出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/26 17:54:20」(JST)
近視(きんし)は、屈折異常のひとつで、眼球内に入ってきた平行光線が、調節力を働かせていない状態で、網膜上の正しい位置ではなく、もっと手前に焦点を結んでしまう状態。近眼(きんがん、ちかめ)ともいう。
遠方視の場合に、屈折機能が無限遠まで対応できないためはっきり見ることができない。 逆に近方視の場合は支障は少ない。近視は屈折の問題であり網膜や視神経の疾患ではないので一般的に矯正視力が低下するものではない。
誕生し20代前半からおよそ37歳までにかけては眼球が成長するので誰でも例外なく近視の方向に屈折状態が変化する。つまり、
この時期に近視の症状が現れなかった者は、近視化しなかったのではなく、遠視が十分に強かったために近視が顕在化しなかっただけである。成長期の終わった後の最終的な屈折状態(近視または遠視の強さ)は、
の2つで決まる。
最終的な屈折状態を決める要因としては (1) が主なものであることで専門家の意見が一致している。つまり、生まれ持った遠視の強さによって将来近視になるかはほぼ決まる。
(2) が100%遺伝だけで決まるかには議論がある。遺伝のみで全て決まるとする説もあれば、環境によって左右されるとする説もある。ただし、いずれにせよ (1) に比べれば影響は少ない。
現代、近視は増加傾向にある。小中学生でも近視の割合は年々高まり、小学生の1/4、中学生の1/2は近視であると言われる[1]。この増加傾向は、小中学生の生活習慣の変化によるものとも、小中学生の平均身長が伸びたことの不可避的な副産物とも言われている。
近視は目の成長が止まるにつれて進まなくなる。現代では目を酷使する機会が多いため20代後半を過ぎても進む事が多いとも言われるが[誰?]、目の酷使と近視の進行を結びつける科学的根拠はない。 とはいっても、世界的に見てもテレビやパソコンの普及に伴って、近視が増加しているのは紛れもない事実であり、科学的根拠がないとする主張は、眼鏡業界および眼科医の宣伝、誘導とも受け取れる。[要出典]
角膜および水晶体の曲率が強くて焦点が短過ぎ、網膜より前方に焦点を結んでしまうもの。
眼球が通常より前後に長いため、水晶体と網膜との距離が長過ぎ、網膜よりも前方に像を結んでしまうもの。 遺伝性の近視は大半が軸性に分類され、矯正を必要とする。 眼球が通常より引き伸ばされているため、網膜が薄くなっており、網膜剥離を起こしやすい。
眼の疲労により一時的に近視のような状態になること。仮性近視、調節緊張性近視とも呼ばれる。近視に含めない考えで単に調節緊張と呼ぶ者もいる。
テレビやパソコン等で目を酷使した後は強くなり、目を休めたり遠くを見ると弱くなる。点眼薬を使って調節を麻痺させないかぎり完全に無くなることはない。視力に問題が無い者を含めて万人が持っているものである。
一見妙な話だが、遠視の者は近視の者より強い偽近視を持っていることが多い。つまり、その時々による遠視度数の変化が近視の者の近視度数の変化より大きい場合が多い。遠視の者は遠くを見るのにも調節力を働かせねばならず、正視や近視の者より眼に対する負担が大きいためと思われる。
名前の通り「偽」の近視であり、前述の真の近視とは別物である。偽近視を放置したからといって真の近視に移行することはないし、逆に目を休ませても治るのは偽近視だけであり真の近視が治ることはない。「**で近視が治った!」「近視が回復する本」などと喧伝され“治る”とされるのはこの近視。 偽近視と本物の近視を併発している場合は、目を休ませることにより偽近視の分だけが回復する。
偽近視の現れ方は人によって違う。つまり、
偽近視として通常問題にされるのは2の場合である。1の場合は自覚症状がないし、3の場合は偽近視が治っても眼鏡等が必要なことに変わりがないのであまり問題にされない。2の場合は偽近視を治すことで眼鏡等が不要になるので治療が試みられることがあるが、偽近視が治ったかどうかに関係なくしばらく経つと本物の近視になってしまうことが多い。
なぜ偽近視を治療しても近視になってしまうか。そもそも偽近視が自覚されるようになったのは上記1の状態から2の状態になったからである。つまり幼少時の遠視の状態から正視かそれに近い状態まで近視化している。自覚の無いまま近視化の過程の大半がすでに終わってしまっていると言ってもよい。一方、偽近視を治療しても本物の近視の進行には何の影響も無い。幼少期の遠視がほとんど無くなるまで順調に進んでいた近視が偽近視を治療した途端に進まなくなるには偶然に頼る他無いが、そのような偶然の起こる可能性は低い。よって偽近視を治療しても近視になってしまうことが多いのである。
偽近視については様々な考え方がある
老人性白内障に伴い、近視化することがある。 核性白内障が起きた際、起きる。 その際には不同視を引き起こすことも多い。
一般的に遺伝・環境が要因とされる。両方が原因となる場合もある。 具体的な原因は今も不明。
遺伝・環境により発生する近視。大半の近視は単純近視に分類される。 小学校高学年くらいから始まる事が多く「学校近視」とも呼ばれる。
何らかの異常により眼軸が伸びて発生する軸性近視を「病的近視」と呼ぶ。 幼児期より発生する事が多い。
