出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/15 21:20:38」(JST)
ブドウ属 | |||||||||||||||||||||
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種なしのオータムロイヤル種 (Autumn Royal)
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分類 | |||||||||||||||||||||
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種 | |||||||||||||||||||||
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ブドウ(葡萄、学名 Vitis spp.)は、ブドウ科 (Vitaceae) のつる性落葉低木である。また、その果実のこと。
100 g (3.5 oz)あたりの栄養価 | |
エネルギー | 288 kJ (69 kcal) |
炭水化物 | 18.1 g |
- 糖分 | 15.48 g |
- 食物繊維 | 0.9 g |
脂肪 | 0.16 g |
タンパク質 | 0.72 g |
ビタミンB1 | 0.069 mg (5%) |
ビタミンB2 | 0.07 mg (5%) |
ビタミンB3 | 0.188 mg (1%) |
パントテン酸(ビタミンB5) | 0.05 mg (1%) |
ビタミンB6 | 0.086 mg (7%) |
葉酸(ビタミンB9) | 2 μg (1%) |
ビタミンC | 10.8 mg (13%) |
カルシウム | 10 mg (1%) |
鉄分 | 0.36 mg (3%) |
マグネシウム | 7 mg (2%) |
マンガン | 0.071 mg (4%) |
リン | 20 mg (3%) |
カリウム | 191 mg (4%) |
亜鉛 | 0.07 mg (1%) |
%はアメリカにおける成人向けの 栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
葉は両側に切れ込みのある15 - 20cmほどの大きさで、穂状の花をつける。野生種は雌雄異株であるが、栽培ブドウは一つの花におしべとめしべがあり、自家受粉する。このため自家結実性があり、他の木がなくとも一本で実をつける。果実は緑または濃紫で、内部は淡緑であり、房状に生る。食用部分は主に熟した果実である。食用となる部分は子房が肥大化した部分であり、いわゆる真果である。外果皮が果皮となり、中果皮と内果皮は果肉となる。果実のタイプとしては漿果に属する。大きさは2 - 8cm程度の物が一般的である。ブドウの果実は枝に近い部分から熟していくため、房の上の部分ほど甘みが強くなり、房の下端部分は熟すのが最も遅いため甘味も弱くなる。皮の紫色は主にアントシアニンによるものである。甘味成分としてはブドウ糖と果糖がほぼ等量含まれている。また、酸味成分として酒石酸とリンゴ酸が、これもほぼ等量含まれる。
ブドウ属の植物は数十種あり、北米、東アジアに多く、インド、中東、南アフリカにも自生種がある。日本の山野に分布する、ヤマブドウ、エビヅル、サンカクヅル(ギョウジャノミズ)もブドウ属の植物である。
現在、ワイン用、干しぶどう用または生食用に栽培されているブドウは、ペルシアやカフカスが原産のヴィニフェラ種 (V. vinifera, common grape vine) と、北アメリカのラブルスカ種 (V. labrusca, 英: fox grape)で ある。
米がうるち米(食用)・酒米(酒造用)があるように、ブドウにも食用ブドウと酒造用ブドウがあり、食用はテーブルグレープ(table grapes)、酒造用はワイングレープ(wine grapes)と呼ばれている。
ブドウは温帯の農作物で、平均気温が10度から20度程度の地域が栽培適地である。北半球では北緯30度から50度、南半球では南緯20度から40度の間に主要産地が存在する。最適の降水量は品種によって差があり、ヨーロッパブドウは一般に乾燥を好み、アメリカブドウは湿潤にも強いが、種全体としてみれば年間降水量が500㎜から1600㎜あたりまでに主要産地が存在する。
ブドウは水はけがよく日当たりが良い土地を好む。ほかの果樹と同様、ブドウも種子から育てると質の良い果実ができにくく、また枝を土に挿すと容易に根を生やすため、古来から挿し木によって増やされてきた。しかし、19世紀後半に根に寄生するフィロキセラによって大打撃を受けたため、以後は害虫予防のために台木を使用することが一般的となった。
