心室瘤

出典: meddic

ventricular aneurysm
心臓瘤 cardiac aneurysm
左室瘤、左心室瘤


概念

  • 左室の表面が限局性に突出し、同時に内腔の膨出を伴った状態、あるいは左室造影上収縮期、拡張期の全経過を通じて本来の左室腔より膨隆しているものを心室瘤と呼ぶ。

病型

  • 好発部位:左室前壁・心尖部
  • 頻度:急性心筋梗塞例の5-10%に見られる。
  • 予後:急性期には破裂することがあるが、慢性期には破裂することはないが、不整脈のfocusとなり致死性不整脈を起こしたり、壁在血栓を形成し血栓塞栓症を発症しうる。
  • 仮性心室瘤:心室壁の破裂に伴う血栓の周辺部が心嚢と癒着・線維化して瘤壁を形成
  • 好発部位:後壁に好発
  • 予後:破裂の危険が高く緊急手術の適応

疫学

  • 心筋梗塞をきたした患者の10%前後に発生

病因

  • 心筋梗塞(最多)
  • 先天性・外傷性・細菌性心内膜炎による心筋膿瘍

検査

  • 心エコー
  • 心電図:心筋梗塞発症後に異常Q波が出現する誘導でST上昇が持続するときには、壁運動異常(akinesis/dyskinesis)が生じていると考えられ、心室瘤が疑われる。(ECGP.177) (普通ST上昇は数日の経過で正常化(cf.心筋梗塞#心電図の異常波形と時間経過 )

治療

手術療法

  • 心室瘤切除術
  • ドール手術:心筋梗塞後左室瘤に対する左室形成術
  • Dor V, Saab M, Coste P, Kornaszewska M, Montiglio F., Left ventricular aneurysm: a new surgical approach., Thorac Cardiovasc Surg. 1989 Feb;37(1):11-9.
  • PMID: 2522252


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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/05/06 11:59:42」(JST)

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和文文献

  • 心室瘤の治療 (冠動脈疾患(下)診断と治療の進歩) -- (心筋梗塞(ST上昇型)の臨床)
  • 山下 裕正,尾崎 重之
  • 日本臨床 69 (1010増刊9), 262-266, 2011-11
  • NAID 40019061933
  • 致死的心室頻拍を合併した膜性部心室瘤の1例
  • 赤司 良平,小宮 憲洋,恒任 章,深江 学芸,芦澤 直人,前村 浩二,荒川 修司,松本 雄二,河野 浩章,早野 元信
  • 日本内科学会雑誌 100(1), 188-190, 2011-01-10
  • NAID 10029095868
  • 心筋梗塞と虚血の心電図 : V.心筋梗塞心電図の経時的変化

関連リンク

心室壁が菲薄化して瘤状に突出した部分を心室瘤という。心室瘤は,瘤壁に筋層が存在している真性心室瘤と,筋層が欠落し瘤壁が心膜組織(epicardium,pericardium)からなる仮性心室瘤に大別される。心室瘤は心筋梗塞症に合併する ...
(description)サイト共通 ユーザ用 ... 5年前に心筋梗塞を起こし、先日の検査で左心室瘤が少し膨らんできているといわれました。心室瘤は膨らんで来ると、心機能が落ち、不整脈の原因になったり、血栓ができて脳梗塞を起こすことも ...
心機能の悪化により呼吸不全、血圧低下が急激に出現しますので、その治療を含め、なるべくはやく手術により心室中隔に開いた穴を閉じる手術が必要です。全身状態が安定している場合はすこし時間を置いて心筋梗塞の影響がとれて ...

関連画像

粘液瘤,心室粘液瘤心肌梗塞并发左心室室壁瘤84心室瘤(心尖部).jpgE108aneurysmofinfpost3 9心筋梗塞と診断される半年前 心室瘤の左室造影


★リンクテーブル★
国試過去問100D039」「106I079」「103D001」「097B023」「101F028
リンク元急性心筋梗塞」「ST上昇」「胸壁拍動」「dyskinetic bulge」「heart aneurysm
拡張検索偽性心室瘤」「真性心室瘤
関連記事心室

100D039」

  [★]

