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カイウサギ | |||||||||||||||||||||||||||
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ペットのカイウサギ
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||
カイウサギ(飼兎) | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Domestic Rabbit |
カイウサギ(飼兎)は、ウサギの1種アナウサギ Oryctolagus cuniculus を原種とする家畜である。ペットとして家庭で飼育するものはイエウサギ(家兎)とも呼ぶ。
毛用、肉用、実験用動物やペットとして利用されている。
(品種リスト:List of rabbit breeds)
短毛で小型のウサギ。人にあまり馴れない個体と友好的な個体がある。他の品種より小さいが、全てのウサギと同様に、とても活発で運動したり動き回ったりするのに十分なスペースと広さを必要とする。小型種だから、小さなスペースしか必要ないと思うのは大きな間違いである。
耳が大きく垂れているのが特徴。イングリッシュ・ロップ(体重、4.5–5.0 kg)は、19世紀のビクトリア朝、イギリスで人為的に最初に選択的育種で改良された品種。ロップ種の原種である。カイウサギの古い品種の1種とされる。この長い耳を保護する為、比較的大型のケージや小屋が必要である。そして、この大きな長い耳の為、他のカイウサギ種より体温調整が難しい品種で知られている。本来は中型のウサギであるが、品種改良された関連品種に、オランダ原産のホーランド・ロップ(体重、0.91–1.36 kg)や長毛種でアメリカ原産のアメリカン・ファジー・ロップ(体重、1.4–1.8 kg)のように小型になっているものも多い。フランス原産のフレンチ・ロップ(体重、4.5 kg)は、イングリッシュ・ロップにフレミッシュジャイアントとホーランドロップを交配した品種。ロップ種は、他の品種と比べて顔が丸い。性格はおとなしく、好奇心があり、人にもよく懐く。
目の周りに特徴のあるアイラインを持つ小型のウサギ。体重(0.91–1.36 kg)。原産国ドイツ。ドワーフホトの原種Blanc de Hototは、中型で同様の黒いアイラインがある。1900年初期フランスで、食肉・毛皮用に品種改良された。ドイツのブリーダーが、Blanc de Hototとネザーランドドワーフ等を交配し小型化させ品種改良した。1984年、米国ラビットブリーダーズ協会(ARBA)によりドワーフホトの黒いアイラインの品種は認定された。2006年、アイラインがチョコレート色のドワーフホトがARBAで認定される。性格など、ネザーランドドワーフにちかい。近年の品種である。
短毛種だが毛の密度が濃く、ベルベットの様な毛質、毛皮用にも使用れる中型のウサギ。体重(2.7–4.5 kg)。1919年、フランス原産。ウサギの中で、最も賢い品種と言われ[1]、性格は穏やか、人に懐きやすいく、人間とも一緒に遊ぶ。
原種はアンカラ地方(現トルコ)のウサギ。18世紀半ば、フランス王室でウサギをペットとして飼う事が流行、19世紀後半にはヨーロッパ各国へその流れと共に輸入され現地で品種改良された。被毛を利用するため改良された長毛種。性格は、おとなしく従順。
カイウサギはアナウサギ系列の育種や改良が多いが、フレミッシュ・ジャイアントはノウサギ(ヘアHare)を原種として品種改良された。ベルギー原産。ウサギの中ではとても大きいサイズの大型種になる。体重 6.4–11.3 kg。性格は、寛大で従順的であるが、この様になるには頻繁に人間との関わりを持つ事が必要。他のウサギと同様に、無責任で間違った扱い方をすれば突然怖がったり攻撃的になる事もある。大型種は、扱う時に背骨の配列に注意する必要がある。
他にも様々な改良品種がある。日本で「ミニウサギ」として流通しているものは、ブリーダー、ペットショップが売買の便宜上に付けた名前であり 、ミニウサギという品種はない。「ミニ」と名づけられているが、交配した品種系統により、固体は大人になると中型~大型になる場合がある。
