トリコモナス症
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/08/06 01:33:11」(JST)
[Wiki ja表示]
膣トリコモナス症の病原体、膣トリコモナス(
Trichomonas vaginalis)のギムザ染色写真
トリコモナス症(-しょう、英: trichomoniasis)は、原生生物のトリコモナスを原因とする哺乳類や鳥類の感染症の総称である。ヒトでは通常性行為感染症(STD)の一つ膣トリコモナス症を指すが、ほかにも大腸に感染し下痢を引き起こす腸トリコモナス症なども知られている。家畜では家畜伝染病予防法において届出伝染病に指定されている。本項では主にヒトの膣トリコモナス症について述べる。
目次
- 1 症状
- 2 感染
- 3 診断・治療
- 4 疫学・予防
- 5 獣医学
- 6 参考文献
症状[編集]
通常は女性のみが膣炎・子宮頸管炎・尿道炎といった症状を呈する。悪臭を伴う泡だったおりものや、性交・排尿時の不快感、女性器のかゆみ・痛み・灼熱感などが自覚される。まれに下腹部に痛みを感じる場合もある。通常は10日ほど潜伏期を経てこれらの症状が現れる。なお続発症としてHIV感染リスクや未熟児の出産が増加するという指摘がある。
男性の場合にはたいてい無症状だが、ときどき尿道にかゆみを感じたり、排尿・射精時に軽い痛みを感じたりする人もいる
感染[編集]
病原体は原生生物の膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis・チツホネマクムシ)である。基本的には尿生殖路の感染症であり、最も多い感染部位は女性の尿道および膣である。感染は粘膜に留まり組織侵入性はない。男性の場合は排尿によって原虫が排除されてしまうことも多い。
この原虫はシストを生じず接触によって感染する。したがって、性交によってあたかも男性が媒介者のような役割を果たす、性行為感染症と考えられる。しかし必ずしも性行為を伴うわけではなく、下着やタオル、便座あるいは風呂をまたぐ際や、出産時に母から感染する可能性もある。日本では一般的に高温であるため問題ないと思われるが、共同浴場で感染する危険性も皆無ではない。
診断・治療[編集]
トリコモナス症は顕微鏡で病原原虫を観察することにより診断する。膣から綿棒で粘膜を採り、スライドグラス上に塗布しギムザ染色の後に検鏡する。男性の場合は尿沈渣や前立腺分泌物中に運動する虫体が検出される。
治療には通常メトロニダゾールを用いる。内服に加えて膣剤を併用する場合もある。
疫学・予防[編集]
日本では女性の5~10%、男性の1~2%が感染しているといわれている。
トリコモナス症の予防に関して十分な研究はなされていないが、コンドームの使用によりトリコモナス症の蔓延を阻止できると考えられる。
獣医学[編集]
ウシではウシ胎仔トリコモナス(Tritrichomonas foetus)が原因となり、自然交配あるいは汚染精液による人工授精により伝播する。雌では子宮蓄膿症、子宮内膜炎、膣炎、頸管炎を起こし不妊症あるいは早期の流産を引き起こす。雄では陰茎、包皮粘膜に軽度の炎症を引き起こすことがあるが、多くは無症状である。治療は子宮洗浄の後、抗原虫剤を子宮内および膣に投与する。種雄牛が感染している場合は淘汰する。鳥類ではハトトリコモナス(Trichomonas gallinae)およびシチメンチョウトリコモナス(Tetratrichomonas gallinarum)が原因となる。
参考文献[編集]
- 吉田幸雄 『図説人体寄生虫学』第6版、南山堂、2002年。ISBN 4-525-17026-3
- 山内亮監修 『最新家畜臨床繁殖学』 朝倉書店 1998年 ISBN 4-254-46020-1
- 獣医学大辞典編集委員会編集 『明解獣医学辞典』 チクサン出版 1991年 ISBN 4-88500-610-4
家畜伝染病
|
|
言葉 |
家畜/家禽 - 牧畜/酪農/養豚/養鶏/養蜂 - 畜産/畜産業
病原体 - 感染 - 感染経路 - 伝染病/感染症 - 海外悪性伝染病 - 人獣共通感染症 - 公衆衛生 - アウトブレイク/パンデミック - ワクチン - 屠殺 - 殺処分 - 検疫
|
|
組織・施設等 |
