出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/03/07 15:23:39」(JST)
高分子(こうぶんし)または高分子化合物(こうぶんしかごうぶつ)とは、非常に多数の原子が共有結合してできる巨大分子 (macromolecule) のことである。重合体(ポリマー、polymer)は巨大分子の一種であるが、一般に高分子と言われたときは重合体 (polymer)のことを指す。明確な定義はないが、一般に巨大分子 (macromolecule)は「大きな分子、あるいはその集合体」を指す広範な概念であり、重合体 (polymer)は「単量体 (monomer) の繰り返し構造を持つ大きな分子」を意味する。
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一般的に原子の数が千個程度以上、あるいは分子量が1万程度以上のものは高分子と見なされ、それ以下のものはオリゴマーと呼ばれる。多数の原子を共有結合で連結できる能力をもった元素が骨格(主鎖)となるが、それらは主に炭素やケイ素、酸素などに限られる。しかしほとんどの高分子の主な骨格は炭素を主とした有機化合物であり、炭素以外のものを骨格に持つものは無機高分子と呼ばれる。
高分子は低分子とは異なる特徴的な性質を持ち、特に固体や溶液の力学的、熱力学的特性は低分子のそれとは大きく異なっている。それゆえ高分子物理学、高分子化学といった広範な学問体系を形成するに至る。
分子内にあらかじめ反応点を2つ以上持たせておく方法と、反応中に活性点を連鎖的に発生させる方法がある。
詳細は「重合反応」を参照
高分子は、単量体(モノマー)がいくつもつながることでできており、単量体同士が結合することを「重合する」と言う。そして単量体が重合してできたものを重合体(ポリマー)と呼ぶ。
1種類の単量体の重合によってできた高分子を単独重合体(ホモポリマー)といい、2種類以上の異なった単量体の重合(共重合)によってできた高分子を共重合体(コポリマー)という。
単量体がアルケンであるビニル重合では、頭-尾結合 (head to tail) と頭-頭結合 (head to head) の2通りの結合様式が、置換基の立体障害や電子的特性に応じて生じる。これを位置規則性という。一方ラクトンや環状エーテルなどのや環状化合物を単量体とする開環重合では、開裂が起こる場所によって頭-尾結合と頭-頭結合の起こる割合も変わる。
プロピレン等の重合において、重合することによってできた四級炭素は不斉炭素原子であり、重合法によってはこの不斉炭素の絶対配置に規則性が現れる。これを立体規則性(タクティシティー、tacticity)という。すべての不斉炭素が同じ絶対配置を持つような構造をイソタクチック(アイソタクチック)といい、絶対配置が交互に並ぶものをシンジオタクチックという。また、全くランダムになった構造をアタクチックという。立体規則性はNMRを用いることで評価ができる。
チーグラー・ナッタ触媒によって合成されたポリプロピレンはイソタクチックであるが、通常のラジカル重合で合成したポリプロピレンはアタクチック構造である。
ジエン系モノマーの重合では、1,2-構造、シス 1,4-構造、トランス 1,4-構造といった異性体構造が生じる。
共重合体には、ランダム共重合体(―ABBABBBAAABA―)、交互共重合体(―ABABABABABAB―)、周期的共重合体(―AAABBAAABBAAA―)、ブロック共重合体(―AAAAAABBBBBB―)、の4種類の構造がある。 また、ブロック共重合体の一種にグラフト共重合体と呼ばれるものがあり、これは幹となる高分子鎖に、異種の枝高分子鎖が結合した枝分かれ構造をしている。
多数の枝からなる樹木状(多分岐高分子)のデンドリマー、ハイパーブランチポリマー、ロタキサン、高分子カテナン、水素結合、静電気力、配位結合のような弱い結合力で結びつけた自己集積型高分子、などの新構造高分子の合成も近年注目されている。
合成高分子の分子量は多分散を示す。つまり合成高分子は、同一の組成は持つが分子量は異なる分子の混合物であり、その分子量は通常、数平均分子量あるいは重量平均分子量で表される。分子量分布は、応用上分子量そのものと同様に重要であり、物性面では通常分子量分布が狭いことが望ましいが、加工の容易さからは分子量分布が広いことが有利になる場合も多く、分子量のみならずその分布も用途に応じて設計する必要がある。平均分子量の算出方法には分子1個あたりの平均の分子量として算出される数平均分子量や、重量に重みをつけて計算した重量平均分子量等がある。重量平均分子量と数平均分子量の比を分散比と呼び、これが1に近いほど分子量分布が狭いことを示す。
生体高分子、天然高分子には、単一の分子量からなる単分散を示すものも多い。
分子量の測定法には以下のものがある。
一般に高分子は結晶性領域の結晶融点は単量体よりも高く、また非結晶性の領域にはガラス転移点と呼ばれる擬似相転移温度を有する。特に主鎖に芳香環などが入った分子は、分子間の相互作用が強く融点、ガラス転移点が高くなる。
高分子は分子鎖が長いため液体の力学的特性である粘性と天然ゴムなどで有名な弾性の性質を持つ粘弾性体である。 また、高分子鎖の物性的な差によって屈曲性高分子、剛直性(棒状)高分子、半屈曲性高分子、塊(球)状高分子という分類が出来る。
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