出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/11/26 15:55:04」(JST)
この項目では、魚のブルーギルについて記述しています。アメリカ海軍の潜水艦については「ブルーギル (潜水艦) 」をご覧ください。 |
ブルーギル | ||||||||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Lepomis macrochirus Rafinesque, 1819 |
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英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Bluegill |
ブルーギル(Bluegill, 学名Lepomis macrochirus) は、スズキ目・サンフィッシュ科に属する魚の一種。北アメリカ原産の淡水魚だが、日本でも分布を広げた外来種である。
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成魚の全長は20センチ・メートル前後。体は円形に近く、左右に平たい(側扁する)。体色は変異があるが、およそ淡い緑褐色で、体側に細い横しまが10本前後ある。左右の鰓蓋の上部に突出した皮弁があり、その部分が紺色になっている。この部分に由来して"Bluegill sunfish"(ブルーギル・サンフィッシュ : 青い鰓蓋のサンフィッシュ)、略してブルーギルと呼ばれる。日本のブルーギルは、大きくても25センチ・メートル前後だが原産地の北アメリカでは40センチ・メートル近くに成長する。
湖や池など、水の流れがあまりない淡水域に生息する。雑食性で、水生昆虫・甲殻類・貝類・小魚・魚卵などいろいろな小動物を捕食するが、餌料生物が少ないときには水草も食べる。大型個体はブラックバスの巣を襲い、親魚の隙を突いて卵や仔魚を捕食することもある。
繁殖期は初夏で、この時期になるとオスは水底の砂泥を口で掘って浅いすり鉢状の巣を作り、メスを呼びこんで産卵させる。産卵・受精が終わった後もオスは巣に残り、卵に新鮮な水を送ったり、ゴミを取り除いたり、卵を狙う他の動物を追い払ったりして卵を守る[1]。仔魚が孵化した後もしばらくは仔魚の保護を行う。仔魚の生存率は4パーセントほど。
本種の標準和名は「ブルーギル」である。通称として単に「ギル」と呼ばれることもある。"gill"とは英語で「えら」を意味するため、特定種の魚の呼称とするには不適切といえるが、日本語でえらをギルと呼ぶことはほとんど無く、混乱は生じていない。原産地のアメリカ合衆国やカナダでは"bluegill"または"bluegill sunfish"と称され、"gill"と称されることはない。
サンフィッシュ類は北米大陸に広く分布し、現地では多くの種が生息し、ごく一般的な淡水魚であるため、文学作品にもしばしば登場する。しかしマンボウの英名が"ocean sunfish"で、こちらも単に"sunfish"とも呼ばれるため、英語圏の文学書を日本語に翻訳した際に、淡水産のサンフィッシュ類をマンボウと誤訳していることがある。英文学の和訳作品で、湖沼、河川といった陸水域の場面で「マンボウ」が登場したら、ほぼブルーギルなどのサンフィッシュ類の誤訳とみてよい。
ブルーギルはもともと北アメリカの中部・東部に広く分布する魚だが、移入された先々に定着し、世界各地に分布している。
小動物から水草まで食性は幅広く、汚染などにも適応力がある。さらに卵と稚魚は親が保護しているため捕食者は手を出せない。これらの習性からブルーギルは短期間で個体数を増やすことができ、各地で分布を拡げている。
日本への移入は、1960年に当時の皇太子明仁親王(今上天皇)が外遊の際、シカゴ市長から寄贈されたアイオワ州グッテンバーグで捕獲されたミシシッピ川水系原産の15尾を日本に持ち帰り、水産庁淡水区水産研究所が食用研究対象として飼育したのち、1966年に静岡県伊東市の一碧湖に放流したのが最初とされていた。2009年に三重大学生物資源学部が発表したミトコンドリアDNAの解析結果により、全都道府県の56ヶ所で採取した1,398体全ての標本の塩基配列が、米国13地点で採取したサンプルのうちグッテンバーグで採取したものと完全に一致したことでこの事実が証明された[2]。こうした経緯もあって、「おめでたいプリンスフィッシュ」と称されて各地に放流されたという記録がある[3]。
このブルーギルが今や外来種として深刻な問題を起こしていることについて、天皇即位後の2007年第27回全国豊かな海づくり大会において今上天皇は「ブルーギルは50年近く前、私が米国より持ち帰り、水産庁の研究所に寄贈したもの。食用魚として期待が大きく養殖が開始されましたが、今このような結果になったことに心を痛めています」と発言した[4]。
