出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/10/23 15:58:48」(JST)
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16進表記 | #A757A8 |
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RGB | (167, 87, 168) |
CMYK | (28, 66, 0, 0) |
HSV | (299°, 48%, 66%) |
マンセル値 | 0.3RP 4.8/12.2 |
備考 | |
出典 |
紫(むらさき)は、寒色のひとつ。青と赤の中間色であり、菫のような色である。英語ではパープル(紫色) (purple) といい、菫色(すみれいろ、きんしょく)、バイオレット (violet) を紫に含む場合もある。また、古英語ではパーピュア (purpure) という。虹を構成する七色(赤・オレンジ・黄・緑・青・藍・紫)のうち、光の波長が最も短い(380〜430nm)。これより波長が短いものを紫外線という。
目次
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「紫」はもともとムラサキ(紫草)という植物の名前であり、この植物の根(紫根)を染料にしたことから、これにより染色された色も「紫」と呼ぶようになった。この名称自体は、ムラサキが群生する植物であるため、『群(むら)』+『咲き』と呼ばれるようになったとされる[1]。古来この色は気品の高く神秘的な色と見られた。また紫草の栽培が当時の技術では困難だったために珍重され、古代中国(漢代以降 - 時代が下ると黄色に変った)、律令時代の日本などでは、紫は高位を表す色とされ、主に皇族やそれに連なる者にしか使用を許されなかった。
『枕草子』の冒頭、「少し明りてむらさきだちたる雲の細くたなびきたる」という箇所は『紫色の雲』という意味と、『群がって咲く(ムラサキの)花のような』という両方の意味があるともされる。なお、ムラサキの花は白色である。
「紫色」の英語に相当する語句が"purple"である。もともとこの単語は、巻貝の一種"purpura"(ラテン語、プールプラ)に由来する。この巻貝の出す分泌液が染色の原料とされ、結果としてできた色もpurpuraと呼ばれた。この染色法を発明したのは現代のイスラエルやレバノンの地域に住んでいた古代のカナーン人であるといわれる。巻貝1個から出る分泌液はわずかであったため、この染色布が貴重なものであり、ローマ帝国の頃より西洋では高貴な身分の者が身に着けていた。この染色によって彩られた紫は若干赤みがかっていたようである。詳しくは貝紫色を参照。
また、英語の"purple"は、紅みがかった紫を指す語で、日本で言う所の京紫である。また、"purple"は、紫と紅の両義を含める場合がある。例えば、怒って顔を紅くする様相を、英語では"turn purple with rage"と表現する。細菌学においても、 "purple" は「紫」ではなく "red"(紅)を指す。紅色細菌 (purple bacteria) などの例がある。
「紫色」を指すことがあり、しばしばパープル (purple) に代わって、基本色としての紫を指す単語として使われる。なお、アイザック・ニュートンの定義による虹の7色のうち、最も短波長側の色である紫は英語では"violet"であり、"purple"ではない。この"violet"は本来スミレを意味する単語であり、菫色(すみれいろ)と訳すのが正確である。パープルは赤味の強い紫(マゼンタ)なのに対し、バイオレットは青味の強い紫であり、日本語の江戸紫に似ている。
紫から派生した色で、紅と紫の中間色を赤紫(あかむらさき)やマゼンタと呼ぶことがある。赤紫は次のような色である。
また、藍と紫の中間色を青紫と呼ぶことがある。青紫は次のような色である。
purple (webcolor) | ||
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16進表記 | #800080 |
mediumpurple (webcolor) | ||
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16進表記 | #9370DB |
violet (webcolor) | ||
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16進表記 | #EE82EE |
mediumvioletred (webcolor) | ||
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16進表記 | #C71585 |
fuchsia (webcolor) | ||
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16進表記 | #FF00FF |
