出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/06/24 12:18:58」(JST)
口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)とは、先天性異常の一つであり、軟口蓋あるいは硬口蓋またはその両方が閉鎖しない状態の口蓋裂と、口唇の一部に裂け目が現れる状態の口唇裂(唇裂)の総称。症状によって口唇裂、兎唇(上唇裂)、口蓋裂などと呼ぶ。「みつ口」と俗称される。
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口唇の一部に裂け目が現れる奇形を口唇裂、唇裂と呼ぶ。口唇裂は、Sperberによる分類で、鼻まで達する完全口唇裂、達しない不完全口唇裂、他に片側性・両側性に分けられる。また、軽微な口唇裂を痕跡唇裂と言う。痕跡唇裂は、赤唇縁の小さなへこみや、唇から鼻の穴までの傷痕のように見える。ただし外見上は軽微な変化であっても、その下にある口輪筋への影響があり、再建手術を必要とする場合が有る。痕跡唇裂の新生児は、形成外科医、口腔外科医、頭頸部外科医、耳鼻科医、言語病理学者、言語聴覚士などからなる頭部顔面治療チーム (craniofacial team) に早急に見せ、口唇裂の深刻度を判断してもらうことが通知されている。
片側不完全
片側完全
両側完全
原因としては、一次口蓋の形成時に上顎隆起と内側鼻隆起の癒合不全によるものである。また上唇裂の場合、環境的要因や遺伝的要因も指摘されており、胎児脳内圧の異常亢進や風疹、薬物など、遺伝に関しては日本で8.7%から16.0%の関与が報告されている[要出典]。
口蓋裂を示す動物では、口腔と鼻腔が直接交通する。ヒト以外の動物では犬、特に短頭種での発生が多く、馬ではまれに認められる。誤嚥性肺炎を併発することが多く、内科的治療としては誤嚥性肺炎の発生を防ぐことに努める必要がある。根本的治療は外科的閉鎖であり、オーバーラッピング弁法が用いられる。口蓋部における破裂があるものを口蓋裂といい、軟口蓋、切歯孔までの硬口蓋と軟口蓋、片側性歯槽突起部、両側性歯槽突起部の4型に大きく分けられる。原因としては、両側の外側口蓋突起や、一次口蓋と鼻中隔の癒合不全による。
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治療のスケジュールは患者個人、病院、ケースによって違いがあることに注意すること。下記の表は、よくある治療例のスケジュールである。色の四角は、そのプロセスが行われている平均的な時期を示している。唇の治療のように一回の手続きで済むものもあれば、言語聴覚療法のように継続的な治療法もある。
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口蓋閉鎖床 (en) | ||||||||||||||||||||||
口唇裂治療 | ||||||||||||||||||||||
軟口蓋治療 | ||||||||||||||||||||||
硬口蓋治療 | ||||||||||||||||||||||
中耳腔換気用チューブ (en) | ||||||||||||||||||||||
言語聴覚療法/咽頭形成術 (en) | ||||||||||||||||||||||
顎裂部骨移植 (en) | ||||||||||||||||||||||
歯科矯正 | ||||||||||||||||||||||
その後の治療 (顎骨手術含む) |
片側不完全口唇裂治療前の生後3ヶ月男児
同じ男児、術後1ヶ月
同じ男児、生後18ヶ月。年齢と共に痕が目立たなくなっていくのが分かる
片側完全口唇裂治療前の生後6ヶ月女児
同じ女児、術後1ヶ月
同じ女児、5歳。年齢と共に痕が目立たなくなっていくのが分かる。
同じ女児、8歳。痕は殆どなくなっている。
上記少女の完全回復は、こちらで見られる。 http://www.pbase.com/stella97king/cleft_lip
詳細は「:en:Clefting prevalence in different cultures」を参照
出産時における口唇裂の有病率、口蓋裂を伴うまたは伴わない口唇裂(CL +/- P)[1]口蓋裂のみ(CPO)[2]は、人種・地域グループごとに違う。
(CL +/- P)の有病率が最高だったのは、ネイティブ・アメリカン、アジア人である。アフリカ人は、有病率が最も低かった。[3]
CPOの発生率は、白人、アフリカ人、北米原住民族、アジア人とも類似していた。
胎児を生命の危険にさらすわけでも、有害なわけでないにもかかわらず、口唇裂・口蓋裂が、合法的な期限を越えてまで人工中絶をする理由になる国もある。(一般的に許容される、または公式に是認される場合を含める)
人権活動家の中には、この「美容殺人("cosmetic murder" )」という行為は、優生学に当たると主張するものもいる。 現在ではテレビでも活躍するイギリスの女性牧師で、自身、先天的にあごに奇形(口唇口蓋裂ではない)を持って生まれたジョアンナ・ジェプソン (Joanna Jepson) は、イギリス国内でのこの種の行為を止めるため、2001年にヘレフォードシャーで、妊娠28週間(法的には24週間までが期限)の胎児を中絶した医師二名を非合法殺人 (unlawful killing) として訴え、法的な行動を起こした。[4][5] 1967年中絶法 (Abortion Act 1967) では、「深刻な障害」ではない場合、中絶を認められないが、この法律には「深刻な障害」の定義がないまま、口唇裂・口蓋裂が、その「深刻な障害」かどうかが争われた。ジェプソンによれば、ジェプソンは口唇裂・口蓋裂よりも、さらに深刻な顔の奇形があることをもとに、口唇裂・口蓋裂は「深刻な障害」ではなく、実際に患者は完璧に満足のいく処置を行っているため、これらの胎児を中絶するのは非合法殺人であると主張した。 これに対し、2005年、ウェスト・マーシア (West Mercia) 検察庁 (CPS) は、二人の医師は善意で中絶を行ったとした。[5]これにプロチョイス団体のAbortion Rightsは、歓迎の意を表明した。警察は、(大きくなった胎児の中絶による)母親の生命への危険に対して懸念を表明した。警察の懸念に対し、プロライフ団体であるプロライフ同盟 (ProLife Alliance) は、「この中絶が持つ、赤ちゃんの生命を絶つ衝撃について懸念を表明して欲しかった」とコメントした。
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乳児の嚥下は成人のものとは異なっており、乳児嚥下と呼ばれる。乳児は舌で乳首を包み込み上口蓋に密着させ、蠕動運動をおこなうことで上顎と舌とで陰圧を作り出し哺乳している。乳児嚥下には口唇は必要ない。口蓋裂が存在する場合、正常に陰圧を形成することができないため、哺乳を行うことができない。したがって正常に哺乳を行うためには、開いている口蓋裂を閉鎖する必要がある。 また、生後3ヶ月ごろから口唇による捕食運動が始まるため、この時期までに口唇の閉鎖を行うべきである。 哺乳に障害があると、栄養不良による発育不良が生じる可能性がある。よって出来るだけ早期に口蓋床の装着が必要である。口蓋床によって口蓋の穴を閉鎖してやることで哺乳時に陰圧を作り出せるようにし、自力で哺乳できるようにする。
鼻咽腔の閉鎖機能不全がある場合、開放性鼻声となり母音の発音が変化する。したがって言語発達が活発になる2歳までに口蓋裂の閉鎖を行うべきである。
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