- 英
- glycosylphosphatidylinositol、GPI
- 関
- グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/12/08 20:25:12」(JST)
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グリコシルホスファチジルイノシトール (glycosylphosphatidylinositol、略称: GPI) またはGPIアンカーは、翻訳後修飾によってタンパク質のC末端に取り付けられる糖脂質である。GPIアンカーを含むタンパク質は、多種多様な生物学的過程において重要な役割を果たしている[1]。GPIアンカーに繋ぎ止められるものには、酵素、受容体、免疫系タンパク質、認識抗原などがある。
GPI化(英語版)されたタンパク質はシグナル配列を含んでいるため、小胞体(ER)へと向かう。タンパク質はER膜に共翻訳的に挿入され、その疎水性C末端によってER膜へと結合する。タンパク質の大半は小胞体内腔へと延びている。疎水性C末端配列は次に切断され、GPIアンカーによって置き換えられる。タンパク質が分泌経路を通って処理されると、ベシクルを介してゴルジ体へ、最終的には原形質膜へとと移送される。原形質膜では細胞膜の外葉へとくっつき続ける。GPI化はこういったタンパク質が膜へと付着する唯一の手段であるため、ホスホリパーゼによるGPI基の切断は膜からのタンパク質の制御された放出をもたらすこととなる。後者の機構はin vitroで用いられる。すなわち、酵素アッセイにおいて膜から放出された膜タンパク質はGPI化タンパク質である。
ホスホリパーゼC(PLC)はGPIアンカー化されたタンパク質に含まれるホスホグリセロール結合を切断することが知られている酵素である。PLCによる処理は、細胞外膜からのGPI結合タンパク質の遊離を引き起こす。T細胞マーカーThy-1およびアセチルコリンエステラーゼは、腸および胎盤のアルカリホスファターゼと同様に、GPI結合タンパク質であることが知られており、PLCを用いた処理によって遊離する。GPI結合型タンパク質は脂質ラフトに優先的に局在していると考えられており、これは原形質膜ミクロドメイン内での高度な秩序を示唆している。
目次
- 1 構造
- 2 GPIアンカーの生合成
- 2.1 GPI基の合成
- 2.2 タンパク質との結合
- 3 脚注
- 4 参考文献
- 5 関連項目
構造
GPIアンカー。左上から、ホスホエタノールアミン、コア四糖(3マンノースと
N-アセチルグルコサミン)、ホスファチジルイノシトールが結合した形をしている。Rは細胞膜を構成する脂肪酸である。
GPIアンカーは、ホスファチジルイノシトールにN-アセチルグルコサミン残基とマンノース残基3分子が線状にグリコシド結合し、非還元末端のマンノースにはホスホエタノールアミンがリン酸エステル結合し、そのアミノ基にはタンパク質のC末端がアミド結合した構造をしている。右図の中央のコア四糖にはタンパク質の種類によって様々な糖が結合する。また、右端の脂肪酸残基(R1、R2)にも種類がいろいろある。
タンパク質をつけたGPIアンカーは糖タンパク質と同じように細胞膜の外面にある。これは、GPIアンカーがゴルジ体から放出された分泌小胞の膜の内面にあり、それが細胞膜まで運搬されると小胞の内膜が細胞膜の外面になるように融合するためである(詳しくはゴルジ体を参照)。GPIアンカーと結合する前のタンパク質はC末端側に20~30の疎水性アミノ酸残基(シグナルペプチド)を持っている。これはGPIアンカーと結合するときに除去される。GPIアンカーと結合したタンパク質は後にホスファチジルイノシトールに特異的なホスホリパーゼによって処理されると細胞膜から切断される。
GPIアンカーの生合成
GPI基の合成
反応式 |
酵素など |
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1: 6N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ複合体
Rは脂肪酸 |
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2: N-デアセチラーゼ
GlcNH2はグルコサミン
Pはリン酸 |
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3: イノシトールアシルトランスフェラーゼ |
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4: 4-マンノシルトランスフェラーゼ (MT-I)
Dol-Pはドリコールリン酸
Manはマンノース残基 |
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5: エタノールアミンホスホトランスフェラーゼ |
|
6: 4-マンノシルトランスフェラーゼ (MT-II)
7: 4-マンノシルトランスフェラーゼ (MT-III) |
|
8: PI上の脂肪酸の置換
9: エタノールアミンホスホトランスフェラーゼ |
タンパク質との結合
この反応は粗面小胞体で起こり、タンパク質は膜融合で細胞膜の外側を向く。
反応式 |
説明 |
|
GPI基のN原子の不対電子が標的タンパク質とC末端ペプチド(C端シグナルペプチド)の間のカルボキシル基に求核攻撃をする。そして、C末端ペプチドは除去され、GPIアンカーが完成する。 |
脚注
- ^ Paulick, Margot G.; Bertozzi, Carolyn R. (2008-07-08). “The Glycosylphosphatidylinositol Anchor: A Complex Membrane-Anchoring Structure for Proteins”. Biochemistry 47 (27): 6991–7000. doi:10.1021/bi8006324. ISSN 0006-2960. PMC 2663890. PMID 18557633. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2663890.
