出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/03/17 18:58:37」(JST)
「カブトムシ」のその他の用法については「カブトムシ (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
カブトムシ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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カブトムシの成虫
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Trypoxylus dichotomus (L. 1771) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
カブトムシ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Japanese rhinoceros beetle | |||||||||||||||||||||||||||||||||
亜種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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カブトムシ(甲虫、兜虫)とは、コウチュウ目(鞘翅目)・コガネムシ科・カブトムシ亜科・真性カブトムシ族に分類される昆虫の種の標準和名。より広義にはカブトムシ亜科 (Dynastinae) に分類される昆虫の総称だが、この項では種としてのカブトムシを扱う。広義のカブトムシについては、カブトムシ亜科を参照されたい。
大型の甲虫で、成虫は夏に発生し、とりわけ子供達の人気の的となる。和名の由来は、頭部によく発達した大きな角を持つため日本の兜のように見えることによる。
本州以南から沖縄本島まで分布し、日本以外にも朝鮮半島、中国、台湾、インドシナ半島まで分布する。北海道には1970年代から人為的に定着している[1]。標高1500m以下の山地〜平地の広葉樹林に生息する。とりわけ江戸時代から農耕利用目的で全国的に育てられてきた落葉樹の二次林に多い。
「昆虫の王様」とも呼ばれ、クワガタムシと並び人気の高い昆虫である。体長はオス30-54mm(角を除く)、メス30-52mmほどである(下記参照)。かつては日本最大の甲虫とされていたが、1983年に沖縄本島でヤンバルテナガコガネが発見され、その座を失った。
オスの頭部には大きな角があり、さらに胸部にも小さな角がある。この角は外骨格の一部が発達したもので、餌場やメスの奪い合いの際に使用される。ただし、角の大きさには個体差があり、体格に比例して連続変化を示す。また、角は長いほどオス同士の闘争の際に有利になる反面、タヌキやハシブトガラスといった天敵に捕食されるのを避けるには短い方がよいことが研究で明らかになっている[2]。角の大きさは、幼虫時の栄養状態の優劣と、遺伝により決定される。クワガタムシの一部の種のような非連続変異やコーカサスオオカブトのような体格に比例しない長短変異は示さない。
カブトムシはおもに広葉樹樹幹の垂直面で活動し、付節先端の爪のみが樹皮上での占位に使用される。闘争に際しては相手をテコの原理で樹皮から剥がして投げ飛ばし、執拗な追跡や殺傷を行わない。対照的に東南アジアのコーカサスオオカブトや南米のヘラクレスオオカブト等は、比較的水平に伸びた太枝や大型草本上で活動し、コーカサスオオカブトは闘争においてしばしば他昆虫や交尾を拒否した雌を殺害する。カブトムシの勝敗決定は飼育環境下でも明解である。なお温和なカブトムシの種でも狭い飼育ケース内でのオス同士の格闘では、胸部と腹部の間に角をこじ入れられ、一瞬にして切断されてしまうことがあるので注意が必要である。
以下は角の先端から上翅先端までの長さを上翅から飛び出した腹は含めずに頭を下げて計測した大きさで記す。野外では80ミリを超える個体はやや少ないが、飼育では幼虫期間に餌をより多く与えることにより80ミリは容易。しかし85ミリ以上を育てるのは難しい。
