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- adipose tissue, fatty tissue (Z)
- ラ
- textus adiposus
- 関
- 脂肪
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/02/02 21:37:44」(JST)
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脂肪組織(しぼうそしき)は、脂肪細胞で構成された疎性結合組織の解剖学的用語である。 主な役割は脂肪としてエネルギーを蓄えることであるが、外界からの物理的衝撃を吸収することで重要な器官を保護したり、外界の温度変化から断熱して体温を保ったりする機能も持つ。近年はホルモンを作り出す重要な内分泌器官としても注目されており、TNF-αやレプチン、最近発見されたレジスチンやアディポネクチンなどの産生に関与する。
目次
- 1 解剖学的特徴
- 2 生理学
- 3 脂肪酸組成
- 4 文化的社会的役割
- 5 問題
- 6 脚注
- 7 関連項目
解剖学的特徴
脂肪組織は、主に皮膚の下に位置するが、内臓の周囲でもみられる。 皮下では、熱と寒さからの断熱材となり、皮下層の最深部に蓄積する。 内臓の周りでは、それは保護的な詰め物となる。また、それは栄養の蓄えとしても機能する。
極度の肥満体の人の腹から垂れ下がる余分な脂肪組織は、パンヌスと呼ばれる。パンヌスが病的な肥満体の手術を複雑にし、極度の肥満体の人が超過重量の大部分を失うなら(バイパスの後のように)、文字通りの「皮膚のエプロン」として残るかもしれない。
中央の図が脂肪組織、他の結合組織とは形態が異なる。
脂肪組織は、結合組織というよりむしろ「細胞内マトリックス」のような形態である。脂肪細胞が層を為した小葉構造を微小血管が包む形をとり組織構造が区分されている。
生理学
遊離脂肪酸は、リポ蛋白質リパーゼ(LPL)によってリポ蛋白質から「放出され」て、脂肪細胞に入る。そこで、それは、グリセロールとともにエステル化されることによって、トリグリセリドへと再構成される。
脂肪細胞には、トリグリセリド維持における重要な生理的役割とインスリン耐性と遊離脂肪酸水準を決定する役割がある。 腹部の脂肪(内臓脂肪)では、代謝を抑制するという代謝、すなわちインスリン耐性を皮下脂肪に比して強く誘導する傾向が、近年の内分泌機能の検討により明らかとなりつつある。これは、内臓肥満が耐糖能障害のマーカーであり、心血管疾患の独立した危険因子(糖尿病と高血圧をはじめとして、引き起こされる疾患をメタボリックシンドロームと呼ぶ)であることを示唆する。
脂肪組織により分泌されるホルモン
- アディポネクチン
- レジスチン
- アンギオテンシン
- PAI-1(血液凝固参照)
- TNF-α
- IL-6
- レプチン
- VEGF
- bFGF
ヒトの幼児やいくつかの動物には、褐色脂肪または褐色脂肪組織と呼ばれる特異化した形の脂肪組織があり、主に首の周りと胸郭の大きな血管に位置する。 この特異化した組織はミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の呼吸鎖を途中で「離す」、具体的にはミトコンドリアの内膜の両側に生じた水素イオン濃度勾配をATP生産に使わずに脱共役剤の作用を示す脱共役タンパク(UCP)を通すだけで解消することで、脂肪酸を分解し、発熱することができる。 この熱発生の過程は、寒さにさらされても、体を暖める為に震えたり、自らを暖かく保つための他の方法をとる事ができない新生児では重大であるだろう。
この過程を薬理学的に刺激する試みは、今までのところ、失敗しているが将来の減量療法の目標であるだろう。
脂肪酸組成
皮下脂肪
米国人閉経女性の皮下脂肪組織の脂肪酸組成はおよそ以下のとおりとされる。
米国人閉経女性皮下脂肪の
主な脂肪酸の種類 (1991年)[1]
項目 |
分量(g) |
脂肪 |
100 |
飽和脂肪酸 |
24.43 |
16:0(パルミチン酸) |
19.06 |
18:0(ステアリン酸) |
2.87 |
一価不飽和脂肪酸 |
54.49 |
cis-18:1 (n-9)
(オレイン酸) |
41.52 |
多価不飽和脂肪酸 |
21.08 |
cis-cis-18:2 (n-6)
(リノール酸) |
17.23 |
18:3 (n-3)
(α-リノレン酸) |
0.77 |
文化的社会的役割
以前や他の社会では、脂肪が美しく微笑ましいと考えられた。 現代の規格によって肥満体であると考えられる人物の、レンブラントと特にピーテル・パウル・ルーベンスによる絵の描写からこれを推論することができる。 後者は女性についての積極的(時に滑稽)な言及として注目に値する量の体脂肪によりルーベンスの法則(rubenesque)という用語を生んだ。アラブ、西アフリカ、北極圏原住民と多くのラテンアメリカの文化では、多くの男性が頑健または「栄養の十分な」女性をより好む。 先進国、東アジア、および多くの東アフリカの文化の男性の大部分が細い女性を好む。歴史的にみると、中国の南北朝時代、遊牧民が政権を握った北朝では豊満な女性が、古くからの漢民族が政権を握った南朝では細身の女性が好ましいとされた。
問題
詳しくは肥満・脂肪腫を参照
現代の世界では、人間の余分な脂肪組織が「美意識」と「医学上」の問題であると言われている。また、場合によっては成熟した脂肪組織が腫瘤を形成することもあるが、この原因については今のところよく判っていない。
脚注
- ^ London SJ et al (Aug 1991). “Fatty acid composition of subcutaneous adipose tissue and diet in postmenopausal US women.”. The American Journal of Clinical Nutrition 54 (2): 340-345, Table.2. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1858698 2015年4月29日閲覧。.