  • 次の文を読み、39、40の問いに答えよ。
  • 58歳の男性。夜間の呼吸困難のため救急車で搬入された。
  • 現病歴: 4年前に狭心症と診断され、アスピリンと硝酸薬とを服薬していたが、半年前から中断していた。3か月前から駅の階段を昇るとき軽度の胸痛を感じていた。2日前冷汗を伴う前胸部絞扼感が数時間持続し、自宅での安静で軽快した。しかし、昨夜就寝後呼吸困難のため覚醒した。横になると呼吸困難が再発するので眠れず、午前3時に来院した。
  • 既往歴: 8年前に糖尿病を指摘された。
  • 現症: 意識は清明。身長169cm、体重75㎏。呼吸数28/分。脈拍104/分、整。血圧102/88mmHg。頸静脈の怒張を認めるが、心雑音はない。両側下肺野にcoarse cracklesを聴取する。右肋骨弓下に圧痛を認める。両側下腿に浮腫を認める。
  • 検査所見: 尿所見: 蛋白1+、糖2+。血液所見: 赤血球430万、Hb14.2g/dl、Ht42%、白血球9,500、血小板30万。血清生化学所見: 血糖150mg/dl、HbA1c8.8%(基準4.3~5.8)、総蛋白7.0g/dl、尿素窒素26mg/dl、クレアチニン1.2mg/dl、総コレステロール224mg/dl、トリグリセライド190mg/dl、総ビリルビン0.8mg/dl、AST60単位、ALT34単位、LDH620単位(基準176~353)、CK960単位(基準10~110)、Na148mEq/l、K4.6mEq/l、Cl103mEq/l。経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)96%(酸素3l/分投与下)。入院時の胸部エックス線写真と心電図とを次に示す。
  • この患者の病態の原因はどれか。


心電図

  • 異常Q波:I, aVL, V1-V3
  • 陰性T波:I, aVL, V2-V6
  • R波減高:V4-V6
  • ST上昇:V1-V4
  • 所見
心筋梗塞#心電図の異常波形と時間経過 PHD.105
ST上昇が残存

胸部単純X線写真

心筋梗塞の場合、上昇してくる生化学マーカー

  上昇してくる時間
AST 6-12時間
LDH やんわりと出てくる。
CK  (CK-MBの場合) 3-4時間
[show details] [正答]
※国試ナビ4※ 100D038]←[国試_100]→[100D040

106I079」

  [★]

  • 75歳の女性。2時間持続する激しい前胸部痛を主訴に来院した。意識は清明。脈拍88/分、整。血圧104/88mmHg。呼吸数16/分。心音と呼吸音とに異常を認めなかった。心電図のV1-V5誘導でST上昇を認めたため、緊急入院し、治療を行った。入院後3日、突然の呼吸困難を自覚した。脈拍104/分、整。血圧90/70mmHg。呼吸数24/分。心音の聴取で、入院時に認めなかった全収縮期雑音を認める。
  • この時点の病態として考えられるのはどれか。 2つ選べ。


[正答]


※国試ナビ4※ 106I078]←[国試_106]→[106I080

103D001」

  [★]

[正答]


※国試ナビ4※ 103C031]←[国試_103]→[103D002

097B023」

  [★]

  • 急性心筋梗塞患者で心雑音が新たに出現したときに考えるべき合併症はどれか。
  • a. (1)(2)
  • b. (1)(5)
  • c. (2)(3)
  • d. (3)(4)
  • e. (4)(5)
[正答]


※国試ナビ4※ 097B022]←[国試_097]→[097B024

101F028」

  [★]

  • 急性心筋梗塞の患者に新たに収縮期心雑音が出現した。
  • 考えられる合併症はどれか。
[正答]


※国試ナビ4※ 101F027]←[国試_101]→[101F029

急性心筋梗塞」

  [★]

acute myocardial infarction, AMI
心筋梗塞

症状

  • 胸痛:デルマトームC7-T1への放散痛(PHD.179)。デルマトームT1-T4への放散痛(IMD.418)→胸骨裏側、左上肢の尺側側、頚部、下顎部
痛みは虚血により生じた代謝産物(アデノシン乳酸)が局所の神経終末を刺激することで生じる

PDH.179

  • 心筋梗塞の症候
特徴的な疼痛 持続性で、ひどい痛み、典型的には胸骨下痛
交感神経による作用 発汗
皮膚が湿って冷たく感じられる
副交感神経による作用 悪心・嘔吐
倦怠感
炎症反応 中程度の発熱
心臓の所見 IV音ギャロップ(うっ血性心不全があればIII音も)
その他 運動異常を伴う膨隆(前壁梗塞なら)
心膜摩擦音(心膜炎があれば)
収縮期雑音(僧帽弁閉鎖不全症や心室中隔欠損があれば)
肺のラ音(うっ血性心不全があれば)
頚動脈の拡大(右室梗塞)

