出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/09/18 11:37:59」(JST)
この項目では、生物がからだの色や形などを周囲の生物・無生物に似せることについて説明しています。それにちなんだ作品名などについては「擬態 (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
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擬態(ぎたい、mimicry, mimesis)とは、
態(=ありさま、様子や姿)を擬する(=似せる)こと、という表現である。
動物の擬態の例としては、例えばコノハチョウが自らの姿を枯葉に似せて目立たなくすることなどが挙げられる[1]。またアブが、ハチに似せて目立つ色を持ち、ハチに擬することなども挙げられる[1]。
[要出典]進化によってある特定の環境に似た外見を獲得して擬態するもの(昆虫類など)と、自分の外見を変化させる能力を獲得して擬態するもの(カメレオンなど)がある。
特に色彩だけを似せている場合は「保護色」と呼んでいる。
人間からはそうは見えなくとも、すむ環境や活動する時間によっては立派な擬態や保護色となるものもある。海水魚にはタイやカサゴなど赤っぽい体色のものがいるが、ある程度の水深になると青い光が強くなるため、これらの赤色は目立たない灰色に見えてしまう。
[要出典]またトラもよく目立つように思えるが、ヒトなど一部の三色色覚を持つ霊長類を除き、哺乳類には視覚的に色の区別ができないものが多いため、茂みにひそめばこれも擬態になると考えられている。
同じような生活環境に適応し、また同じような食性を獲得した結果、二つあるいはそれ以上の種類の生物の形態が非常に似たものになることがあるが、これは擬態ではなく収斂進化と呼ばれる現象である。収斂進化した複数種の生物においては、体の外見だけでなくその機能も似ている。またあとに述べるミミックとモデルという非対称的な関係は存在しない。たとえばカマキリとミズカマキリとカマキリモドキはよく似た鎌状の前脚を持つが、擬態ではなく収斂進化の例である。
擬態はカモフラージュとも言う[要出典]。
擬態は目的によって隠蔽擬態(いんぺいぎたい)、攻撃擬態(こうげきぎたい)、の2つに分けられる[要出典]。ただし隠蔽擬態と攻撃擬態については両方を兼ねる生物もおり、明確な線引きは難しい。
また、擬態関係にある複数種が出現する場合があり、その内容によってベイツ型擬態(ベイツがたぎたい)、ミューラー型擬態(ミューラーがたぎたい)と呼ばれる。
アシナガバチは複数の種が同じパターンの色を持っているし、アシナガバチそっくりなカミキリもいる、というように、ミュラー擬態とベイツ擬態が入り交じった状態もよく見られる。
擬態している生物を擬態者、またはミミック、模倣される対象をモデルと呼ぶ。
一般には、擬態は外見がモデルによく似ることをさすが、モデルが動物などの動くものの場合、動きが似ていなければ、外見が似ていても効果が薄い。そこで、擬態するものの動きや行動が、モデルそっくりになるのもよく見られる。例えば、ハチに擬態するカミキリは、細かく触角をふりながら、せわしなく歩く。また,コノハチョウは危険を感じると体を前後にユラユラを動かし,木の葉がゆれるように見せかける。
単に動きが似ているというより、行動として、特別に他者によく似た動きをとるものもある。タテハチョウは強くはばたいてしっかりと飛ぶが、マダラチョウは柔らかくはばたいてふわふわと飛ぶ。タテハチョウの仲間で、カバマダラ(有毒)に擬態しているとされるメスアカムラサキのメスは、普段はマダラチョウのようにふわふわと飛んでいるが、人が追っかけて捕虫網をふりまわし、取り逃がしたとたん、タテハチョウの飛び方に変わって力強くはばたいて逃げてしまう。このことは、このチョウのふだんの飛び方が、モデルに似せるための、つまり擬態のためにあえてとっている行動であることを示唆するものである。
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視覚以外の感覚にうったえる擬態もある。
たとえば、ナゲナワグモというクモは、枝先に足場のような糸を張り、そこにぶら下がって前足から糸を垂らす。この糸の先には粘液の球がついており、虫が近づくとそれをぶつけて虫を捕らえる。ところが、よく調べて見ると、捕まる虫が特定の数種のガばかりで、しかもオスであることが判明した、そこから研究が進み、粘球にガの性フェロモンに類似した物質が含まれることが判明した。つまり、雄のガがメスだと思ってやってくると、そこにクモがいるわけである。したがって、これは化学物質を利用した攻撃型擬態である。またガータースネークのオスは、冬眠からさめたときメスのフェロモンを出すことがある。 すでに日光をあびて体温が上昇したほかのオスたちがこれにだまされて接触してくると、このオスは彼らから熱をうばい、自分の冷えた体をすみやかにあたためる。[2]これは同種の動物をあざむく化学的擬態の例である。