木の仕立て方には、垣根のように垂直の木を直列に木を並べる方法と、棚を仕立ててブドウのつるを這わせる方法の二つが主要な方法となっている。ヨーロッパなどのブドウ園では垣根式が多いが、日本では棚式が主流となっている。
収穫期は品種によって差があるが、日本においては最も早いデラウェアが7月下旬から収穫が始められ、最も遅い品種は11月上旬まで収穫される。また、ハウス栽培の場合はこれよりも早くなる。
詳細は「ブドウ栽培」を参照
ブドウの栽培化の歴史は古く、紀元前3000年ごろには原産地であるコーカサス地方やカスピ海沿岸ですでにヨーロッパブドウの栽培が開始されていた。当初よりワインとの関連が深く、メソポタミア文明や古代エジプトにおいてもワインは珍重されていた。メソポタミアでは気候や土壌的にブドウの栽培が困難なため、多くは輸入されたものであった[1]。古代ギリシアではワインのためのブドウ栽培が大々的に行われ、ギリシア人が植民した地域でもブドウ園が各地に開設されるようになった。ギリシアを支配したローマ帝国の時代にはワインは帝国中に広まり、そのためのブドウ栽培も帝国各地で行われるようになった。特にガリアやラインラントにローマ人はブドウを導入し、現在でもこの地域はブドウの主要生産地域となっている。ローマ帝国崩壊は政治の混乱によってブドウ栽培は衰退していったが、各地の修道院などによって生産は少量ながら維持され続け、やがて政情が安定するとともに再び栽培が盛んとなっていった。11世紀から13世紀にかけては気候が温暖となり、イングランドのような北方の国家においてもブドウの栽培が盛んとなり、現ベルギーのルーヴァンなどでも輸出用のワインを作るためにブドウ栽培なども行われていた。しかし14世紀ごろから気候が寒冷化した上に輸送費が下落して、ブドウの栽培地域はしだいに南方へと限られるようになっていった[2]。
一方、原産地から東へと伝播したものは、紀元前2世紀には中国に到達した。
大航海時代がはじまり、各地にヨーロッパ人が植民するようになると、移民たちは故郷の味を求め、ワインを製造するために入植先にブドウを植えていった。南アフリカのケープ州やチリなど、この時期に持ち込まれたブドウ栽培が成功してワインの名産地となった地域も多い。北アメリカ大陸にもヨーロッパブドウが持ち込まれたが、ここでの栽培は当初あまり成功しなかった。これは、ブドウのもう一つの主要系統であるアメリカブドウに属する野生種が北アメリカ大陸東部には多くあり、フィロキセラ(後述)などのアメリカブドウの病害が免疫のないヨーロッパブドウに大被害を与えたためである。アメリカブドウはすでにネイティブ・アメリカンが活発に利用しており、やがてヨーロッパ系の植民者たちも野生種の中から有望な種を選抜して栽培種化していった。しかし、アメリカブドウには独特の香りがあり、ワインにするには不向きであったため、アメリカブドウは主にジュース用として発展していった。
アメリカでワインを生産するため、ヨーロッパブドウをアメリカで育てるために様々な試みがおこなわれた。病害に強いアメリカブドウとヨーロッパブドウを掛け合わせた雑種を作るやり方も盛んに行われたが、ワイン用としては一部を除いてヨーロッパブドウを越えることができず、次第にすたれた。一方で生食用品種では巨峰やピオーネなど有望種がいくつも生まれている。もう一つの方法として、病害に耐性を持つアメリカブドウを台木としてヨーロッパブドウを接ぎ木する方法が19世紀後半に開発され、これが主流となった。
北アメリカ原産のブドウはフィロキセラ(Phylloxera、ブドウネアブラムシ)に対する耐性を持つが、1870年頃に北アメリカの野生ブドウの苗木がヨーロッパにもたらされ、この根に寄生していたフィロキセラによって、耐性のないヨーロッパの固有種の殆どが19世紀後半に壊滅的な打撃を受けた[3]。以後フィロキセラ等による害を防止するの理由で、ヨーロッパ・ブドウについては、アメリカ種およびそれを起源とする雑種の台木への接ぎ木が行われている[4]。
