- 英
- pemphigoid
- 関
- 水疱症
表皮下水疱症(類天疱瘡群) (NDE.218)
- 自己免疫性水疱症(後天性水疱症) autoimmuno blistering disease
 - 
 
 
代表的な天疱瘡と類天疱瘡の比較
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/11/07 22:39:47」(JST)
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水疱症(すいほうしょう)とは、水疱(水ぶくれ)やびらんを生じる疾患をまとめて称する(ウイルス性・細菌性疾患や熱傷などの物理的刺激による水疱形成を除く)。遺伝子の異常による先天性のものと、自己免疫によるものに大別される。
目次
- 1 分類
- 1.1 天疱瘡
- 1.2 類天疱瘡
- 1.3 疱疹状皮膚炎
- 1.4 線状IgA水疱性皮膚症
- 1.5 その他の水疱症
 
- 2 引用文献
- 3 関連項目
- 4 外部リンク
 
分類[編集]
天疱瘡[編集]
(英:Pemphigus)
- 尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう)
- 表皮内基底層直上に水疱ができる疾患である。天疱瘡のうち65%を占め、中高年に多い。口腔内病変が非常に多いのが特徴である。口腔のほか、咽頭、外陰部がよく侵される。Nikolsky現象陽性、Tzanck試験陽性である。蛍光抗体直接法で、表皮細胞間にIgGやC3の沈着を見る。蛍光抗体間接法でも表皮細胞間に陽性となる。デスモグレイン1、デスモグレイン3に対する自己抗体(抗デスモゾーム抗体)によっておこる自己免疫疾患と考えられている。治療は副腎ステロイドの内服(40-60mg/日)となる。治療抵抗性のものでは、免疫抑制剤や血漿交換を行う。
- 落葉状天疱瘡(らくようじょうてんぽうそう)
- 角質層下に水疱ができる疾患であるが、すぐ破損して浅いびらんと紅斑のみとなっていることが多い。デスモグレイン1に対する自己抗体のみを血清中に有し、口腔粘膜病変はほとんどみられることはない。Nikolsky現象陽性、Tzanck試験陽性で蛍光抗体直接法では表皮細胞間にIgG/C3の沈着がある。治療は尋常性天疱瘡に準ずる。
- 増殖性天疱瘡(ぞうしょくせいてんぽうそう)
- 尋常性天疱瘡と同様の部位に同様の症状で始まるがびらん面が再上皮化することなく次第に隆起してくる。表面が乳頭状、しばしば小水疱や小膿疱を有する。治療は尋常性天疱瘡に準ずる。
- 紅斑性天疱瘡(こうはんせいてんぽうそう)
- 顔面正中部を中心とした紅斑を特徴とし体幹にも小水疱・紅斑を主体とする天疱瘡様の皮疹を生じる。デスモグレイン1に対する自己抗体を有し、落葉状天疱瘡に移行することがある(そもそも落葉状天疱瘡の亜型であるとも言われる)。
- 腫瘍随伴性天疱瘡(しゅようずいはんせいてんぽうそう)
- 悪性腫瘍や血液系腫瘍(とくにリンパ球系)に合併して生じる。口腔、眼粘膜が強く侵され(鼻腔、外陰部も)皮疹は多彩であるが比較的限局して生じる。肺疾患を合併することがあり、予後に大きく影響する。
- IgA天疱瘡
- 小水疱、小膿疱よりなる皮疹で、血中に表皮細胞間物質に対するIgA抗体を有する。蛍光抗体直接法で、表皮細胞間にIgAの沈着を認める。(間接法は抗体価によっては陽性とならないこともある)
類天疱瘡[編集]
(英:Pemphigoid)
- 水疱性類天疱瘡
- 70歳以上の高齢者に多い水疱症である。表皮真皮境界部のBP180抗原、BP230抗原に対する自己抗体(抗ヘミデスモゾーム抗体)による疾患である。表皮下に水疱ができるいわゆる緊満性水疱の形態をとる。粘膜病変は多くはないが時折見られる。デルマドロームである場合がある。Nikolsky現象陰性、Tzanck試験陰性。蛍光抗体直接法で基底膜部にIgGやC3の線状沈着を認める。1モル食塩水剥離皮膚を用いた蛍光抗体間接法で、基底膜部表皮側に陽性となる。治療はステロイド中等量内服が標準的であるが、軽症であればテトラサイクリン内服とニコチン酸アミドの併用が有効である。
