出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/07/13 14:55:37」(JST)
「風」のその他の用法については「風 (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
風(かぜ)とは、空気の流れのこと、あるいは流れる空気自体のことである。
現代では「気流」が類義語にあたる[1]。「風」に対して、風が全くない無風状態のことを「凪」という。
また、古来、風という言葉は眼に見えないものを象徴するためにも使われる。日本語でも意味深い言葉であるが、日本語以外では例えばヘブライ語で風に相当し、龍の発音に似る「Ru(巻き舌)ah」という言葉は深い意味を持っている。(→聖霊、霊性の項に説明あり)
空気全体の動きということで、全体的な雰囲気の方向のような意味で「風」という言葉が使われる例が多い。選挙において「無党派の風が吹いた」とか、「逆風が強かった」等という。また、芸術やファッションなどにおいて○○風(ふう)というのもこれに近い。
風は人々に大きな影響を与える。人々は様々な風を区別し、様々な名前をつけてきた歴史がある。例えば以下のようなものがある。
風向別の呼称は、単に方角を付けただけではなく、その風のイメージが付加されることが多い。日本では、北風は冷たい冬の風、南風は暖かい夏の風として認識されている。
現代の気象学においては「風」とは、地球上の大気の流れを意味している。厳密には、地面に対して水平方向の流れ(水平風)のみを指し、垂直方向の流れ(鉛直風)は上昇気流または下降気流というが、一般的には分けないことが多い。ただ、日常において風は水平方向に吹くことが多いため、風といえば普通は水平方向の風を指す。
風は、風向と風速の2つの要素に分解してとらえることが可能である。
風向は、0度から360度までの方位で表されるが、通常は16方位で表す。風向に関してはしばしば勘違いが起こるが、「北東の風」は北東から吹いてくる風のことで、観測者を中心に見ると北東から南西に向かって吹く風を示す。
風速は、日本では秒速 (m/s) で表すのが普通であるが、国際的にはしばしばノット (kt) がよく用いられる。また、風速は0~12の13段階に分類された「風力」として表現されることがある。
気象学上風を物理量として扱わなければならない場合は、この2要素を用いる。ただ、これは風が水平方向にしか吹かないと仮定した場合の表現であり、垂直方向の風は表現できない。垂直方向の風を表現する際は、鉛直p速度というものを用いる。
物理学的には、場所による気圧の不均一を解消しようとして発生するのが風だと解釈できる。気象学では、「風は気圧傾度力によって発生する」と表現する。
気圧の不均一や気圧傾度力が生まれる根本的な原因は、地球上において、場所によって太陽エネルギーの分布(≒温度)が異なるためである。日光の当たり具合や地表の温まりやすさの違いが、島や大陸といった巨大なスケールで存在すると、気圧が不均一になり、数千km規模の高気圧・低気圧が生まれる。高気圧から低気圧へと流れる空気が、「風」の主因となる。
気圧の不均一・気圧傾度力が大きいほど、風は強くなる。天気図で言うと、等圧線の間隔が狭いほど風は強い。ただ、高気圧・低気圧の風は長い距離を流れるため、コリオリの力や遠心力を受けて回転を伴う風となる。これを地衡風、傾度風という。風の回転を物理量として表現する際には、風向・風速では不十分なので渦度を用いる。
気圧傾度力以外で、風に作用する力には以下のようなものがある。その場所その時の風によって、働く力や大きさは異なる。
風は常に変化しているが、変化の周期には傾向がある。地域差も大きいが、一般的には低気圧・高気圧の通過といった総観スケール気象による変化(約4日周期)が最も大きく、次に季節変化によるもの(1年周期)が大きい。またこれと並んで、『風の息』と呼ばれる小刻みな風向風速の変化によるもの(約1秒周期)も卓越する。海陸風の影響を受ける地域では、約12時間周期の変化も卓越する。
一般的に、『強風』と呼ばれる風は、数十分~数日間程度連続する風速の大きい風を指す。強風の大きさを表す数値としては最大風速が適している。