参考文献
- 『ヴォート生化学』、(上下)、第3版、田宮信雄訳、東京化学同人、2005年、313,673-674頁
関連項目
タンパク質の一次構造と翻訳後修飾 |
全般 |
タンパク質生合成 - ペプチド結合 - タンパク質分解 - ラセミ化
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N末端 |
アセチル化 - ホルミル化 - ミリストイル化 - ピログルタミン酸 - メチル化 - 糖化反応
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C末端 |
アミド化 - GPIアンカー - ユビキチン化 - SUMO化
|
リシン |
メチル化 - アセチル化 - アシル化 - ヒドロキシル化 - ユビキチン化 - SUMO化 - デスモシン - ADPリボース化 - 脱アミノ(酸化的脱アミノ)
|
システイン |
ジスルフィド結合 - プレニル化 - パルミトイル化
|
セリン/トレオニン |
リン酸化 - グリコシル化
|
チロシン |
リン酸化 - チロシン硫酸化 - ポルフィリン環結合 - リボフラビン結合
|
アスパラギン |
脱アミド - グリコシル化
|
アスパラギン酸 |
スクシンイミド形成 - リン酸化
|
グルタミン |
アミノ基転移
|
グルタミン酸 |
カルボキシル化 - ポリグルタミル化 - ポリグリシル化
|
アルギニン |
シトルリン化 - メチル化
|
プロリン |
ヒドロキシル化
|
←アミノ酸
二次構造→
|
|
脂質: リン脂質 |
グリセロリン脂質
(Glycerophospholipid) |
極性基:ホスホコリン
(Phosphocholine) |
グリセロホスホコリン(GPC)
|
リゾホスファチジルコリン(LPC)(英語版)
|
ホスファチジルコリン(PC)
|
エーテル型脂質 |
血小板活性化因子(PAF)
|
プラスマローゲン(PlsCho)
(KEGG C00958, 英語版)
|
|
|
極性基:ホスホエタノールアミン
(Phosphoethanolamine) |
エーテル型脂質 |
プラスマローゲン(PlsEtn)
(KEGG C04756, 英語版)
|
リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)(英語版)
|
ホスファチジルエタノールアミン(PE)英語版
|
|
極性基:イノシトールリン酸
(Phosphoinositol) |
リゾホスファチジルイノシトール(LPI)(英語版)
|
ホスファチジルイノシトール(PI)
|
グリコシルホスファチジルイノシトール (GPI)
|
ホスホイノシタイド
Phosphoinositide |
|
|
極性基:ホスホセリン
(Phosphoserine) |
リゾホスファチジルセリン(英語版)
|
ホスファチジルセリン(PS)
|
|
極性基:ホスホグリセロール
(Phosphoglycerols) |
リゾホスファチジルグリセロール(LPG)(Lysophosphatidylglycerol)
|
ホスファチジルグリセロール(PG)(英語版)
|
- カルジオリピン(KEGG C05980, 英語版)
|
|
|
スフィンゴリン脂質
(Sphingophospholipid) |
|
関連物質 |
- コリン (栄養素)
- エタノールアミン
- イノシトール
- セリン
- グリセロール
|
- ホスホグリセロール
- リゾホスファチジン酸 (LPA)
- ホスファチジン酸 (PA)(英語版)
|
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型タンパク質の生化学
- 寄生性原虫類のグリコシルホスファチジルイノシトール
- Trends in glycoscience and glycotechnology 24(138), 231-243, 2012-11-30
- NAID 10031146676
- Cp1-6 新規の黒穂病菌由来グリコシルホスファチジルイノシトールアンカーβ-1,3-グルカナーゼ(ヘミセルラーゼおよび関連酵素,一般講演,日本応用糖質科学会平成24年度大会(第61回))
Related Links
- グリコシルホスファチジルイノシトール(glycosylphosphatidylinositol、GPI)または、GPIアンカー(GPI anchor)は、真核細胞の細胞膜の外面に様々なタンパク質を繋ぎ止める基である。膜貫通タンパクを膜に固定するペプチドドメインも同じ役割を ...
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★リンクテーブル★
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グリコシルホスファチジルイノシトール
- 関
- glycosyl-phosphatidylinositol、glycosylphosphatidylinositol anchor、GPI
[★]
- 関
- glycosylphosphatidylinositol
[★]
- 英
- glycosylphosphatidylinositol-specific phospholipase C、GPI-PLC
- 関
- グリコシルホスファチジルイノシトールジアシルグリセロールリアーゼ
[★]
- 英
- glycosylphosphatidylinositol diacylglycerol-lyase
- 関
- グリコシルホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC
[★]
- 英
- glycosylphosphatidylinositol-anchored protein deficiency
- 関
- GPIアンカー型蛋白質欠損症
[★]
- 英
- glycosylphosphatidylinositol anchor
- 関
- グリコシルホスファチジルイノシトール
[★]
- 英
- glyco、glycated
- 関
- 糖、糖化