- 英
- fat embolism
- ラ
- fat embolism
- 関
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/12/19 18:30:34」(JST)
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膵炎の後、重篤な脂肪塞栓症により死亡した症例では、肺血管に脂肪組織の遊離を確認した (ERCP=内視鏡的逆行性胆膵管造影、HE染色)
脂肪塞栓症(しぼうそくせんしょう、英: fat embolism、独: Fettembolie)は、脂肪細胞が血管を塞栓させて起こる病気である。
目次
- 1 病態
- 2 原因
- 3 統計
- 4 症状と治療
- 5 著名人
- 6 社会的影響
- 7 プルチェル網膜症
- 8 関連項目
病態[編集]
脂肪細胞に血管を塞栓された臓器が虚血による不全を起こす事が本症の病態である。塞栓される臓器によって様々な臓器不全を起こす。
長管骨の骨折もしくは軟部組織の広範な挫滅を伴う外傷、手術、熱傷、炎症などにより、骨髄もしくは皮下の脂肪組織が遊離し、血管もしくはリンパ管内に流入して循環障害を来すのが脂肪塞栓症である。損傷を受けた静脈系に流入した脂肪滴が肺血管を閉塞し、数時間から数日後に呼吸困難、チアノーゼを呈して肺水腫に陥り、重篤となることがある。
まれに肺を通過して動脈系に入り、脳や腎血管を閉塞することがある。
また、プルチェル網膜症は全身性の脂肪塞栓症と同様に脂肪塞栓によるものである。
原因[編集]
原因は、外傷時に脂質代謝が変化し血液内の脂肪が脂肪滴になるため、あるいは外傷部分の血管から骨髄などの脂肪が入り込むためと考えられている。
全身性の脂肪塞栓症の原因としては、骨折の他に、皮下脂肪組織の挫滅、脂肪肝による障害、急性膵炎、減圧症、広範囲の火傷、糖尿病、骨髄炎などがある。
統計[編集]
骨折時に起きやすい。通常、受傷後12 - 48時間後に発症する。
症状と治療[編集]
塞栓が軽度であれば無症状の事も多いが、たとえば脂肪が肺動脈を塞栓すれば低酸素症を起こし、脳を栄養する動脈を塞栓すれば意識障害等を起こす。最悪の場合、死亡することもある。
全身性の脂肪塞栓症に対しては、ステロイドの大量療法と機械的換気が行われる。
著名人[編集]
社会的影響[編集]
本症は生命に危険がなさそうな骨折患者でも起こり得るが、重症感の無い患者や家族に対しては医療者はインフォームド・コンセント(以下IC)を十分行わない事が多いので、本症で死亡した遺族から医療ミスを疑われやすい。本症を考える事によって重症感と実際のリスクが比例しない病気について認識を深め、重症感に拠らずICを徹底する事が重要である。
プルチェル網膜症[編集]
プルチェル網膜症(英:Purtscher's retinopathy、独:Purtscher-Retinopathie)は、外傷性網膜血管症 traumatic retinal angiopathy、プルチェル症候群 Purtscher's syndrome、プルチェル病 Purtscher's disease ともいう。プルチェル(Otmar Purtscher, 1852 - 1927)はドイツの眼科医である。
眼球以外における外傷、特に頭部に受けた打撲、胸部に受けた圧迫損傷などにより生じる網膜症で、外傷性網膜症 traumtic retinopathy、遠達性網膜障害 distant injury of the retina などとも呼ばれてきた。 現在はその発生病理から外傷、特に骨折による脂肪塞栓を含め、脂肪塞栓による網膜症と広く解釈されている。
主な眼圧所見は両眼の綿花状白斑と静脈拡張である。綿花状白斑は後極部に好発、多発し、融合傾向が見られ、また主幹血管に沿った火炎状出血が認められる。発症後に呼吸困難、頻呼吸を伴う切迫呼吸症候群が起こることがある。
病態、原因、治療については全身性の脂肪塞栓症に準ずる。
関連項目[編集]
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- 肺梗塞
- 閉塞性動脈硬化症
- バージャー病
- 網膜動脈閉塞症⇒眼科学
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- 血栓性静脈炎
- 静脈血栓塞栓症 (エコノミークラス症候群)
