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味覚(みかく)は、動物の五感の一つであり、食する物質に応じて認識される感覚である。生理学的には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが基本味に位置づけられる。基本味の受容器はヒトの場合おもに舌にある。基本味が他の要素(嗅覚、視覚、記憶など)で拡張された知覚心理学的な感覚としての味は、風味(ふうみ、flavour)と呼ばれることが多い。また、認識の過程を味わう(あじわう)と言う。
味覚は物質の受容に基づく感覚の一つである。往々にしてそれは摂食時であり、対象は食料であり、匂いと共にそれが飲食可能であるかを判断する。また、味覚は摂食時の楽しみの一つである。ヒトの場合のそれは舌にあり、嘗めることで味を確かめる場合もある。哺乳類一般にこれはあると考えられる。
他方、それ以外の動物では必ずしもこれに限らない。昆虫ではチョウやハエなどで前肢の先端に物質受容器があり、食料を触ることで味見しているとされる。
以下、主としてヒトの味覚について記す。
かつて基本的な味の要素として挙げられていたものには、甘味、酸味、塩味、苦味、辛味、渋味、刺激味、無味、脂身味、アルカリ味、金属味、電気の味などがあった。1901年、ヘーニッヒ (D. P. Hänig) はアリストテレスの示した4つの味の舌の上での感覚領域[1]を示した。しかし今日ではこの説は否定されている。1916年、ドイツの心理学者ヘニング(Hans Henning)は、この4つの味とその複合で全ての味覚を説明する4基本味説を提唱した。ヘニングの説によると、甘味、酸味、塩味、苦味の4基本味を正四面体に配し(味の四面体)、それぞれの複合味はその基本味の配合比率に応じて四面体の稜上あるいは面上に位置づけることができると考えた。
日本では1908年に池田菊苗がうま味物質グルタミン酸モノナトリウム塩を発見した[2]。このうま味は4基本味では説明できないため、日本ではこれを基本味とする認識が定まった。しかし西洋では長らく4基本味説が支持され続け、うま味が認められたのは最近のことである[3]。現在では甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが受容体を介して膜電位の活性化を引き起こしていると考えられており、生理学的にはこの5つが味覚であるといえるため、五基本味と位置づけられる。
基本味以外の、辛味物質、アルコール、炭酸飲料などの化学的刺激や、温度(熱さ・暖かさ・冷たさ)、舌触り(つぶつぶ感、柔らかさ、硬さ、滑らかさ)などの物理的刺激は、化学的受容体を介することなく直接神経を刺激して大脳皮質味覚野に伝達され、基本味と合わせて総合的な味覚を形成する。ただし味覚刺激の全てについて神経に伝達されるまでの機構が解明されたわけではない。
知覚心理学的には、味覚は単独では存在しえず、大なり小なり嗅覚あるいは視覚や記憶など影響を受ける。たとえばレモンの酸味とライムの酸味は、酸味成分は同一であり基本味的には違いが無く、嗅覚、視覚あるいは記憶によって両者の違いが強調されて認識される。この様な知覚心理学的な意味での味のことを風味と呼ぶことがある。
味覚は、嗅覚と同様に、主に化学的受容体に物質が結合することで検出される。嗅覚との差は、離れて感じるか、触れて感じるかの差である。舌に多く存在する味蕾は味覚受容体細胞と支持細胞から形成されており、化学的受容体は味覚受容体細胞の先端(味蕾の味孔と呼ばれる開口部から突出している部分)に分布する。
味覚受容体細胞の分布は動物の種によって異なり、ヒトの場合は主に舌で、他には軟口蓋(口の奥の上面)、喉頭蓋、および食道上部内面、すなわち口と喉に広く分布する。他にも、例えばナマズは体表全域に味覚受容体細胞が分布している。ヒトの舌では味蕾は舌乳頭上に存在し、舌乳頭には茸状乳頭(舌の前部に多い)、葉状乳頭(舌の両側部に多い、成人では退化)、有郭乳頭(舌扁桃前方の舌の奥に分布)などの形状分類がある[4]。無脊椎動物では口から離れた場所にある例もある。チョウでは、前足に接触性の物質受容器があり、強いて言えば足で味わうわけである。
味覚受容体細胞は複数の物質の化学的刺激に対して膜電位が活性化され、その強度は物質によって異なる。1つの味覚受容体細胞に対して複数の神経がシナプス接合している。受容体細胞側では膜電位が伝達されると、Ca2+チャネルの働きにより、セロトニン(5-HT)がシナプス間隙に放出され、神経に刺激が伝達される。