ギネス記録は、飼育では86.6ミリ(2006年)、野外では87.3ミリ(2012年)。ただし、どちらも標本状態での記録であり、生体ではさらに大きい。
2015年6月、俳優の哀川翔が飼育したカブトムシが88.0ミリを記録し、ギネスに申請するとのこと[3]。
Allomyrina 属のカブトムシは2種、4亜種がいる。一部飼育用の本土産カブトムシが沖縄本島で逃げて定着し、固有亜種の生存を脅かしている。
基本的には日が暮れてから活動を開始するが一部の成虫は昼も樹液を吸っていることがある。
幼虫は腐植土(腐葉土)を糧とする。生木、腐食の進んでいない枯木は食べない。朽木や枯葉が微生物等の働きで土状にまで分解されたものを好む。
成虫は口に艶のある褐色の毛が密生していて、これに毛細管現象で樹液を染み込ませ、舐めとるようにしながら吸う。クヌギ、アベマキ、コナラ、ミズナラ、カシ、クリ、地域によってはサイカチやヤナギ、ライラックなどの樹液に集まり、これを吸汁(後食)する。なお樹液場はシロスジカミキリの♀の産卵痕やボクトウガやコウモリガの幼虫(近年の研究によると樹液場を齧ることによりほかの小型昆虫を誘き寄せ捕食していることが明らかになっている)などの他の昆虫が樹皮を傷つけることによって形成される。樹液を餌とする昆虫は他にも数多くいるが、カブトムシはその体格と防御力から、餌場を巡る競争において優位に立つことが多い。
長く、カブトムシの角や口に木の幹を傷つける能力はなく自力で餌場を作ることができないと考えられてきたが、近年の研究結果から、毛状の口器の上にあるクリペウスと呼ばれる突起した器官で、モクセイ科のトネリコや、リンゴの木の樹皮を削って樹液を吸汁することがわかっている[4]。トネリコの木は樹皮に少し傷をつけるだけで樹液が出てくる反面、樹液の流れはすぐ止まってしまうため、カブトムシは少しずつ傷を広げながら吸汁する作業を繰り返す。自ら餌場を作るため、トネリコの樹上では餌場をめぐる競争は少ない事が観察されている[4]。
基本的に夜行性で、昼間は樹木の根元、腐植土や枯葉の下などで休み、夕暮れとともに起きだして餌場まで飛んでいく。夜明け前には再び地面に潜り込むが、餌場争いに負けたなど、何らかの理由で夜間餌にありつけなかった場合は昼になっても木の幹に留まっていることがある。
成虫になると雌雄ともに興奮した時や求愛行動中に腹を伸び縮みさせ音を立てる。 一般的に鳴き声と表現されるこの音は「シューシュー」「ギュウギュウ」「ギュウィン・ギュウィン」 といった感じのもので、音は1メートルほどしか聞こえない程度。 持ち上げたり霧吹き等を使い威嚇させると簡単に聴くことができる。 死んだものの腹を押しても音を聞くことができる。
幼虫の糞は黒褐色でにおいはそれほど感じられない。孵化後しばらくはケシの実状をしており、二齢、三齢と成長するにつれ米粒型を経て最終的には1cm程度のやや丸みを帯びた長方形となる。腐植土の種類や水分状態にあまり影響を受けず通常は固形で排泄されるが、驚いた時は水分を多く含む下痢状になる。
蛹の状態では一切排泄しないが、羽化時に成虫はやや白い体液を蛹の殻内に排出している。成虫の糞は水分を多く含む液状で、これをあたりかまわず飛ばす。摂食する餌の違いが量や色、においに影響してくる。
卵から二齢幼虫までの雌雄判別は難しく行動や外見ではまったく見分けがつかない。三齢幼虫になると雄は雌より一回り大きくなる事が多く、下腹部にV字の模様と小さな凹みが出る。同一環境下の生育でないと大きさの判断は難しく、V字模様がはっきり浮き出ない個体もいるが、凹みは必ず表れるためこちらで判別した方がより正確である。
蛹以降になると雄は頭部と胸部の二箇所に角が現れ確実に判別できるようになる。蛹になる時に角が伸びるので、その分だけ雌よりも縦(種により横)に長い蛹室を作る。一方、雌に角はないが、蛹の状態ではわずかに頭部が飛び出しておりブタの鼻のような形に見える。また雌は雄と比べ脚が太く、鋭い刺が発達している。これは土中に潜るために都合がよい。
カブトムシは卵 - 幼虫 - 蛹 - 成虫という完全変態をおこなう。幼虫は2度脱皮を繰り返し三齢幼虫が終齢となる。