日本で古くから栽培されている甲州種は、中国から輸入されたヨーロッパブドウの東アジア系が自生化して、鎌倉時代初期に甲斐国勝沼(現在の山梨県甲州市)で栽培が始められ、明治時代以前は専ら同地近辺のみの特産品として扱われてきた[5](ヤマブドウは古くから日本に自生していたが別系統にあたる)。文治2年(1186年)に甲斐国八代郡上岩崎村の雨宮勘解由によって発見され、栽培がはじまったとされる。甲州の栽培は徐々に拡大し、正和5年(1316年)には岩崎に15町歩、勝沼に5町歩の農園ができていた[6]。江戸時代に入ると甲府盆地、特に勝沼町が中心となり、甲州名産の一つに数えられるようになった。松尾芭蕉が「勝沼や 馬子も葡萄を食ひながら」との句を詠んだのもこのころのことである。正徳6年(1715年)の栽培面積は約20haに上った。その後、関西や山形でも栽培がおこなわれるようになり、江戸時代末期には全国で約300haにまで栽培面積は拡大していた[7]。日本にあった在来の品種は甲州だけではなく、甲府盆地で栽培された甲州三尺や、京都周辺で栽培されていた聚楽といった品種も存在していたが、聚楽はすでに消滅し、甲州三尺の栽培も少なくなってきている。
その後、明治時代に入ると欧米から新品種が次々と導入されるようになった。当初はワイン製造を目的としてヨーロッパブドウの導入が主に行われたが、乾燥を好むものの多いヨーロッパブドウのほとんどは日本での栽培に失敗した。例えば、1880年(明治13年)に兵庫県加古郡印南新村(現 稲美町)にて国営播州葡萄園が開園したが、わずか6年後に閉園に追い込まれた[8]。一方アメリカブドウの多くは日本の気候に合い定着したものの、ワイン用としてはにおいがきつく好まれなかったため、生食用果実の栽培に主眼が置かれるようになっていった。とくに普及したのはデラウェアとキャンベル・ア-リーであり、戦前はこの2品種が主要品種となっていた。昭和10年には8000ha近くまで栽培面積が拡大したものの、第二次世界大戦によって一時急減し、昭和21年には生産量が戦前の半分にまで減少したものの、昭和30年には戦前の水準に回復した。
果実は、そのまま生食されるほか、乾燥させてレーズンに、また、ワインやブランデーなどのアルコール飲料、ジュース、ジャム、ゼリー、缶詰の原料となる。世界的にはワイン原料としての利用のほうが主である。ワインを原料とした酢(ワインビネガー)も製造される。
ワインを製造する地域では、残った種子を搾油の原料としてグレープシードオイルが製造される。また、種子にはプロアントシアニジンという成分が含まれ、健康食品用などに抽出も行われている。
紫色をした皮にはアントシアニンなどのポリフェノールが豊富に含まれており、赤ワインやグレープジュースにも多い。絞った後の皮などの滓は、肥料として処理することが多い。
葉を食用にする地域もある。
特殊な利用法として、ブドウの実に大量に含まれる酒石酸から酒石酸カリウムナトリウム(ロッシェル塩)を製造することができる。ロッシェル塩は強誘電体であり、圧電素子としてかつてはよく利用された。日本では第二次世界大戦末期には通信機器用の軍需物資として注目され、ブドウ園から原料が大量に集められた[9]。しかし湿気に弱いという欠点があったため、現在ではより優れた特性を持つほかの物質によって代替され、この目的で使用されることはなくなった。
2004年のブドウの総生産量は6657万tであり、バナナ(1億394万t)、かんきつ類(1億273万t)に次いで生産量が多い果物である。1980年代前半までは世界で最も生産量の多い果物であったが、生産量は20世紀中盤からほぼ横ばいで、20世紀に入り生産量の急増したバナナやかんきつ類に抜かれ、さらに同じく生産量の急増しつつある4位のリンゴ(6192万t、2004年)に追いつかれつつある。国際連合食糧農業機関によると、世界のブドウ園の総面積は75,866㎞2にのぼる。世界のブドウ生産量のうち71%がワイン生産用、27%が生食用に使用され、残りの2%はレーズン生産用である。世界最大のブドウ生産国は中国であり、ついでイタリア、アメリカ、スペイン、フランスと続く。
国 | 面積 (km²) |
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スペイン | 11,750 |
フランス | 8,640 |
イタリア | 8,270 |
トルコ | 8,120 |
アメリカ合衆国 | 4,150 |
イラン | 2,860 |
ルーマニア | 2,480 |
ポルトガル | 2,160 |
アルゼンチン | 2,080 |
チリ | 1,840 |
オーストラリア | 1,642 |
アルメニア | 1,459 |
レバノン | 1,122 |
国 | 生産量 2009年 |
‡ | 生産量 2010年 |
‡ | シェア 2010年 |
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中華人民共和国 | 8,039,091 | 8,651,831 | 12.67% | ||
イタリア | 8,242,500 | 7,787,800 | 11.40% | ||
