出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/02/04 11:20:03」(JST)
塩田明彦監督・宮﨑あおい主演の映画作品『害虫』については「害虫 (映画)」をご覧ください。 |
害虫(がいちゅう、英: Pest)とは、人間(ヒト)や家畜・ペット・農産物・財産などにとって有害な作用をもたらす虫。主に無脊椎動物である小動物、特に昆虫類などの節足動物類をいう。駆除には殺虫剤が使われる。英語では「害虫」「害獣」「害鳥」は、いずれも「Vermin」の語で表される。害虫の一覧も参照。
役に立つものは益虫という。
様々な形でヒトに被害を与えるものに対する呼称である。ヒトの生活のあらゆる面で、それを害する虫がいるので、その在り方は様々である。常にヒトに害をなしつづけるものもあれば、偶発的にヒトに害を与える、というものもある。前者であれば、常に配慮を怠る訳にはいかない。吸血性昆虫や、農業害虫がそれにあたる。
ある視点で見たとき、その虫が害をなすのであれば、それを害虫というのであって、別な視点でその虫を見れば、むしろヒトにとっての利益になる、益虫と判断できる場合もある。生物は、互いに複雑な関係をもって生活しており、ある生物種の個体数の増加減少が、生物群集全体に予測できない変化を引き起こす場合もあり得る。駆除の対象とすべきかどうかには、慎重な判断が必要である。野外の、それも人里離れたところに出たときのみ、危険を与えるようなものに対しては、人間側が配慮すべきであろう。
農業害虫ともいわれ、きわめてたくさんの例がある。収穫後、保存中の農作物を加害するものは、貯穀害虫という。農業においては、害虫への対応いわゆる害虫防除は、過去より現在に至るまで、もっとも重要な課題の一つでありつづけている。古くは虫送りなど、害虫を追い出す行事があり、最近では農薬を主体とする防除法が発達している。農薬には副作用や環境への影響など、様々な問題もあり、現在では出来るだけ農薬を使わない工夫も行われる。天敵利用など、自然の作用を利用する防除法なども施行されている。
等が該当する。
ヒトの血を吸ったり、噛んだり、刺したり、体表面に付着した病原体を機械的に運搬することによって被害を与える虫は、衛生害虫と呼ばれる。
血を吸うものの中には、重要な病気を媒介するものがあり、世界的に駆除が検討されているものもある。
刺す事で害を与えるものにはハチや毛虫など、噛みつくものではムカデなど、機械的に病原体を運搬するものとしてはハエやゴキブリなどが挙げられる。ハチの場合、アシナガバチやスズメバチは危険視されがちだが、彼らは肉食で、毛虫などを食べるものであるから、彼らを駆除すれば、毛虫などが繁殖する可能性もある。
他にヒトに害を与える昆虫には、体に毒を持つものがある。たとえば刺すケムシとしてドクガの仲間がある。卵、幼虫(毛虫)、成虫とも体毛に毒を持ち、触れると炎症を起こす。他に体液に毒を持つアオバアリガタハネカクシなどは、燈火に来ることがあり、うっかり体表上でつぶすと炎症や水ぶくれを生じる。
製品に昆虫が混入することは、企業イメージの低下を招き、クレーム、回収などの原因になる。食品製造上、特に留意される昆虫は以下のようなものが挙げられる。
ゴキブリ、ハエなど、一般的に注意されるものの他、僅かな食品カスやそこから発生するカビ等を摂食して繁殖する昆虫も存在する。ヒョウホンムシ、カツオブシムシ、シバンムシ、コクヌストモドキ、ヒラタムシ、コクゾウムシ、チビタケナガシンクイ、メイガ(シンクイムシ)、チャタテムシ、トビムシなど多岐に渡る。
テントウムシやカメムシなど、物陰で集団越冬する昆虫が、人家を越冬場所に選んだ場合、往々にしてトラブルを引き起こす。
アブやカなど、血を吸いに飛んで来るもの、ダニやシラミなどの寄生虫は、様々な家畜に直接の害を与え、病気を媒介するものもある。
建造物や博物館や美術館などに収蔵される古文書・美術資料などの文化財は多くが紙や布などの有機質材料でできているため、虫害による損傷が発生する。害虫による文化財の損傷は虫損と呼ばれ、文化財への虫損を及ぼす害虫は文化財害虫と呼ばれる。
博物館施設においては文化財に影響を与える照明や湿度、振動や空気質など環境的要因とともに虫害の防止が考慮され、施設内部や収蔵庫は建設の段階から気密性を高くするなど対策がなされ、また定期的に薬剤による燻蒸作業が行われている(一方で、燻蒸薬剤による文化財への影響も考慮される)。
古文書は特に発見された段階で虫損が生じていることが多く、損傷状態によっては文書料紙と同質材料を用いての修復が行われる。また、翻刻にあたっては前後の文脈から虫損部分の文字を推測し補われることも多い。
上記のような農作物・財産・人体に与える害が特に無く、むしろ害虫を捕食するなど人間にとって益虫とも言える種であるにもかかわらず、外見や動きが気分を害するという理由で害虫に分類される例が最近現れた。不快害虫(専門用語では、ニューサンス/Nuisance)と呼ばれており、アシダカグモやゲジ、カマドウマ、ヒヨケムシ、ウデムシ、ヤスデなどが代表例。後天性の恐怖などが引き起こしたものであり、現代的な害虫と言える。
近年では、街路樹に生息する触らなければ概して無害な虫にまで駆除要請が多く、仙台市の泉区役所には10年で苦情が倍増し、過去においてはその時期特有の現象と割り切られていた現象にまで行政に対処が求められてしまい、手一杯の状態になっているという[1]。
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