当初は食用として養殖試験なども行われ、各地の試験場にも配布されたが、成長が遅く養殖には適さないことが判明した。
その後起こったバス釣りブームの際に、バス釣り業界の関係者や愛好家の手によりブラックバスの餌と称して各地の湖沼に放流されたものが繁殖し、日本中に分布を広げるに至った[5][6]。
ブルーギルの繁殖力と生命力、捕食力、またその食性が日本の池や湖の生態系には十分脅威で、生態系維持と漁業の観点から日本中の湖沼でその存在数はかなりの問題とされている[5][6]。さらに生活廃水で汚れた水でも生息できるため、個体を減らすことは難しい。一方、ブルーギルへの大きな懸念を過剰反応とするむきもあるが、実際に目につく魚類の大半がブルーギルといった場所も増えている。
また漁獲対象種への圧迫のみならず、網にかかったブルーギルを取る際に背びれが手に刺さるため、漁業従事者からは大変嫌われている。
日本では本種はオオクチバスと並んで外来生物法により特定外来生物に指定されており、各地で導入の阻止や駆除が進められている[5][7]。防除を行っている代表的な水域として、霞ヶ浦、琵琶湖、深泥池、五稜郭、皇居外苑濠などがある[5]。
一般的に網などの漁具、電気ショッカー、水抜きなどで駆除が行なわれる[5]。他に駆除策として漁業従事者からの買い上げのほか、産卵床を浅瀬に設置し、産卵後に卵ごと撤去するという方法も試みられている。また、湖沼ではウグイがブルーギルの卵や稚魚を捕食する為、増殖抑制に有効である可能性が示されている[1]。
釣り上げた際に再放流しないことが推奨されるが、投棄するとブルーギルはその場で腐り、烏などの餌になってカラスを増やす原因になったり、夏は異臭や害虫を増やす結果になり周辺環境を悪化させる。琵琶湖に関しては持ち帰るか設置された回収ボックスに入れることになっている。再リリース禁止の効果はブルーギルの数や繁殖力をみれば微々たるものであるとする見解もある[要出典]。
韓国やイギリスでは生きた個体の持ち込みが禁止されている[5]。
観賞魚としては、生命力が強く、雑食で適応力があるため初心者にも飼育は容易であったが、国内では2005年6月に施行された特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)で特定外来生物に指定されたため、愛がん・鑑賞の目的で新たに飼養することは禁止されている。研究や教育などの目的で飼養する場合には主務大臣から許可を受けなければならない。
食味は淡泊でしまりはないが軟らかく美味しい。原産地の北米では大型のものが釣れ、体が丸くフライパンにすっぽりと収まり、バター焼きなどに適することから"pan fish"と称され食べられている。2006年10月1日放送の「お笑いワイドショー マルコポロリ!」番組内のギャル曽根がブルーギル300尾を食べるという企画に出演した日本料理の板前は「ブルーギルの味はタイそっくりの上品な味」と表現していた。しかしながら日本ではあまり食用とはされていない。理由として早期に捕獲するため大型にならず身が薄い一方、骨が多く調理や食べる際に手間がかかる点、また腸の内容物の量が多く、悪臭の強い内容物が身に付着してしまうと風味を損ねるため、小さい個体は食材としては調理しにくいといった点が挙げられる。しばらく養殖して大きく成長させると食材としての価値は高まると考えられる。
滋賀県では琵琶湖のブルーギルをビワコブナという名称で鮒寿司の材料であるニゴロブナの代用魚として利用したり、揚げ物などの材料としたものが作られており、県のサイトでも調理方法を公開している。[8]また大型の個体を食用に供する釣客もいる。事実、滋賀県農政水産部水産課が発行している「遊漁の手帖」では「大型のものは造りや塩焼きにして食べる」と、生食も含めた食用利用にも適していることが明記されている。
中国では、1987年に観賞魚として移入された後、食用に転用された。一般に、英語名を直訳した藍鰓太陽魚(ランサイタイヤンユー、lánsāi tàiyángyú)、または、単に太陽魚と呼ばれ、湖北省、広東省などで養殖が行われている。中国での養殖には主に顆粒の配合飼料が使われ、臭みも少ないことから、蒸し魚としての利用が多い。
ウィキスピーシーズにブルーギルに関する情報があります。 |
ウィキメディア・コモンズには、ブルーギルに関連するメディアがあります。 |
リンク元 | 「スパルス属」「スズキ目」「マアジ」「ニベ類」「マヒマヒ」 |
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