はカリウムチャネルに作用する。カルシセプチン(英語版)、タイカトキシン(英語版)、カルシクルジン(英語版)はカルシウムチャネルに作用する。
バトラコトキシンのような強力な神経毒は興奮性細胞膜のナトリウムイオン透過性の増大による神経および筋繊維の脱分極を引き起こすことにより神経系に影響を与える。
医薬品における神経保護作用の培養試験では、グルタミン酸やN-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA)、カイニン酸が神経毒として用いられることが多い。動物の神経細胞を用いた培養試験では、グルタミン酸(500µM濃度以上)で培養24時間後に神経細胞の大半が死滅する。これを試験薬がどれくらいの濃度で、培養神経細胞を何%生存させたかによって神経保護能を評価することが通例となっている。そのメカニズムはグルタミン酸受容体や、サブユニットを活性化させ、カルシウムイオンの過剰流入によって神経細胞のアポトーシスを誘導すると示唆されている。
神経毒性は体内で作られた物質からも生じ、それは内因性神経毒と呼ばれる。脳内で神経毒性を示す最も重要な例はグルタミン酸である。矛盾しているようであるが、グルタミン酸は同時に最も重要な神経伝達物質である。ニューロン周囲のグルタミン酸濃度が危険な濃度にまで達すると、ニューロンはアポトーシスと呼ばれるプロセスによって自己を殺す。このプロセス全体は、グルタミン酸塩が通常は低い濃度においては興奮性の神経伝達物質として作用することから興奮毒性と呼ばれている。
外部環境から摂取された毒素は外因性と表現され、外因性毒素には、ガス(たとえば一酸化炭素)、水銀のような金属、液体(エタノール)、そして膨大な種類の固体が含まれている。外因性毒素が摂取された場合、ニューロンへの作用は主として用量依存性である。たとえばエタノール(アルコール)は少量では生物を酩酊させる緩やかな神経毒性を示すだけであるが、長期間にわたりそのような低用量のアルコールに暴露し続けることは神経細胞を緩やかに弱らせ、死滅させる。
エタノールへの慢性的な曝露後の中止は脳の興奮毒性を引き起こす。HU-210(英語版)などのカンナビノイド受容体(英語版)作動薬は、エンドカンナビノイドシステム(英語版) (CBR) を刺激しアルコール離脱に対して保護的である。対照的にリモナバンなどのCBR拮抗薬はECSを遮断し、長期曝露はNMDA神経毒性を増幅し、アルコール離脱時は逆効果である[1]。
カンナビノイド受容体タイプ1(英語版)作動薬であるWIN 55,212-2(英語版)(1, 10µM)を36時間培養させた結果、神経細胞をアポトーシスさせた[2][注 1]。
ジゾシルピン、フェンサイクリジン、ケタミンなどの神経保護作用を有するNMDA受容体拮抗薬は、ラットにおいてはオルニーの病変と呼ばれる神経細胞空泡化や細胞死を誘導することが知られている。
神経保護剤として知られているミノサイクリンも神経細胞のアポトーシスを誘導し、神経毒性を示している。
ヘビやサソリの毒や、その他の生物が脊椎動物に対する防御のために利用する毒の多くは神経毒である。ハチ、サソリ、クモ、およびヘビの毒には何種類もの異なる毒素が含まれていることがある。
クジャクなど、神経毒に耐性がある生物も存在する。
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神経毒の多くは神経保護作用を有する。
シアン化ナトリウムの神経毒に対し、テトロドトキシン(1µM以上)、リファリジン(1µM以上)、ジゾシルピン(IC50=19nM)は神経保護[3]。
ベラトリジンの神経毒に対し、テトロドトキシン(IC50=30nM)、リファリジン(IC50=400nM)、ニトレンジピン(IC50=30 µM)は神経保護[3]。
グルタミン酸の神経毒に対し、ジゾシルピン(IC50=14〜100nM)は神経保護[3]。
グルタミン酸(500µM)神経毒に対し、ミノサイクリン(IC50=10nM)は神経保護[4]。
NMDA(300µM)神経毒に対し、ミノサイクリン(IC50=20nM)は神経保護[5]。
NMDA(15µM)神経毒に対し、WIN 55,212-2(20nM)やCP 55,940(英語版)(20nM)は有意に神経保護[6]。
スコポラミンの神経毒に対し、ミノサイクリン(2nM)は有意(p<0.01)に神経保護[7][注 2][8]。
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