日本における飼育の始まりは、欧州等を原産とするアナウサギを改良して近世以降に輸入・飼育されるようになったものであるとされる。移入された時期は天文年間(16世紀前半)で、オランダ人がペットとして日本へ連れて来たと伝えられているが、正確な移入時期と経緯はまだ確定されていない。
江戸時代中期には、ウサギを飼うことはある程度普及しており、人見必大著『本朝食鑑』では体毛が白色で赤い目をしたウサギが飼育され、人によく馴れることが書かれている。また、小野蘭山著『本草綱目啓蒙』や山本亡羊著『百品考』などには、ウサギが家で飼育されていることが書かれている[7]。喜多川歌麿の浮世絵『浮世七ツ目合』にはペットとして飼われているウサギが描かれている。当時、ペットのウサギは高価だったため裕福な商人などが飼っていた[8]。
明治になると軍需のための食肉毛皮需要によりウサギ飼育が非常に盛んになり、1872年に在来と外国の混血から生まれた更紗模様のある種雄は200–600円(現在の価値で約190~560万円)で売られ、種付けは2–3円(現在の価値で約19000~28000円)/回であった。子ウサギはコロと呼ばれ10円(現在価値約90万円)以上した(ウサギバブル。『風俗画報』310号 明治38年2月10日 在三河安城、久永章武による)。このため1873年に東京府(現・東京都)布達、兎取締ノ儀(1876年改正、兎取締規則)で頭数の届出、1羽1円の税金、無届1羽につき月2円の納入とされ、1879年に廃止されるまで続いた。また、東京府は1876年1月に『「兎会集会」禁止条例』を発布し大人数で集まりウサギを競売することを禁止したものの、法の目をかいくぐり、密かに闇取引が行われているところもあった[9]、という。こうした規制の背景には空前のウサギ・ブームにより販売や飼育に手を出し、やがては破産する者が現れ、また奸商(不正な手段で利益を得ようとする悪徳商人)や、ウサギの毛色が珍しい程、高値になることから白毛の色を柿色に染めるなどして金儲けする輩も出現[10]。更にウサギの売却価格をめぐり親子がもめてる間にウサギが突然死したため喧嘩になり殺人事件に発展する[11]などの社会問題にまで発展したためだった。太平洋戦争中、日本はアンゴラウサギの飼育頭数が世界一になったことがあるが、これは食糧の確保及び兵士の防寒着を作るために飼育が奨励されたためである。
日本の白い体毛・赤い目という特徴を持つウサギは「日本白色種」という品種で、明治の頃にニュージーランドホワイト種から作られた。小学校などでの飼育もこの頃から昭和にかけて広まりをみせた。このウサギは近年では「ジャパニーズホワイト」とも呼ばれている。
20世紀末ころより、ウサギの脂質代謝や冠動脈の動脈硬化病変の発生部位や病変心機能がヒトと似ていることから、病態医化学の研究のための研究のため国からも助成金が支出され研究改良が続けれられている。
カイウサギ(ペット)として品種改良されたウサギは、人に慣れるといった特性を有し、トイレも躾しやすく、他のペット(猫や小動物、よく躾された犬)とも仲良くなれる。飼育方法と注意点は後述する。
適切で良い飼育環境の室内飼いの場合、8-12年、生きるといわれる。ウサギは体温調節が難しく、品種によっては、高温で体温が上がりすぎて屋外飼いに適さず死に至る事もある。しかし、犬猫と違い鳴かないからと言って、室内のケージに閉じ込めて置くのはウサギにとっては不健康な環境である。カイウサギ(ペット)の歴史が長い欧州などの欧米では、屋外のウサギ小屋で飼うのが一般的である。他の生物や人間と同様、日を浴びる事は重要である。健康上の理由からも、ウサギが必要とするだけ日光浴をさせるべきだとされる。本来、自然界では日中、広大なテリトリーエリアを駆け回っている生態である。ウサギは、飛んだり走り回ったりする事がとても大好きで、ウサギを健康で幸せにする為に運動は大変重要である。室内飼いの場合、運動不足から食欲低下やストレスや病気を招き、不本意な死に至らせない様、最低限サークルで囲った専用の飛び回れる十分なスペースを設けることが望ましい。住む環境が変わっただけで、固体により時には死んでしまう場合もある。とても繊細な動物でもある。草食動物のウサギは、外敵から身を守る特色の1つに、狙われない様に自分の弱さ・病気を見せないという我慢強さがある。しかしこの為に、体調異変・病気・ストレスなど、飼い主が気づける頃には手遅れになっている事も多い。サークル飼いができずやむをえずケージ飼いをする際の注意点については後述。
