出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/04/18 19:05:54」(JST)
DNAトポイソメラーゼ(DNA topoisomerase)とは、2本鎖DNAの一方または両方を切断し再結合する酵素の総称である。
環状DNA(細菌のDNAはこの形をとる)では、2本の鎖は位相幾何学(トポロジー)的には結び目があるのと等価であり、ねじれ数の異なるDNA、つまりトポアイソマー(トポロジーの異なる異性体)は、DNA鎖を切らない限り互いに変換できない。トポイソメラーゼはこの変換を触媒する異性化酵素という意味で命名された。
抗がん剤や抗生物質にはこの酵素の阻害剤として働くものがある。
2本鎖DNAは普通の生理的条件で二重らせん構造を形成し、自然なねじれを持っている(緩和型構造)。これがさらにねじられたり、逆にほどかれたりすると、二重らせんがさらに全体としてねじれることになる。これらを超らせん構造(前者を正の超らせん、後者を負の超らせん)という。
真核生物のDNAは線状で、全体としては位相幾何学的には区別できない。しかし現実には非常に長い分子で、しかも局所的に超らせん構造をとって(さらにヒストンなどの蛋白質と結合して)複雑な染色体の構造を作っている。転写、複製、修復などの際には二重らせん構造がほどかれる必要があるため、細胞が正常に機能して生きるためには、トポイソメラーゼが立体構造を調節することが必須である。またDNAの組換えや、ウイルスのDNAが染色体に組み込まれる際などにも、トポイソメラーゼが必要である。
トポイソメラーゼは大きく2つに分類される。DNA2本鎖の一方だけを切断するものをⅠ型トポイソメラーゼ(略称トポI、EC 5.99.1.2、別名Swivellase[スウィベラーゼ]ともいう)、2本とも切断するものをII型トポイソメラーゼ(トポII、EC 5.99.1.3)という。
トポⅠは片方のDNAだけを切断し、超らせんを緩和する。超らせん分子がねじれの形で持っていた力学的エネルギーを利用して、DNA末端と酵素が共有結合した中間体を経てDNAを再結合し、ATPを要しない。
トポⅠは抗がん剤のイリノテカンやトポテカンにより阻害される。
トポII は、ATP存在下ではそのエネルギーを利用して正の超らせんまたは緩和型を負の超 らせんへ変換し、非存在下では負の超らせんを緩和する。トポIIはDNAの両方の鎖を同時に切断し、末端を回転させて再結合する。
中でも細菌が持つトポIIは特にDNA gyrase(DNAギラーゼまたはDNAジャイレース)ともいい、キノロン系抗生物質のターゲットとなる。
また抗がん剤のエトポシドやテニポシドはがん細胞の真核生物のトポIIを阻害する。
トポⅠとトポIIはさらにそれぞれ反応機序の異なる2つのサブクラスに分類される。
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