- 粘膜類天疱瘡
- 結膜や口腔などの粘膜に水疱、びらんを繰り返し形成し、瘢痕性に治る。瘢痕性類天疱瘡とも言う。結膜や口腔の他、咽頭、喉頭、食道、尿道、膣、肛門などにも病変を生じる。水疱・びらんー瘢痕治癒を繰り返した部位は放置すると癒着・狭窄を来す。BP180か、ラミニン5に対する自己抗体による疾患である。
疱疹状皮膚炎[編集]
- 疱疹状皮膚炎
- 表皮下水疱を生じる水疱症であるが、血清中に基底膜部に対する抗体を持たず、病因ははっきりしない。浮腫性紅斑の周囲に小水疱が環状に配列するのが特徴的である。海外ではセリアック病の合併が多い。蛍光抗体直接法で,真皮乳頭部にIgAの顆粒状ないし細線維状沈着がある。ヨードカリ内服で増悪し、これによる貼布試験で陽性となる。ジアフェニルスルホン(DDS)内服が有効。
線状IgA水疱性皮膚症[編集]
- 線状IgA水疱性皮膚症
- 表皮下水疱を生じる水疱症。水疱性類天疱瘡や疱疹状皮膚炎に似た症状を呈する。蛍光抗体直接法で基底膜部にIgAの線状沈着を見る(間接法は抗体価によっては陽性にならないこともある)。DDSやステロイド内服をする。治療には概してよく反応する。
その他の水疱症[編集]
- 先天性表皮水疱症
- 遺伝性疾患であり、昭和62年1月1日に難病指定された特定疾患である[1]。遺伝形式と水疱を初発する部位によって、単純型・ヘミデスモソーム型・接合部型(致死型)・栄養障害型に分けられる。臨床症状および責任遺伝子について[2]下に記す。
- 単純型表皮水疱症 (ESB, epidermolysis bullosa simplex)
- 単純型はケラチンKRT5, KRT14やプレクチンの遺伝子変異により表皮内水疱を生じる。ケラチンの変異による同症は、KRT5/KRT14のヘテロ二量体 (KIF, keratin intermediate filament) の形成に重要なドメインに変異が入っており、ケラチン二量体が正常に形成できないことが原因であると考えられている[3]。優性遺伝の場合と劣性遺伝の場合がある。臨床像でさらに3型に分類される。
- ヘミデスモソーム型表皮水疱症 (hemidesmosomal variant of EB)
- ヘミデスモソーム型は主にα6/β4インテグリンの変異が原因となるが、~500kDaの大きな接着分子をコードしているプレクチン遺伝子PLEC1の変異によって発症するケースもある。ヘミデスモソーム型に属するGABEB(generalised atrophic benign EB)では、XVII型コラーゲン/180kDa Bullous pemphigoid抗体(BP180抗原に対する抗体)遺伝子COL17A1/BPAG2の変異により生じる。プレクチン遺伝子異常による同症の場合は筋ジストロフィーを、α6/β4インテグリン遺伝子異常による同症の場合は先天性幽門閉塞症を合併することが知られる。BP180遺伝子異常(ときにラミニン5遺伝子部分異常)による同症は「非致死型接合部型…」と言われる。これを接合部型に含めて称されることも多い。劣性遺伝により遺伝する。
- 接合部型表皮水疱症 (JEB
- junctional epidermolysis bullosa)
- 接合部型は、表皮真皮境界部を構成するラミニン5遺伝子LAMA2, LAMB3, およびLAMC2の変異・欠損により生じ、爪や粘膜も侵されるが、萎縮は残すものの比較的稗粒腫や瘢痕を残さない。Herlitz(致死性)接合部型では、N末端付近にストップコドンが生じており、同遺伝子産物は大きく欠損してしまっている。劣性遺伝によって遺伝する。
- 栄養障害型表皮水疱症 (the dystrophic form of EB)
- 栄養障害型は遺伝形式によりさらに優性栄養障害型、劣性栄養障害型に分かれる。稗粒腫や瘢痕が残る。優性栄養障害型は係留線維形成不全により基底板下に水疱を形成する。劣性栄養障害型は、VII型コラーゲンの欠損・減少により基底板下に水疱を形成する。粘膜侵襲が強い。劣性遺伝の場合と優性遺伝の場合がある。多くは新生児期から乳幼児期にかけて発症し、症状が持続する傾向がある。
 