交尾を終えた雌は、腐植土や堆肥に潜り込み1個ずつ卵を産み付け、卵を覆うように周りの土ごと脚で押し固める。一度に産卵するのではなく摂食、産卵の行動を数回に亘り繰り返し計20-30個程度産卵する。好条件の飼育環境下では更に多く50個程にもなる。卵は直径2-3mm程度で最初は硬く楕円形をしており、数日経つと直径4-4.5mmほどに丸く膨らみ軟らかくなってくる。色は乳白色からくすんだ薄茶色になる。2週間ほどで孵化する。
典型的なジムシ型。孵化直後の幼虫は大きさ7-8mmほどで真っ白だが、数時間もすると頭部が茶色く色付き硬化する。胴体は柔らかく弾力性に富み、餌を食べる事により膨張していく。幼虫は腐植土や柔らかい朽木を食べて成長し、ある程度育つと脱皮をする。二齢、三齢とも脱皮直後は孵化と同じく頭部も白く柔らかい。体色は青みを帯びた透けるような白から二齢幼虫後半頃には黄色がかった不透明な乳白色へと変色する。複眼も単眼も持たず、大顎から摩擦音を発することで他の同種幼虫との接触を避ける。気温や餌の状態に影響されるが早いもので孵化から1ヶ月程度で、だいたい晩秋までには終齢である三齢幼虫となり、そのまま越冬する。この時点で体長10cmほどになっている。
非常に免疫力が高く病害に冒されずにすんでいることが判明。この免疫力が医療に使われないかと期待されている。 ただ、乾燥には非常に弱い。
冬を過ごした三齢幼虫は4月下旬から6月ごろにかけて体からの分泌液や糞で腐植土中に縦長で楕円形をした蛹室を作り、そこで3回目の脱皮をして蛹となる。雄の場合は蛹に脱皮する時に頭部に角ができる。蛹ははじめ白いが、橙色、茶色を経て頭部や脚は黒ずんでくる。やがて蛹の殻に割れ目が入り、脚をばたつかせながら殻を破って羽化する。脱け殻は押し潰され原形を留めない。羽化したばかりの成虫の鞘翅はまだ白いが、翅を伸ばしてしばらくたつと黒褐色もしくは赤褐色に色付き硬化する。
羽化してから2週間程度は何も食べず土中で過ごした後、夜を待って地上に姿を現す。成虫は初夏、夜間の気温が20度を上回る日が続くと出現する。温暖な地域では5月下旬頃から、涼しい高地では7月初旬と気候により出現する時期に若干ばらつきが見られる。だいたい6月-7月の蒸し暑く風の無い夜に一斉に飛び立ち、野生の成虫は遅くとも9月中には全て死亡する。成虫の形態で越冬することはないが、飼育下では12月まで生きた例がある。雄の方が活動的でやや短命な傾向にある。成虫の寿命は1-3ヶ月ほどで、外気温と餌の量に大きく左右される。気温が低くなると動きが鈍くなり、また自然界では樹木も落葉に向かい樹液が止まるのでこれが影響する。
幼虫の天敵はコメツキムシやツチバチの幼虫、アリなどの昆虫やモグラである。イノシシも堆肥等を掘り返し食べる。他にもカビやウイルスによる病気で死ぬこともあるが、元来丈夫でそれほどデリケートな種ではない。また、蛹の時に蛹室にミミズが入ってきてしまうと蛹は死んでしまう。成虫の天敵となる捕食者は、タヌキ、イノシシなど森に棲む動物、カラスやフクロウなどがいる。また致命傷には至らないが、カブトムシに寄生するダニが知られている。カブトホソトゲダニ、タカラダニの亜種などが該当する。
また、ヒトが幼虫、成虫を問わず最大の敵となっている。森林開発による伐採や、採集による捕獲がカブトムシを脅かしていることも、否定の余地のない事実である。
日本初の独自の本草書『大和本草』(1709年)には、絵と共に蛾に似ているなどという記述がある。本草学者である小野蘭山の『本草綱目啓蒙』(1806年)によると、江戸時代の関東地方ではカブトムシのことを「さいかち」と呼んでいたことが記されている。この由来についてはサイカチの樹液に集まると考えられていたという説、カブトムシの角がサイカチの枝に生えた小枝の変形した枝分かれした刺に似ているからだとする説がある。また、『千虫譜』(1811年)には、カブトムシは独角僊と紹介され、子供がカブトムシに小車を引かせて遊んでいると書かれている。
カブトムシは、日本ではその独特な姿形を「格好いいもの」と考える人が多く存在し、特に小学生程度の年齢の子供に人気がある。カブトムシの成虫が現れる7-9月は小中学校が夏休みにあたるため、この時期の深夜から早朝にかけて、山林に生息するカブトムシを捕まえにいくことが子供たちの夏期の楽しみの一つになっている。子供たちは捕まえたカブトムシを、しばしば上記した飼育方法によって飼育する。また観察日記を夏休みの自由研究として記録する子供も多い。