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近視の原因ははっきりしておらず様々な説が出されている。有力なものに遺伝説と環境説があるが、全ての近視の原因を遺伝だけ、あるいは環境だけで説明しようとすると無理が出るので、遺伝と環境が複雑に絡み合って近視が発生するのだろうとされている。
近視を主に遺伝に因るとするものである。近視発生率の民族間の違いが近視の発生に遺伝が関与していることの証拠として挙げられてきた[2]。近視の遺伝率は89%と高率であり、また近年の研究で関連する遺伝子も特定された。双生児の研究ではPAX6遺伝子の欠陥が近視と関連しているようである[1]。 遺伝説では、何歳のときに近視になり始め何歳までにどこまで進行するかが生まれつき決まっていると考える。発達上の問題から眼球の奥行きが若干延長され、映像が網膜上でなく網膜の前方に結するようになるとされる。近視は通常8歳から12歳までの間に発現し、殆どの場合青年期を通じて徐々に進行し、成人になると頭打ちになる。遺伝要因は、他の生化学的要因からも近視の原因となりうる。例えば結合組織の弱さなど。
ただし、全ての近視を遺伝だけで説明することは難しい。長時間勉強や読書をする人に近視が多いというのは多くの人が感じる傾向である。遺伝だけで説明しようとするならば、この傾向は、近視の者のほうが近くを楽に見られるために勉強や読書が長続きしやすい傾向から来るのだということになる。近くを見る際に近視用眼鏡を外せば大いに楽に見られるし、たとえ眼鏡をかけたままでも、近視でない者の多くを占める潜在的な遠視者よりは楽に見られるというわけである。
ヒヨコを高さの違う部屋で育てる実験等で環境によって視力に差が生じることが確かめられている[要出典]。勉強や読書、パソコンなど近くの物を見続けることに対して目が適応する(近業適応)という考え方。近視の人間はあまり毛様体筋を使わなくても近くにピントを合わせやすいので目の疲労が小さい。
どの程度適応が起きるかは遺伝によって差があり、水晶体の厚さが変化する屈折性近視と眼軸の距離が延びる軸性近視のうち前者がより環境要因が大きい[3]。
統計的に長時間勉強や読書をする人に近視が多い傾向や、途上国の農村など勉強をする機会が少ない人に近視が少ないことが環境説を補強しているとも考えられるが、相関関係と因果関係を取り違えているとも考えられる。
2002年の報道(英語)では幼年期のパンの摂り過ぎ、或いは炭水化物の摂り過ぎによる慢性の高インスリン血症が近視の原因かもしれないと指摘している。この資料(英語)に纏められているように他の栄養素も近視の原因とされている。
赤ちゃんの頃に、夜も明かりをつけた部屋で寝かせて育てると、近視になりやすいというペンシルベニア大の研究成果が1999/5/13発行のNatureに掲載された。
ただし、この説には反論(Nature 404, 144 (9 March 2000) )が出ている。親が近視の場合、子供の様子を見るなどの理由で夜間に弱い照明を行う傾向があり、また親子における近視の遺伝的相関も高いため、夜間の照明と子供の近視とに相関が出てしまう。相関関係と因果関係を取り違えているという反論である。
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成長期に睡眠が不足すると近視になるとする説。
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国民の体格が向上すると、その分眼球も大きくなり、軸性近視が増えるとする説。
その目を正視に屈折矯正するために必要なレンズの度数で表される。S値とも言い、単位はD(ディオプターあるいはディオプトリ)。Dを表す式は D = 1 (m) / 焦点距離 (m)。 近視では負の値、正視の場合は0となり、遠視では正の値となる。
近視の程度は以下のように分類されるが、単に区切りの良い数字で区切ったに過ぎず、便宜的なものである。
次のような分類もある。
近視の度数と裸眼視力には大まかな関係しかない。度数の強い割に裸眼視力の高い人もいれば、度数の弱い割に裸眼視力の低い人もいる。従って度数が幾つだから裸眼視力が幾つだとか、裸眼視力が幾つだから度数が幾つだとかいう事は極めて大雑把にしか分からない。
最も一般的な屈折矯正法。 凹レンズの眼鏡、コンタクトレンズで行われる。 高すぎる屈折力を凹レンズで緩和することにより、網膜上にピントが合うようになる。 また、見えにくい自覚症状が有る場合で偽近視で無い場合、医師の処方にもとづいて、メガネ・コンタクトレンズを購入するのが大原則である。 見えにくいままでいると、頭痛や肩こり、また生活するうえでのストレスとなり、体に大変好ましくない。
角膜を手術などにより薄くして屈折力を弱め、矯正する。以下の手術法がある。
視力回復トレーニングにより毛様体の筋力を回復させる。しかし、民間療法であり医学的根拠は十分でない。
角膜矯正用コンタクトレンズを使用する。 夜寝る前に装着するだけで昼間は裸眼で過ごせる。
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