出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/19 04:45:41」(JST)
接線(せっせん、tangential line)とは、曲線に対して次の定義を満たす直線のことである。古くは切線とも書かれた。
曲線上の点 P における接線とは、P と異なる曲線上の点 Q を取り、Q を P に近付けたときに直線 QP が近付く直線のことである。このとき点 P を接点と呼ぶ。接線は存在するとは限らない。
曲線の方程式が微分可能ならば、接線が存在する。
座標平面上の微分可能な関数 C : y = f(x) 上の x = a における微分係数 f' (a) は
で与えられる。これが点 P(a, f(a)) における接線(L とする)の傾きである。
したがって、接線 L の方程式は、
で与えられる。
(例)
放物線 y = f(x) = x2 上の点 (−1, 1) における接線の方程式は、f' (−1) = −2 であるから、
すなわち y = −2x − 1 である。
平面曲線 C : x = f(t), y = g(t) が t = a で微分可能ならば、導関数は
で与えられる。これから同様に接線 L の方程式が求まる。
一般の n 次元空間内の曲線 C : x =(x1(t), …, xn(t)) においては、
を接ベクトルと呼び、これを方向ベクトルとする直線の方程式を求めることになる。
微分可能でなくても接線が存在する場合がある。それは微分係数値が ±∞ である場合である。
例えば、y = x1/2 の x = 0 における微分係数は ∞ である。したがって、原点 (0, 0) における接線は x = 0 である。
微分係数が ±∞ でもない場合、すなわち右微分係数と左微分係数が異なったり、振動する場合は接線は存在しない。
いわば三角屋根状に尖った点(尖点)では、右微分係数と左微分係数が異なる。
例えば、y = |x| の x = 0 における右微分係数は 1、左微分係数は −1 である。
振動する例として、
(これは x = 0 で連続である)は x = 0 で微分係数が振動する。
至る所連続かつ微分不可能な例として知られる、ワイエルシュトラス関数があるが、これも振動する例である。
接線 L は接点 P の近傍における、曲線 C の1次近似と見なすことができる。接点 P を中心に十分に拡大すると、曲線 C は限りなく直線 L に近い。
ランダウの記号だと
と表される。
円の接線は、極限という観点を用いずに、初等幾何学の観点で比較的簡単に論じることができる。中学、高校といった初等数学においては、「円の接線とは、円と1点で交わる直線のことである」と定義されるのが通常であるが、この定義を一般の曲線に当てはめることはできない。
中心 C の円 C において、円周上の点 P における接線は、直線 CP と点 P で直交する直線に等しい。
このとき線分 CP を接点半径と呼ぶ。
円 C の外の点 A を通る接線は2本ある。
線分 AP の長さ(2つある)を接線の長さという。円の接線の長さは等しい。
また、接弦定理(接線と弦が作る角の定理)も初等幾何学においてよく知られるところである。
詳細は「円 (数学)」を参照
放物線の接線はいくつか幾何学的な性質を持つ。
y = ax2 + bx + c (a ≠ 0) の x = α, β における接線の交点の x座標は である。
双曲線の接線もいくつか幾何学的な性質を持つ。
漸近線の交点を O、接点を T、接線と漸近線の交点を P, Q とすると、
2次曲線(円錐曲線)は、グラフが点や直線であるものを除くと、楕円、放物線、双曲線に限られる。C はこれらのいずれかであるとし、点 P における接線を L とする。2つの焦点を F, F' とする(放物線の場合は1つを無限遠点と考えることにする)と、次の性質が成り立つ。
この性質はパラボラアンテナに利用されている。
正弦の定義により
が導かれる。これにより、y = sin x の原点 (0, 0) における接線の式は、y = x と分かる。
なお、平均値の定理を用いることで誤差を評価することもできる。
a は 1 でない正の数とする。指数関数 y = ax の接線においては、
が基本的である。これは x = 0 における微分係数に等しい。
これから、導関数の定義より
である。
ここで log はネイピア数 を底とする対数(自然対数) である。
詳細は「ネイピア数」および「自然対数」を参照
逆関数の微分法と指数関数の微分法より、 の導関数
が導かれる。指数関数の微分法を仮定しないでこれを導くことも可能である。その場合、指数関数の微分法を逆関数の微分法から導くことになる。
アステロイド (a > 0) の接線が x軸、y軸によって切り取られる線分の長さは一定(長さ a)である。
詳細は「アステロイド (曲線)」を参照
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