一方、『突風』と呼ばれる風は、数秒~数分程度の短時間吹く風速の大きい風を指す。このような風は、強風の期間中において、気流の乱れつまり風の息によって突発的に生じるものがほとんどである。例外的に、単発的なものとして竜巻やダウンバースト、積乱雲などのメソスケール気象(いわゆる局地現象)が主因となって起こる突風もある。突風の大きさを表す数値としては最大瞬間風速が適している。
最大風速に対する最大瞬間風速の比を突風率といい、場所ごとに固有の値をとる。普通は1.5~2.0前後となる。天気予報では、強風被害が考えられる場合でも主に最大風速が予想されるので、これに突風率をかけた値の最大瞬間風速が吹きうると考えて、強風対策に役立てる。突風率が場所ごとに固有の値をとるのは、建物や樹木、地形の影響[2]により風の息が異なるためである。
地球上では、地域によって風に特徴がある。
大気大循環に関連付けて説明されることが多いが、中緯度の主に温帯・冷帯地域では西よりの偏西風、赤道付近・低緯度の主に熱帯地域では東よりの貿易風、両極付近・高緯度の主に寒帯地域では極東風が年間を通してよく吹く。年間でもっとも頻度の高い風向の風を卓越風というが、これらの地域の中ではその風が卓越風になるところが多い。
高気圧帯の境界に当たる地域では、季節によってそれが移動するため風向にも季節性が現れる。このように季節性のある風を季節風(モンスーン)という。季節風の支配が強い地域は温帯・冷帯地域に多く、大陸の辺縁部に多い。
また、海岸付近では日中と夜間で風向が逆転することが多く、これを海陸風という。山と谷の間でも同様に逆転することがあり、山谷風という。
さらに細かく見ていくと、都市や地方単位で特徴的な風がみられる、それに名前が付けられていることがある。これを地方風という。熱帯地域や温帯地域では熱帯低気圧による暴風に見舞われることがあり、地域によって台風、ハリケーン、サイクロンという名前が付けられている。
一般的に、地表は地形の影響を受けて風速が弱まり、風向も乱れが多い。上空に行くほど風速は速くなり、風向も規則的に並ぶようになる。また、上空には風速が非常に速いジェット気流という気流が帯状に分布し、季節や短期の気圧配置に伴い移動している。
飛行する動物や滑空、バルーニングするものは当然風の影響が大きい。動物の場合は鳥をはじめとして、翼を利用して飛行や滑空を行うものがほとんどである。翼は風向に対して水平によけるようにして広げ、揚力を得る機構である。風のない場合でも、翼を広げて下降すれば実質的に「風」を受けて揚力を得ることができる。植物では風媒花は風によって花粉媒介を行い、風による種子散布を行うものもある。強い風は生物の散布に大きな影響を与えることもある。例えば日本では夏以降にカバマダラなど熱帯産のチョウが迷蝶として出現する例があるが、これは台風の風に乗って運ばれてくると言われる。
しかし、風そのものが生物に直接に危害を与えることがある。特に寒冷地や高山では風の影響が大きい。動物は、体表に沿って体を包み込むようにまとった空気が熱を帯びて体温を保持しており、風が吹くと、その薄い空気をはがしてしまう。体温より低い風は体温を下げる働きをする。体感温度はおおよそ風速1mごとに1℃低くなると言われ、低温ではさらにその影響が大きい。
高山の尾根筋などでは非常に強く風当たりがあるので、風によって生物群集が規定される。そのような場所は風衝地と呼ばれ、そこに成立する群落を風衝群落という。そのような群落は、普通背が低く、群落の上面には葉が密生した層を作り、そこから突出する枝葉はほとんど無い。同様の森林は、海岸の風当たりの強い場所にもあり、やや背は低いが、見かけは似ている。この場合、風がもたらす線分が低温と同様の効果を与えているものである。また、樹木が伸びられる場所であっても、尾根筋などの風の強い場所では、その枝が片方だけに伸びたものが見られることがある。これは、風下にだけ枝が伸びたことによる。
住居へ吹きこむ風を和らげる工夫として、生垣や石垣などがある。風の強い海岸地域などでは、防風林を設けて地域的な防風を行うこともある。また、冷たい強風ボーラが吹きつけるイタリアのトリエステでは、外での強風対策として手すりやロープが多数設けられている。