花粉を媒介させるため、花から腐肉の匂いを発してハエやシデムシなどの昆虫を集めるラフレシア、スマトラオオコンニャク、スタペリアなどの植物が知られているが、これも化学的擬態の例と言えるだろう。スッポンタケ科のキノコも胞子をふくんだ腐敗臭を放つ粘液を出してハエなどの虫を集め、胞子を拡散させる。
視覚に訴えるものではあるが、外見によらないものもある。ホタルの仲間はオスとメスが光の信号でやり取りすることが知られているが、北アメリカのフォトリウス属には、メスがフォティヌス属のホタルの発光パターンで発光し、フォティヌス属のオスを誘引し、捕食するものがある。
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ベイツ擬態のように、無害な動物が有害な生物をモデルとした擬態の場合、捕食者がモデルを攻撃したときのいやな記憶を長く保っていなければ効果がない。もしもハチに刺された動物が、すぐにハチのことを忘れてしまえば、次に(ハチに擬態した)カミキリを見つけたときにも、ためらわずに捕食するだろう。また、ハチの模様と刺された痛みを関連づけて覚えていなければ、次にカミキリを見つけたときにも、やはりためらわずに捕食するだろう。
したがって、脳神経系と視覚などの感覚器がある程度発達した捕食者に対してしか効果はない。
また、捕食者があらかじめモデルの発する信号の意味を理解していなければ(これは遺伝的なものと学習によるものとがあるだろう)、擬態者の「偽の」信号の意味も知らないことになり、効果がない。もしモデルより擬態者のほうがあまりに多ければ、捕食者は、危険なモデルよりも無害な擬態者に遭遇する頻度が高くなり、擬態者の発する信号は機能しない。黄色と黒のカミキリがハチよりもはるかにたくさんいるのであれば、捕食者は、「黄色と黒は食べられる」と理解するだろう。黄色と黒のカミキリがハチと同数ならば、「黄色と黒は危険だが、捕食を試みる価値はある」と理解するだろう。
したがって、擬態者は、モデルよりあまり多数になるような繁殖はできない可能性がある。
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いろんな生物を見たときに、擬態ではないかと思われる例は数多い。しかし、この問題が見かけでわかりやすく、面白くて取っつきやすいために、安易な判断がなされている場合も多い。本当にそれが擬態として作用しているのかどうかには、しっかりした観察に基づく慎重な論議が必要である。この点は、保護色や警戒色などについても同様であり、これまでに、後に誤りであったと判断された説は数多い。
たとえば、トリノフンダマシという、排泄されたばかりの鳥の糞に見えるクモがいる。このクモは、20世紀半ばまで、糞だと判断してよってきた昆虫を食べる、攻撃的擬態であると判断されていた。しかし、現在では、このクモは夜間に網を張ることが知られている。それでも糞に擬態している可能性は残るわけだが、実はこのクモは、多くの場合葉の裏側に止まるのである。
同じくクモ類であるが、アリグモは、ハエトリグモ類でありながら、肉眼的にはアリにしか見えないくらい、アリによく似ている。このクモも、20世紀前半までは攻撃的擬態の代表例になっていた。アリが仲間だと思って挨拶するところを捕まえる、というのである。さらに、アリの巣に侵入してアリの蛹を担いで出るという話すら、専門書に記されていた。ところが、その後の観察から、このような話の信憑性が問題になり、むしろ、現在では野外に於いてはアリは攻撃的で強い昆虫であるので、その姿でいることで安全を図っている、つまりベイツ型擬態であるとの判断になっている。それどころか、アリが近づくと逃げる、との観察もあり、現在のクモの本では、アリグモがアリを捕まえたという確実な観察例は存在しない、とまで書かれているものがある。しかし、この記述が正しいかどうかは、また別の問題でもある(なお、アリを捕食するハエトリグモとしてアオオビハエトリがいる。前脚をあげて触角に似せているかのようなポーズをとるが、アリグモほどアリに似ていない)。
このような擬態に関する誤解は、今後とも起こり得ることとして、慎重に判断する必要がある。
昆虫
バラノトゲツノゼミ・ミツカドツノゼミ(バラのとげ), ムシノフンツノゼミ[ムシクソツノゼミ](虫の糞), アリカツギツノゼミ(威嚇ポーズのアリ), ハチマガイツノゼミ(ハチの形と動き), ミカヅキツノゼミ(枯れた枝・葉), カレハツノゼミ(枯れ葉)
クモ類
頭足類 タコ・イカは周囲に合わせて体表の色素胞を拡大・収縮させ瞬時に色を変える。タコは体表の凹凸までも周囲に合わせる。
貝類
魚類
両生類
爬虫類
鳥類
吸虫
植物
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