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マツ属 | ||||||||||||||||||
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アカマツ Pinus densiflora
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Pinus L. | ||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||
マツ属 | ||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||
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マツ属(マツぞく、学名:Pinus)は、マツ科の属の一つ。マツ科のタイプ属である。
マツ属の天然分布は赤道直下のインドネシアから、北はロシアやカナダの北極圏に至り、ほぼ北半球に限られると言ってよい。これは針葉樹としては最も広い範囲に当たる。温度の適性が広いことが一因としてあげられており、亜熱帯や熱帯に分布する種でも-10度程度の低温・組織の凍結には堪えて生存するという[1]。現在では植栽の結果南半球でも見られ、オーストラリアやニュージーランド、アフリカ諸国で大規模に植栽されているラジアータマツ (P. radiata) が特に有名。
化石の研究によれば、マツ属は比較的古い時代に登場したとされ、現生種の多様性は進化してきた年月の長さによるものとされている[2]。
マツ属に含まれるものは、前述の通りにいずれも木本であり、草本は含まれない。樹高は10m未満のものから、大きいものでは40ないしは50mに達する種もある。アメリカ合衆国西部に分布するサトウマツ Pinus lambertianaやP. ponderosa では樹高70mを超える個体も報告されている。
成木の樹皮は一般に亀甲状に割れる、もしくはうろこ状になるものが多い。しかし、多くの種の幼木時代、また一部の種では成木でも滑らかである。色は一般に褐色で、黒っぽいものや赤みの強いものなどある。
赤みの強い樹皮を持つP. jeffereyi
白色の幹を持つシロマツ P. bungeana
薄くうろこ状になるアカマツ P. densiflora
深く亀甲状に割れるP. ponderosa
比較的滑らかでうろこ状にはがれるシロマツの樹皮
マツの葉は子葉、初生葉、鱗片葉、尋常葉(針葉)の4種類に分けることが出来る。このうち、私たちが普段目にするのは尋常葉(針葉)のみであり、他の3種類は発芽直後から数年の間でのみ見られる。以下、「葉」と言った場合には特に断りの無い限り、尋常葉(針葉)を指す。
P. sibiricaの子葉
P. sibricaの展開した子葉。中心の小さな葉が初生葉
子葉が展開したイタリアカサマツ P. pinea
ダイオウマツ P. palustrisの発芽。この時点で初生葉も見える
オウシュウアカマツの鱗片葉。普通の針葉に見えるが短枝が無く、葉も束ではない
コントルタマツ P. contortaの尋常葉。この種は各短枝から2葉が出る。
葉はベトナムに分布するP. krempfiiという例外を除いて、細く針のようになっている。葉の長さにも色々あり、僅か3 - 4 cmのバンクスマツ P. banksianaから40cmを超えるようなダイオウマツ P. palustris に至るまで様々なものがある。一般に温暖な地域に分布するものの方が葉の成長期間が長く、長い葉を持つ傾向にあるという[4]。
マツ属の葉は短枝と呼ばれる枝の一種に数枚が束になってつく。その数は個体内での多少の差はあるものの2枚、3枚ないしは5枚が束になって生えていることが多く、種によってその数は決まっている。日本では2葉のアカマツ(P. densiflora)やクロマツ(P. thunbergii)、5葉のヒメコマツやチョウセンゴヨウ(P. koraiensis)が知られている。3葉のマツは、アメリカ大陸を中心に分布しテーダマツ(P. taeda)やダイオウマツ(P. palustris)などが知られている。日本には3葉のマツは自生していないものの、化石の研究からオオミツバマツ(P. trifolia)と名付けられた種が分布していたことが確認されている。
葉の数による分類は直感的で非常に分かりやすい方法であり、両者には葉の数以外にも多数の違いがあること、遺伝的にも交雑出来ないことから、分類学的にも古くから認められていた方法である。