抱かれることに慣れていないウサギは、安易に抱くとウサギが抱きかかえられることに恐怖心を持って本能的に暴れ蹴り出し、落下する場合がある。 ウサギの骨はもろく、数十cmの高さからでも骨折する危険があり、ウサギが防衛で相手を蹴る行為もウサギ自身に危険で骨折したりする恐れもある。ウサギの骨折は回復困難である。正しいウサギの抱き方は、犬猫同様に片手で身体全体を抱え、もう一方の手でお尻を支える。ウサギの耳には神経が集中しており、生きているウサギの耳を持つ持ち方は、ウサギに苦痛を与える行為とされる[12][13]。(耳を持つのは、狩猟や食肉用に殺したウサギを扱う場合である。)
カイウサギは新鮮な水、干し草(チモシー、オーツ等)と生野菜を主食とし、固形ペレットは補助食用として与えるのが望ましい。干し草は消化器官や胃腸の働きを助け毛玉症や胃腸内鬱滞などにかかりにくくする他、不正咬合の予防にもなるためウサギにとって不可欠である。干し草は24時間食べ放題にし不定期に食せる状態にする。生野菜はよく洗い水気を切ったものを与える。野菜の種類によっては毒性のあるものや高糖分のものもある。毎日濃緑色あるいは濃黄色の野菜の中で異なる3–5種類を選ぶ。
ウサギの食糞行為は、正常な行為であり、新鮮であれば問題ない。
アルファルファの芽、、ビーツの若葉、ブロッコリー、芽キャベツ、ニンジンの葉、コラードの若葉、エンダイブ、パセリ、ドクダミ、パクチ、コスチャ、ケール、キャベツの外側の葉、キイチゴの葉、カモジグサ類、シバムギ、エンドウのさや(エンドウではない)、びわの葉、カボチャ、カボチャの葉、タンポポの葉、カブの葉、アスパラガス、カリフラワーの茎・葉、小松菜、クローバー、ミントの葉、マスタードグリーン、オクラの葉、ペパーミントの葉、ピーマン、パプリカ(赤、黄、緑)、ラズベリーの葉、スクワッシュ、ズッキーニ、バターナッツ、、ロメインレタス、アスパラガス、ワイルドストロベリー、バジル、コエンドロの葉、ヤロー(西洋ノコギリソウ)、コハコベ、ラベンダー、オレガノ、セージ、フェンネル、ディル、スイバなど。
絵本やアニメに登場するウサギはニンジンが好物として描かれることが多く、事実ニンジンの根はよく食べるが、高糖分なので時々与える程度にする。キャベツはガスを溜めるのであまり与え過ぎないほうがよい。
リンゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、パイナップル、メロン、パパイヤ、モモ、プラム、ナシ、ラズベリー、バナナ、イチゴ、ワイルドストロベリーなど。果物は基本的に高糖分なので普段は与えず病気のときなどに与えるとよい。
ひまわり、カレンデュラ(キンセンカ)デージー(ヒナギク)、マリーゴールド、キンレンカ(ナスタチウム)、アザミ、シオン属、バラ、マーガレット、ゼラニウム、ルリジサ(ボリジ)など。農薬や他の化学製品が使用されていない場合に限る。[14]
アカシア、ヒヤシンス、スズラン、スノードロップ、チューリップ、アヤメ属、トリカブト、ポピー、ミゾカクシ属、ナツシロギク (フィーバーフュー)、デルフィニウム属、イチリンソウ属、ジギタリス、カキドオシ、クレマチス、など。[15]
アボカド、タマネギ、ニンニク、ニラ、ショウガ、ホウレンソウ、りんごの種、アボカド、トマトの葉、カカオ(チョコレート、ココア)、カフェイン(コーヒー、紅茶、炭酸飲料水など)、塩分、糖分、香辛料、ナッツやタネ類(人間用)、生卵の白身、ルバーブ(葉の部分も)、などは中毒症状を引き起こす。
ケージ飼いでは運動不足や食欲低下、ストレスを招くため、最低限サークルで囲った専用の飛び回れる十分なスペースを設けることが望ましい。ケージ飼いをするしかやむを得ない場合は、最低背伸びできる十分な高さがあり、横は十分に伸びて寝そべることができる、最小でも体長3倍程度の広さのあるものを選ぶことが必要。ケージ飼いの際は、毎日必ずケージから出して広い場所で最低数時間は飛び回り運動できる時間を与え、そして日光浴もさせるなどの配慮が望ましい。
サークルは、犬用など高さ70 cm以上あるものが望ましい。ウサギのジャンプ力は驚くべきもので 1 m は軽くジャンプする個体(小型種でも)も多いため、個体に合わせ安全性が確保できる高さのあるものを選ぶことが望ましい。サークルは8–10パネル続きのもの、もしくは2つのサークルをつなぎあわせるなどしてできる限り広い範囲で囲い走り回れるスペースを確保したい。床の汚れ、傷防止のためにラグ等を敷くと良い。サークル内には清潔な水、トイレ、24時間十分に食せる干し草、トンネル、かじったり掘ったりできる無着色の安全なおもちゃをいくつか入れることも忘れてはならない。大きなスペースを囲えない場合は、ケージ飼い同様に1日最低数時間は室内に解放し、広い場所で運動できる時間を設け、日光浴もさせる。
