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屠畜場(とちくじょう、漢字制限で「と畜場」と表記されることが多い)は、牛や豚、馬などの家畜を殺して(屠殺して)解体し、食肉に加工する施設の法律上の定義の名称である。日本のと畜場法においては、生後1年以上の牛若しくは馬又は1日に10頭を超える獣畜をと殺し、又は解体する規模を有すると畜場を一般と畜場、それ以外のと畜場を簡易と畜場として区別している。
初期のと畜場法では獣医師によって家畜の病気を発見排除し、健康な肉を提供することが主要な目的であったため、と畜場はいわば検査施設であった。 しかし、近年サルモネラ、O157など家畜由来の食中毒に対する社会関心が高まってきたことにより、と畜場法が衛生面に軸足を置いた内容に大きく改訂され、単なる検査施設から食品工場としての性格が強まった[1]。
このため、現在、各施設の具体的名称は、「食肉処理場」「食肉センター」などの名称が付されているものが多い。 これらの施設は主に、食肉加工会社や第三セクター、または自治体によって設置される。 政令市など大都市が運営すると畜場では、枝肉のセリを行う食肉市場が設置され、国産肉の価格形成を担っている。
と畜場法に基づく食肉用動物である家畜(日本では牛、馬、豚、緬羊、山羊の5種類の家畜のみで鹿や猪は法の対象外)は、搬入された後シャワーで汚れを洗い流してから食肉衛生検査所あるいは保健所に所属する獣医師の免許を持つ「と畜検査員(地方自治体の職員)」による病気等外観の検査(生体検査)を受ける。
屠殺は、前頭部への打撃、あるいは電撃や二酸化炭素によって失神させたあと、大動脈を切開し放血殺する方法で行われる。 失神させてから放血殺する方法が採用されるのは、安楽殺という動物福祉の観点からでもあるが、速やかに死に至らしめられなかった場合、ストレスによる筋変性や放血不良によって肉質が悪くなったり、恐怖した家畜が暴れ自ら筋肉や骨を損傷したりするなど、枝肉の商品価値を損なわないためという側面が大きい。
放血殺後、屠体の両後肢の飛節に通した鉄棒をフックで吊り上げ、施設の天井に取り付けたレールに沿って各作業配置を順に廻り、解体されていく(オンライン方式)。 その途中で適宜と畜検査員により病変組織のサンプリングと検査(解体後検査)が実施される。
解体順序はごくおおざっぱに言って、頭部切断・剥皮・内臓の摘出・背割り・枝肉検査などと続き、半頭分の肉の塊(半丸枝肉)となる。 たいていは解体ラインの階下に白モツ(胃腸など)、赤物(肝臓・心臓など胸腔臓器)などの内臓を分別・洗浄・パッキングするための作業場があり、ラインで切り離された臓器をシュートに投入することにより下の内臓処理作業場に送られる仕組みになっている。
食肉市場で取引された枝肉は食肉加工場で大分割されブロック肉となる。そこからさらに精肉店や、スーパーマーケットなどに搬送され、ももやヒレなどの部位に小分割され、一般消費者に市販される。
前述の法改正が行われた際、O157やBSE対策のための設備投資が行えなかった小規模施設の多くは廃業した。残った中・大規模施設も衛生対策のため施設の改築等を行なっており、現在ほとんど全てのと畜場が旧来のベッド方式(家畜を台の上で剥皮解体する方式)を廃止し、オンライン方式(フックで吊して剥皮解体する方式)で運営されている。
なお、牛についてはBSEの遡り調査や偽装防止のためトレーサビリティシステム対応を行なっている。
一般にと畜場は加熱用食肉のみ生産している。 最新の設備構造により国の定める衛生基準を満たして、生食用食肉(レバ刺しや牛タタキ)を生産しようとした畜場もごく数カ所あったが、衛生上の問題が発生したため、次々と生産自粛を余儀なくされている。 生食用食肉を生産していると畜場は、馬肉専門のと畜場が九州に数カ所あるのみ[2]で、牛や豚の生食用食肉は生産されていない。
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