- 動脈血栓塞栓症
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)
- 抗血小板剤
- 抗凝固薬
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治療 |
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内科的治療
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心臓作動薬
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抗不整脈薬
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Ia群: プロカインアミド, キニジン
Ib群: リドカイン, フェニトイン
Ic群: フレカイニド, プロパフェノン
II群: 交感神経β受容体遮断薬(プロプラノロールなど)
III群: アミオダロン, ソタロール
IV群: カルシウム拮抗剤(ベラパミル, ジルチアゼムなど)
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心不全治療薬
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利尿薬 | 血管拡張薬 | 強心配糖体 | 強心剤
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狭心症治療薬
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交感神経β受容体遮断薬 | 硝酸薬
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血管作動薬
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高血圧治療薬
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利尿薬 | 交感神経β受容体遮断薬 | レニン-アンジオテンシン系 (ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬) | カルシウム拮抗剤 | アドレナリン作動薬 | 脂質降下薬
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循環器系の正常構造・生理 |
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Japanese Journal
- 症例報告 大腿骨頸部骨折・人工骨頭置換術後の脂肪塞栓による多発性脳梗塞の1例
- 紺谷 智,中村 彰伸,徳海 裕史 [他]
- 臨床神経学 = Clinical neurology 54(8), 648-652, 2014-08
- NAID 40020180911
- 地固め療法後,敗血症から骨髄壊死,脂肪塞栓症を合併し死亡した急性リンパ性白血病
- 大腿骨頸部骨折・人工骨頭置換術後の脂肪塞栓による多発性脳梗塞の1例
- 紺谷 智,中村 彰伸,徳海 裕史,廣瀬 源二郎
- 臨床神経学 54(8), 648-652, 2014
- 症例は83歳女性である.2013年某月下旬に転倒して右大腿骨頸部骨折を受傷した.受傷から3日後に当院整形外科で人工骨頭置換術が施行されたが,術直後より胸部不快感・嘔吐が出現しSpO2が低下した.胸部造影CTで肺塞栓症は否定され心不全の診断で加療がおこなわれたが,血圧は低下し昏睡状態となった.翌日も昏睡状態が持続していたため当科依頼となり,頭部MRI拡散強調像にて両側半球・脳幹に多発性の微小高信号域 …
- NAID 130004679007
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- 脂肪塞栓症. Tweet · Buzzurl. 世界大百科事典内の脂肪塞栓症の言及. 【骨折】より … また,ときには鋭利な骨片によって血管が損傷されることがある。骨折による骨髄損傷の ほか,なんらかの原因によって脂質が脂肪滴となり,流血中を流れ栓子化して血管や ...
