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民間療法(みんかんりょうほう)とは、古くから民間で見出され伝承されてきた方法によって行う治療法のことである[1]。戦前の昭和期から広く使われるようになった言葉で、通常医療に含まれない「療法」群を指すもので、健康術(体制の容認しない医学システムを用いた健康法で、一つの体系を持っているもの)や健康法(健康術よりずっと単純なもの)、呪術的療法をその内容とする[2]。
民間療法の一部は、様々な観点から代替医療の一部と見られることがある。これについては代替医療の項目を参照のこと。
民間療法は、主に経験則に基づいた医療(もしくは医療の類似行為)である。
伝染病や負傷などの各種疾病や特定の症状や負傷に対応したものもあれば、慢性疾患や更年期障害に対するものも存在している。
治療効果の程はまちまちである。よく効くものもある。あまり効かないものもある。反対に健康被害を招くものもある。
日本の民間療法を民俗学の観点から見た場合、古代には巫医・僧医など医学知識を有した宗教者が医療行為を行っており(弓削道鏡が孝謙上皇の治療を行ってその寵愛を受けた故事は彼が僧医としての性格を有していたことを示す)、
民俗学の観点からは、次の4種類の要素に分類可能である(ただし、実際には複数の要素にまたがるものも多い)。また、中には梅干を毎食食べると健康が増進するとか、臍に貼ると船酔い・車酔いに効くといったように予防保健思想を含むものもある。
今日でも「無病息災」を神社仏閣に祈るという形で信仰と医療との結びつきの残滓が残されている。
様々な物が存在するが、代表的なものは高齢者が知っている物が多い。以下に具体例を挙げるが、エビデンスに基づく医療ではなく、効果を保証したり実践を推奨するものではない。
口内炎には梅干の果肉を貼り付ける。梅干には殺菌効果のあるクエン酸が多く含まれるため、口内炎の原因となっている細菌を殺す効果が期待できる。[3]
足に湯を掛けてよく洗い、その後日光に当てて良く乾かす。患部を清潔にして直射日光に晒しながら乾燥させる事は、皮膚表面の軽度な水虫治療には効果があるとされる。ただし、ひび割れたり血が滲むような程に悪化している場合はこの方法での治療はまず不可能である。白癬菌の感染は皮膚の新陳代謝よりも早いため、感染後によく洗って清潔に保っても治癒することは無く、専用の抗真菌薬でなければ治らない。
爪水虫では患部へ薬液が浸透しにくいため民間療法でも市販薬でも治療は極めて難しいとされている。通常医療の専門医を受診した場合は一般的には経口抗真菌剤を中心とした治療が行われる。
足ごと食酢につけるという方法もあるが、逆に酢酸によって足の皮膚がただれることがあるため勧められない。
口角炎は、カンジタ菌の日和見感染でおこるが、民間療法も多い。例えば殺菌作用が期待されティーツリーから精製される油が用いられたり、保湿効果からアロエベラ、あるいは単純に皮膚の保湿効果を求めてワセリンやオリーブオイルや無塩バターが唇に塗布される。一般にはメンソレータムをはじめとするリップスティック型の軟膏も広く流通しているため、これらも利用される。
なおビタミンB群の不足で起こることも良く知られているため、これらを効果的に摂取できる食品を食べることも行われる。ただ軽度であればこれら民間療法や民間薬ないし一般用医薬品でも症状の軽減や治癒が期待できるものの、症状が重い場合では病院で処方される内服薬(処方箋医薬品)のほうが効果的である。
痛風は関節に尿酸結晶が蓄積する事で発生し得るが、水分を多く取る事で、症状の軽減が図れる事が知られている。また治療効果を期待して、利尿効果のある喫茶が盛んに奨励された。なお喫茶も度が過ぎれば症状の悪化を招いたり、別の意味で健康を害する可能性があるので、今日では注意が必要とされている。
水分を多く取るとよいというのは、尿酸が尿からしか排泄されないためである。ただし、痛風患者には、体内で尿酸が過剰に生成されるタイプと、排泄がままならないタイプとに分かれる。病院で最初に血液検査と尿検査をするのは、そのタイプを見極めるためである。したがって、無闇に飲めばいいというものでもない。なお、水分はアルカリ性のものだと尿酸が溶けやすくなり、排出しやすくなるといわれる。近年、アルカリ性の温泉水が痛風患者に人気なのはそのためであるが、そもそも飲泉は万病に効くと謳われる民間療法の王道である。
虫(蜂など)に刺された場合に、毒の中和のためアンモニアが含まれている尿を掛けると治るという話があるが、これはまったくの迷信である。排泄直後の尿にはほんの微量のアンモニアしか含まれておらず、アンモニアにも中和作用はない。虫刺されの場合は、刺さった針などを取り除いて流水で洗うなどして患部を清潔に保つべきだとされているが、山登りの最中では水が手に入りにくい事から、応急的に健康であれば無菌(もしくは、アンモニアが含まれている)である筈の尿で患部を洗った(中和した)という逸話があるものの、尿そのものには全く治療効果は無い。場合によっては患部を汚すだけなので避けるべきだとすら言われている。虫に刺された時は針を取り除いて水で患部を洗い清潔に保ち、軟膏を塗布せばよい、とされる。
なお毒虫や毒蛇に刺されたり噛まれた際に、古くから言われている口を使って毒を吸い出すという物もあるが、口内菌で傷口が汚染されるだけではなく、誤って毒を飲んでしまったり、口粘膜から速やかに毒が吸収される可能性もあるため、この方法は危険である。
クラゲの場合は、危険な毒をもつ物は、皮膚表面に刺胞と呼ばれる毒の詰まった組織片が残っている場合がある。古くは酢やアンモニアで毒を中和できるとか、水道の水でよく洗うべきだと言われていたが、今日では、これらは清潔な海水でよく洗い流して、患部を冷やしながら病院に行く事が勧められている。酢やアンモニアは、刺したクラゲの種類によっては効果が無かったり、逆に刺胞を刺激して、余計に毒液注入を促す危険性がある。
軽度の凍傷や凍瘡であれば、氷や雪で患部をマッサージすることで改善が促進されるという民間療法がある。大陸中央部で古くから使われている。理論的には血管交感神経麻痺による局所充血での循環障害を軽減させるものと考えられる。方法としては、氷塊の場合、滑らかな面で優しく患部をマッサージする。強く擦ると皮膚を損傷する恐れがある。雪は水分の少ない軟らかなパウダースノーで行なう。可能ならば速やかに医師の受診を受ける。中重度の凍傷は、治療が遅れると部分壊死など人体に対する致命的な損傷を与える場合がある。
突き指をしたとき、その指を強く引っ張れば即座に完治する、といわれているのは全くの迷信である。指を引っ張ることによって脱臼や神経破断の危険がある。
また田舎ではマムシの焼酎漬けが効くとの言い伝えがあり、傷をつけずに捕獲したマムシの毒を抜いて焼酎に漬けたものが常備されている家もある。
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