関連項目
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- New scaffolds for tissue engineering using adipose-derived stem cells
- Kawasumi Akari,Wang Zhen,Kotani Yutaka,Tamura Atsushi,Tsuji Misaki,Hayashi Maho,Ikeda Junki,Orikasa Taichi,Takamori Hideki,Torii Hiroko,Ozamoto Yuki,Morita Shinichiro,Tsujimoto Hiroyuki,Urabe Mamoru,Hagiwara Akeo
- 同志社大学理工学研究報告 54(1), 41-51, 2013-04-00
- … ADSCs(脂肪組織由来幹細胞)は再生医療において有用な細胞源であり、臨床でも応用されている。 … ラットの鼠蹊部より採取した脂肪組織から得た細胞の内でフローサイトメトリーによりCD29、90が陽性かつCD 11b、45が陰性と特徴つけられる細胞群をADSCsとして実験を行った。 …
- NAID 110009575479
- 平成22・23年度「独創性のある生命科学研究」個別研究課題 17)脂肪組織由来幹細胞の静脈内投与による骨再生の研究
- 脂肪萎縮症に関する最近の進歩 (特集 肥満症 : 病態・診断・治療) -- (病態 : 基礎と臨床)
Related Links
- 脂肪組織は「アディポサイトカイン」と呼ばれるからだに大切な働きをする様々な物質を分泌することが近年の研究によりわかってきました。肥満、特に内臓脂肪が蓄積すると、これらの物質の分泌に異常がおこり、多くの生活習慣病 ...
- ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 - 脂肪組織の用語解説 - 結合組織の一種で全身にみられるが,特に皮下組織で発達している。主成分である脂肪細胞は,その内部に大きな脂肪塊を含み,核と原形質は片隅に押しやられている球形 ...
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Related Pictures
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ピシバニール注射用0.2KE
組成
成分・含有量:有効成分:1バイアル中
- 凍結乾燥粉末注2):0.56mg
乾燥菌体として:0.02mg(0.2KEに相当)
成分・含有量:添加物:1バイアル中
- 硫酸マグネシウム水和物:0.02mg
DL‐メチオニン:0.04mg
マルトース水和物:17.69mg
ベンジルペニシリンカリウム:540単位
リン酸二水素カリウム:含有
水酸化ナトリウム:含有
塩化ナトリウム:含有
懸濁用溶解液
- 1アンプル中:日局生理食塩液 2mL
- 注2)ストレプトコックス・ピオゲネス(A群3型)Su株ペニシリン処理凍結乾燥粉末。製造工程において、培地成分としてTodd Hewitt Broth(ウシの心臓、骨格筋、骨髄、脂肪組織、結合組織及び乳、並びにブタの心臓、膵臓及び胃由来)、牛肉(ウシの骨格筋由来)、ペプトンN粉末(ウシの乳をブタのパンクレアチン(ブタ膵臓由来酵素)で処理したもの)及びスキムミルク(ウシの乳由来)を使用している。
禁忌
- 本剤によるショックの既往歴のある患者
- ベンジルペニシリンによるショックの既往歴のある患者[本剤はベンジルペニシリンを含有している。]
効能または効果
胃癌(手術例)患者及び原発性肺癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長
胃癌(手術例)患者及び原発性肺癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長の場合
- 化学療法に併用し、各投与量(KE)を添付の生理食塩液で適宜懸濁溶解して、筋肉内、皮下又は皮内投与する。通常、初回0.2〜0.5KEより開始し、患者の状態を観察しつつ、連日又は隔日1回の投与で2〜3週間かけて2〜5KEまで漸増する。維持量は1回2〜5KE、週1〜2回とする。
ただし、同日内に同一患者に対し、2経路による投与は行わない。
消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸・腹水の減少
消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸・腹水の減少の場合
- 通常、1回5〜10KEを添付の生理食塩液で適宜懸濁溶解して、週に1〜2回漿膜腔内投与する。
ただし、同日内に同一患者に対し、2経路による投与は行わない。
他剤無効の、頭頸部癌(上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌)及び甲状腺癌
他剤無効の、頭頸部癌(上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌)及び甲状腺癌の場合
- 通常、1回5〜10KEを添付の生理食塩液で適宜懸濁溶解して、毎日又は数日に1回、腫瘍内又は腫瘍辺縁部に注入する。
ただし、同日内に同一患者に対し、2経路による投与は行わない。
リンパ管腫
リンパ管腫の場合