捕まえたカブトムシは飼育観察するだけでなく、カブトムシに糸をつけ重い物を牽引させて遊んだり、子供同士でその大きさを競い合ったり、あるいは「けんか」「昆虫相撲」などと称して、2匹のオス同士、またはカブトムシとクワガタムシをけしかけ角で相手をひっくり返した方が勝ちとする遊びに興じたりする。力が強く、大きく、競技で多くの勝ちをおさめるカブトムシを持つことは、その年頃の子供にとって一種のステータスであり、これによって他の子供からある種の尊敬を集めることもある。ちなみにカブトムシは自分の体重の20倍以上のものを引っ張ることができるとされる。人気の高さゆえにカブトムシを商品として売買することが1970年代頃から行われている。
なお、1971年(昭和46年)7月15日発売の12円普通切手の意匠になった。
カブトムシの成虫はクヌギ、コナラなどの広葉樹のきまった樹液を餌にする。昼のうちにこれらの樹皮が傷つき樹液が染み出している箇所を見つけておき、夜から朝方にかけてそこに行くと、カブトムシが樹液をなめているところを捕まえることができる。なおカブトムシは樹液の糖分が樹皮の酵母や細菌によって発酵した産物であるエタノール(エチルアルコール)や酢酸などの匂いを頼りに餌場を探すためこのことをトラップに利用することができる。よく子供向けの本に紹介されている樹木に蜂蜜や黒砂糖を煮詰めたものをハケなどで塗る方法は蒸発したり雨で流れたりして効果が持続する時間は長くない。このため広く使われるのはバナナトラップというものである。作り方はよく潰したバナナを焼酎などに漬け高温下にさらしストッキング等の網状の袋に入れて木にぶら下げておくだけだがストッキングは自然には分解されないので必ず回収する必要がある。
カブトムシを持つ際に頭部の角を持つと、カブトムシは足を大きく動かすために足を痛めることがある。また、頭部と胴部の間に強い負荷がかかる形となる。上から背中の横の部分を持つか、胸の小さい方の角を持つと負担が少ない。
多くの昆虫と同様月光を飛翔の水平維持に用いているため、夜間灯火などの人工光源に誘引される。生息地近くの水銀灯や公衆トイレに飛来した個体を捕まえることもできる。高温多湿かつ無風で月が出ていない夜に特に飛来個体が多くなる。
一方、幼虫は林内や林近くの腐植土、キノコ栽培後の廃ホダ捨て場、あるいは農家が作成している堆肥を掘り返すと出てくる。春の早いうちならば大きな3齢幼虫がいるので、幼虫を傷つけないよう注意しながら腐植土を掘り進めれば採集できる。カブトムシの幼虫の見分け方としては、大きなアゴ、頭のすぐ近くに足が生えていること、体の両脇には9つの気門、全体に細かい毛が生えている、頭が真っ黒なこと、などで見分けることが出来る。
卵の周囲にある母虫由来の分泌物が、幼虫の成長に何らかの影響を与える可能性があると考えられており、卵だけを無闇に産卵位置から動かさないほうがよいが、たとえ卵だけ移動した場合でも孵化、成長ともに可能ではある。卵をマットの上に置いての孵化観察も可能だが、卵の殻は自ら食べて養分とするため頭部に引っかかっていたとしても人為的に取り除くような事はしなくてよい。
過密状態になると幼虫同士が傷つけ合ったり伝染病が発生するリスクが高まる。孵化や脱皮時は傷つきやすく自力での移動もできないため卵や幼虫を一箇所にまとめるような事は避ける。幼虫がある程度の大きさに育ったら、より大きなケースを用意するか、個別に分ける。
幼虫の餌となる腐植土は、ペットショップや昆虫専門店で販売されている専用のマット(育成マット、発酵マット)がそのまま使用でき、簡単で扱いやすい。このマットは広葉樹の材を粉砕後、発酵熟成させたもので、逆にクワガタムシ専用として売られている発酵の進んでいないチップ状のマットはあまり適さず、菌糸瓶と呼ばれる菌類を人工増殖させた物だけでは成長しない。しかし他のクワガタの食べ終わった菌糸ビンの残りや発酵マットを使うと非常によく育つ。
園芸用の腐葉土はより安価に用意できる餌だが、殺虫剤や農薬が含まれていないか確認する必要がある。本来の目的は元肥として使用する保水力と通気性を兼ねた遅効性肥料のため発酵が完全に進んでいないものも多く、葉形が崩れるようになるまで更に数ヶ月要する事がある。そのまま使用していても幼虫飼育は可能であるが完熟した物と比べれば成長は鈍い。また、野外の林床等から採取した腐葉土や朽木(台風の後はよりいい状態のものがある)や農家の堆肥などを使用する場合、幼虫に害のありそうなコメツキムシの幼虫やムカデがいる場合は予め取り除いておく。