さらに、葉の断面を顕微鏡で観察すると維管束が見える。その数は2葉・3葉のマツと5葉のマツで異なるという特徴もよく知られており、一般に2葉・3葉のマツは2つの維管束を持つことから複維管束亜属(subgenus: Pinus)、5葉のマツは1つの維管束しかないことから単維管束亜属(subgenus: Strobus)とされてきた。しかしながら、北米やアジアに分布する一部の種は維管束は1つであるが、葉の数は2枚ないしは3枚であり、両者の中庸の形態を持つ。これらはStrobus 亜属に含める場合の他、 Ducampopinus亜属として分けられることがある。
イタリアカサマツの葉と若葉(左)
テーダマツの短枝と葉
P. lambertianaの葉と球果
マツの花は雌雄同株[注釈 1]である。風媒花であり雄花で作られた花粉は風で、雌花に運ばれて受粉する。雌花において受粉した後に、胚珠が受精完了するまでの期間が長く、翌年の春から夏になって受精に至る。受精後に球果は急激に成長し同年の秋には熟すというパターンが多い。例外的にメキシコに分布するP. nelsoniiは受粉後に年内に受精し球果が成長を始める他、イタリアカサマツ(P. pinea)のようにさらに1年かかり、受粉後3年目の秋に球果の成熟を迎える種もある[5]。
スラッシュマツ P. elliottiの雄花
フランスカイガンショウ P. pinstarの雄花
オウシュウアカマツの雄花
マツの球果(松かさ)は鱗片状のもの(種鱗)が集まった形状である。この球果についても形や大きさ、個々の鱗片状の凹凸の状態、表面の棘の有無、熟した時の色合いなどに違いが見られる。形や硬さについても色々あり、2葉・3葉のマツの多くの球果は卵型で硬く種鱗を剥がすのは素手では困難であるが、5葉のマツの球果は細長い円筒形(カプセル型)で比較的軟らかく素手でも容易に分解できるものが多い。ただし、例外もある。
球果と枝とを結ぶ柄(果柄)についても長いものから短いものまでいろいろある。球果が樹上から落ちる際には果柄と球果実の間、もしくは枝と果柄の間に離層が形成されることが条件であるが、どちらに形成されるのかという違いもある。前者の場合、さらに一部の種では球果の種鱗数枚を果柄に残したまま落果するものもあるという。なお、種類によっては離層が形成されにくく、樹上に何年にもわたって球果が残るものもある。また、球果が開く条件は乾燥によるものが多いが、中には火災による高温や動物による摂食が条件の種もある。
種子の形態にも違いがあり、翼のあるものや無いものがある。また、翼のあるものであってもその大きさは色々である。
ハイマツの球果。丸く鱗片表面は滑らか。
ストローブマツの球果。白いのは松脂。
テーダマツの若い球果。棘が目立つ
P. nelsoniiの球果。長い果柄が目立つ。
バンクスマツ P. banksianaの熟した球果。火災によって開くタイプ
火災後に見られたコントルタマツ P. contortaの実生
P. cembraの球果。熟しても開かない。動物散布型。
P. cembraの球果。動物散布型
オウシュウアカマツの種子、比較的小さく翼を持つ
P. cembra の種子。翼はない。比較的大きく食用になる。
アカマツやクロマツなどといった温帯地域のマツは一般に春から初夏にかけて主軸と枝が一節ずつ伸びて、夏には成長を止める成長様式を見せるものが多い。しかしながら、特に亜熱帯や熱帯に分布する種類では1年間に多節成長するものがある[4]。
球果が開くタイミングは種によって異なる。アカマツやクロマツは種子が成熟すると、すぐに種鱗が開くようになる。一方で成熟後数年間開かない、もしくは好適な条件下にならないと開かない(晩生球果、serotinous coneなどと呼ばれる)仕組みを持つものもあり、特に火災時に種を散らす仕組みを持つものが多い。また、チョウセンゴヨウやP. cembraなどのように樹上からは落果するものの自然には決して開かず、動物による摂食、もしくは球果が腐敗することによって種子の散布、発芽へとつながる種もある。
陽樹であり、遷移が未発達の厳しい場所に生えるというイメージが強いが、チョウセンゴヨウ (P. koraiensis) のように動物による種子散布を期待する種は実際に動物が生息するようなある程度遷移の進んだ森林においても苗が成長する。一方で火災によって種子を散布するような種は極めて耐陰性が低く、遷移の進んだ状態では更新できないものが多い。厳しい環境下でも生育できるようにマツ属は自身の根に菌類の菌糸を侵入させた、特別な根である菌根を形成する。マツは菌類を通じて土壌中の栄養分や水分の吸収を助けてもらっており、逆に菌類に対しては光合成によって得られた同化産物を分け与えているという共生関係にある[6]。マツと共生して菌根を形成する菌類は多数知られている。「キノコ」として我々が利用できる種も多く、わが国ではマツタケ(松茸)、ショウロ(松露)、アミタケなどが特に有名。