国際獣疫事務局 (OIE) - 国際連合食糧農業機関 (FAO) - 農林水産省/農業・食品産業技術総合研究機構/動物衛生研究所 - 検疫所/家畜防疫官 - 家畜保健衛生所/家畜防疫員/獣医師 - 日本家畜商協会/家畜商 - 屠畜場/化製場 - 保健所 - 農業共済組合/農業災害補償制度
|
|
協定・法律等 |
SPS協定(世界貿易機関) - OIEコード(国際獣疫事務局) - 家畜伝染病予防法(農水省) - 狂犬病予防法(厚労省) - 口蹄疫対策特別措置法 -Category:畜産関連法規
|
|
国際獣疫事務局 リスト疾病 |
|
複数種 |
炭疽症 - オーエスキー病 - ブルータング - ブルセラ症 - クリミア・コンゴ出血熱 - エキノコックス症 - 口蹄疫 - 心水病 - 日本脳炎 - レプトスピラ症 - 新世界ラセンウジバエ - 旧世界ラセンウジバエ - ヨーネ病 - Q熱 - 狂犬病 - リフトバレー熱 - 牛疫 - 旋毛虫症 - 野兎病 - 水胞性口炎 - 西ナイル熱
|
|
ウシ |
アナプラズマ病 - バベシア症 - 牛疫 - 牛海綿状脳症 - 結核 - 牛ウイルス性下痢 - 牛肺疫 - 牛白血病 - 出血性敗血症 - 牛伝染性鼻気管炎 - 皮膚病 - 悪性カタル熱 - タイレリア症 - トリコモナス病 - ナガナ病
|
|
ヒツジ、ヤギ |
山羊関節炎・脳脊髄炎 - 伝染性無乳症 - 山羊伝染性胸膜肺炎 - 流行性羊流産 - 羊慢性進行性肺炎 - ナイロビ羊病 - 緬羊ブルセラオビス - 小反芻獣疫 - サルモネラ症 - スクレイピー - 羊痘/山羊痘
|
|
ウマ |
アフリカ馬疫 - 馬伝染性子宮炎 - 媾疫 - 東部馬脳炎 - 西部馬脳炎 - 馬伝染性貧血 - 馬インフルエンザ - 馬ピロプラズマ病 - 馬鼻肺炎 - 馬ウイルス性動脈炎 - 鼻疽 - スーラ病 - ベネズエラ馬脳脊髄炎
|
|
ブタ |
アフリカ豚コレラ - 豚コレラ - ニパウイルス感染症 - エキノコックス症 - 豚繁殖・呼吸障害症候群 - 豚水胞病 - 伝染性胃腸炎
|
|
トリ |
クラミジア - 鶏伝染性気管支炎 - 鶏伝染性喉頭気管炎 - 鶏マイコプラズマ病 - あひる肝炎 - 家禽コレラ - 家禽チフス - 鳥インフルエンザ - 伝染性ファブリキウス囊病 - マレック病 - ニューカッスル病 - ひな白痢 - 七面鳥鼻気管炎
|
|
ウサギ |
兎粘液腫 - ウサギ出血病
|
|
ハチ |
アカリンダニ症 - アメリカ腐蛆病 - ヨーロッパ腐蛆病 - スモール・ハイブ・ビートル症 - ミツバチトゲダニ症 - バロア病
|
|
魚類 |
伝染性造血器壊死症 - 伝染性造血器壊死症 - コイ春ウイルス病 - ウイルス性出血性敗血症 - 伝染性膵臓壊死症 - 伝染性サケ貧血 - 流行性潰瘍症候群 - 細菌性腎臓病 - ギロダクチルス症 - マダイイリドウイルス病
|
|
軟体動物 |
Bonamia ostreae感染症 - Bonamia exitiosus感染症 - Marteilia refringens感染症 - Mikrocytos roughleyi感染症 - Perkinsus marinus感染症 - Perkinsus olseni感染症 - Xenohaliotis californiensis感染症
|
|
甲殻類 |
タウラ症候群 - 白点病 - イエローヘッド病 - バキュロウイルス・ペナエイによる感染症 - モノドン型バキュロウイルスによる感染症 - 伝染性皮下造血器壊死症 - ザリガニ病
|
|
その他 |
ラクダ痘 - リーシュマニア症
|
|
|
家畜伝染病予防法上の監視伝染病 |
|
法定伝染病 |
牛疫 - 牛肺疫 - 口蹄疫 - 日本脳炎 - 狂犬病 - 水胞性口炎 - リフトバレー熱 - 炭疽症 - 出血性敗血症 - ブルセラ症 - 結核病 - ヨーネ病 - ピロプラズマ症 - アナプラズマ病 - 牛海綿状脳症 - 鼻疽 - 馬伝染性貧血 - アフリカ馬疫 - 豚コレラ - アフリカ豚コレラ - 豚水胞病 - 家きんコレラ - 高病原性鳥インフルエンザ - ニューカッスル病 - 家きんサルモネラ感染症 - 腐蛆病
|
|
届出伝染病 |