適度な湿気が重要で、マットを握って崩れない程度がよいとされており、表面が乾いてきたら霧吹きで定期的に水をやるとよい。マットに加湿する際、水を入れ過ぎると底部に水が溜まって産み落とされた卵が死滅する場合があるので注意が必要である。これは通気性が阻害されると無酸素状態になりやすく、この状態を更に放置しておくと嫌気性細菌の繁殖により発生する有毒ガスがマット内に充満し水難を免れた卵や幼虫にも影響するからである。マットの底が濡れて変色し、ドブまたは硫黄の臭いがする場合がこれに当たる。幼虫がマットの上に出てくる理由は過加湿、乾燥以外にもエサ不足など様々であり、よく観察を続け原因を見極めて適切な対処をすることが重要になる。
糞が多くなったときはマットの追加や交換が必要になる。この際マットが攪拌されることによってカビやキノコの発生を防ぐ事もできる。常に豊富な餌を与えることは栄養不足による個体の矮小化を防止できる。幼虫時に栄養不足だった個体は総じて小型になり特に雄角の萎縮が顕著である。幼虫の糞は大粒のペレット状で、増えてくると黒い小豆がザラザラとひしめいているような状態になる。マットの交換が必要な時はバクテリア環境の激変を抑える意味でも全部入れ替えずに半分から7割程度を入れ替えるのがよい。 終齢幼虫になると糞が大きくなるため粒子の細かいマットならば中目のふるいにかけることで糞だけ分離する事ができる。減った分だけマットを足していく事で交換することなく効率の良い飼育が可能になる。幼虫の粒状化した糞は腐植土が更に分解されており、肥料としての利用価値が高い。
卵の時期(初秋)と蛹の時期(初夏)はデリケートなため触れる事は厳禁である。
幼虫がかじって脱走しない容器なら何でも使える。ただし、個別に飼育する場合は1リットル程度のビンが、複数で飼育する場合は衣装ケースや大型の飼育ケースが望ましい。 冬場は凍結に注意する。日本のカブトムシは雪の降る日本の気候に適してきた種で耐寒能力に優れるが、それでも完全に凍結するような環境では飼育に適さない。逆に冬も常に温暖な環境に置くと早熟する傾向にあり早春に羽化が始まるなど季節外れの成虫が誕生することがある。
蛹になる直前の幼虫は柔らかいマットを嫌う。蛹室を作るのに適した場所が無いとマットの上を這い回る。その場合は底部に黒土を入れるか、もしくはマットを押し詰めておくだけでも効果がある。幼虫が他の蛹室を壊さないよう、なるべく過密飼育を避ける。
蛹室は一部なら壊しても問題ない。ただし蛹室に周囲のマットが落ちると羽化不全になる確率が高まるので注意が必要である。なお蛹室を完全に壊してしまった場合はマットに蛹室の代わりとなる縦長の窪みを作り、そこに蛹を立てて入れておくかオアシスに縦穴を掘ったものか市販の国産カブトムシ専用の人工蛹室を使用するが自作する場合は必ず縦向きにすることと蛹にあったサイズのものにする必要がある。ただし蛹化直後や羽化直後は非常にデリケートなので注意が必要である。 なおオオクワガタ♀やチビクワガタの餌として与えられることもある。
※蛹室(ようしつ)
蛹室とは幼虫が蛹になるために不要な排泄物を用い壁を作って作る空間。 この空間で幼虫→前蛹→蛹→成虫と変態する。 また、他の種類は横方向に蛹室を作るのに対し、ヤマトカブトムシは縦方向に蛹室を作る世界的に見ても変わった種類である。
※前蛹(ぜんよう)
幼虫が蛹になる前の形態。 普段C状に丸まっている幼虫が蛹室完成後 I 状に真っ直ぐ伸び表皮がしわしわになる。 この幼虫の皮下で蛹に変態して幼虫時の硬い頭皮を割って脱皮して蛹化する。 蛹化直後は柔らかくオスは体を揺さぶり体内の体液をポンプのように押し出し角を伸ばす。 この時にショックを与えると角を伸ばさなくなったり、そのまま壊死してしまう事があるので取り扱いには細心の注意をする。 体が固まっていれば前蛹でも蛹でも人工蛹室に移しても構わない。
カブトムシの寝床となるマットは腐植土や、前述の市販マット等が良いが、成虫の目的が繁殖ではなく観賞ならばダニの付着やコバエの発生防止のために防虫効果のある針葉樹マットでもよく、厚さも2-3cmで構わない。