アメリカ合衆国 | 6,629,160 | 6,220,360 | 9.11% | ||
スペイン | 5,573,400 | 6,107,200 | 8.94% | ||
フランス | 6,104,340 | 5,848,960 | 8.56% | ||
トルコ | 4,264,720 | 4,255,000 | 6.23% | ||
チリ | 2,500,000 | (F) | 2,755,700 | (I) | 4.03% |
アルゼンチン | 2,181,570 | 2,616,610 | 3.83% | ||
インド | 1,878,000 | 2,263,100 | (I) | 3.31% | |
イラン | 2,255,670 | 2,255,670 | 3.30% | ||
10カ国総計 | 67,901,744 | (A) | 68,311,466 | (A) | 100% |
注釈: この数字はブドウ生産量上位10か国の総計であり、世界の総生産量ではない。この10か国の生産量は2010年には世界のブドウ生産量の71.38%を占めている。
[10]
2010年の日本のブドウ生産量は18万4800tであり、果物ではウンシュウミカン、リンゴ、ナシ(ニホンナシ)、カキに次いで5位の生産量である。昭和時代の末期には30万tを記録していたが、以後は年々微減する傾向にある。栽培面積も同様に、昭和54年、55年の30300haを頂点として減少傾向にある。県別では山梨県が最大の産地で、2010年には45100tの生産があり、国内生産量の24%を占めた。以下、2位の長野県が23900t(13%)、3位の山形県が19700t(11%)、4位の岡山県が15100t(8%)、5位の福岡県が9150t(5%)となっている[11]。日本は南西諸島を除くほぼ全域がブドウの適地であるため、北海道から九州までの広い範囲においてブドウが生産されている。世界ではワイン生産用が7割を占め非常に多いのに比べ、日本では生食用が9割近くを占め、ワインやブドウジュース、菓子などの加工用は1割弱に過ぎない[12]。また、輸出は全くないが、年間10,000tあまりが輸入されている。
品種的には、日本で最も栽培されている品種は巨峰であり、2010年度には5465haで栽培されていた。ついでデラウェアが2967ha、ピオーネが2430ha、キャンベルアーリーが655ha、ナイアガラが513ha、マスカットベリーAが406ha、スチューベンが377ha、甲州が316haと続く[13]。昭和45年ごろにはデラウェアが栽培総面積の36%を占め、ついでキャンベルアーリーが26%、甲州10%であったが、昭和40年代後半より巨峰の栽培技術が確立すると急速に栽培面積を拡大し始め、1994年には巨峰の栽培面積がデラウェアを抜いた。平成に入ってからはピオーネも急速に栽培を拡大させている。デラウェアは昭和35年の無核化技術の開発によって栽培が拡大したものの、粒が小さいため近年では栽培が減少傾向にある。キャンベルアーリーや甲州は戦前からの主要品種であったが、新品種の開発によって栽培面積は漸減傾向にある[14]。
ブドウ属 (Vitis) には、主に次のような種がある。
その他、クマガワブドウ、アマヅル、リュウキュウガネブ、ヨコグラブドウ、ケナシエビヅルなど、日本では15種類の野生ブドウの自生が確認されている。また、アジア大陸には中国を中心に、約40種の野生ブドウが確認され、日本の野生ブドウと同種または近縁種も確認されている。
全て北米原産でヨーロッパ・ブドウと違ってどれもフィロキセラ耐性を持つ。
ブドウ属に含められる場合もあるが、形態や染色体の数等の違いから、一般に別の属 (Muscadinia) とされる。2–3種が属す。
ブドウ品種の一覧も参照。また、ワイン用品種についてはワイン用葡萄品種の一覧項がある。
など。
植物ホルモンを利用した方法で、ホルモンの作用により果実内部の種を形成させない方法である。
1970年頃からはジベレリン水溶液が使用されているが、近年ではサイトカイニン水溶液を添加することにより処理時期が拡大している。
デラウェアなどの小粒種が主であるが、最近では技術の向上により巨峰などの大粒種にも種無しが現れている。種が無い為、種有りに比べ脱粒しやすい。また、収穫時期は種有りに比べて早まる。なお、ジベレリン水溶液は元々無色透明であるが、ジベレリン処理をした果実を色で判別するために水溶液に食紅などを混ぜ着色している。ジベレリン溶液は本来は果実の成熟期を早めるために使用するもので、種無し化の効果が見つかったのは副産物である。
など。
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