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- 次の文を読み、 56~ 58の問いに答えよ。
- 60歳の男性。オートバイで転倒したため搬入された。
- 現病歴: 2時間前、オートバイで走行中に転倒し大腿部を挟まれた。
- 既往歴:特記すべきことはない。
- 現症:意識レベルは JCSI-3。身長 160 cm、体重 60 kg。体温 35.5℃。脈拍 120/分、整。血圧 80/50 mmHg。呼吸数 24/分。 SpO2 98% (リザーバー付マスク 10 l/分酸素投与下 )。表情は苦悶様で左大腿部の痛みを訴えている。顔面は蒼白で、皮膚は冷たく湿潤している。心音と呼吸音とに異常を認めない。左大腿部に挫滅創と活動性外出血とを認め、骨が露出している。濃い尿を少量認める。
- 検査所見:尿所見:比重 1.030、蛋白 (-)、糖 (-)。血液所見:赤血球 250万、Hb 7.0 g/dl、Ht 21%、白血球 13,000(桿状核好中球 6%、分葉核好中球 70%、単球 4%、リンパ球 20% )、血小板 4.5万、 PT 20秒 (基準 10~14)、 APTT 50秒 (基準対照 32.2)。血液生化学所見:総蛋白 5.0 g/dl、アルブミン 3.0 g/dl、尿素窒素20 mg/dl、クレアチニン 0.9 mg/dl、血糖 120 mg/dl、Na 145 mEq/l、K 5.0 mEq/l、Cl 109 mEq/l。下肢エックス線写真で左大腿骨骨折と左脛骨骨折とを認める。胸部エックス線写真と全身 CTで下肢を除いて異常を認めない。左大腿骨開放骨折に対し、赤血球濃厚液、新鮮凍結血漿および濃厚血小板を準備し、止血、デブリドマン及び骨整復固定術が予定された。急速輸液を行った。
- 術後 2日目、呼吸困難を訴えた。意識レベルは JCSII-10。体温 38.0℃。脈拍 120/分、整。血圧 120/80 mmHg。呼吸数 30/分。 SpO2 85% ( room air)。眼瞼結膜と体幹皮膚に点状出血を認める。両側の胸部で coarse cracklesと wheezesとを聴取する。心エコー検査で壁運動異常はなく、下大静脈の拡張もない。胸部エックス線写真 (別冊 No. 7)を別に示す。
- 病態として考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [108B057]←[国試_108]→[108B059]
[★]
- 英
- fat embolism syndrome FES
症状
- 受傷後12-48時間(SOR.637)/24-72時間(参考4)の潜伏期。 12時間以内に発症する場合もあるし、2週間後に発症することもある(参考4)
- 古典的な三徴:低酸素血症、神経学的異常、点状出血斑(参考4)
- 初期には発熱・頻脈、出血斑(前胸部、眼窩部、結膜)
検査
- 血液検査:Hb低下、血小板減少、赤沈口唇、低酸素血症
- 胸部X線写真:吹雪様陰影
- 聴診:湿性ラ音
診断基準
Gurdの診断基準
- 点状出血斑
- 呼吸困難とX線像上の両肺野の吹雪様陰影
- 頭部外傷や他の原因によらない脳神経症状
- 頻脈
- 発熱
- 網膜変化(脂肪滴または出血斑)
- 尿変化(無尿、乏尿、脂肪滴)
- ヘモグロビン値の急激な低下
- 血小板の急激な減少
- 赤沈値の亢進
- 喀痰中の脂肪滴
- 臨床診断
- 大基準1項目以上と小基準4項目以上
鶴田の診断基準
- 点状出血
- 呼吸器症状・肺X線所見
- 頭部外傷がない脳神経症状
- 頻脈
- 発熱
- 尿中脂肪酸
- 血小板減少
- 赤沈亢進
- 血清リパーゼ上昇
- 血中遊離脂肪滴
- 臨床診断
- 大基準2項目以上
- 大基準1、中小基準4以上
- 疑症
- 大基準0、中基準1、小基準4
参考
- http://tokushukai-amami-area.com/_src/sc514/0904_01.pdf
- http://ys-db.com/html/modules/pico/index.php?content_id=587
- http://www.fmu.ac.jp/home/cmecd/igakusei_kensyui/lecture/H22/lecture_100907.pdf
- 4. [charged] Fat embolism syndrome - uptodate [1]
[★]
- 英
- fat
- 関
- トリアシルグリセロール、脂肪酸
[★]
- 英
- embolism
- ラ
- embolia
- 同
- 塞栓形成 thrombus formation
- 関
- 塞栓、塞栓形成、塞栓術、塞栓療法、塞栓化
[★]
- 英
- sis, pathy
[★]
- 英
- embolus, (pl.)emboli
- 関
- 塞栓症
[★]
- 英
- fat embolism
- 関
- 脂肪塞栓症