出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/05/19 18:31:37」(JST)
リストカットとは、カッターナイフなどの刃物を用いて主に上腕を傷つける自傷行為をいう[1]。略してリスカと言われることがあり、若年層の間ではこの表現が多用されている[2]。
手首 (wrist) を切る (cut) ことから造られた和製英語である[2]。
英語でもこの用語が使われることもあるが、英語ではcut(切断する)の代わりにslash(切りつける)を使うことが多い[2]。病名として「リストカットシンドローム(手首自傷症候群または手首自傷症症候群)」と呼ばれることもあるが、自傷行為そのものが病気としては一般認知されないため暫定的な呼称である。自傷行為全般を指して言うこともある。
日本ではリストカットを略して「リスカ」と、リストカットをする者の事は「リストカッター」または「リスカー」と呼ぶことがある。また、日本では腕を傷つけることをアームカット(arm cut、略して「アムカ」)、脚を傷つけることをレッグカット(leg cut、略して「レグカ」)という。
リストカットは、言語化できない鬱積したストレスの表現方法の一つである[3]。ストレスを言語化して相手に伝えられない場合、「行動化」や「身体化」という形でストレスを発露する。「行動化」には歌ったりスポーツをすることなどが分類される。これらは健康な行動化とされる[4]が、その一方で犯罪や非行に走るという形での「行動化」もある[5]。一方で身体化は、円形脱毛症や自律神経失調症など、身体でストレスを表現することで発露する方法である[6]。
リストカットのような「身体化・行動化」されたストレス発散の表現に対して、「隠された心の叫び」を読み取るのは容易なことではない[7]。しかし、力で強引に抑え込もうとするなどすれば、さらに自傷行為をエスカレートさせる危険性がある[8]。自傷行為が例えば学校で行われると、動揺が生じ、クラスを統率する教師は「周囲への動揺を抑える為」、そして、「自分自身に危険が及ぶことを恐れる為」、これを止めようとするが、どうしても表に発露した表現である自傷行為にのみ注意が向いてしまい、心の叫びを聞き取ることが出来ない[9]。「真の気持ち」を受け止めず、「額面だけの励ましや説教」でその場を済ませると、行為が繰り返されると指摘されている[10]。
内田伸子は、「自傷行為には命を懸けてもつたえたい言葉が必ずある」と説明している[11]。
リストカットのような自傷行為は、子どもにとっては「命がけのSOS」であるが、それを受け取る大人達にとっては、「問題」として解釈される[12]。結果、「どうしてわかってくれない」という児童の気持ちと、「どうして問題行動をやめない」という大人の気持ちはすれ違い、齟齬が生じる[13]。
リストカットに走る子供の心理は千差万別だが、実際にリストカットを行った子供達は「苛々してる時にやった」「思い通りにならない時にやった」「誰にも理解されない孤独な心理状態の時にやった」と、様々な説明している[14]。
また、リストカットを行う子供達はしばしば「死にたい」と言うが、これは、「死にたいほど苦しい。助けて」という、「心の叫び」であると解釈される[15]。
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