- 後天性表皮水疱症
- 緊張性水疱を形成する。基底膜部(厳密には基底板より深部の係留線維)を構成する成分であるVII型コラーゲンに対する自己抗体による自己免疫疾患と考えられている。1モル食塩水剥離皮膚を用いた蛍光抗体間接法で、基底膜部真皮側に陽性となり、水疱性類天疱瘡との鑑別点となる。アミロイドーシス、糖尿病、悪性腫瘍を伴っている場合がある。
引用文献[編集]
- ^ 難病情報センター|対象疾患一覧表(公費対象45疾患)
- ^ R Varki, S Sadowski, E Pfendner, J Uitto. Epidermolysis bullosa. I. Molecular genetics of the junctional and hemidesmosomal variants. J Med Genet(2006); 43: 641–652
- ^ Felix B. Müller, Wolfgang Küster, Kerstin Wodecki, Hiram Almeida Jr., Leena Bruckner-Tuderman, Thomas Krieg, Bernhard P. Korge, and Meral J. Arin. Novel and Recurrent Mutations in Keratin KRT5 and KRT14 Genes in Epidermolysis Bullosa Simplex:: Implications for Disease Phenotype and Keratin Filament Assembly, HUMAN MUTATION(2006)
 
関連項目[編集]
- 皮膚科学:代表的疾患・検査が列記されている。
- デルマドローム
- 池田勇人:元日本国首相。若いころに天疱瘡をわずらっていた。
外部リンク[編集]
 
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 膿疱を主病変とした抗BP180型粘膜類天疱瘡の1例 (特集 水疱症)
 
- ラミニン332γ2鎖が標的抗原であった粘膜類天疱瘡の1例 (特集 水疱症)
 
- 尋常性乾癬に合併した抗ラミニン332粘膜類天疱瘡の1例 (特集 水疱症)
 
- 尋常性乾癬に合併した抗p200類天疱瘡の1例 (特集 水疱症)
 
Related Links
- 水疱性類天疱瘡。水疱性類天疱瘡とはどんな病気か お年寄りに多くみられます。  かゆみを伴った皮膚の赤み(紅斑(こうはん))と、そのなかに大型の水ぶくれ(水疱(すい  ほう))が出てくる病気で、体のどこにでも現れます。水ぶくれ gooヘルスケア 家庭の  医学。
- A1:自己免疫性水疱症という皮膚に水疱ができる病気がありますが、それには類天  疱瘡、天疱瘡、ジューリング疱疹状皮膚炎があります。類天疱瘡は自己免疫性水疱症の  中で最も多い疾患で、60歳以上の老人に多くみられます。類天疱瘡は表皮下に水疱を ...
- 天疱瘡や類天疱瘡は、血液中に存在する皮膚に対する自己抗体によって皮膚が傷害  されて、皮膚に水ぶくれ(水疱)を作る病気で、まとめて、自己 ... しかし、最近、天疱瘡と  類天疱瘡の病因も少しずつ明らかになり、治療法も進歩して、治癒に至ることもあります  。
Related Pictures







 
★リンクテーブル★
  [★]
- 英
- eosinophilia
- 同
- 好酸球増加症、好酸球増加、好酸球増多症、好酸球性白血球増加症 eosinophilic leukocytosis
- 関
- 好酸球
[show details]
 