身体所見(ST-segment elecation MI HIM.1533)

  • 不安、不穏、ベットの上で場所を変えたり身体を曲げたりして痛みを和らげようとしている。
  • 蒼白
  • 四肢の冷感
  • 30分以上持続する後胸骨痛 + 発汗 → ST上昇心筋梗塞を示唆
  • 多くの患者は最初の1時間は脈拍、血圧、正常
  • 前壁梗塞の患者の1/4は交感神経が興奮 → 頻脈、高血圧
about one-fourth of patients with anterior infarction have manifestations of sympathetic nervous system hyperactivity (tachycardia and/or hypertension)
  • 下壁梗塞の1/2は副交感神経興奮 → 徐脈±低血圧
up to one-half with inferior infarction show evidence of parasympathetic hyperactivity (bradycardia and/or hypotension)

検査

血液生化学検査: マーカー

  上昇 正常化
ミオグロビン 1-2時間 2-3日
H-FABP 1-2時間 24時間
WBC 2-3時間 7日
CK-MB 3-4時間 3-7日
トロポニンT 3-4時間 14-21日
心筋ミオシン軽鎖I 4-6時間 7-14日
AST 6-12時間 3-7日
LDH1,2 12-24時間 8-14日
CRP 1-3日 21日

時系列

→→→→→→→→→→→→→→→→→→
myo W TnT myo AST LDH CRP
H CK
2-3時間 ~~~~~~半日~ 1日  

心電図

PECG.168
  • (超急性期:発症直後~数時間)T波先鋭化、非特異的ST上昇
  • (急性期 :数時間~12時間)特異的ST上昇(上に凸)、R波減高、異常Q波出現
  • (亜急性期:24時間~1週間)ST上昇は減高、T波が陰転化(冠性T波:左右対称な陰性T波)。しばしばQT延長を伴う。
  • 全層虚血でのST上昇は対側誘導でST低下が見られる。
  • 異常Q波 + ST上昇 が数週間持続 → 高度の壁運動の異常 → 心室瘤の形成を示唆

診断

  • 心筋梗塞を疑ったら診察は、病歴、心電図変化、心筋マーカーの上昇で行う。心エコーで心筋壁の障害が認められ、CAGで冠動脈の閉塞または狭窄所見が見られたら確実(YN.C81)

治療

初期治療

PHD.187 ガイドライン1
  • アスピリン:治療開始から退院後も継続的に服用。
  • 未分画ヘパリン:冠動脈の開存性を保つ。
  • βブロッカー:酸素需要減少。拡張期の延長による障害心筋への灌流を改善。静脈投与→経口投与。
禁忌:喘息、低血圧、著しい徐脈
  • 硝酸薬:前負荷・後負荷軽減による心筋酸素需要量低減、冠攣縮の解除・予防、側副路の血流増加。 
使用不可:収縮期血圧<90mmHg or 通常血圧より30mmHg以上血圧低下、高度徐脈(<50bpm)、頻脈(>100bpm)、下壁梗塞・右室梗塞合併疑い例
禁忌:勃起不全治療薬服用後24時間以内
  • 未分画ヘパリン:PCIが施行される場合にはヘパリンをactivated clotting timeが250を越えるように使用。tPAを使用した血栓溶解を行った後にはヘパリン48時間投与し、APTTを50-70秒に保つ。
  • 鎮痛薬:塩酸モルヒネ:硝酸薬使用後も疼痛が持続する場合。

再灌流療法

  • 適応:発症後12時間以内 (救急医療パーフェクトマニュアル p.43)
  • PCI
  • 血栓溶解薬
  • CABG

二次予防

  • 一般療法
  • 患者教育
  • 禁煙指導
  • 食事療法:血圧管理、脂質管理、体重管理、糖尿病管理
  • 運動療法
  • 薬物療法
  • 抗血小板薬
  • 脂質異常症治療薬
  • RAA系阻害薬
  • βブロッカー
  • カルシウム拮抗薬:血圧管理や狭心症が他の薬剤でコントロールできない場合に限る(心筋梗塞発症早期での短時間作用型カルシウム拮抗薬投与による総死亡低下に対する有効性が確認されなかったため)。,STEMI患者への短時間作用型ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬投与は通常禁忌。(ガイドライン1)
  • ニコランジル
  • ワルファリン