味覚の刺激量と感覚の強度との関係は、他の感覚と同様で、刺激量のべきに比例して感覚の強度が大きくなる。一方、味覚の種類によって最小感度(閾値)と強度応答は異なる。一般に苦味が最も感度が高く、塩味、酸味、甘味と続く。また、苦味と塩味は応答範囲が広いが、酸味、甘味は狭く、特にショ糖による甘味は高濃度で応答が飽和する。また同種の味を持つ物質であってもキニーネとカフェイン、ショ糖とサッカリンとでは閾値は異なる。あるいは濃度により味が変わる場合もあり、サッカリンは低濃度では甘味を感じるが、閾値が低く、低濃度から感じて良い筈の苦味は高濃度で初めて感じる。味覚の間の交差も良く知られた現象で、塩味は甘味を増強する。
味覚を変化させる物質も知られており、ギムネマ酸とミラクリンがあげられる。ギムネマ酸はインドで自生するギムネマ・シルベスタの葉に含まれており、これを食べた後ではショ糖の甘味を感じなくなる。これは、甘味受容体に対するショ糖の結合をギムネマ酸が競合阻害していると考えられている[5]。ミラクリンはアフリカで自生するミラクルフルーツの実に含まれており、これを食べると酸味は消失し甘味として感じられるようになる。これはミラクリンが酸味受容体を抑制すると同時に甘味受容体の特異性を変化させるためと考えられている。
フェニルチオカルバミド (PTC) の苦味を感じる受容体の有無は遺伝によって決定され、受容体がない人は PTC の苦味を感じることができない。この現象は味盲と呼ばれる。
味覚神経は一次感覚ニューロンが直接中枢神経に伝達する(嗅覚神経は、二次感覚ニューロンも介す)。具体的には舌の前2/3に分布する茸状乳頭の味覚受容体細胞は顔面神経(鼓索神経)を介し、舌の後ろ3分の1に分布する葉状乳頭・有郭乳頭上の味覚は舌咽神経を介して、喉頭あるいは食道部の味覚は迷走神経を介して延髄に連絡する。また舌触りなど化学的受容体を介さない味覚刺激は三叉神経も介する。
一次感覚ニューロンは延髄の弧束核を経て、視床の後内側腹側核(VPM核)を経由して広義の大脳皮質味覚野に伝達される。具体的にはVPM核からは、大脳皮質43・11・3野への連絡が知られている。なお、11野はにおいの識別センターでもある。
味覚障害は薬物性のものの他、末梢・中枢の神経障害、亜鉛不足、口腔乾燥症などの口腔疾患や全身疾患、放射線治療後などにより引き起こされる[6]。
亜鉛の不足により味覚障害が引き起こされることが最も多い[7]が、薬剤の亜鉛のキレート作用が原因であると考えられる味覚障害は亜鉛欠乏性の味覚障害と区別されて薬剤性とされ[6][7]、味覚障害の原因として一番多いものは薬剤性である[6]。
ペニシラミン(慢性リュウマチ治療)[7]、アミトリプチリン(向精神薬)、ビンクリスチン(抗がん剤)、リトナビル(AIDS治療薬)、ACE阻害薬(高血圧薬)などいくつかの薬剤で味覚異常を示すものが知られている。
急性インフルエンザなども一過性の味覚異常を引き起こす。慢性関節リウマチで金化合物療法を受けている患者が金属味を愁訴するのは、口内炎の始まりを意味する。不愉快な甘味は肺の小細胞癌を示唆することがある。
局所的原因に関しては、例えば歯科に関する原因の味覚異常として
などか知られており、これらの場合は歯科治療で原因が除去されると味覚異常が改善される。
また、味覚閾値としては中学生頃が最も低く(つまり味に対して鋭敏である)、幼児・学童、成人、高齢者の順で高くなっていく。そのため高齢者では、健常者であってもある程度の味覚の変化が現れる。
2008年8月、アメリカ・モネル化学感覚研究所のマイケル・トルドフ博士らの研究により、マウスにカルシウムに反応する2種類の受容体があることが判明したと報道された。この受容体を人間も持っていれば、「カルシウム味」とでも呼ぶべき味が6番目の味覚として認定される可能性がある。トルドフによれば、「苦くて、恐らくちょっと酸っぱい」味だという。
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クラシエ加味帰脾湯エキス細粒
貧血、不眠症、精神不安、神経症
なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
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