ブルータング - アカバネ病 - 悪性カタル熱 - チュウザン病 - ランピースキン病 - 牛ウイルス性下痢・粘膜病 - 牛伝染性鼻気管炎 - 牛白血病 - アイノウイルス感染症 - イバラキ病 - 牛丘疹性口炎 - 牛流行熱 - 類鼻疽 - 破傷風 - 気腫疽 - レプトスピラ症 - サルモネラ症 - 牛カンピロバクター症 - トリパノソーマ病 - トリコモナス病 - ネオスポラ症 - 牛バエ幼虫症 - ニパウイルス感染症 - 馬インフルエンザ - 馬ウイルス性動脈炎 - 馬鼻肺炎 - 馬モルビリウイルス肺炎 - 馬痘 - 野兎病 - 馬伝染性子宮炎 - 馬パラチフス - 仮性皮疽 - 小反芻獣疫 - 伝染性膿疱性皮膚炎 - ナイロビ羊病 - 羊痘 - マエディ・ビスナ - 伝染性無乳症 - 流行性羊流産 - トキソプラズマ病 - 疥癬 - 山羊痘 - 山羊関節炎・脳脊髄炎 - 山羊伝染性胸膜肺炎 - オーエスキー病 - 伝染性胃腸炎 - 豚エンテロウイルス性脳脊髄炎 - 豚繁殖・呼吸障害症候群 - 豚水疱疹 - 豚流行性下痢 - 萎縮性鼻炎 - 豚丹毒 - 豚赤痢 - 鳥インフルエンザ - 鶏痘 - マレック病 - 伝染性気管支炎 - 伝染性喉頭気管炎 - 伝染性ファブリキウス嚢病 - 鶏白血病 - 鶏結核病 - 鶏マイコプラズマ病 - ロイコチトゾーン病 - あひる肝炎 - あひるウイルス性腸炎 - 兎ウイルス性出血病 - 兎粘液腫 - バロア病 - チョーク病 - アカリンダニ症 - ノゼマ病
|
|
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 性器カンジダ症,腔トリコモナス症の診断と治療 (特集 女性と感染症Up to Date)
- 外陰膣炎 : 膣カンジダ症ならびに膣トリコモナス症 (特集 産婦人科性感染症とその対策)
- 膣トリコモナス症 (特集 ストップ ザ 性感染症) -- (診断・治療)
Related Links
- 腟トリコモナス症の症状・感染のしくみ・検査など、わかりやすく解説。STD研究所は性病(性感染症)の総合情報サイト。症状・病名・行為から各病気について検索できます。自宅でできる性病検査キットの販売も。
- 膣トリコモナス症はトリコモナスという原虫が感染する性病です。現役産婦人科医がトリコモナスについて解説します。
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
トリコモナス感染症、トリコモナス感染、腟トリコモナス症、膣トリコモナス症
- 関
- trichomoniasis
[★]
- 英
- trichomonas infection
- 関
- 膣トリコモナス症、腟トリコモナス症、トリコモナス感染症
[★]
- 英
- trichomonas infection
- 関
- 膣トリコモナス症、腟トリコモナス症、トリコモナス感染
[★]
- 英
- trichomoniasis
- 同
- 性器トリコモナス症、トリコモナス腟炎 trichomonas vaginitis
- (女性のトリコモナス症)膣トリコモナス症、腟トリコモナス症、vaginal trichomoniasis、trichomoniasis vaginalis
- 関
- 原虫、トリコモナス属、腟トリコモナス Trichomonas vaginalis。トリコモナス感染、トリコモナス感染症
病原体
症状
- 女性:感染者のうち半数が無症状、半数が感染後数ヶ月の経過で症状が出現する。腟炎をきたして粘膜面は発赤・びらんを来たし、膿性~黄色の泡沫状帯下、掻痒感、灼熱感を呈する。月経時や妊娠時に腟内のpH上昇に伴い増悪する。
- 男性:ほとんどが無症状で、ときに尿道炎をきたす。
検査
治療
参考
- http://s3.hubimg.com/u/1404382_f260.jpg
- http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/eb/Trichomonas_vaginalis_01.jpg/640px-Trichomonas_vaginalis_01.jpg
- http://free-sex-therapy.com/diseases/medical/STD/trichomoniasis.htm
- 3. [charged] 膣トリコモナス - uptodate [1]
[★]
- ラ
- Solanum、eggplant、Solanum melongena
- 関
- ナス科、イヌホオズキ、ナスビ、ナス属、ソラヌム属、Solanum属、ソラナム属
[★]
- 英
- sis, pathy
[★]
- 英
- bird、avian
- 関
- 鳥類