出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/05/10 13:51:35」(JST)
コイ目 | |||||||||||||||||||||
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群泳する錦鯉 Cyprinus carpio
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分類 | |||||||||||||||||||||
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コイ目(Cypriniformes、Carp)は、硬骨魚類の分類群の一つ。6科で構成され、コイ・フナ・タナゴ・ドジョウなどの淡水魚を中心に、およそ4,000種が所属する大きなグループである。中でもコイ科は世界で約3,000種が知られ、魚類で最大の科を構成する。食用あるいは観賞魚として利用される種類も数多く、人間にとっても馴染み深い分類群となっている。
本稿では分類群としてのコイ目の構成、およびコイ類全般の特徴について記述する。日本を含む世界各地に分布するコイ科魚類の1種、コイ(Cyprinus carpio)および関連する文化については、コイの項目を参照のこと。
コイ目には2006年の時点で3,200を超える種が記載され、魚類の目の中ではスズキ目(約1万種)に次いで2番目に大きな一群となっている。現生の魚類2万8,000種の1割以上、淡水産種(約1万2,400種)に限れば四分の一以上がコイ目の仲間で占められる[1]。1994年の時点(約2,600種)[2]から10年余りの間に新たに600種以上が新種記載されるなど、分類の拡大傾向が続いている。
所属する魚類はほぼすべてが淡水魚で、熱帯から寒帯にかけての河川や湖沼、さらには山岳地帯の渓流に至るまで、その生息域は幅広い。ユーラシア大陸・北アメリカ大陸・アフリカ大陸および周辺の島嶼地域を中心に繁栄する一方、南アメリカ大陸には分布しない。強酸性の湖にも生息できるウグイ[3]など、水質の悪い環境への適応もしばしば認められる。成魚の大きさは1cm程度の超小型種から3mに達するものまでおり、体色・食性・繁殖形態なども多種多彩である。
コイ目魚類に共通する重要な特徴として、咽頭歯の存在がある。本目の魚は口の中に歯(顎歯および口蓋歯)をもたず、喉の部分に咽頭歯と呼ばれる歯が発達している。咽頭歯は大きく発達した咽頭骨に形成される。咽頭歯の本数や配列、成長段階での形成過程は詳細に調べられており[4]、特にコイ科では重要な分類形質として利用されている。
多くの種類は口ヒゲをもち、上顎を突き出すことができる。頭部には鱗がない。鰭は棘条をもたず軟条のみからなるが、一部の種類の背鰭には棘条に似た頑丈な鰭条がみられる。背鰭は1つだけで、ドジョウ科の一部を除いて脂鰭を欠く。口蓋骨は内翼状骨と接続する。下咽頭骨に形成された咽頭歯は、パッド状に拡張した基後頭骨突起とかみ合い、飲み込んだ餌はこの部分ですりつぶされる。
コイ目はカラシン目やナマズ目などとともに骨鰾上目と呼ばれるグループに属し、この仲間に共通する特徴としてウェーベル氏器官(ウェーバー器官とも)と呼ばれる独特の構造を有している。ウェーベル氏器官は変形した4つの脊椎骨によって構成され、内耳と浮き袋を連絡し、脳に音を伝える機能をもつ。
コイ目は2上科6科で構成される[1]。コイ目は同じ骨鰾上目のネズミギス目・カラシン目・ナマズ目・デンキウナギ目と近縁である。近年、アメリカ国立科学財団(NSF)によってコイ目の詳細な系統解析プロジェクト(Cypriniformes Tree of Life、CToL)[5]が進められるなど、本目の生物多様性を解明するための努力が続けられている[1]。
コイ科 Cyprinidae は約3000種を含み、淡水魚として最大の科となっている。メキシコ南部までの北アメリカ、アフリカおよびユーラシア大陸に分布する。ほぼすべてが淡水産であるが、ごく一部に汽水域に進出する種類が知られる。多数の水産重要種を含み、アクアリウムなどで飼育される観賞魚も多い。ゼブラフィッシュ(Danio rerio)など、一部の魚種は生物学における重要なモデル動物として利用されている。本科に所属するパーカーホは、コイ目中の最大種で3mに及ぶこともあるが[1]、一般的なコイ科魚類は体長5cm未満である。咽頭歯は1-3列で、各列とも8本を超えることはない。多くの種類では唇は薄く、ひだや突起はない。上顎はほぼ完全に前上顎骨のみによって縁取られ、前に突き出すことが可能である。コイ科魚類の最古の化石は、アジアにおける始新世の地層から産出する[1]。
次の亜科に分けられる。
ドジョウ上科 Cobitoidea は4科99属842種で構成される。フクドジョウの仲間はかつてドジョウ科に所属していたが、現在ではタニノボリ科に移されている。間在骨(opisthotic)を欠き、眼窩蝶形骨が上篩骨・篩骨複合体と接続するなどの特徴がある。
ギュリノケイルス科 Gyrinocheilidae は1属3種からなり、東南アジア山岳地帯の渓流に分布する。いずれも藻類のみを摂食し、観賞魚として人気のある種類である。
咽頭歯および口ヒゲをもたない。口は下向きで吸盤状に変化しており、岩などに張り付くことで急流をやり過ごす。鰓の開口部は小さく、2列のスリット状になっている。
サッカー科(ヌメリゴイ科) Catostomidae には4亜科13属72種が属する。ほとんどの種は北米に分布するが、Catostomus catostomus はシベリア、イェンツーユイは中国にも分布する。体長1mに達する大型種を含む。ほとんどの種類は底生魚で、口は下向きについていることが多い。始新世から漸新世にかけて化石属が知られている。咽頭歯は1列16本以上。唇は厚く肉質で、ひだや突起をもつものが多い。上顎は前上顎骨と主上顎骨によって縁取られる。
ドジョウ科 Cobitidae は2亜科26属177種で構成され、ドジョウ・シマドジョウなどが所属する。日本を含めたユーラシア地域およびモロッコに分布し、特に南アジアで多様な種分化が認められる。底生性で、体長は最大種で40cmほどになる。Pangio 属(クーリーローチ)や Botia 属(クラウンローチ)など、観賞魚として知られる仲間も多い。本科は Cobitididae と綴られることもあるが、現在ではこのアルファベット表記は受けいれられていない[1]。
体は細長いか、あるいは紡錘形。口はやや下向きで、3-6対の口ヒゲをもつ。眼の下にトゲ状の突起をもつ。咽頭歯は一列。
タニノボリ科 Balitoridae は2亜科59属590種で構成され、ユーラシア地域に広く分布する。フクドジョウ亜科はかつてドジョウ科に含められていたが、ウェーベル氏器官の形態上の特徴から、現在ではタニノボリ亜科と併せて単系統群を構成するとみられている。590という種数は概算値であり、有効魚種の全体的な再検討が望まれている。新種の記載も近年相次いでおり、多くの未発見種が存在すると考えられている。
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