合併症

  • 心室細動:発症一時間以内に起こりやすい。

機械的合併症

NSU.424 SSUR.397
心筋梗塞の破裂は全心筋梗塞例の2-4%でみられ、3/4の例で左室自由壁破裂、1/4の例で心室中隔穿孔、僧帽弁乳頭筋断裂はごく稀(SSUR.397)。
  • 2週間以内に生じうる
  • 心室中隔を栄養する血流の途絶により中隔の壊死を来たす。左右シャントを生じ、原疾患である心筋梗塞による心不全を増悪させ、前方不全、すなわち低心拍出量症候群をきたす。増悪すれば、心原性ショックに陥る。右室は容量負荷をうけ右心不全をきたすことがある。症状は苦悶、血液低下、尿量減少を来たし、半数例においては心原性ショックが見られる。治療は循環が悪化している場合にはドパミン、ドブタミン、ニトログリセリンが用いられるが一時的であり、大動脈内バルーンパンピングによって循環動態を安定させる。その後、速やかに手術を施行する。循環動態が安定している例では2-3週間後に手術を行う(NSU.424)。手術は心停止下に左室梗塞部を切開して中隔穿孔部をダクロンパッチで閉鎖する。
  • 2. 虚血性僧帽弁不全症(急性:乳頭筋断裂、慢性:乳頭筋機能不全)
  • 乳頭筋断裂の75%は下壁梗塞に合併して後乳頭筋に発生し、残りは前乳頭筋に生ずる。僧帽弁尖の逸脱が起こり急性僧帽弁閉鎖不全症の病態を呈する。原疾患の心筋梗塞による心不全に加え、急性僧帽弁閉鎖不全症により心原性ショックに陥る。治療はIABPを挿入して循環動態を安定化後、僧帽弁置換術を行う。
  • 自由壁破裂は左室に多く、健常部と梗塞部位の境界に多い。病型は急激に大出血するblow-out型とじわじわ出血するoozing型がある。いずれの場合でも出血による心タンポナーデを来たし、低心拍出量の低下、さらに心原性ショックに陥る。症状は血圧低下、意識消失、呼吸停止、徐脈、心停止に至る。治療は直ちにPCPSにより循環の維持を図り(oozing型の場合は心嚢穿刺によるタンポナーデの解除を行う)、開胸手術により出血部のフェルトを用いた縫合閉鎖を行う。
  • 2週間以降に生じうる

ガイドライン

  • 1. 急性心筋梗塞(ST上昇型)の診療に関するガイドライン
[display]http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2008_takano_h.pdf

国試




ST上昇」

  [★]

ST segment elevation
ST segment

原因

EAB.44
  • 全誘導で上昇
  • 一部の誘導で上昇
  • QRSが広い
  • 健常者のST上昇
ECGP.188

疾患とST上昇

心筋梗塞


胸壁拍動」

  [★]

  • 心尖拍動以外の前胸部の異常は駆動をまとめて胸壁拍動という。(手技見えvol1.95)
  • 診察は右傍胸骨、左傍胸骨、胸骨下部を手掌遠位部を用いて行う。(手技見えvol1.95)
  • 傍胸骨部:大動脈:大動脈瘤
  • 胸骨下部:右室:圧負荷(肺高血圧症肺動脈弁狭窄症)、容量負荷(心房中隔欠損症)
胸壁全体:心臓全体:心室瘤


dyskinetic bulge」

  [★]

  • 前壁梗塞 anterior MIでみられる心臓の所見。 (PHD.179) → 心室瘤 ?


heart aneurysm」

  [★]

心室瘤

cardiac aneurysmventricular aneurysm


偽性心室瘤」

  [★]

pseudoventricular aneurysm, ventricular pseudoaneurysm, pseudoaneurysm PAN
仮性心室瘤 
心室瘤


真性心室瘤」

  [★]

true ventricular aneurysm
心室瘤


心室」

  [★]

ventricle (KH)
ventriculus
心房

生理学

  • 循環血液量↑、心室拡張性↑ → 拡張期心室容量↑
  • 循環血液量↓、心室拡張性↓ → 拡張期心室容量↓
  • 末梢血管抵抗↑、心室収縮性↓ → 収縮期心室容量↑
  • 末梢血管抵抗↓、心室収縮性↑ → 収縮期心室容量↓







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