新鮮な水が必要。専用フード(ペレット)や生野菜等の食餌以外に消化作用に大量の繊維質を必要とするため、牧草(ペット店で市販の干し草:チモシー、オーツ)は24時間食べ放題の状態にする必要がある。牧草を食すことで胃腸が常に動いている状態になるため、胃腸内鬱滞や毛玉症などの病気予防になり、お腹からガスを逃がす働きがある。また歯が常に伸びるウサギに多い不正交合の予防にもつながることから牧草と生野菜をウサギの主食として扱い、ペレットは補助食として扱う。
健康管理は毎日の掃除、運動、飼い主との交流時間以外に歯や糞のチェック、毛のブラッシング、定期的な爪切りなどをし毎日の健康チェックを行う。獣医を活用する場合、ウサギの専門獣医師による定期検診を行ったり(犬猫病院ではウサギを診られない医師が多いため、評判の良いウサギの専門獣医師を探す必要がある)、5歳以上で高齢になるため、5歳以上になったら定期検診時に年1回レントゲンと血液検査で健康状態を把握する事も可能ではある。
イヌやネコを飼うときの注意と同様、人間とは違って一度に複数個体が生まれるのが通常であることを考え、繁殖計画がないのであれば、雄雌を共に生活させないなどの注意をすること。去勢手術を行う場合は満1歳以上が好ましい。去勢によって無計画妊娠を防ぐ以外にウサギの健康状態を保つのに有効という考え方もある。イヌやネコの場合と同様に、去勢した個体は高齢になったときの子宮癌や睾丸の癌予防の効果が期待でき、スプレイ等の行為も軽減されることが多い。
本来、ウサギは群れを形成し生活する生態からも、多数飼いの場合、グルーミングをお互いがし合うため、病気予防につながり長生きしやすくなるといわれる。元々単独飼いしていたウサギに同居するウサギを増やしたい場合は、時間をかけてお互いを慣らす必要があり、いきなり一緒にするのは危険なので配慮する。お互いをケージ越しに置き2週間程度様子を窺う。この時、ケージは、お互いのウサギの歯や爪が相手に届かないように、必ず8–10cm離して置き、ウサギが暴れてもその隙間が狭くならないようにする。万が一ケージ越しに噛み付くと、その後の関係改善が困難になる。慣れた頃に、お互いの臭いがない場所に2分間程度一緒にする。喧嘩をするようであればすぐに引き離す。これを毎日少しずつ行い、徐々に時間を増やし、数週間繰り返していけば大抵の場合仲良くできる。また、いちど仲良くなったウサギを引き離すのは好ましくないとされる[誰?]。顔合わせを開始した時点から2週間以上経っても喧嘩を繰り返すようであれば、相性が悪い場合が殆どなので、検討する必要がある。無理に続ければお互いのストレスになりストローク等を引き起こす可能性がある。相性が悪い場合は、双方が接触しない場所を設け、単独飼いにする。
室内飼いの場合、電気コードやケーブル類や紙類、家具・柱など、ウサギは何でも噛むので気よつける。ストレスから、自分の毛を毟りとる行為をする。
実験用の動物として長い歴史を持つ。ウサギの耳は毛細血管を生きたまま観察しやすいため薬品や化粧品の安全性のテストに使用される。また、ウサギの脂質代謝や冠動脈の動脈硬化病変の発生部位や病変、心機能がヒトに類似している(マウスやラットのそれはヒトと異なる)ため、メタボリックシンドローム、高脂血症、動脈硬化などの成人病の解明のためのモデル動物として注目され、現在も改良が続けられている。さらに、糖代謝異常(糖尿病)の研究のため他の成人病との関連から糖代謝異常(糖尿病)などのモデル動物としての改良も進められている。そのほか、動物工場として医療で有用な抗体作成に利用される。 このことについては、各国で様々な議論を呼んでいる。日本で主に使用される品種は、ジャパニーズホワイト、ニュージーランドホワイト、ダッチである。
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リンク元 | 「アナウサギ」「Oryctolagus cuniculus」 |
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