一方、気温が高い場合には、風をうまく利用して高温による悪影響を軽減する。人工的に風を発生させて体温を下げる扇風機や団扇・扇子などが代表的なものである。エアコン等の空気調和設備では、気温や湿度だけではなく風(気流)の制御も重要である。換気は風で室内の空気を入れ替えるものである。
また、風を動力として利用することも古くから行われてきた。陸上においては風車が代表的なものであり、風のエネルギーを羽根で受けて軸や歯車の機械的な回転へと変換し、水を汲んだり(用水)、小麦粉などを臼いたり(製粉)して用いられてきた。エネルギーの使用量が増えてきた現代では、風力原動機を用いて風力を利用する動きが活発化している。風力発電は再生可能エネルギーの1つとして挙げられており、主に地球温暖化防止の観点から利用が進められている。海上においては、風は何よりもまず移動手段に使用された。帆が風を受けて進む帆船ははるかな古代から海上交通の主役であり、文明の進歩とともに帆の数は増え速度も増していき、15世紀末からの大航海時代は帆船の進歩をはじめとする航海術の発展によって成し遂げられた。その後も帆船は発展をつづけ、19世紀に入り蒸気船が出現してもしばらくの間は蒸気船をしのぐ性能を誇り、1843年に開発されたクリッパー(快速帆船)において帆船の発展は頂点に達した。その後は蒸気船の性能向上によって帆船は姿を消していったが、現在では純帆船はほとんど使用されていないものの、ヨットなどの小型・スポーツ用船舶においては今なお使用されている。
風を使って人はスポーツをしたり、遊んだりする。あまり一般的ではないが風を利用したスポーツを「ウインドスポーツ(windsport)」という。ウインドスポーツには、セーリング(ヨット)、ウィンドサーフィン、カイトサーフィン、ハンググライダー、パラグライダー、スポーツカイト、凧(凧上げ)、ランドセーリング、アイスヨット(ice yachting)、スノーカイト、カイトバギー(kite buggy)、パラセーリング(parasailing)、気球(熱気球)などがある。ウインドスポーツは空を飛ぶもの(気球、パラグライダー、ハンググライダー、凧など)と海の上を進むもの(ヨット、ウィンドサーフィンなど)が多い。こうしたウインドスポーツの器具は自前の推進力を持たず、風を利用することではじめて行うことができる。熱気球は下からバーナーで空気を熱することによって浮揚することはできるが、推進力を持たないために上昇と降下しかできず、そのため高度を調節して風を捕まえることではじめて水平方向に移動することができる。
ウインドスポーツに含めることは少ないが、軽飛行機も風を利用した部分がある。超軽量動力機など軽量のものはなおさらである。
それ以外のスポーツにおいても、風は当然影響を与える。特に球技や投擲種目は風の影響を受けやすい。特に卓球やバドミントンは風の影響が大きすぎるため、屋内で行われる。それ以外の種目では、風にどう対処するかも技術のうちである。また、前半と後半でコートチェンジを行うのも、それに対しての公平性を求めての対処の意味が含まれる。陸上競技では、追い風が強すぎる場合の記録は追い風参考として別に扱われる。
風は自然現象の代表的なものの1つであり、伝承や信仰において神格化されることがある。日本においては風神が例である。インド神話ではヴァーユが風の神であり、この影響を受けた仏教では天部の1人として風天が存在する。ギリシア神話ではボレアース、ノトス、ゼピュロス、エウロス(4人の総称がアネモイ)が風の神である。日本各地で伝承として伝えられている現象(妖怪)として、鎌鼬(かまいたち)がある。
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ウィキクォートに風に関する引用句集があります。 |
ウィクショナリーに風の項目があります。 |
ウィキメディア・コモンズには、風に関連するカテゴリがあります。 |
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