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分子生物学などにおいては、翻訳(ほんやく、Translation)とは、mRNAの情報に基づいて、タンパク質を合成する反応を指す。本来は細胞内での反応を指すが、細胞によらずに同様の反応を引き起こす系(無細胞翻訳系)も開発されている。
翻訳は細胞が最も多くエネルギーを使うことの一つである[要出典]。盛んに増殖する細胞内では、細胞内の全エネルギーの80%と、乾燥重量で50%にのぼる物質がタンパク質合成に関与している[要出典]。1タンパク質合成のためには、100を超えるタンパク質とmRNAが調和して働くことが必要である[要出典]。
生物の遺伝子がもっている情報は、DNAの塩基配列の形で細胞内に保持されているが、その情報の一部は生体内で合成されるべきタンパク質のアミノ酸配列を規定したものである。DNAのもつ情報は転写と呼ばれる過程によってまずmRNAの形に変換される。そして、mRNAのもつ塩基配列情報に則して、リボソーム内でアミノ酸が重合しポリペプチド鎖が生合成される。このポリペプチド(タンパク質)の合成過程が翻訳と呼ばれる[要出典]。
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という3つのtRNA結合部位が存在し、リボソームがmRNA上を5'→3'方向に動いてアミノアシルtRNAがA部位→P部位と入れ替わる反応の際に、ポリペプチド鎖が伸長されていく。
翻訳に関する機構も転写と同様、大腸菌が基本的なフォーマットになっている。真核生物や古細菌における翻訳も基本は同じだが細部が異なる。翻訳には以下の3ステップが存在する。
個々のステップの詳細については以下に述べる。
大腸菌の翻訳開始はリボソームがサブユニットに解離して、mRNAにリボソーム小サブユニット (30S) (Sはスベドベリ (Svedberg) の略で、遠心器にかけたときの沈降速度を表す単位である。Sの値が大きいほど沈降速度は速い)が結合することから始まる。mRNAのリボソーム結合部位は『Shine-Dalgarno配列』としてよく知られており、その配列は以下の通りである。
この配列と16S rRNAが塩基対を形成して、リボソーム小サブユニットが結合できるようになると考えられている。Shine-Dalgarno配列は絶対的なものではなく、比較的似た配列でも認識される。
Shine-Dalgarno配列に結合したリボソーム小サブユニットは遺伝子の開始コドン(AUG:メチオニンに該当)までmRNA上を移動し、メチオニン-tRNAが開始コドンに結合する。大腸菌の開始コドンに使用されるメチオニンは、水素原子の部分がホルミル化(-COH基が結合)してN-ホルミルメチオニン (N-formylmethionine) となる。このアミノ酸がついた開始tRNAをfMet-tRNAifMetで表す。
mRNA、リボソーム小サブユニット、fMet-tRNAifMetの結合した複合体を開始複合体と呼ぶ。なお、これらの反応は、翻訳開始因子 (translation initiation factor) (IF1,2,3) というタンパク質によって触媒される。翻訳開始の最終段階、つまりポリペプチド鎖が形成される直前にリボソーム大サブユニット (50S) が開始複合体に結合する(その際、グアノシン三リン酸のリン酸が外れて、エネルギーを供給する)。この時に、翻訳の反応が可能になる70Sリボソームとなる。
大サブユニットが会合した際、Shine-Dalgarno配列と開始コドンの絶妙な距離により、先に述べたリボソームのP部位に開始コドン(およびそこに結合したホルミルメチオニン-tRNA)が来るようになる。なお、開始コドンが理想的な距離からずれた場合、翻訳速度が遅くなってしまう。
リボソーム小サブユニットから始まる、細菌の翻訳に関する反応は、先に述べたとおりIF1、IF2、IF3という3つの翻訳開始因子が触媒する。
3つの開始因子が結合した小サブユニットは、mRNA、開始tRNAとに結合できる。順序はどちらが先でもよい。
アミノ酸のついた開始tRNAがP部位に結合した70Sリボソームが完成すると、ポリペプチドの合成が始まる。ポリペプチドの合成には次の重要な反応が起こる必要がある。
4.の後は1.に戻るが、P部位には一つ前のアミノアシルtRNAが入っている。この反応が連続して起きることにより、mRNA内の遺伝子がポリペプチド鎖に翻訳され、終止コドンまでこの反応は続いていく。この反応も同様に翻訳伸長因子 (EF-Tu、EF-Ts、EF-G) によって触媒される。
リボソームがmRNA上を動き、終止コドンがA部位に入ると翻訳の終結が始まる。この時にA部位のアミノアシルtRNAの入る部位に『翻訳終結因子』と呼ばれるタンパク質が入り込み、翻訳複合体をポリペプチド、tRNA、リボソーム、mRNAに解離する。終結因子の種類と役割は以下の通りである。
ポリペプチドは伸長されていく段階からすでに特定のコンフォメーションを取り始めており、終結して遺伝子のコードしていた機能性タンパク質として機能し始める。ただし、タンパク質が発現した後も別のタンパク質によって修飾を受けていくこともあり、遺伝子配列がそのままの配列でタンパク質として発現していないことも多々ある。
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真核生物での翻訳は原核生物と比べて複雑である。そのなかでも以下の点が重要である。 1,真核生物のリボソームはより大きく、60Sの大サブユニットと40Sの小サブユニットから80Sのリボソームができる。 2,合成開始に用いられるのはN-ホルミルメチオニンではなく普通のメチオニンである。しかしtRNAは特殊なものでありtRNAiまたはtRNAfと表記される。(i;initiation、fは試験管内でならホルミル化できることから) 3,シャイン・ダルガーノ配列が存在せず、Met-tRNAiと結合した40SリボソームがmRNA5’末端のキャップ構造に結合し、開始コドンAUGをさがす。(配列内リボソーム進入部位/ IRESという特殊なRNA配列を利用してキャップを利用せず途中からリボソームが結合することもある) 4,真核生物のmRNAは5’のキャップに開始因子elFであるelF-4Eがくっつき、また3’のポリAにはポリA尾部結合タンパク質PABPIがくっつき、その両者にelF-4Gが結合することで環状になっている。 5,伸長因子、終結因子が異なる 6,高等生物の翻訳装置は細胞骨格に結合しており、物理的な複合体を形成している。
[1] *ストライヤー生化学 第7版 p846〜
古細菌の翻訳過程はまだ良く分かっていない。だが、「真正細菌と真核生物の中間的な性格を持つ[要出典]」と考えられている[誰によって?]。「開始機構はシャイン・ダルガノ配列を使用する[要出典]」(使わないことも多い[要出典])と見られており、やや真正細菌に類似する[要出典]。開始t-RNAはホルミル化されていないメチオニン[要出典]、と言う[誰によって?]。抗生物質感受性は真核生物の方に似ている[要出典]。
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