定義
- 好酸球増加症
好酸球増多をきたす疾患
QB.G-240
医学辞書
pocket medicine
誰も教えてくれなかった 血算の読み方・考え方
寄生虫疾患:旋毛虫症、条虫症、回虫症、日本住血吸虫症、肺吸虫症、ジストマ症、アニサキス症、フィラリア症
参考
- http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/030828html/index_2.html
  [★]
- 英
- erythroderma
- 同
- 剥脱性皮膚炎 exfoliative dermatitis
定義
- (1)全身(体表の80%以上)の持続性の炎症性発赤(潮紅)し、健常部皮膚を殆ど残さず、(2)粃糠様・落葉状の落屑が持続する病態
原因
起こしやすい疾患 (2009 CBT QB2 p.116)
- (%)は紅皮症に占める割合
起こしうる疾患 (NDE.122)
  [★]
- 同
- XVII型コラーゲン、180kDa類天疱瘡抗原
水疱性類天疱瘡の治療効果判定
- 抗BP180抗体の血清レベルは水疱性類天疱瘡の病勢を反映している。
臨床関連
  [★]
- 英
- subepidermal blistering disease subepidermal blistering disorder
- 関
- 類天疱瘡、水疱症
  [★]
- 英
- tense bulla
- 関
- 弛緩性水疱、水疱
  [★]
- 英
- bullous pemphigoid BP
- 関
- 類天疱瘡
概念
病因
病理
蛍光抗体法
治療
ステロイド
免疫抑制剤
抗炎症製剤
- テトラサイクリン系、ダプソンのような抗炎症作用のある薬剤としばしばニコチンアミドと組み合わせて水疱性類天疱瘡に利用されるが、有用とのデータは限られている。
- ステロイドを温存したい場合や、ステロイドによる副作用が懸念される場合に考慮される。
- 抗生剤(テトラサイクリン系(テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノマイシン)、エリスロマイシン)+ニコチン酸アミド
 
参考
- 1. [charged] Bullous pemphigoid and other pemphigoid disorders - uptodate [1]
  [★]
- 英
- cicatricial pemphigoid
- 同
- 良性粘膜類天疱瘡 benign mucous pemphigoid
  [★]
- 英
- benign mucous membrane pemphigoid
- 関
- 瘢痕性類天疱瘡
  [★]
- ラ
- pemphigoid gestationis
- 関
- 妊娠性疱疹
  [★]
- 英
- ocular pemphigoid
- 関
- 結膜炎
  [★]
- 英
- pemphigus
- 関
- 水疱症
概念
- 表皮細胞間物質に対する自己抗体によって棘融解が生じる自己免疫疾患(NDE.211)であり、皮膚・粘膜における著明な水疱形成を特徴とする。
病因
疫学
- 多くは中高年に好発するが、新生児に特異的、腫瘍に随伴、薬物に誘発、あるいは地域特性がある天疱瘡がある。
病理
代表的な天疱瘡と類天疱瘡の比較
|  | 尋常性天疱瘡 | 落葉性天疱瘡 | 水疱性類天疱瘡 | 
| 年齢 | 中年~老年 | 中年 | 老年(若年もあり) | 
| 好発部位 | 口腔粘膜、全身 | 全身 | 全身 | 
| 臨床像 | 皮膚所見 | 水疱、びらん | びらん、葉状落屑、 | 緊満性水疱、浮腫性紅斑、掻痒 | 
| 粘膜浸潤 | ++ | 痂皮 | + | 
| Nikolsky 現象 | + | - |  | 
| 病理組織像 | 所見 | 表皮内水疱 (棘融解)
 | 表皮下水疱 好酸球の浸潤
 | 
| Tzanck 試験 | + | + |  | 
| 棘融解部位 | 表皮下層(基底細胞直上) | 表皮上層(顆粒層) |  | 
| 抗原 | Dsg3 のみ、 Dsg3 と1 の共存
 | Dsg1 のみ | BP180、BP230 | 
| ELISA | Dsg1(+または-)、Dsg3(+) | Dsg1(+)、Dsg3(-) |  | 
| 蛍光抗体法所見 | 直接法(病変部皮膚) | 表皮細胞間に IgG、C3 陽性
 | 病変部基底膜部に IgG とC3 の線状沈着
 | 
| 間接法(血清中) | 抗表皮細胞間物質抗体(IgG)陽性 | 抗基底膜抗体の検出 | 
| 治療 | ステロイド、免疫抑制薬、血漿交換療法、γ グロブリン療法 | ステロイド内服、免疫抑制薬、DDSなど | 
参考
- 1. [charged] Pemphigus - uptodate [2]
  [★]
- 英
- smallpox
- 関
- 天然痘、痘瘡