magenta (webcolor) | ||
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16進表記 | #FF00FF |
紫は一般に可視光の波長のうち最小波長である、およそ380〜430nmの波長の色として知覚される。
ウェブカラーでは基本16色として"purple"が定義されており、色を指定する際にpurpleと入力すると16進数表記にして#800080の色(濃い紫)が表示される(右図)。
派生色としては"violet"やマゼンタ"magenta"などが定義されている。これらは、フクシャ"fuchsia"を除けば基本16色として定義されておらず、すべてのブラウザで正しく発色される保証はされていない。"magenta"と"fuchsia"は同色として定義されてはいるが、"magenta"は基本16色ではない。
紫(JIS慣用色名) | ||
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マンセル値 | 7.5P 5/12 |
パープル(JIS慣用色名) | ||
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マンセル値 | 7.5P 5/12 |
菫色(JIS慣用色名) | ||
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マンセル値 | 2.5P 4/11 |
バイオレット(JIS慣用色名) | ||
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マンセル値 | 2.5P 4/11 |
藤色(JIS慣用色名) | ||
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マンセル値 | 10PB 6.5/6.5 |
紫は代表的な色ではあるが、赤と青の絵具を混ぜ合わせてもつくることができる。
JISでは、紫とパープルが慣用色名として右表のように、両者が同色として定義されている。またそれとは別個に、菫色やバイオレットが同色として定義されていることがある。
また、JIS慣用色名では、赤紫や青紫の色が次のように定義されている。
赤紫(JIS慣用色名) | ||
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マンセル値 | 5RP 5.5/13 |
青紫(JIS慣用色名) | ||
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マンセル値 | 2.5P 4/14 |
ほかにも近似色はいろいろ定義されている。詳しくはJIS慣用色名を参照。
紫色およびその類縁色(特に赤紫)の色素を持つ天然の色材の中には、染料や食品の着色料などに利用されるものに以下のものがある。これらの中には、溶液のpHによって大きく変色する性質があるために、pH指示薬として利用されているものもある。
ムラサキの根は紫根(しこん)と呼ばれ、これを乾燥して粉末状にした上で湯に溶かして色素を抽出し、生地に灰汁による媒染を数十回施してようやく染物が完成する。紫根の持つ紫色の色素は、この植物から名を取ってシコニン (Shikonin) と命名されている。もともとムラサキが栽培困難なうえ、染色に手間暇がかかるため、紫根による染物は高価である。
なお、紫根は傷の殺菌作用などを持つために、漢方では生薬としても利用されている。
前述のとおり、巻貝の鰓下腺から出た分泌液が染料の原料とされた。この分泌物は、巻貝が外敵を退けるときに分泌する、強烈な臭いを持つ粘液であるが、この粘液が酸化すると鮮やかな紫色を発色することにより、染料として使われるようになった。なお、この色素は現在、臭化化合物の6,6'-ジブロモインディゴであることが分かっている(インディゴを参照)。
巻貝1個から採取できる粘液は微量であるため、服1着の染色には巻貝数千から数万個を必要とした。中世の地中海では染色目的による巻貝の乱獲が進み、大航海時代に入る頃には巻貝が激減し、貝による紫染色は廃れていった。
一方、マヤ文明のあったユカタン半島地方の西、現在のメキシコ南部のオアハカ地方でも、別種の巻貝の分泌液を染料とする同様の染色が伝統的に行われている。ここでは巻貝から分泌液を採取した後巻貝を海に戻したため、巻貝の個体数はあまり減っておらず、現在でもこの染色法は行われている。
紫キャベツ(赤キャベツ)の持つ紫色の色素はアントシアニン (anthocyanin) である("cyan" とあるが、シアン化物ではない)。この色素の水溶液は、強酸性下でマゼンタに近い鮮やかな赤紫色、弱酸性下で薄赤紫色、中性下で紫〜青紫色、弱塩基性下で青緑色、強塩基性下で黄色を示す。このように水溶液の色が変化するため、pH指示薬として利用できる。また、酸性下で鮮やかな赤紫色を発色するため、食品への着色料として用いられることが多い。食品の原材料名には「紫キャベツ色素」「アントシアニン色素」などさまざまな呼称で明記されている。