- 本剤の投与に際しては、生理食塩液で適宜懸濁溶解して、0.05〜0.1KE/mL濃度の懸濁溶解液を調製する。通常、吸引リンパ管腫液量と同量の懸濁溶解液を局所に注入する。1回総投与量2KEを上限として、年齢、症状により適宜増減する。
- 患者によって本剤に対する発熱などの感受性が異なるため、「消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸・腹水の減少の場合」、「他剤無効の、頭頸部癌(上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌)及び甲状腺癌の場合」についても少量投与から始め、患者の状態を観察しつつ漸増することが望ましい。
慎重投与
- 心疾患・腎疾患のある患者[動物による毒性実験において、大量長期投与した場合に溶連菌感染症類似の所見(心障害、腎障害、アミロイドーシス等)がみられている。]
- セフェム系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者
- 本人又は両親、兄弟に気管支喘息、発疹、蕁麻疹等のアレルギー症状を起こしやすい体質を有する患者
重大な副作用
ショック、アナフィラキシー様症状
- ショック、アナフィラキシー様症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
間質性肺炎
- 間質性肺炎が発現又は増悪することがあるので、観察を十分に行い、発熱、咳嗽、呼吸困難及び胸部X線検査異常等が認められた場合には、本剤の投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
急性腎不全
- 急性腎不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、BUN、クレアチニンの上昇、尿量の減少等が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
薬効薬理
実験腫瘍に対する効果
自家誘発腫瘍に対する効果
- マウスの自然発生腫瘍8)及びメチルコラントレン誘発腫瘍9)を用いた実験で、本剤を各々腫瘍内、筋肉内に投与することにより、腫瘍増殖の抑制効果が認められた。
同系腫瘍に対する効果
- マウス10)及びラット11)の同系腫瘍を用いた実験で、本剤を腹腔内に投与し、それぞれ延命効果、腫瘍縮小効果が認められた。更にモルモット12)の同系腫瘍に本剤を腫瘍内投与し、腫瘍縮小効果が認められた。
化学療法との併用効果13)
- マウスのL1210腫瘍に対し、本剤を抗悪性腫瘍剤であるフルオロウラシルと併用することにより、化学療法単独群に比較して延命効果が認められた。
作用機序
腫瘍細胞に対する作用14)
- 本剤は腫瘍細胞に対する直接的増殖抑制作用が認められている。
生体防御反応に対する作用
- 本剤の投与により好中球、マクロファージ、リンパ球数の増加(ヒト15))、好中球(ラット16))、マクロファージ(ヒト15))、NK細胞(ヒト17))の活性化及びCTL細胞の誘導(ラット18))が認められた。更にこれら細胞の増殖、活性化に関与するIL‐1、IL‐2(マウス19))、IL‐8(ヒト20))、IL‐12(マウス21))、IFN‐γ(マウス22))、TNF‐α(ヒト20)、G‐CSF(ヒト20))、GM‐CSF(ヒト20))等のサイトカインの産生が認められることから、主に本剤の投与によって賦活された種々の宿主の生体防御反応を介して、抗腫瘍効果を発現するものと考えられている。
リンパ管腫に対する作用機序23,24)
- 本剤をリンパ管腫の局所に投与することにより炎症反応が惹起され、続いて炎症に関わるマクロファージ等の誘導や内皮細胞の透過性亢進作用を有するTNF等のサイトカインの産生が認められ、これらによりリンパ液の排出が促進され、管腔が縮小するものと考えられる(ヒト)。
有効成分に関する理化学的知見
性 状
- 白色〜類白色の凍結乾燥した吸湿性の粉末又は塊で、わずかに特異なにおいがある。生理食塩液を加えて振り混ぜるとき白濁ないしわずかに白濁する。
★リンクテーブル★
[★]
- a. 化学的に不安定である。
- b. 水に溶解しやすい。
- c. 生体内で分解されやすい。
- d. 脂肪組織に貯蔵されやすい。
- e. 下位の生物から障害が始まる。
[正答]
※国試ナビ4※ [097G022]←[国試_097]→[097G024]
[★]
- 英
- panniculitis
- 関
- 皮下脂肪組織炎、脂肪組織炎
[★]
脂肪組織
- 関
- adipose tissue、body fat、fat pad、fat tissue
[★]
- 英
- fat pad
- 関
- 脂肪組織、体脂肪
[★]
- 英
- poststeroid panniculitis
- 関
- ウェーバー・クリスチャン病
[★]
- 英
- visceral adipose tissue
- 関
- 内臓脂肪、腹部脂肪組織
[★]
- 英
- adipose tissue neoplasm
- 関
- 脂肪組織新生物
[★]
- 英
- mesenteric panniculitis
- 関
- 腸間膜脂肪織炎
[★]
- 英
- peritoneal panniculitis
- 関
- 腸間膜脂肪織炎
[★]
- 英
- fat
- 関
- トリアシルグリセロール、脂肪酸
[★]
- 英
- tissue
- ラ
- textus
- 関
- 何種類かの決まった細胞が一定のパターンで集合した構造の単位のこと。
- 全体としてひとつのまとまった役割をもつ。
分類