直射日光の当たらない、気温25度程度、35度以下の通気性の良い場所で飼育する。逃げ出さないよう蓋がしっかりと閉じる飼育ケースを用意する。発泡スチロールでは穴を開けられる恐れがある。幼虫と同様、霧吹き等で定期的にマットに水をやる。また、転倒した成虫は平らな場所ではなかなか起き上がる事ができない。無駄な体力の消耗を避ける意味でもつかまって起きあがるための枯葉、小枝、止まり木などは満遍なく敷いておくと良い。
他の雄や昆虫と戦わせることは、非常にストレスを与えるため長期間飼育したい場合には向かない。愛好家の中には昆虫の格闘大会出場のために前もって格闘を重ね修行を積むことにより更に強い個体になると信じている人や断食させると強くなるという人がいるが、昆虫への闘争心向上に影響するかは不明である。
自然界では樹液が主な成虫の餌だが、家庭では市販の昆虫ゼリー、または果物のリンゴやバナナ等を与えると良いがスイカやメロンや砂糖水は栄養価が低くて下痢をするという説もあるので不向きである。なお昆虫ゼリーは甲虫類専用飼料として昆虫ミツよりマットを汚しにくく扱いやすい事から主流になったが、砂糖水と色素のみからなる粗悪品もあるので注意が必要である。
雌雄ともかなりの大食いであり、餌を切らさない様に給餌すると活発に活動し、長生きし、結果的に産卵数も増える。但し気温と湿度が高く腐敗しやすい状況なので不衛生にならないようにすることが望ましい。
容器に雄と雌を数匹入れて交尾させる。産卵には市販されている昆虫マットか腐葉土でよい。産卵床は少しずつマットを入れながら底面を強く押し固めるが上の方は強く詰めなくてもよい。全体の深さは15-20cmくらいあれば十分である。
国産カブトムシの交尾から産卵に至る過程は非常に容易で、餌とマットが揃っていれば特別な事は何も要らず、後はただ脅かさないようにそっと見守っているだけでよい。交尾の後、雌は容器底部付近まで潜り産卵する。成虫は産卵を2度、3度と数回に分けて繰り返すのでケースが小さかったり複数飼育をすると前に産卵した卵を傷つけることがあるためたくさん確保したいなら雌の産卵後、もしくは飼育ケース内に直径2-3mm程度の白い卵が発見されたら、成虫を別のケースへ移す。
1999年(平成11年)には植物防疫法が規制緩和され、海外産カブトムシの一部が輸入解禁となったため、日本国内で様々な種類のカブトムシが入手できるようになった。2005年(平成17年)現在53種類の輸入が可能となっている。
北海道では本州産のカブトムシが人為的に導入され、各地(平成22年時点で47市町村)に定着している[5]。1936年の大沼周辺での導入記録が最も古く、本格的な定着は1970年代頃からと考えられる[5]。定着の背景には、飼育個体の逃亡や放虫、植栽樹木の根回りへの混入などが挙げられる[5]。また、自治体が観光資源として積極的にカブトムシの導入を奨励しているケースもある[6][7]が生態系や遺伝子かく乱などがおこるため厳禁である。
北海道の外来種リストでは生態系への影響が最も懸念されるカテゴリーに分類されており、カブトムシを野外に捨てないよう道がホームセンターなどで呼びかけを行っている[1]。
本来カブトムシが生息していない地域に本種が侵入することで、クワガタムシ類などの樹液を餌とする在来昆虫と競争する可能性がある[5]。大量発生時にはウリ科の農産物の食害を引き起こしたこともあった[5]。ちなみに、南西諸島等のサトウキビ栽培地域では、カブトムシ亜科に属する別種のサイカブトがサトウキビの農業害虫として駆除の対象になっており、桃園やリンゴ園といった果樹園でも農業害虫とされ、網を張るなど侵入対策が施されている。
一方、沖縄県では、ペットとして販売されている本土産のカブトムシと沖縄固有亜種のオキナワカブトムシが交雑することによる遺伝子汚染が危惧されている[8]。また、それ以外の地域でも、飼育ブームの裏で放虫されたカブトムシが、地域独自のカブトムシの遺伝的多様性を脅かす恐れがある[9]。いずれにせよその地域以外でとったものを放虫することは厳禁である。
ウィキメディア・コモンズには、カブトムシに関連するメディアおよびカテゴリがあります。 |
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