アントシアニンは紫キャベツの葉のみならず、黒豆、ブルーベリーやアサガオの花弁など多くの植物に含まれている。アジサイの花弁にも含まれており、土壌のpHやアルミニウムイオン濃度などによって花弁の色は異なる。
この色素の溶液は、紫キャベツの葉やアサガオの花弁などを60℃程度の蒸留水または無水アルコールに30分ほど浸すと得られる。そしてこの溶液はそのままpH指示薬として利用できる。
北米大陸、メキシコの古代アステカ文明のあったあたりでは、コチニールカイガラムシと呼ばれる、ウチワサボテンに寄生する虫から色素を抽出して、赤紫色に染色することが伝統的に行われている。コチニールカイガラムシはエンジムシとも呼ばれており、この虫のメスを乾燥して抽出した色素はコチニール色素と呼ばれる(虫の生態についてはカイガラムシを参照のこと)。
コチニール色素の実態はカルミン酸であり、この物質の水溶液は、酸性下で黄〜橙、中性で紅赤色、弱塩基性で赤紫、強塩基性で紫に変色する。そのためpH指示薬として利用できる。この色素は、化粧品や食品、医薬品の着色料として利用されている。カンパリの色素でもある。赤色顔料として絵具などにも使われている。
ただ、カイガラムシによる染色はアメリカ大陸のみで行われていたわけではなく、カイガラムシの別種 "en:Kermes vermilio" による紅色の染色が地中海一帯やアナトリアにて古くから行われており、ヨーロッパやイスラム世界に広まっていた。このカイガラムシは樫の木の一種ケルメス・オーク (Kermes oak) に寄生する虫であり、この虫から採取された色素の色は Kermes にちなんでクリムソンやカーミン(カーマイン、カルミン)と呼ばれ(これに相当する日本語の色名としてえんじ色がある)、色素の物質名(カルミン酸)にもなった。西洋世界では紫色よりもむしろ紅色系の染色として使用されてきた。今日では、アカネ色素の研究により発明された合成染料アリザリンや、Kermes vermilio よりも効率の良いコチニールの生産方法の存在により、かつてほどには使用されていない。
なお、細胞核や染色体を染色するための薬品として、この色素を利用した酢酸カーミン溶液がある。
1856年に発明された、世界初の合成染料である。これはアニリン染料の一種であり、この色素はモーベイン (Mauveine) と命名された。「モーブ」(mauve) はフランス語で葵、特にゼニアオイ (en:Malva) を意味する。
この発明は、特にイギリスではニュースとなった。パープル貝の分泌液などきわめて高価な天然染料しかなかった発明当時、高級な色とされたものをより安価で染色できるようになったからである。間もなく別の赤紫系合成染料フクシン(後述)が発明されたため、合成染色市場を独占するほどには至らなかったが、この色の服は流行し、合成染色事業は大成功を収めた。
現在では染料としては他の合成染料が用いられていることが多く、この名は色名として用いられる(モーブ (色)を参照)。
モーブに続いて、1859年に発明・発表されたた色素である。フランスの実業家ルナール・フレール (Renard Frères) の専属化学者ヴェルガンにより発明された。このアニリン系色素は固形では緑色をしているが、熱湯やエタノールに溶解させると赤紫色に変化する。さらに少量のアルデヒドを加えると紫色になる。マゼンタの染料・顔料に使われる。
現在ではこの色素による赤紫や紫色の染色が行われるほか、印刷インクや、実験観察のための細胞の染色やアルデヒドなどの分析試薬にも用いられる。
この鮮やかな赤紫色を発色する色素は、フクシアの花の鮮やかな赤紫色に見立ててフクシンと名づけられた。これは、フクシアの命名のもととなったドイツの植物学者フックス (en:Leonhart Fuchs) の単語の意味がドイツ語で「キツネ」 (Fuchs) であることと、実業家ルナールのフランス語での意味もまたキツネ (renard) であることをなぞらえた命名でもある。
フクシンによって発色される色はフクシャとも、マゼンタとも呼ばれる。この色素による染色が発売された1859年、イタリアとフランスの連合軍がオーストリア=ハンガリー帝国軍を破る戦争が起きていた(マジェンタの戦い)。色名は、この戦いの最後の戦勝地マジェンタ (Magenta) を記念して名づけられたものである。
なお、この年とほぼ同じく、イギリスでドイツの化学者ホフマンにより同系統のアニリン赤色素・ローズアニリン (rosaniline) が発明されている。この色素も、マゼンタ色として使用される。
「紫で始まる記事の一覧」も参照
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紫雲膏「マルイシ」
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