出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/12/18 10:02:38」(JST)
消毒用アルコール(しょうどくようアルコール、alcohol for disinfection)とは医療分野等で消毒に用いられる外用のアルコール製剤である。
具体的には日本薬局方では消毒用エタノール(しょうどくようエタノール、ethanol for disinfection)が規定されている。それ以外の製品としては消毒用イソプロピルアルコール(しょうどくようイソプロピルアルコール、Isopropyl alcohol for disinfection)などの製品が市販されている。
アメリカ英語でRubbing alcohol USP、イギリス英語でSurgical spirit B.P.と呼ばれる。
炭素数の少ないアルコール(低級アルコール)は容易に生体膜を透過する一方、中程度の濃度以上では両親媒性を持つために細胞膜など脂質膜やタンパク質を変性させる生理作用を有する。そのような物理化学的作用を持つアルコールのうち、エタノールないしはイソプロピルアルコール(正式な化学名は2-プロパノール)などヒトへの毒性が相対的に低いものが消毒用に利用される。
中程度の濃度以上のエタノールないしは2-プロパノールでは、具体的には、原核生物である細菌などに作用するとタンパク質の変性や溶菌などの殺菌作用をあらわす。また、ヒトなどの局所作用として収斂作用が現れる。つまり、ある程度水が存在する状況ではアルコールが膜を変性すると共に透過したアルコールなどが菌の内圧を高め溶菌などの作用をあらわす一方、高濃度ではタンパク質の構造水などの脱水作用が生じるため変性作用が強く現れる。
つまり高濃度のアルコールでは脱水作用により細胞膜など外膜に対して浸透圧による外圧が加わり、溶菌作用を減弱させるように作用する。したがってエタノールでは76.9 — 81.4 vol%程度に精製水を加えたエタノールが消毒用として最も強い作用をあらわすことになる。
分子量がさほど変わらないエタノールと2-プロパノールとでは消毒薬としての効力はさほど変わらず、いずれも容易に体内で代謝されるため外用消毒薬としては両者の違いはほとんどない。幾分エタノールの方が急性毒性が低い。
一方、日本では純粋なエタノールに対しては酒税法により医薬品原料段階で課税されるためにエタノールはコスト面で不利となる。したがって消毒用アルコール製品では、酒税法上は変性アルコール扱いとなる2-プロパノールが添加されたエタノールを利用したものや、2-プロパノールやベンザルコニウム塩化物などとの合剤にしたものも存在する。このような製品はアレルギー感作などのリスクを考慮した場合、粘膜への接触や食器などへの消毒には不適当なものも存在する。
アルコール濃度が高い場合はゴムや樹脂を膨潤させて劣化させる性質を持つ。
日本薬局方では消毒用エタノールは以下のように規格が決まっている。
酒税法の関係で、イソプロピルアルコールを添加したものは消毒用エタノールIPという規格になる。
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ベンクロジドVエタノール液(0.5%)
効能・効果 | 用法・用量 |
手術部位(手術野)の皮膚の消毒 | 本剤をそのまま消毒部位(着色または脱脂等を必要とする部位)に用いる |
医療機器の消毒 | 本剤をそのまま用いる |
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