急斜面に生えるP. canariensisの群落
海岸の岩場に生えるクロマツ
厳しい気候で樹体のほとんどが白骨化したP. longaeva
林床で成長するストローブマツ実生
マツは様々な動物に利用される。昆虫に対しては餌や隠れ家を提供する。葉は蛾やハバチの餌に、木材はカミキリムシ、ゾウムシ、キクイムシやキバチなどの餌として利用される。球果に侵入して中の種子を食べる昆虫もいる。これらのマツに集まる昆虫を目当てにサシガメなどの肉食性昆虫や寄生蜂なども集まってくる。鳥や獣に対しては営巣場所を提供する。カートランドアメリカムシクイ(Setophaga kirtlandii)とバンクスマツ(P. banksiana)のように密接な関係を持つものから、何種もの木の中からマツ類を営巣場所に選ぶと言った程度のものまで様々である。また、種子は餌として利用され、特に一部のマツでは顕著である。マツの方でも動物を利用して種子の散布を計ろうとするものが知られている。
キクイムシの一種で悪名高いDendroctonus ponderosae
シンクイムシの一種の食痕。ガの幼虫が潜り込んでいる。
ノクチリオキバチ(Sirex noctilio)の幼虫と食痕
バンクスマツとカートランドアメリカムシクイ
微生物や菌類にもマツを利用して生きていく種は多い。前述のように菌類には菌根を形成してマツと共生関係を築くものもある。一方でマツに一方的に被害を与える微生物も多い。何種ものサビキン類やある種の線虫、菌類であってもマツノネクチタケ類、ツチクラゲやナラタケ類(Armillaria sp.)などは一方的にマツの生体を攻撃して時に枯死させる。
発疹さび病を発病したストローブマツ
さび病による瘤が見られるバンクスマツ
Gremmeniella abientinaの感染により枯死した枝と病原の胞子
マツを利用する動物の中には菌類や微生物の中には移動能力に乏しく動物を利用するものが知られている。逆に菌類や微生物によって衰弱したマツを昆虫が利用するということも知られており、両者は共生関係にあるとも言える。例えば我が国のマツに大きな被害を与えているマツ材線虫病はマツノザイセンチュウによって引き起こされる病気である。この病原の媒介者であるマツノマダラカミキリは、健全なマツよりも衰弱しているマツに好んで産卵する。線虫の感染によって材線虫病を発症し、衰弱したマツにカミキリは産卵、センチュウはカミキリが羽化する際にカミキリと共に次のマツへと移る。カミキリは線虫の病原性によって産卵場所の増加が、線虫はカミキリによって分布の拡大が利益になる。オーストラリアやニュージーランドで大きな被害を出したノクチリオキバチ(Sirex noctilio)の場合も同様の関係があるが、共生菌はマツを衰弱させるだけでなく、キバチの幼虫の餌としても利用される。キクイムシの仲間も同様の関係を持つものが多い。、
キクイムシ(とその共生菌)の攻撃で枯死したコントルタマツ
更新は一般に実生による。萌芽更新や伏条更新[注釈 2]といった栄養繁殖は多くの種類では一般に行わない。ただし、火災が頻発するような地域に分布する一部の種は萌芽力が発達しており、火災で焼損しても枯死せずに萌芽で再生することがある。また、ハイマツ (P. pumila)のように伏条更新を行うものも知られている。
人工的に繁殖させる場合、挿し木や接ぎ木による繁殖も考えられる。しかし、マツ類は接ぎ木はともかく、挿し木が困難なグループとして昔から知られている[7]。特に挿し穂を採取する母樹の樹齢が高い場合は極めて発根しにくいという報告が多い。挿し木の一種として、挿し穂として長枝ではなく、短枝を使う方法もありハタバザシ(葉束挿し)と呼ばれる。発根はするものの、地上部が成長せずに結局枯れるなどという報告もあるが、地上部の成長に成功している場合もある[8]。
マツは五葉マツ類発疹さび病やマツ材線虫病といった世界的に流行している病害への対策や、他の優良形質の固定も含めて、接ぎ木よりも効率的なクローン技術である挿し木の研究が古くから研究されてきた。前述のように若い個体は発根率が良いことが知られている。しかしながら、若い個体は挿し穂に出来る枝が少ないことから優良個体を量産するには課題があった。近年、植物ホルモンの一種、サイトカイニンを投与することでマツの不定芽を活性化され、若い個体でも多数の挿し穂を確保できる技術が開発され、これを利用した挿し木量産技術が確立されつつある。わが国ではこれをマツ材線虫病の抵抗性育種に応用することが考えられており、抵抗性の親木から得られた実生苗に病原であるマツノザイセンチュウを接種、接種試験によって枯死しなかった苗にサイトカイニンを投与して、材線虫病抵抗性の挿し穂・挿し木苗を量産することが考えられている。
