出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/03/24 01:01:07」(JST)
万能薬(ばんのうやく)とは、全ての、あるいは非常に広い範囲の病気や怪我に効果があると称される薬のこと。主に広告手法としてや仮想上の概念に用いられる。
万能薬は、その語義からすれば全ての怪我や症状に適用できる薬ではあるが、21世紀初頭の現代における薬学は、そのような薬の存在には否定的である。病気一般を取ってみても、様々な要因によって発生しており、その中には相反しあう理由で発生しているものも少なくないからである。
ただ、こういった薬の概念は古くから医療に携わる者の、あるいは大衆全ての夢でもある。このため大衆薬には、万能薬として開発ないし宣伝されたものが数多くある。例えば戦前から虫刺されなどの外用消炎薬としてロングセラーとなっている金冠堂のキンカンも、当初はそのような万能薬として開発されたものであった。正露丸も、様々に適用できるという効能を謳った。清涼飲料水のコカ・コーラも、アメリカ合衆国における万能薬の流行中の副産物であった。
しかし、先に書いたとおり薬学の上では文字通りの「万能」な薬は存在し得ない。例えば傷をたちどころに治す薬があったとして、それが細胞分裂を促して負傷個所の再生を促す性質のものである場合は、細胞を本来の機能から逸脱させ加速的に分裂させる機能と、傷が治った時点で細胞の異常増殖を停止させ普段の状態に戻すという、全く逆のプロセスが求められ、また傷以外の場所に付着して異常増殖を発生させた場合は肉腫以外の何物でもなく、一つ間違えば毒薬になってしまう。また感染症を回避するために過剰に免疫反応を高めても、アレルギーを起こし易くなる問題もあるなど、程々にしておく必要もある。
とはいえ、万能薬に近い性質は求めることは可能である。これは「生物の体に自然に備わった治癒力を高める」というコンセプトで、ヒポクラテスの時代からの医術の基本方針の一つである。例えば、栄養素の豊富な滋養強壮薬、アダプトゲン(adaptgen)、上薬(中国の医薬書『神農本草経』の分類)などがある。
また、酒類は「百薬の長」と呼ばれ、笑いなど精神的な活動の精神衛生に対する、ひいては体全体への好影響なども「万能性がある」と呼べるだろう。ただ酒類も飲みすぎればアルコール依存症の問題を引き起こすし、長時間激しく笑えばそれだけでも体力を消耗する(というより無理に笑わせ続ければ一種の拷問である)。こちらも程々が肝心と言えるだろう。
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