火災で枯損した主幹下部から萌芽が伸びるP. echinata
萌芽更新で再生中のP. canariensis
接ぎ木されたアカマツ。穂木と台木の結合部分
マツ(松)の由来は、「待つ」や「保つ」が転じて出来たものであるなど諸説ある。マツは英語ではpineと呼ばれ、ラテン語のpinus(この属の名前としても使われている)に由来する。ラテン語のpinusの由来はタール状のものを指すと言う
和名ではマツ属で無い樹木にも「マツ(松)」の名が充てられることがあり、以下にその例を示す。いずれも針葉樹であるが、マツ属ではない。
また、マツの形態的特徴(鋭い葉)に由来したマツバギク(松葉菊、Lampranthus spectabilis)やマツバボタン(松葉牡丹、Portulaca grandiflora)などの和名を持つものが、草本植物にも見られるが、もちろんこれらはマツではない。
以上の分類を踏まえて世界のマツを列挙する。なお、研究者によって分類に多少の相違がある。やや古いが書籍としてまとまっているもので特に有名なものにMirov(1967)[9]があるので興味がある方はそちらも参考にされたい。
いずれも地中海沿岸に分布
いずれもアメリカ大陸に分布Trifoliaeは3つの葉を意味し、その名の通り3葉のマツが多いものの例外もある。
以下の4種を含む[13]。いずれも北米大陸に分布。球果は晩生の性質を持ち、火災時に開くものがおおい
球果は成熟後に自然に落果するものの、自然には開かず種子を撒き散らさない。種子の発芽には球果の腐敗か動物による散布が必要になる。
北米大陸を中心に一部がアジアに分布する。維管束は一つなのでStrobus 亜属に含まれることもあるが、別亜属として認める場合が多い、葉は2葉、3葉ないしは5葉。形態・生態的に独特な種が多い。
3種が含まれ、いずれもアメリカ合衆国西部の山岳地帯に局地的に分布する。現地では厳しい気候ゆえに樹体のほとんどが白骨化した独特の様相を呈することが多い。天然では分布域は重ならないものの、交雑可能であることが確認されている。針葉はいずれも5葉、その他の多くの特徴も共通する。球果(cone)に棘(bristle)を持つことから、この3種はまとめてBristlecone Pineと称される(ただし、P. balfourianaはFoxtail Pineという名称も普及している)。
松の部位 | |||||||||
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松 |
松は常緑樹として冬も緑の葉を茂らせることから、若さ・不老長寿の象徴とされ、竹、梅と合わせて「松竹梅」としておめでたい樹とされる。能舞台には背景として必ず描かれており(松羽目)、 歌舞伎でも能、狂言から取材した演目の多くでこれを使い、それらを「松羽目物」というなど、日本の文化を象徴する樹木ともなっている。松に係わる伝説も多く、羽衣伝説など様々ある。また日本の城にも植えられているが、非常時に実や皮が食料になるため重宝されてきた。「白砂青松」は日本の美しい海辺の風景を表す言葉だが、近年松くい虫により松枯れの被害が相次いでいる。害虫対策として幹に藁を巻く「こも巻き」は冬の風物詩でもある。
松は和歌にも古来より取り上げられている。特に古くは子の日の小松引きという行事にあわせて和歌を詠むことがあり、それらの和歌が残る。また高砂の松、尾上の松などが歌枕として詠まれ、特に高砂の松はのちに謡曲『高砂』の題材とされ名高い。
秦の始皇帝が雨宿りに使った松に「大夫」の爵位を授けたことから松の異名を大夫という。また逆に大夫を「松の位」とも言う。一般的には遊女の最高位である大夫すなわち太夫(たゆう)を指すことで知られる。遊女を太夫と称するのは、古くに猿楽(能楽)を遊女が演じた時、座を率いる主だった者が本来五位の通称であった大夫(太夫)を男の能楽師に倣って称したことが始まりだという。邦楽の曲中ではしばしば「松」が松の位の遊女を連想・暗示させるような表現をとっているものがある。
庭木、盆栽などに利用されている。コンパクトなスタイルのもの、葉に斑や模様が入るもの、樹皮が荒れて独特の風格を持つものなど、改良種が多い。
また、日本庭園や、松島、天橋立、桂浜、虹ノ松原など景勝地の景観植物としても重要な役割を果たしている。
木造建築用の梁・桁などに利用される。近年、マツクイムシなどの被害が多く純林が減少。手に入りにくくなっている。また、鉄道の枕木としても使われていた。
なお木材としてのマツの呼称として近年ではパイン材という呼び名が使われることがある。 これはヨーロッパからの輸入住宅のフローリングなどに使われている場合は、欧州赤松を指していることが多い。また北米からの輸入の場合は、2×4建築の構造材やホームセンターに部材として販売されているカナダ産の白っぽい木肌のSPF材を指す場合や、ボウリング場のレーンなどはアメリカ産の黄色っぽい木肌のSouthan Yellow Pine(サザンイエローパイン)を指す場合もある。また、北米産のものは「米松(べいまつ)」、国産のものは「地松(ぢまつ)」と総称することもある。
他の木材と比べ可燃性の樹脂を多く含み、マッチ1本で着火できるため以前は焚き付けに用いられた。分離した樹脂である松脂もよく燃える燃料として使用された。また、第二次世界大戦中の日本では、掘り出した根から松根油を採取し、航空機の燃料に用いようとしたことがある。
他の木材と比較し単位重量当りの燃焼熱量が高いことから、特にアカマツは陶器を焼き上げる登り窯など、窯の燃料として珍重される。
イタリア笠松などから採取された松の実は、食用にも供される。60%を超える脂質のほか微量元素も含まれ、独特の香りを持つことから健康食品、菓子等にも使用される。
また、フランスカイガンショウ(P. pinstar)の樹皮から抽出されるピクノジェノール(Pycnogenol)を多く含むエキスは、サプリメントに利用されている。
アカマツなどの若葉を洗浄して、砂糖水に漬け、葉に付着している細菌の作用で炭酸ガスを発生させて水中に溶け込ませて作る松葉サイダーという飲み物がある。松葉は食用にしないが、成分が溶け込んで、独特の味わいがでる。韓国では、マツの芽の風味を付けた缶入りの炭酸飲料が販売されている。また、松葉風味の飴も売られているほか、松葉を敷いて風味を付けた「松餅(송편、ソンピョン)」と呼ばれる蒸し餅が作られている。
紅茶のラプサンスーチョンは、タイワンアカマツなどの木材や樹皮でいぶして、独特の香りを付けて作られる。
樹脂である松脂も香料として使うこともあり、フランスなどではマツの香りのする飴が作られており、ギリシャではレッチーナ(Retsina)と呼ばれる着香ワインが作られている。
松脂(まつやに)は松の枝、芽などを折ったり、幹に傷を付けたりした際に出る樹脂の事である。樹脂は樹脂道という特殊な組織で、主に昆虫の幼虫の寄生を妨げる目的で合成され、テルペン等の揮発成分を大量に含み、水には溶けない。生成当初は透明から淡黄色で流動性に富むが、揮発成分が減少するにつれ粘り気が増え固化する。揮発成分は特有の芳香がある。酸化により黄色や茶色に着色する。そのまま地中に埋もれても腐らないため、酸化固化を経て琥珀になる。虫がこの樹脂の中に捕捉され、長期間保存されることもある。松脂と同じような樹脂はスギ、ヒノキ、トウヒ、モミ等針葉樹の全てで作られるが、松は特に材の中にも樹脂道を多く持っているため、表面に現れやすく、もっとも有名で、また、幹に傷をつけて採取する場合にも大量の樹脂の収集が可能である。また、マツはもっとも人に近いところに生育あるいは、植栽されてきたため、松脂は世界中で様々な物に活用されてきた。現在は、中国などのアジアを中心に、幹にV字型の切り込みを入れる方法で、染み出す松脂の採取が行われている。
松脂を蒸留するとロジン、テレピン油、ピッチなどの成分が得られ、燃料、粘着剤、生薬、香料、滑り止め、紙の添加剤などに用いられる。ロジンは、マツの根などからも得ることができる。詳細はロジン、テレピン油を参照。
樹皮が園芸用品としてインテリアバーク、バークチップ(Bark chips)などの通称で流通している。アカマツ、クロマツの樹皮が用いられることが多いがマツ以外のものも存在するので一概にバークチップ=マツとは言えない。波紋のような縞模様が浮き出たバークは見た目の美しさから観葉植物の鉢植えやグラウンドカバーなどとして利用される。室内向けの鉢植えで多く見かける理由は美しさだけではなく、虫が湧きにくく、保湿効果が得られることも挙げられる。屋外では主に装飾、飛び石や花壇の隙間などのアクセントとして、グラウンドカバーに使用される。踏むと崩れてしまうので装飾用途の場合直接歩くような通路には向かない。付随効果としては厚めに敷き詰めることで遮光による効果と樹皮は炭素率が高く、植物の窒素飢餓を招くため、雑草を生え難くしたり、降雨による土壌流出や泥跳ねを抑え、植物原料のため環境汚染の心配がないことが挙げられる。樹皮(バーク)を発酵させて炭素率を低くし堆肥化させたバーク堆肥は、土壌改良材として使用される。
庭木や盆栽の松の手入れとして他の植物と際だったものとして、「みどりつみ」と「もみあげ」がある。
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